このページの先頭です

ブドウ球菌腸毒素Bについて

最終更新日 2018年7月24日

流行は?

黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus は、ヒトの皮膚などでよく見られ、ケガを不潔にしておくとよく化膿を起こす細菌です。この黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus は、多種の毒素を菌体外に放出し、それらの毒素は外毒素と呼ばれます。ブドウ球菌腸毒素B( staphylococcal enterotoxin B : SEB )は、黄色ブドウ球菌が放出する外毒素の一つです。黄色ブドウ球菌による食中毒においては、このブドウ球菌腸毒素Bなどが腸管内で悪影響を及ぼすため、腸毒素と呼ばれています。このブドウ球菌腸毒素Bは、少なくとも七種はあるブドウ球菌腸毒素の一つです。黄色ブドウ球菌による食中毒においては、食物中で黄色ブドウ球菌が増殖し、ブドウ球菌腸毒素が食物中に蓄積します。食物とともにこのブドウ球菌腸毒素が食べられることにより腸毒素の中毒を起こすのです。ブドウ球菌による食中毒は、ボツリヌス菌による食中毒と並んで、細菌による毒素型の食中毒の代表です。

厚生労働省による「平成11年食中毒発生状況」によれば、平成11年一年間の全国の食中毒統計では、ブドウ球菌による食中毒は、67件(全体の件数の2.6%)発生し、患者数736人(全体の患者数の2.2%)、死者0人でした。ところが、厚生労働省による「平成12年食中毒発生状況」によれば、平成12年一年間の全国の食中毒統計では、ブドウ球菌による食中毒は、87件(全体の件数の3.9%)発生し、患者数14722人(全体の患者数の34.0%)、死者1人でした。平成12年のブドウ球菌による食中毒の急増は、工場での製造過程の中で増殖してしまったブドウ球菌による脱脂粉乳中のブドウ球菌腸毒素が原因となった食中毒によるものです。

生物兵器としてのブドウ球菌腸毒素Bの使用は、空中へのブドウ球菌腸毒素Bの噴霧、あるいは、飲食物中へのブドウ球菌腸毒素Bの混入が考えられます。ブドウ球菌腸毒素Bの噴霧を吸入した人たちは、死亡者は少ないですが、大多数が1-2週間は働けなくなります。このため、ブドウ球菌腸毒素Bは、アメリカ合衆国で、1969年に生物兵器計画が終結するまで蓄えられていた七つの生物剤の一つでした。この七つの生物剤とは、炭そ菌野兎病菌ベネズエラ馬脳炎ウイルスQ熱病原体の Coxiella burnetii 、ブルセラ症病原体の Brucella suis 、ボツリヌス毒素、そしてブドウ球菌腸毒素Bです。アメリカ合衆国では、1971年5月から1972年5月の間にこの七つの生物剤はすべて破壊されました。アメリカ合衆国では1960年代に生物兵器としての研究が進められPGの略号で呼ばれました。集団が毒物の曝露を受けた場合、半数が働けなくなるなどの影響を受ける一人あたりの分量をED50、半数が死亡する一人あたりの分量をLD50と言います。ブドウ球菌腸毒素Bを吸入した場合の、ED50は、0.0004μg/kg、LD50は、0.02μg/kgと推定されています(/kgは、体重1kgあたり。)。

どんな病気?

ブドウ球菌腸毒素Bを吸入したような場合には、単にブドウ球菌腸毒素Bを飲み込んだような場合とは、違った症状が出現します。ブドウ球菌腸毒素Bを吸入したような場合には、3-12時間の潜伏期間の後、39.4-41.1度の発熱・悪寒・頭痛・筋肉痛及び乾いた咳が、突然に出現します。息切れや胸の中央部の痛みも出現することもあります。発熱は、2-5日続きます。咳は4週間続くこともあります。さらに、ブドウ球菌腸毒素Bを飲み込んだような場合には、吐き気・嘔吐・下痢も出現することもあります。多量にブドウ球菌腸毒素Bを吸入したような場合には、ショックを起こし死亡する場合もあります。ある実験室における事故でブドウ球菌腸毒素Bを吸入して発病した9人がどのような症状を起こしたかが、参考文献3の第31章「ブドウ球菌腸毒素Bとその関連毒素」で紹介されています(但し、英文です)。

症状に応じた治療が行われます。発熱に対してアセトアミノフェン、咳に対して鎮咳剤が使用されることがあります。重症な例では、肺浮腫から呼吸不全となり、人工呼吸器による呼吸管理が必要になる場合もあります。

ブドウ球菌腸毒素Bが入った飲食物を飲食した場合には、飲食後、4-10時間の潜伏期間を経て、吐き気・嘔吐・下痢といった胃腸症状が主に出現します。なお、ブドウ球菌による食中毒では、ブドウ球菌腸毒素Bを吸入したような場合に見られる呼吸器症状は通常見られません。

病原体は?

ブドウ球菌腸毒素Bは、黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus によって作られるスーパー抗原蛋白毒素の一つです。ブドウ球菌腸毒素Bの吸入時の中毒では、ブドウ球菌腸毒素Bがこのスーパー抗原蛋白毒素として多くのT細胞を刺激しサイトカインと呼ばれる種種の物質が大量に放出されて強い炎症反応が起こり自らの組織をも傷つけることがあると考えられています。

予防のためには・・・

ブドウ球菌腸毒素Bによる中毒を防ぐためのワクチン(予防接種)はありません。ブドウ球菌腸毒素Bは、皮膚からは吸収されません。万一、ブドウ球菌腸毒素Bが体に付着した場合には、水と石鹸とでよく洗い流しましょう。ブドウ球菌腸毒素Bによって汚染された食物は、食べてはいけません。廃棄しましょう。

ブドウ球菌腸毒素Bは、100度で数分加熱すると不活化されます。但し、ブドウ球菌腸毒素は、ブドウ球菌腸毒素B以外にも存在します。ブドウ球菌腸毒素は、加熱にも安定であるとされています。ブドウ球菌腸毒素が食品中に存在する場合には、食前の食品の加熱では、ブドウ球菌による食中毒を防げないと考えた方が良いでしょう。

参考文献

  1. David R. Franz , et al ; Clinical recognition and management of patients exposed to biological warfare agents ; JAMA, August 6, 1997 ; Vol 278, No.5 ; pp399-411.
  2. USAMRIID`s medical management of biological casualties handbook ( fourth edition , February 2001 )(外部サイト) : U.S.Army Medical Research Institute of Infectious Diseases ; Fort Detrick Frederick , Maryland , U.S.A.
  3. Medical aspects of chemical and biological warfare (外部サイト); Borden Institute, Walter Reed Army Medical Center, Washington, D.C., U.S.A. ; May 1997.

2001年11月26日掲載

このページへのお問合せ

健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課

電話:045-370-9237

電話:045-370-9237

ファクス:045-370-8462

メールアドレス:kf-eiken@city.yokohama.jp

前のページに戻る

ページID:604-674-905

先頭に戻る