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2017(平成29)年度のインフルエンザワクチンについて

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月9日

2016(平成28)年度の北半球世界でのインフルエンザ流行状況

2016-2017年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、2016年9月から2017年2月まででは、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。特に、A香港(H3N2) 型の検出が多かったです。多くの国々で、A香港(H3N2) 型のインフルエンザの流行が見られました。A(H1N1)pdm09 型のインフルエンザの流行は大変低調でしたが、インド・コスタリカ・スリランカなど一部の国で地域的な流行が見られました。B型のインフルエンザの流行は低調で、アジア、西アフリカ、アメリカ合衆国で地域的な流行が見られました。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2016年9月から2017年2月までで、分離検出されたA(H1N1)pdm09 型ウイルスのほとんど全ては、HA系統樹解析でクレード6B(サブ-クレード6B.1及びサブ-クレード6B.2)に属しました。多くの国々でサブ-クレード6B.1が優勢となりましたが、アジア・オセアニアでは、サブ-クレード6B.2も見られました。最近流行しているウイルスは、フェレット血清を使用した抗原解析では抗原的にはワクチンウイルスのA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09やA/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09と区別できないものの、A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09のワクチン接種後の成人ヒト血清によっては殆ど阻害されませんでした。そのため、WHOは、2017-18冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を従来のA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株からサブ-クレード6B.1に属するA/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09様株へと変更しました。
2016年9月から2017年2月までで、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスの大部分は、HA系統樹解析でサブ-クレード3C.2a及びサブ-クレード3C.2a1に属しました。世界中の多くの地域で、サブ-クレード3C.2aが優勢でした。サブ-クレード3C.3aも見られましたが少なかったです。卵培養はウイルス抗原に変化を生じる可能性があることが最近のA香港(H3N2)型ウイルスで問題とされていますが、2015-2016年の北半球のA香港(H3N2)型ウイルスのワクチン推奨株であったA/Switzerland/9715293/2013(3C.3a)の卵培養株よりもA/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014などのクレード3C.2aに属するウイルスの卵培養株の方が最近の流行ウイルスに抗原的に近かったです。
2016年9月から2017年2月までで、分離検出されたB型ウイルスは、ビクトリア系統(the B/Victoria/2/87 lineage)も山形系統(the B/Yamagata/16/88 lineage)も見られました。B型のビクトリア系統と山形系統とが同時に流行が見られた国が多かったですが、B型ウイルスにおける両系統の割合は国によってまちまちでした。山形系統のウイルスの大部分は、HA系統樹解析でクレード3に属しました。2017-2018年冬季の北半球世界の山形系統のB型ウイルスのワクチン推奨株であるB/Phuket/3073/2013の卵培養株に抗原的に近かったです。ビクトリア系統のウイルスは、HA系統樹解析でクレード1Aに属し、抗原的にも遺伝子的にも、ワクチンウイルスのB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008あるいはB/Texas(テキサス)/2/2013に近かったです。

世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2016年9月から2017年2月までで、分離検出された4832のインフルエンザウイルスを調べて、耐性のあるウイルスは、まれでした。A(H1N1)pdm09 型については、693株中で、二つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。一つのウイルスは、オセルタミビルによる治療を受けた患者から、オーストラリアで分離されたものです。オセルタミビル(商品名:タミフル)とペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)とに耐性、ザナミビル(商品名:リレンザ)とラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)とに感受性があるインフルエンザウイルスでした。このA(H1N1)pdm09 型インフルエンザウイルスの耐性については、ノイラミニダーゼの275番アミノ酸のヒスチジンからチロシンへの変換(H275Y)によるものでした。もう一つのウイルスは、アメリカ合衆国で分離され、オセルタミビルに対する耐性を認めました。患者がノイラミニダーゼ阻害剤による治療を受けていたかどうかについては、不明です。このA(H1N1)pdm09 型インフルエンザウイルスの耐性については、ノイラミニダーゼの199番アミノ酸の変換(D199G)によるものでした。
A香港(H3N2)型については、すべてのウイルス(3032株)でノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。
B型については、1107株中、ビクトリア系統の二つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。一つのウイルスは、アメリカ合衆国で分離され、ノイラミニダーゼの200番アミノ酸の変換(A200T)が認められました。もう一つのウイルスは、マレーシアで分離され、ノイラミニダーゼの431番アミノ酸の変換(H431Y)が認められました。いずれのウイルスも、オセルタミビル(商品名:タミフル)・ザナミビル(商品名:リレンザ)・ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)・ラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)に耐性を示しました。いずれの患者も、ノイラミニダーゼ阻害剤による治療歴については不明です。
一方、A(H1N1)pdm09 型ウイルスとA香港(H3N2)型ウイルスとについて、一つのA香港(H3N2)型ウイルスを除いて、すべてのインフルエンザウイルスがM2阻害剤(アマンタジン[amantadine; 商品名:シンメトレル]及びrimantadine)に耐性があります。M2蛋白質の31番アミノ酸のセリンからアスパラギンへの変換(S31N)が関係しています。

日本国の国立感染症研究所のまとめによれば、2016-2017年冬季に日本国内で分離・検出されたインフルエンザウイルスについて、A(H1N1)pdm09 型が3%、A香港(H3N2)型が85%、B型ビクトリア系統が7%、B型山形系統が5%と、A香港(H3N2)型が多かったです(参考文献4)。

横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内153のインフルエンザ患者定点医療機関(小児科94定点および内科59定点:計153定点)により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2016-2017年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下のグラフ(図1)に太い赤線で示すとおりです。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、2016年の第46週(11月14日から11月20日まで)に流行の目安となる定点あたりの報告数1.0人を超え、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。その後、2017年第4週(1月23日-29日)に47.8人と ピークとなりました。その後、徐々に減少し、2017年第19週(5月8日から5月14日まで)に定点あたり1.0人を下回り、横浜市における2016-2017年冬季のインフルエンザの流行は終息しました(参考文献2)。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関からの報告では、インフルエンザ迅速診断キットでのA型・B型の判定も合わせて報告して頂いています。インフルエンザ迅速診断キットでのA型の報告は、患者発生報告数のピークと一致して2017年の第4週(1月23日-29日)がピークとなりました。B型の患者発生報告はA型に比較して少なかったですがA型よりも遅れて2017年の第11週(3月13日-19日)がピークとなりました。

【図1】2016-2017年冬季の横浜市内インフルエンザ週間患者発生数推移グラフ

横浜市における2016-2017冬季シーズンにおいては、インフルエンザの流行は、AH3型ウイルスを主とし、ビクトリア 系統および山形系統のB型ウイルス、AH1pdm09ウイルスの混合流行でした。病原体定点調査での 分離・検出数の割合は、A型ウイルス(AH1pdm09:1%、AH3型:75%)がB型ウイルス(ビクトリア系統:15%、山形系統:9%)より多かったです。A型ではAH3型ウイルスが 大部分であり、B型ではビクトリア系統のウイルスが優勢でした。
横浜市におけるA(H1N1)pdm09型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/カリフォルニア/07/2009から大きな変異はみられず、HA遺伝子系統樹解 析ではクレード6B.1に含まれる株が多数を占めました。クレード6B.1に含まれるA/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09様株が2017-18年冬季のワクチン株とされました。
横浜市におけるB型ウイルスの抗原性状は、山形系統・ビクトリア系統ともワクチン株とほぼ同等でした。HA系統樹解析では、山形系統はクレード3に、ビクトリア系統はクレード1Aに含まれました。
横浜市におけるA香港(H3N2)型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014 (H3N2)と低い反応性を示しました。 A香港(H3N2)型ウイルスはサブクレード3C.2aに全て含まれました。2017-18年冬季のワクチン株A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014 (H3N2)はサブクレード3C.2aに含まれます。
横浜市におけるインフルエンザの入院・重症例ではAH3ウイルスによる割合が78%(9例中7例)と多く、死亡例も見られました。
横浜市における抗インフルエンザ薬感受性サーベイランスでは、AH3ウイルス178株、B型ウイルス61株、AH1pdm09ウイルス3株について、ノイラミニダーゼ遺伝子のノイラミニダーゼ阻害剤耐性変異部位を調べました。遺伝子解析の結果、ノイラミニダーゼ阻害剤に対する耐性は認められませんでした(参考文献2)。

WHOによる2017-18冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株

2017年11月-2018年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2017年3月2日に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2016年9月-2017年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。さらに、四価ワクチンを考慮しての4番目のインフルエンザワクチン推奨株(B型)も世界保健機関(WHO)が提示しています。(4番目のインフルエンザワクチン推奨株[B型]については、2013年5月-10月の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株(外部サイト)からWHOが提示するようになりました。)4つのインフルエンザワクチン推奨株について、2016年11月-2017年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株とでは、A(H1N1)pdm09 型に変更がありました。

*A(H1N1)pdm09 型 : A/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09様株

*A香港型 : A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014 (H3N2)様株

*B型 : B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株

なお、三価ワクチンとしては、以上ですが、四価ワクチンとしては下記も追加されます。

*B型 : B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)様株

また、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008様株としては、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008の他に、B/Brisbane(ブリスベン)/33/2008、B/Bangladesh/5945/2009、B/HongKong/259/2010、B/Nevada/3/2011、B/Texas/2/2013、B/Brisbane(ブリスベン)/46/2015、B/Florida/78/2015があります。A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014 (H3N2)様株としては、A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014の他に、A/Hong Kong(ホンコン)/7127/2014、A/New Caledonia/71/2014、A/Victoria/673/2014、A/Norway/2178/2014、 A/Saitama(埼玉)/103/2014があります。

2017(平成29)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株

*A(H1N1)pdm09 型 : A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09

*A香港型 : A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014(X-263)(H3N2)

*B型 : B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)

*B型 : B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)

2017(平成29)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記4株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています(参考文献5)。これは、2017年3月2日に世界保健機関(WHO)が提示した、2017年11月-2018年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)は、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株です。また、A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09は、A/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)pdm09様株です。
2014(平成26)年度まで、日本におけるインフルエンザワクチンは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだ3価ワクチンでした。2015(平成27)年度からは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型(山形系統)、B型(ビクトリア系統)の中から一つずつ選んだ4価ワクチンとなりました。2016(平成28)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株とでは、A(H1N1)pdm09 型に変更がありました。

インフルエンザワクチンの接種法

日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。

(参考)各年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2000年度のインフルエンザワクチン

* 2001年度のインフルエンザワクチン

* 2002年度のインフルエンザワクチン

* 2003年度のインフルエンザワクチン

* 2004年度のインフルエンザワクチン

* 2005年度のインフルエンザワクチン

* 2006年度のインフルエンザワクチン

* 2007年度のインフルエンザワクチン

* 2008年度のインフルエンザワクチン

* 2009年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2010年度のインフルエンザワクチン

* 2011年度のインフルエンザワクチン

* 2012年度のインフルエンザワクチン

* 2013年度のインフルエンザワクチン

* 2014年度のインフルエンザワクチン

* 2015年度のインフルエンザワクチン

* 2016年度のインフルエンザワクチン

* 2017年度のインフルエンザワクチン

参考文献

  1. WHO; Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2017-2018 northern hemisphere influenza season(外部サイト). ; Weekly Epidemiological Record(WER). No.11, 17 March 2017, 92th year, p.117-128.
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  2. 横浜市衛生研究所微生物検査研究課ウイルス担当および感染症・疫学情報課、「横浜市における2016/2017シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析」、横浜市衛生研究所 「検査情報月報」2017年8月号、p.1-4.
  3. WHO; WHO recommendations on the composition of influenza virus vaccines(外部サイト).
  4. 厚生労働省 :第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会(外部サイト)(平成29年8月25日[金])配付資料(外部サイト).
    ・小田切 孝人:資料2 2016/17シーズンの国内外のインフルエンザ流行株(総まとめ)および次シーズンのワクチン株について(外部サイト)[pdf:4,940KB]:国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター.
  5. 厚生労働省:インフルエンザ(総合ページ)(外部サイト).
    関連法令・通知・事務連絡(外部サイト).
    平成29年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(通知):2017年7月12日(外部サイト)[pdf:40KB]:厚生労働省健康局長.

2017年10月18日初掲載

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