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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。
最終更新日 2019年10月25日
2018-2019年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1,7)によれば、2018年9月から2019年1月まででは、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。A型とB型とでは、A型が優勢で、検出されたウイルスの95%をA型が占めました。A型について、報告のあったすべての国で、A(H1N1)pdm09 型とA香港(H3N2)型のいずれもが見られました。A型について、北アメリカ、ヨーロッパ、中央アメリカ、アジア、オセアニアで、報告のあった大部分の国で、A(H1N1)pdm09 型が優勢でした。アフリカやアジアの国でA香港(H3N2)型が優勢な国も見られました(イラン等)。ヨーロッパでは、ベルギー、フランス、リトアニア、ルクセンブルク、トルコ、ウクライナでA香港(H3N2)型が優勢でした。B型は、ビクトリア[B/Victoria/2/87]系統も、山形[B/Yamagata/16/88]系統も低調な流行でした。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1,7)によれば、2018年9月から2019年2月までで、分離検出されたA(H1N1)pdm09 型ウイルスの大部分は、HA遺伝子系統樹分析で、サブクレード6B.1に属し、2018-2019年冬季のワクチンのA(H1N1)pdm09 型のワクチン株もサブクレード6B.1に属します。さらに、HA1蛋白のアミノ酸置換、S74R、S164T、I295Vが加わったサブクレード6B.1Aに大部分が属します。2019-2020年冬季のワクチンのA(H1N1)pdm09 型のワクチン株[A/Brisbane(ブリスベン)/02/2018(H1N1)]はサブクレード6B.1Aに属します。
2018年9月から2019年2月までで、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスの大部分は、、HA遺伝子系統樹分析で、サブクレード3C.2a1bに属します。2018-2019年冬季のワクチンのA香港(H3N2)型のワクチン株もサブクレード3C.2a1に属します。しかしながら、2018年11月から、アメリカ合衆国やイスラエル、西ヨーロッパのいくつかの国において、クレード3C.3aが増加してきました。2019-2020年冬季のワクチンのA香港(H3N2)型のワクチン株[A/Kansas(カンザス)/14/2017 (H3N2)]はクレード3C.3aに属します。
2018年9月から2019年2月までで、分離検出されたB型ウイルス(山形系統)のすべては、HA遺伝子系統樹分析で、クレード3に属します。抗原的にも遺伝子的にも変化なく、2018-2019年冬季と2019-2020年冬季とでは、同じワクチン株[ B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)様株]です。
2018年9月から2019年2月までで、分離検出されたB型ウイルス(ビクトリア系統)は、HA遺伝子系統樹分析で、クレード1Aに属します。クレード1Aの中でHA蛋白のアミノ酸の欠損がない群、HA蛋白の162番と163番の二つのアミノ酸の欠損がある群、増加傾向の162番と163番と164番の三つのアミノ酸の欠損がある群が多くの国で検出されました。2018-2019年冬季と2019-2020年冬季とでは、HA蛋白の162番と163番の二つのアミノ酸の欠損がある群に属する同じワクチン株(B/Colorado/06/2017[ビクトリア系統]様株)が採用されています。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2017年9月から2018年2月までで、分離検出された3192のA(H1N1)pdm09 型インフルエンザウイルスを調べて、ノイラミニダーゼ阻害剤に耐性のあるウイルスは、16でした。7か国からの14のウイルスがノイラミニダーゼのH275Yのアミノ酸置換があり、オセルタミビルとペラミビルとに対する耐性を認めました。残りの二つのウイルスはアメリカ合衆国からのものでノイラミニダーゼのS247NかI223Mのアミノ酸置換があり、オセルタミビルに対する耐性を認めました。また、2017年9月から2018年2月までで、分離検出された1039のA香港(H3N2) 型インフルエンザウイルスを調べて、ノイラミニダーゼ阻害剤に耐性のあるウイルスは、1でした。韓国から報告されたこのウイルスはノイラミニダーゼのS331Rのアミノ酸置換があり、オセルタミビルに対する耐性を認めました。さらに、2017年9月から2018年2月までで、分離検出された437のB 型インフルエンザウイルスを調べて、ノイラミニダーゼ阻害剤に耐性のあるウイルスは、0でした。なお、2018-2019年冬季から日本などで使用が始まった、新しいタイプの抗インフルエンザウイルス剤のバロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ)に対する耐性ウイルスが、A(H1N1)pdm09 型ウイルス及びA香港(H3N2) 型ウイルスについて日本から報告されています。
日本国の国立感染症研究所・厚生労働省結核感染症課のまとめ(参考文献6)によれば、2018-2019年冬季に日本国内で分離・検出されたインフルエンザウイルスについて、A香港(H3N2)型が56%、A(H1N1)pdm09 型が38%、B型が6%であり、A香港(H3N2)型とA(H1N1)pdm09 型とが多かったです。B型では、B型ビクトリア系統とB型山形系統とでは、約9:1とB型ビクトリア系統が多かったです。オセルタミビル・ペラミビルに対する耐性株がA(H1N1)pdm09 型で0.9%検出されましたが、耐性株の地域への拡がりは観察されませんでした。バロキサビルに対する耐性変異を有するウイルス株がA(H1N1)pdm09 型で1.7%、A香港(H3N2)型で9.5%検出されましたが、耐性変異株の地域への拡がりは観察されませんでした。B 型では、耐性株は検出されませんでした。当・横浜市衛生研究所ホームページ「インフルエンザウイルスのインフルエンザ治療薬(抗ウイルス剤)に対する耐性について」もご参考にして下さい。
横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内153のインフルエンザ患者定点医療機関(小児科94定点および内科59定点:計153定点)により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2018-2019年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下のグラフ(図)に太い赤線で示すとおりです。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、2018年の第48週(11月26日から12月2日まで)に流行の目安となる定点あたりの報告数1.0人を超え、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。その後、2019年第4週(1月21日-1月27日)に66.9人と ピークとなりました。その後、徐々に減少し、2019年第18週(4月29日から5月5日まで)に定点あたり1.0人を下回り、横浜市における2018-2019年冬季のインフルエンザの流行は終息しました(参考文献2)。
横浜市における2018-2019冬季シーズンにおいては、インフルエンザの流行は、主に、AH1pdm09ウイルス及びAH3型ウイルスによるものでした。B型ウイルス(ビクトリア系統)による小さな流行もシーズン後半で見られました。横浜市衛生研究所の病原体定点におけるインフルエンザウイルスの分離・検出数の割合は、AH3型ウイルスが55.1%、AH1pdm09ウ イルスが37.6%、B型ウイルス(ビクトリア系統)が6.8%、B型ウイルス(山形系統)が0.5%でした(参考文献2)。
横浜市の抗インフルエンザ薬感受性サーベイランスでは、ノイラミニダーゼ阻害薬に対してAH1pdm09ウイルスでH275Y変異が2件、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬に対してAH1pdm09ウイルスでI38S変異が1件、AH3型ウイルスでI38T変異が7件確認されました。これら変異株の地域流行は確認されませんでした。なお、AH3型ウイルスでのI38T変異7件中1件は、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬未投与例であり、他の患者で出現した感受性低下株への感染が示唆されました(参考文献2)。
2019年11月-2020年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2019年3月21日に世界保健機関(WHO)が提示しています。これは、2018年9月-2019年2月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。さらに、四価ワクチンを考慮しての4番目のインフルエンザワクチン推奨株(B型)も世界保健機関(WHO)が提示しています。(4番目のインフルエンザワクチン推奨株[B型]については、2013年5月-10月の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株からWHOが提示するようになりました。)4つのインフルエンザワクチン推奨株について、2018年11月-2019年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株とでは、A(H1N1)pdm09 型とA香港(H3N2)型とで変更がありました(参考文献1,7)。
*A(H1N1)pdm09 型 : A/Brisbane(ブリスベン)/02/2018(H1N1)pdm09様株
*A香港型 : A/Kansas(カンザス)/14/2017 (H3N2)様株
*B型 : B/Colorado/06/2017(ビクトリア系統)様株
なお、三価ワクチンとしては、以上ですが、四価ワクチンとしては下記も追加されます。
*B型 : B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)様株
*A(H1N1)pdm09 型 : A/ブリスベン/02/2018(IVR-190)(H1N1)pdm09
*A香港型 : A/カンザス/14/2017(X-327)(H3N2)
*B型 : B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
*B型 : B/メリーランド(Maryland)/15/2016 (NYMC BX-69A)(ビクトリア系統)
2019(平成31・令和元)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記4株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています(参考文献5)。これは、2019年3月に世界保健機関(WHO)が提示した、2019年11月-2020年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。B/メリーランド(Maryland)/15/2016 (NYMC BX-69A)は、B/Colorado/06/2017(ビクトリア系統)様株です。2018(平成30)年度の日本のインフルエンザワクチンとでは、A(H1N1)pdm09 型とA香港型とで変更がありました。
なお、2014(平成26)年度まで、日本におけるインフルエンザワクチンは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだ3価ワクチンでした。2015(平成27)年度からは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型(山形系統)、B型(ビクトリア系統)の中から一つずつ選んだ4価ワクチンとなりました。
日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。
2019年10月25日初掲載
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