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鼻疽及び類鼻疽について

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月17日

流行は?

鼻疽は、ウマやロバ・ラバなどのウマ属の病気として、東欧やアジア、アフリカ、中東、南アメリカで見られます。ヒトに感染する場合もあります。鼻疽は、日本では通常見られませんが、外国から流入する可能性もあります。鼻疽の潜伏期が長いので、鼻疽の潜伏期中の動物を輸入してしまう恐れがあります。1910年代には、敵国のウマの間に鼻疽の流行を起こして敵国に損失を与えようとして、病原体の鼻疽菌( Burkholderia mallei )を生物兵器(:広義の生物兵器。狭義の生物兵器は主としてヒトを対象とするものですが、広義の生物兵器は主として家畜などを対象として敵国に損失を与えようとするものなども含みます。他には、例えば、ウシ・ブタ・ヒツジなどに大きな被害をもたらす口蹄疫を起こす口蹄疫ウイルスが広義の生物兵器に含まれるかもしれません。)として用いる試みがなされたこともあったようです。第一次世界大戦の東部戦線においては、ロシアのウマやラバに鼻疽の流行が見られ、ロシア軍の戦力に影響を与えました。アメリカ合衆国では、1943-1944年に鼻疽菌( Burkholderia mallei )の生物兵器の可能性が探られましたが、結局、鼻疽菌( Burkholderia mallei )を生物兵器とはしませんでした。旧ソビエト連邦では、第二次世界大戦後に鼻疽菌( Burkholderia mallei )の生物兵器の可能性が探られました。

類鼻疽は、げっ歯類・ヒツジ・ヤギ・ウマ・ブタ・ウシ・イヌ・サル・熱帯魚などの病気として、東南アジア(フィリピン・インドネシア・ベトナム・タイ・マレーシア・ミャンマー)やオーストラリア北部、東・中央・西アフリカ、イラン、インド、中国などで見られます。特に、ウマでは、鼻疽によく似た病変を形成します。ヒトに感染する場合もあります。特に、免疫力が弱まっているHIV感染者・糖尿病患者は、感染しやすいです。類鼻疽は、日本では通常見られませんが、外国から流入する可能性もあります。アメリカ合衆国では、類鼻疽菌( Burkholderia pseudomallei )の生物兵器の可能性も探られましたが、結局、類鼻疽菌( Burkholderia pseudomallei )を生物兵器とはしませんでした。旧ソビエト連邦では、類鼻疽菌( Burkholderia pseudomallei )の生物兵器としての実験を行っていました。

どんな病気?

鼻疽のヒトへの感染は、鼻疽に感染しているウマ属との頻回で密接な接触によって起こります。そのため、鼻疽のヒトへの感染は、獣医やウマ属の世話をする人々、食肉処理場の人々などに多いです。ラバやロバでよく見られる発病から3-4週間で死ぬような急性の進行を見せる型を急性型と言います。一方、ウマでよく見られる慢性型では、潰瘍となり排膿する多くの皮膚の結節、そして、四肢などの部位をはじめとしたリンパ節の硬化・腫脹・結節形成が見られます。

類鼻疽の感染経路としては、熱帯・亜熱帯の流行地の土や水の中にいる病原体の類鼻疽菌( Burkholderia pseudomallei )が、皮膚の傷から侵入する場合や、ヘリコプターの離着陸時の風圧などで生じた飛沫に含まれて吸入される場合(:ベトナム戦争時にアメリカ兵などで見られました。)などもあります。ヒトの類鼻疽では、ほとんど症状がない場合から、ひどい敗血症を起こし発病から24-48時間以内に90%の致死率で死亡するような場合まであります。このような急性の敗血症にならなければ致死率は10%未満です。また、ヒトの類鼻疽では、初回の感染から何年もたってから再発する場合があります。

鼻疽菌も類鼻疽菌も、ヒトへの感染は、鼻・口・目の粘膜から、あるいは吸い込まれて肺から、あるいは傷ついた皮膚から起こります。実験室・検査室において、鼻疽菌も類鼻疽菌も、培養したものが飛沫となってヒトへの感染を起こしやすいです。鼻疽菌も類鼻疽菌も、噴霧することにより、生物兵器として使われる可能性があります。

鼻疽菌も類鼻疽菌も、噴霧することにより、生物兵器として使われた場合には、曝露を受けた人は、10-14日の潜伏期を経て発病の可能性があります。敗血症型の感染では、突然の発熱(通常38.9度以上)、悪寒、発汗、筋肉痛、胸膜性の胸痛、壊死を起こす病変、肝臓の腫れ、脾臓の腫れ、丘疹や小膿疱、下痢などが出現します。急性の肺疾患から、菌血症、敗血症へと進みます。鼻疽も類鼻疽もこうなると治療なしでは、致命的な状態になります。

胸部エックス線写真では、粟粒病変、小さな多発性の肺の膿瘍、上肺野の浸潤影、硬化像や空洞形成が見られることがあります。胸部エックス線写真が肺結核に似ていることがあるのですが、治療についても結核並みに長期の治療が必要となります。

治療には、化学療法剤のスルファメトキサゾール・トリメトプリム(SMX-TMP)などが長期にわたって使用されます。また、ハムスターを使っての感染実験では、doxycycline,rifampin,ciprofloxacinなどによる治療が有効でした。但し、近頃では患者の発生が少なく、治療を受けた患者の数が少ないため多くの抗生物質の有効性の評価は定まっていません。特定の菌を使った動物実験や試験管内での実験結果に基づく評価は、ヒトへの使用の場合には、あてはまらないかもしれません。分離された菌が、抗生物質に対してかなり違った感受性・抵抗性を示す場合もあります。分離された菌の抗生物質に対する感受性・抵抗性の検査が、必要だと思われます。

病原体は?

鼻疽の病原体は、鼻疽菌( Burkholderia mallei)です。鼻疽菌( Burkholderia mallei )は、通常、感染した動物の体内だけに存在し、自然界の土の中や水の中や植物には存在しません。鼻疽菌は、鞭毛を持っておらず、動きまわりません。鼻疽は、英語ではglandersと言いますが、これは、首のリンパ節( glands )が腫れることがあることから名付けられたようです。

類鼻疽の病原体は、類鼻疽菌( Burkholderia pseudomallei )です。類鼻疽菌は、熱帯・亜熱帯で、土の中や水の中に存在します。類鼻疽菌は、鞭毛を持っていて、動きまわります。類鼻疽は、A.Whitmore という人に因み Whitmore 病( Whitmore`s disease )と呼ばれることがあります。また、類鼻疽菌は、Whitmore 菌と呼ばれることもあります。

予防のためには・・・

鼻疽及び類鼻疽について、ヒト用のワクチン(予防接種)は、ありません。

一般の場所で鼻疽菌( Burkholderia mallei )や類鼻疽菌( Burkholderia pseudomallei )に汚染されたモノの表面の消毒には、0.5%の次亜塩素酸ナトリウムが用いられることがあります。

鼻疽菌も類鼻疽菌も、曝露を受けた人は、化学療法剤のスルファメトキサゾール・トリメトプリム( SMX-TMP )の発病予防のための投与が試みられることがあります。

ヒトからヒトへの直接の感染は起こりにくいと考えられています。しかし、病原体を含む病巣部からの浸出物などから感染する可能性もあるので皮膚に病巣がある場合などについては特に注意が必要です。

参考文献

  1. USAMRIID`s medical management of biological casualties handbook ( fourth edition , February 2001 )(外部サイト) : U.S.Army Medical Research Institute of Infectious Diseases ; Fort Detrick Frederick , Maryland , U.S.A.

2001年12月4日掲載

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