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カプノサイトファーガ-カニモルサス感染症について

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月17日

流行は?

カプノサイトファーガ-カニモルサス感染症の病原体であるカプノサイトファーガ-カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus )という細菌は、犬や猫の口の中に存在します。人間は、犬や猫に咬まれたり引っ掻かれたりすることでカプノサイトファーガ-カニモルサスに感染することがあります。

日本における重症化したカプノサイトファーガ-カニモルサス感染症患者の文献報告例(2002年から2009年までの14例)については(参考文献1)、患者の年齢は、40歳代から90歳代までと中高年齢層が多く、糖尿病・肝硬変・全身性自己免疫疾患・悪性腫瘍などの基礎疾患が見られます。14例中6例が死亡しています。感染の原因としては、犬による咬傷6例、猫による咬傷・掻傷6例、不明2例となっています。

ヒトからヒトへの感染の報告はありません。

なお、犬による咬傷事故が発生した場合、早急に最寄りの保健所に届け出ることになります。横浜市の場合、飼い犬が人を咬んで傷つけた事実を知ったら飼い主は翌日までに区役所の福祉保健センター(生活衛生課)に届出なければなりません。さらに、飼い主は、2日以内に、人を咬んで傷つけた犬を獣医師に受診させ狂犬病の鑑定を受けさせなければなりません。また、犬に咬まれた場合には、福祉保健センター(生活衛生課)への届出として「犬によるこう傷事故被害届出書」があります。人を咬んで傷つけた犬の飼い主がわかれば、福祉保健センターで指導することになります。全国的には、犬の咬傷事故については、保健所に報告されたものだけでも年間約6千件程度です。保健所に報告されないものも含めると相当数に上ると思われます。犬による咬傷については、
当・横浜市衛生研究所ホームページ「犬による咬傷(こうしょう、かみきず:bite )について」をご参照ください。

どんな病気?

カプノサイトファーガ-カニモルサス感染症で見られる症状は、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などです。犬や猫に咬まれてから発病までの期間(潜伏期)は1-8日です。重症例では、敗血症や髄膜炎を起こし、播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血性ショック、多臓器不全に進行して死に至ることがあります。なお、重症化した場合には、敗血症になった方の約30%が、髄膜炎になった方の約5%が、亡くなるとされています。

診断については、患者の血液や脳脊髄液、傷口からの滲出液等を培養して、菌の分離・同定を行います。培養サンプルからの遺伝子検出(PCR)も可能です。しかし、医療機関を受診した時にはすでに重症の敗血症の状態であることも多く、急激に悪化することがあり、また、カプノサイトファーガ-カニモルサスの培養検査では生育が遅い菌のため分離・同定の検査結果による診断には時間がかかることから、検査結果を待つことなく患者の臨床症状等に応じてできるだけ早期に適切な治療を開始する必要があります。

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症が疑われる場合には、患者の臨床所見等に応じて早期に抗菌剤等による治療を開始することが重要となります。咬傷に対する抗菌薬としては、ペニシリン系、テトラサイクリン系抗菌剤が一般的に推奨されていますが、カプノサイトファーガ-カニモルサスにはβラクタマーゼを産生する菌株もあるので、ペニシリン系の抗菌剤を用いる際にはβラクタマーゼ阻害剤との合剤などその影響を受けにくい抗菌剤を選択した方が良いでしょう。

犬や猫に咬まれたり、ひっ掻かれたりすることで感染することが多いですが、犬になめられての感染も知られています。2007年6月下旬オーストラリアのビクトリア州で発生したカプノサイトファーガ-カニモルサス感染症患者(48歳女性)は、敗血性ショックでの緊急入院の3-4週間前に左脚に熱湯で直径33mm程の火傷を負っていましたが、適切な清潔を保てず抗生物質の投与も受けていませんでした。この火傷の部分を飼い犬のフォックステリアの子犬がなめていてカプノサイトファーガ-カニモルサスに感染したものと考えられました(参考文献5)。

病原体は?

カプノサイトファーガ-カニモルサス感染症の病原体は、カプノサイトファーガ-カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus )という細菌です。カプノサイトファーガ-カニモルサスは、犬や猫の口の中に存在します。犬や猫の口の中には、カプノサイトファーガ-カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus )によく似たCapnocytophaga cynodegmi という細菌も存在し、同じカプノサイトファーガ属(genus Capnocytophaga )に属します。犬や猫に咬まれたりすることで、Capnocytophaga cynodegmi は人間にも感染することがあり、局所的に咬傷の感染を起こすことがあります。なお、菌の名前について、カニモルサス(canimorsus )は「犬による咬傷」を意味するラテン語(canis[犬] morsus[咬傷])に由来し、cynodegmi は「犬による咬傷」を意味するギリシア語(kyon,kyno-[犬] degmos[咬傷])に由来します(参考文献2)。また、カプノサイトファーガ属(genus Capnocytophaga )については、カプノ(Capno)は煙の意味のギリシア語kapnosに由来し、生育に二酸化炭素(煙)を必要としてサイトファーガ(Cytophaga )属に近縁と考えられたことから名付けられました。
カプノサイトファーガ属には、人間の口の中に認められることがある、Capnocytophaga gingivalis、Capnocytophaga granulosa、Capnocytophaga haemolytica、Capnocytophaga ochracea、Capnocytophaga sputigena、Capnocytophaga leadbetteri (leadbetteri はカプノサイトファーガ属を提唱した米国の微生物学者E. R. Leadbetterの栄誉を称えての命名)も属し歯周病を起こしたりします。

「カプノサイトファーガ-カニモルサス感染症」は、感染症法の届出対象疾病とはなっていませんので、医師による保健所等への届出の必要はありません。ただし、カプノサイトファーガ-カニモルサスの調査研究の進展のため、国立感染症研究所獣医科学部第一室が情報を求めているとのことです。情報提供にご協力をよろしくお願いいたします。相談窓口としては、国立感染症研究所獣医科学部第一室(03-5285-1111 内線2622)にお問い合わせください。

犬や猫に咬まれて感染することがある微生物は、カプノサイトファーガ-カニモルサスだけではありません。パスツレラ菌(Pasturella multocida 等)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )が多く、他にも、連鎖球菌、コリネバクテリウム、Eikenella corrodens など多数あります。破傷風狂犬病の心配もあります。カプノサイトファーガ-カニモルサス感染症の重症例では死亡例も報告されていますが、受傷時に早急に医療機関を受診して消毒や抗生物質の投与等を受けていれば重症化しなかった可能性もあります。犬や猫に咬まれたら早急に医療機関を受診して、消毒や抗生物質の投与等、適切な治療を受けましょう。

予防のためには・・・

免疫機能が低下していなくとも、咬傷や掻傷から感染し、発症する事例があるため、日頃から、動物との過度のふれあいは避け、動物と触れあった後は手洗いなどを確実に実行しましょう。カプノサイトファーガ-カニモルサス感染症だけでなく、一般的な動物由来感染症予防のためにも、重要です。なお、脾臓摘出者、アルコール依存・糖尿病などの慢性疾患・免疫異常疾患・悪性腫瘍の患者・高齢者など免疫機能が低下している方は、重症化しやすいと考えられますので、特に注意しましょう。

犬や猫に咬まれないようにしましょう。犬については、
当・横浜市衛生研究所ホームページ「犬による咬傷(こうしょう、かみきず:bite )について」をご参照ください。

参考文献

  1. 厚生労働省「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症に関するQ&A(外部サイト)
  2. DON J. BRENNER, DANNIE G. HOLLIS, G. RICHARD FANNING, AND ROBERT E. WEAVER
    ; Capnocytophaga canimorsus sp. nov. (Formerly CDC Group DF-2), a Cause of Septicemia following Dog Bite, and C. cynodegmi sp. nov., a Cause of Localized Wound Infection following Dog Bite; JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, Feb. 1989, Vol. 27, No. 2, p. 231-235
  3. 鈴木道雄、[話題の感染症]イヌ・ネコ咬傷・掻傷とCapnocytophaga canimorsus 感染症、
    モダンメディア 56 巻4 号2010、p. 71-77.
  4. Ellen V. G. Frandsen, Knud Poulsen, Eija Koenoenen and Mogens Kilian; Diversity of Capnocytophaga species in children and description of Capnocytophaga leadbetteri sp. nov. and Capnocytophaga genospecies AHN8471; International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2008), 58, p. 324-336.
  5. Stephanie Chiang-Mei Low and John Edward Greenwood; Capnocytophaga canimorsus: infection, septicaemia, recovery and reconstruction; Journal of Medical Microbiology (2008), 57, p. 901-903.

2010年6月18日掲載

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健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課

電話:045-370-9237

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ファクス:045-370-8462

メールアドレス:kf-eiken@city.yokohama.jp

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