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2018(平成30)年度のインフルエンザワクチンについて

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月5日

2017(平成29)年度の北半球世界でのインフルエンザ流行状況

2017-2018年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2017年9月から2018年1月まででは、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。北米では、A香港(H3N2) 型優勢に11月から流行が開始しました。北米では、インフルエンザ様疾患による入院やインフルエンザによる死亡例が例年より多かったです。
 欧州では、12月に流行が南部・西部から始まり、北部・東部へと広がりました。B型山形系統が優勢でA型も見られました。A型で優勢な亜型については、国により違いが見られました。大部分の国は例年並みの流行でしたが、一部、大きな流行となった国もありました。
 東アジアでは、12月から、A(H1N1)pdm09 型及びB型山形系統により流行が始まりました。韓国では、A香港(H3N2)型、B型の流行でした。中国(北部・南部)及び日本では例年よりインフルエンザ様疾患の発生が多かったです。
 西アジアでは、10月から、A(H1N1)pdm09 型優勢に流行が始まりました。
 南アジアでは、A(H1N1)pdm09 型優勢の流行でした。
 東南アジアでは、9月から10月にかけて、カンボジア、ラオス、ベトナムでA香港(H3N2)型、タイ、インドネシアでA(H1N1)pdm09 型の流行がありました。シンガポールでは、1月に、主としてB型山形系統の流行がありました。
東アフリカでは、11月に、モザンビークでB型山形系統の流行があり、12月からはマダガスカルでA(H1N1)pdm09 型の流行がありました。西アフリカ・中央アフリカでは、10-12月に、主としてA(H1N1)pdm09 型の流行がありました。北アフリカでは、12月に、主としてA(H1N1)pdm09 型の流行がありました。
中央アメリカとカリブ海では、低調な発生でしたが、11月にはコスタリカでA香港(H3N2)型の発生が、また、他の国ではB型の発生がありました。南アメリカの熱帯では、9-10月にブラジルでB型の流行、コロンビアでA香港(H3N2)型の流行がありました。1月からはエクアドルでA(H1N1)pdm09 型の大きな流行がありました。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2017年9月から2018年2月までで、分離検出されたA(H1N1)pdm09 型ウイルスの大部分は、HA系統樹解析でクレード6Bのサブ-クレード6B.1に属しました。最近流行しているウイルスは、フェレット血清を使用した抗原解析では抗原的にはワクチンウイルスの卵培養のA/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09と区別できませんでした。当・横浜市衛生研究所で分離検出されたウイルスについても、HA遺伝子系統樹解析でサブ-クレード6B.1に属し、抗原性状もワクチンウイルスと同等でした。WHOによる2018-19冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株はサブ-クレード6B.1に属するA/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09様株で前年度と変更はありません。
2017年9月から2018年2月までで、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスの大部分は、HA系統樹解析でクレード3C.2aに属しました。中でもサブ-クレード3C.2a2が南北及び中央アメリカで優勢でした。アメリカ大陸ではサブ-クレード3C.3aも見られましたが少なかったです。最近流行しているウイルスは、3C.2aに属する細胞培養のA/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014、A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016、A/Michigan/15/2014に対するフェレット血清によりいずれもよく阻害されました。卵培養のこれらのウイルスの中では、A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016に対するフェレット血清により、最近流行しているウイルスは比較的によく阻害されました。当・横浜市衛生研究所で分離検出されたウイルスについても、HA遺伝子系統樹解析で全てクレード3C.2aに含まれました。このうち3C.2a1が34.5%(29株)、 3C.2a2が63.1%(53株)、3C.2a3が2.4%(2株)の割合でした。WHOによる2018-19冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株は、前年度のA/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014様株からA/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016様株へと変更されました。
B型ウイルスについては、ビクトリア系統と山形系統といずれとも流行が見られましたが、山形系統の方が優勢でした。山形系統のウイルスの大部分は、HA系統樹解析でクレード3に属しました。最近流行しているウイルスは、2017-2018年冬季の北半球世界の山形系統のB型ウイルスのワクチン推奨株であるB/Phuket/3073/2013の卵培養株や細胞培養株に対するフェレット血清によりにいずれもよく阻害されました。2018-2019年冬季の北半球世界の山形系統のB型ウイルスのワクチン推奨株は、前年度の2017-2018年冬季と同じB/Phuket/3073/2013様株とされました。
ビクトリア系統のウイルスは、HA系統樹解析でクレード1Aに属し抗原的にも遺伝子的にも2017-2018年冬季の北半球世界のビクトリア系統のB型ウイルスのワクチン推奨株であるB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008に近いものは多いものの、減っています。2016年末頃から 米国で流行し始めた変異株(2つのHAアミノ酸欠損株: 162番と163番のアミノ酸)が、日本・カナダ・中南米諸国・欧州・豪州でも検出されま した。抗原性状がこれまでの流行株と大きく異なることから、2018-2019年冬季シーズン以降の流行が懸念されます(参考文献2)。この変異株については、B/Colorado/06/2017に対する抗血清がよく阻害します。2018-2019年冬季の北半球世界のビクトリア系統のB型ウイルスのワクチン推奨株はB/Colorado/06/2017様株へと変更されました。

世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2017年9月から2018年2月までで、分離検出された5353のインフルエンザウイルスを調べて、ノイラミニダーゼ阻害剤に耐性のあるウイルスは、極めてまれでした。2018-2019年冬季から日本では、新しいタイプの抗インフルエンザウイルス剤のバロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ)の使用が始まりました。耐性ウイルスが出現しないか注目されます。

日本国の国立感染症研究所・厚生労働省結核感染症課のまとめによれば、2017-2018年冬季に日本国内で分離・検出されたインフルエンザウイルスについて、A(H1N1)pdm09 型が24%、A香港(H3N2)型が30%、B型が46%とB型が多かったです。B型では、B型ビクトリア系統とB型山形系統とでは、約1:30とB型山形系統が圧倒的に多かったです(参考文献6)。

横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内153のインフルエンザ患者定点医療機関(小児科94定点および内科59定点:計153定点)により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2017-2018年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下のグラフ(図1)に太い赤線で示すとおりです。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、2017年の第46週(11月13日から11月19日まで)に流行の目安となる定点あたりの報告数1.0人を超え、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。その後、2018年第5週(1月29日-2月4日)に67.58人と ピークとなりました。その後、徐々に減少し、2018年第15週(4月9日から4月15日まで)に定点あたり1.0人を下回り、横浜市における2017-2018年冬季のインフルエンザの流行は終息しました(参考文献2)。

横浜市のインフルエンザ患者発生.定点あたり週間報告数推移(2012-13冬季~2017-18冬季)
図1. 横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移(2012-13冬季から2017-18冬季まで)

横浜市における2017-2018冬季シーズンにおいては、インフルエンザの流行は、山形系統のB型ウイルスを主とし、シーズン前半はAH1pdm09ウイルス、および、シーズン後半はAH3型ウイルスの混合流行でした。病原体定点調査での 分離・検出数の割合は、B型ウイルス(山形系統)が43.7%、AH3型ウイルスが34.8%、AH1pdm09ウ イルスが21.1%、B型ウイルス(ビクトリア系統)が0.4%でした(参考文献2)。

WHOによる2018-19冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株

2018年11月-2019年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2018年2月22日に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2017年9月-2018年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。さらに、四価ワクチンを考慮しての4番目のインフルエンザワクチン推奨株(B型)も世界保健機関(WHO)が提示しています。(4番目のインフルエンザワクチン推奨株[B型]については、2013年5月-10月の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株(外部サイト)からWHOが提示するようになりました。)4つのインフルエンザワクチン推奨株について、2017年11月-2018年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株とでは、A(H3N2)香港型及びB型ビクトリア系統に変更がありました。

*A(H1N1)pdm09 型 : A/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09様株

*A香港型 : A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016 (H3N2)様株

*B型 : B/Colorado/06/2017(ビクトリア系統)様株

なお、三価ワクチンとしては、以上ですが、四価ワクチンとしては下記も追加されます。

*B型 : B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)様株

2018(平成30)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株

*A(H1N1)pdm09 型 : A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09

*A香港型 : A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2)

*B型 : B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)

*B型 : B/メリーランド(Maryland)/15/2016 (NYMC BX-69A)(ビクトリア系統)

2018(平成30)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記4株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています(参考文献5)。これは、2018年3月に世界保健機関(WHO)が提示した、2018年11月-2019年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09は、A/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09様株です。また、B/メリーランド(Maryland)/15/2016 (NYMC BX-69A)は、B/Colorado/06/2017(ビクトリア系統)様株です。
2014(平成26)年度まで、日本におけるインフルエンザワクチンは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだ3価ワクチンでした。2015(平成27)年度からは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型(山形系統)、B型(ビクトリア系統)の中から一つずつ選んだ4価ワクチンとなりました。2017(平成29)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株とでは、A(H3N2)香港型及びB型ビクトリア系統に変更がありました。

インフルエンザワクチンの接種法

日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。

(参考)各年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2000年度のインフルエンザワクチン

* 2001年度のインフルエンザワクチン

* 2002年度のインフルエンザワクチン

* 2003年度のインフルエンザワクチン

* 2004年度のインフルエンザワクチン

* 2005年度のインフルエンザワクチン

* 2006年度のインフルエンザワクチン

* 2007年度のインフルエンザワクチン

* 2008年度のインフルエンザワクチン

* 2009年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2010年度のインフルエンザワクチン

* 2011年度のインフルエンザワクチン

* 2012年度のインフルエンザワクチン

* 2013年度のインフルエンザワクチン

* 2014年度のインフルエンザワクチン

* 2015年度のインフルエンザワクチン

* 2016年度のインフルエンザワクチン

* 2017年度のインフルエンザワクチン

*  2018年度のインフルエンザワクチン

参考文献

  1. 1.WHO; Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2018-2019 northern hemisphere influenza season.(外部サイト) ; Weekly Epidemiological Record(WER). No.12, 23 March 2018, 93th year, p.133-141.
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  2. 横浜市衛生研究所微生物検査研究課ウイルス担当および感染症・疫学情報課、「横浜市における2017/2018シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析」、横浜市衛生研究所 「検査情報月報」2018年8月号、p.1-7.
  3. WHO; WHO recommendations on the composition of influenza virus vaccines(外部サイト).
  4. 厚生労働省 :第18回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会(外部サイト)(平成30年6月6日[水])配付資料(外部サイト).
    ・資料1 2018/19 シーズン向けインフルエンザワクチンの製造株について(外部サイト)[pdf:6,145KB].
  5. 厚生労働省 :インフルエンザ(総合ページ)(外部サイト).
    関連法令・通知・事務連絡(外部サイト).
    平成30年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(通知):2018年4月19日(外部サイト)[pdf:76KB]:厚生労働省健康局長.
  6. 国立感染症研究所・厚生労働省結核感染症課 :今冬のインフルエンザについて (2017/18シーズン)、(外部サイト)平成30年6月15日。

2018年12月21日初掲載

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