このページの先頭です

ウイルス性出血熱について

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月12日

はじめに

ウイルス性出血熱は、4つのウイルスの科に属する種種のウイルスによって起こされる発熱と出血を主症状とする感染症の総称です。もともと、アフリカを中心とした、熱帯・亜熱帯の感染症が多いですが、エボラ出血熱のように特効薬がなく致命率が高いものも含まれる一群の感染症として知られています。ジェット機等の交通手段の発達した現代においては、潜伏期の間に感染者がわが国に入国する可能性もあります。また、病原体ウイルスがバイオテロ(生物兵器を使ったテロ)で噴霧される可能性もあります。ウイルス性出血熱の内、主なものを、以下に表を中心にまとめてみました。

流行は?

エボラ出血熱が最初に認められたのは1976年でアフリカのスーダンおよび近接のザイールにおける患者の発生でした。エボラ出血熱の2度目の流行は、スーダンで1979年でした。1995年には、ザイールのKikwitでエボラ出血熱の大きな流行が起こり、316人の患者が発生し多数が亡くなりました。また、マールブルグ出血熱(マールブルグ病)の流行が初めて起こったのは、ドイツのマールブルグとフランクフルトおよびユーゴスラビアででした。輸入したアフリカミドリザルに接触した人たちの間で31人の患者が発生し、7人が亡くなりました。エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱(マールブルグ病)は、患者の致命率も高く、その恐ろしさは報道を通じてもよく知られています。しかし、ウイルス性出血熱は、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱(マールブルグ病)だけではありません。以下の表1に主なウイルス性出血熱の発生地域およびヒトへの感染経路をまとめてみました。病原体ウイルスの媒介動物・保菌動物がはっきりしていれば、患者の発生地域も媒介動物・保菌動物が生息する場所の付近ということになり、対策も立てやすいです。ところが、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱(マールブルグ病)については、病原体ウイルスが普段はどこに生息しているかがわかっていないので、対策が立てにくいです。

表1 主なウイルス性出血熱の発生地域及びヒトへの感染経路(主に参考文献2による。一部改変・追加。)
病名発生地域媒介動物あるいは保菌動物ヒトへの感染経路
クリミアコンゴ出血熱1.アフリカ

2.バルカン
3.中国西部
4.前ソビエト連邦南部
5.中東

ダニ:ダニ-哺乳動物-ダニの連鎖があります1.ダニにかまれて

2.ダニを押しつぶして
3.医療機関内での感染(院内感染)
4.感染した動物(牛・羊等)・人を介して

デング出血熱(デングショック症候群)熱帯及び亜熱帯の地域Aedes aegypti 蚊:蚊-人-蚊の連鎖があります。感染した旅行者によってウイルスは遠方に運ばれます蚊にさされて:蚊の発生地域の拡大と旅行者の移動により感染が起こり得る地域は拡大してきています
エボラ出血熱及びマールブルグ出血熱(マールブルグ病)アフリカ不明1.感染した人と密に接触して

2.感染したサルがヒトを感染させる可能性があります
3.サルの感染では飛沫感染が疑われています
4.医療機関内での感染(院内感染)

ラッサ熱西アフリカネズミ:Mastomys 属のマウス1.ネズミから人へ飛沫で

2.ネズミあるいはその糞尿・唾液と直接接触して
3.感染した人と接触して
* 保菌動物のネズミはアフリカでよく見られます。ラッサ熱は、西アフリカの重症の熱病の主要原因です

リフトバレー熱サハラ砂漠以南のアフリカフラッドウォーター蚊:蚊-家畜(羊・牛等)-蚊の連鎖があります1.蚊に刺されて

2.感染した羊・牛・ヤギの血と直接接触して
3.感染した羊・牛・ヤギの血から生じたエアロゾルを吸いこんで
* 人から人への感染は認められていません

黄熱(病)1.アフリカ

2.南アメリカ

Aedes aegypti 蚊:蚊-サル・人-蚊の連鎖があります。ワクチン未接種の人が森に入って感染することがあります1.蚊に刺されて

2.検査室で:ウイルス血症となり検体中のウイルスは感染力が高いです。人から人への直接の感染は少ないです

アルゼンチン出血熱アルゼンチン野ネズミ:Calomys musculinus1.野ネズミから人へ飛沫で

2.野ネズミあるいはその糞尿・唾液と直接接触して
3.医療機関内での感染(院内感染)
* 保菌動物の野ネズミはアルゼンチンの中央部・北西部でよく見られます。


さて、上の表1で患者の発生地域を示しましたが、ヒトからヒトへの感染がありえる場合には、発生地域に行ったことがなくても、感染してしまうことがありえます。1996年、ガボンでエボラ出血熱の治療にあたっていた医療従事者が知らずにエボラ出血熱に感染し、旅行先の南アフリカで発病しました。その入院先の南アフリカの病院の看護婦がエボラ出血熱に感染し、亡くなりました。ジェット機等の交通手段の発達した現代においては、感染症の問題は、限定された「患者の発生地域」だけの問題ではないのです。ヒトからヒトへの感染がありえるのは、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱(マールブルグ病)、ラッサ熱、クリミアコンゴ出血熱などです。これらの出血熱については、日本の感染症予防法では、第1類の感染症に分類されていて、日本で発病した患者は感染症専門の医療機関に隔離されて治療を受けることになります。

どんな病気?

ウイルス性出血熱には種種のものがあります。最初に出現する共通な症状としては、しばしば、著明な発熱、疲労感、めまい、筋肉痛、脱力、体力消耗です。重症例では、皮下出血、内臓の出血、あるいは口・目・耳からの出血を起こします。さらに重症例では、ショック状態、神経系統の異常、昏睡、譫妄などを起こすことがあります。また、ウイルス性出血熱の中には腎臓障害を起こすものもあります。主なウイルス性出血熱の症状などを以下の表2にまとめてみました。

表2 主なウイルス性出血熱の症状など(主に参考文献2による。一部改変・追加。)
病名潜伏期患者の致命率症状など
クリミアコンゴ出血熱3-12日15-30%全てのウイルス性出血熱の中で一番出血と紫斑(皮下出血)が著明
デング出血熱(デングショック症候群)3-15日(5-8日が多い)6-30%1.発熱と頭痛

2.ショック状態
3.消耗及び脱力
4.斑状丘疹がよく見られる

エボラ出血熱及びマールブルグ出血熱(マールブルグ病)2-21日25-90%1.全てのウイルス性出血熱の中で一番患者の致命率が高い

2.体重減少
3.消耗及び脱力
4.斑状丘疹がよく見られる
5.感染後に、肝炎、目のブドウ膜炎、睾丸炎が起こることがあります

ラッサ熱5-16日約15%1.消耗及び脱力

2.ショック状態
3.患者の20%が、回復中に耳の聞こえが悪くなります
4.斑状丘疹がよく見られる

リフトバレー熱2-5日(場合により潜伏期はかなり違う)重症例では50%(全例では1.5%)1.ショック状態

2.出血
3.尿量減少あるいは尿の生産ができなくなる
4.黄疸
5.脳炎
6.目の網膜の血管の炎症

黄熱(病)3-6日20%1.発熱が消失する寛解期の後、再び発熱する

2.重症例では、黄疸や腎不全が出る

アルゼンチン出血熱7-14日10-30%1.発熱・頭痛・背部痛・嘔気・嘔吐

2.重症例では、神経症状や出血が見られる

特効薬はありません。治療としては、症状に対する治療が主になります。抗ウイルス療法として、ribavirin(リバビリン)という薬の投与が、ラッサ熱、リフトバレー熱、クリミアコンゴ出血熱そして腎症候性出血熱に有効だと考えられています。早期に投与を開始することで効果が期待できます。ribavirin(リバビリン)には、貧血などの副作用が見られることがあります。

ウイルス性出血熱で傷つけられるのは、血管です。血管の壁が傷つくことにより、血管から血液が漏れ出ることになります。

病原体は?

ウイルス性出血熱の病原体ウイルスは、4つのウイルスの科に属します。4つのウイルスの科とは、arenavirus(アレナウイルス:ラッサ熱・アルゼンチン出血熱等)、filovirus(フィロウイルス:エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱)、bunyavirus(ブンヤウイルス:クリミアコンゴ出血熱・リフトバレー熱・腎症候性出血熱)、flavivirus (フラビウイルス:黄熱病・デング出血熱)です。抗ウイルス療法としてのribavirinという薬の投与は、filovirus(フィロウイルス:エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱)および flavivirus(フラビウイルス:黄熱病・デング出血熱)には、残念ながら効果が乏しいです。

hantaviruses(ハンタウイルス)は、bunyavirus(ブンヤウイルス)科に属し、腎症候性出血熱(HFRS:hemorrhagic fever with renal syndrome)やハンタウイルス肺症候群 ( HPS : Hantavirus Pulmonary Syndrome )を起こすことがあります。腎症候性出血熱 ( HFRS : hemorrhagic fever with renal syndrome ) は、hantaviruses(ハンタウイルス)に属する Hantaan virus などによって起こされ、死亡率は、6-15%です。潜伏期は7-36日です。ハンタウイルス肺症候群 ( HPS : Hantavirus Pulmonary Syndrome ) は、hantaviruses(ハンタウイルス)に属する Sin Nombre virus (シンノンブレウイルス)によって起こされ、北アメリカで見られ、死亡率は、50-75%です。ハンタウイルス肺症候群 ( HPS : Hantavirus Pulmonary Syndrome ) では、出血や腎不全は認められず、肺水腫と低血圧が認められます。hantaviruses(ハンタウイルス)のヒトへの感染は、ウイルスを持っているネズミの排泄物で汚染されたホコリを吸い込んだりして起こると考えられています。

デング熱もデング出血熱もデングウイルス ( dengue virus ) によって起こされます。デング熱での死亡がほとんどないのに対しデング出血熱では死亡が見られます。デングウイルス ( dengue virus ) には4つの血清型があります。デング出血熱は、他の血清型のデングウイルス ( dengue virus ) によるデング熱にかかったことがある人で通常、見られます。デング出血熱では、以前に感染したデングウイルス ( dengue virus ) の株に対する抗体を持っていることで、免疫に関わる単球やT細胞などが関与して、血管を傷つけ、血液の凝固の仕組みにも異常をきたします。

予防のためには・・・

黄熱(病)に対しては、広く用いられているワクチンがあります。弱毒生ワクチンで0.5ml皮下注射を10年毎に繰り返します。黄熱ワクチンについては、アルゼンチンブラジルペルー等の国で定期予防接種になっています。

アルゼンチンでは、"Candid #1"(C#1)というアルゼンチン出血熱の弱毒生ワクチンがあり、アルゼンチンの定期予防接種の一つとなっています。流行地で15歳を超える男女が接種対象となります。一回接種で筋肉内注射です。15歳未満には接種できないため、アルゼンチン出血熱患者に占める15歳未満の患者の率が相対的に高くなっています。また、アルゼンチン出血熱のワクチンは、アルゼンチン出血熱の流行地がアルゼンチン国内に限定されアルゼンチン以外の国での販売が期待薄であること、危険性の高いウイルスを扱うための設備投資が大きいこと等のため、その開発にはアルゼンチン政府が大きく関わりました。アルゼンチン出血熱に対する"Candid #1"ワクチンの予防効率は95%(95%信頼区間:82-99%)です(参考文献3)。20年間に約257,000人が接種を受けて、その中では、12人の軽症の患者発生が見られたとのことです。なお、アカゲザルを使った動物実験では、遺伝子的にフニンウイルスに近いマチュポウイルスによるボリビア出血熱の予防も示唆されたとのことです。

病原体との接触により感染の可能性があるときには、ribavirin(リバビリン)という薬の予防的な投与が、ラッサ熱、リフトバレー熱、クリミアコンゴ出血熱、アルゼンチン出血熱そして腎症候性出血熱に有効だと考えられています。その他の、主なウイルス性出血熱の予防法は、以下の表3に示す通りです。

表3 主なウイルス性出血熱の予防法(主に参考文献2による。一部改変・追加。)
病名予防法
クリミアコンゴ出血熱1.ダニを避けること

2.感染した動物との接触を避けること
3.患者の疑いがあれば隔離すること

デング出血熱(デングショック症候群)1.Aedes aegypti 蚊を避けること・根絶すること

2.ワクチンが使用されつつあります

エボラ出血熱及びマールブルグ出血熱(マールブルグ病)1.患者の疑いがあれば隔離すること

2.サルとの接触を避けること
3.サルの輸出・輸入にあたっては、厳しくチェックすること

ラッサ熱1.ネズミを避けること・根絶すること

2.患者の疑いがあれば隔離すること

リフトバレー熱1.家畜に予防接種することで家畜での流行をなくす

2.ヒト用のワクチンは、安全で効果的ですが、数が限られています
3.サハラ砂漠以南のアフリカの獣医やウイルス学者は、ワクチンの接種を受けるべきでしょう

黄熱(病)1.Aedes aegypti 蚊を避けること・根絶すること

2.黄熱(病)の予防接種を受けること

アルゼンチン出血熱1.野ネズミを避けること・根絶すること

2.アルゼンチン出血熱の予防接種を受けること

蚊が媒介する病気にならないために蚊に刺されないことは大事です。一方、黄熱(病)のような場合には、患者が蚊へのウイルスの供給源にならないように、患者も蚊に刺されないことが大事です。

ウイルス性出血熱の疑いのある人の血液・体液・分泌物・排泄物などと接触した人は、ただちに、接触した自分の皮膚を水と石鹸で洗い流しましょう。接触した自分の粘膜は、水か生理的食塩水で洗い流しましょう。

参考文献

  1. USAMRIID`s medical management of biological casualties handbook ( fourth edition , February 2001) : U.S.Army Medical Research Institute of Infectious Diseases ; Fort Detrick Frederick , Maryland , U.S.A.
  2.  
  3. Infection Control for Viral Haemorrhagic Fevers in the African Health Care Setting .; CDC & WHO ; December 1998.
  4. Ana Ambrosio, Saavedra M.C, Mariani M.A, Gamboa G.S and Maiza A.S, Argentine hemorrhagic fever vaccines; Human vaccines; June 2011; volume 7 issue 6, p. 694-700.

2001年11月5日新掲載
2013年12月6日増補改訂

このページへのお問合せ

健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課

電話:045-370-9237

電話:045-370-9237

ファクス:045-370-8462

メールアドレス:kf-eiken@city.yokohama.jp

前のページに戻る

ページID:721-296-692

先頭に戻る