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2016(平成28)年度のインフルエンザワクチンについて

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月9日

2015(平成27)年度の北半球世界でのインフルエンザ流行状況

2015-2016年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、2015年9月から2016年1月まででは、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。特に、A(H1N1)pdm09 型の検出が多かったです。2015年11月下旬から2015年12月上旬に増加し始めるまでは、インフルエンザの発生は低調でした。
A(H1N1)pdm09 型は、多くの国々で流行が見られました。2015年12月には、モンゴル、オマーン、パキスタン、ノルウェー、エジプトで流行が見られました。2016年1月には、中国、日本、イスラエル、ヨルダン、トルコ、ジョージア、ギリシア、アイルランド、ラトビア、リトアニア、オランダ、ポルトガル、カナダで流行がみられました。
A香港(H3N2)型は、概して低調な発生でした。2016年1月には、トルコで流行がみられました。
B型も、概して低調な発生でした。2015年12月には、オマーンで流行がみられました。2016年1月には、カナダ、イスラエルで流行がみられました。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2015年9月から2016年1月までで、分離検出されたA(H1N1)pdm09 型ウイルスのほとんど全ては、ワクチンウイルスのA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09と抗原的に一致しているか、たいへん近いものでした。また、分離検出されたA(H1N1)pdm09 型ウイルスの大部分は、HA系統樹解析でクレード6B(サブ-クレード6B.1及びサブ-クレード6B.2)に属しました。多くの国々でサブ-クレード6B.1が優勢となりましたが、中国では、サブ-クレード6B.2が優勢でした。サブ-クレード6B.1及びサブ-クレード6B.2のウイルスは、今のところ、抗原的にはワクチンウイルスのA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09と区別できません。
2015年9月から2016年1月までで、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスは、HA系統樹解析でクレード3C.2及び3C.3に属しました。世界中の多くの地域で、サブ-クレード3C.2aが優勢となりました。サブ-クレード3C.3aも見られましたが少なかったです。また、サブ-クレード3C.3bも散発的に検出されました。卵培養はウイルス抗原に変化を生じる可能性があることが最近のA香港(H3N2)型ウイルスで問題とされていますが、2015-2016年の北半球のA香港(H3N2)型ウイルスのワクチン推奨株であるA/Switzerland/9715293/2013(3C.3a)の卵培養株よりもA/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014などのサブ-クレード3C.2aに属するウイルスの卵培養株の方が最近の流行ウイルスに抗原的に近かったです。
2015年9月から2016年1月までで、分離検出されたB型ウイルスは、ビクトリア系統(the B/Victoria/2/87 lineage)も山形系統(the B/Yamagata/16/88 lineage)も見られました。B型の流行が見られた国ではビクトリア系統が優勢でした。山形系統のウイルスの大部分は、HA系統樹解析でクレード3に属ました。2016年の南半球世界のB型ウイルスのワクチン推奨株であるB/Phuket/3073/2013の卵培養株に抗原的に近かったです。ビクトリア系統のウイルスの大部分は、抗原的にも遺伝子的にも、ワクチンウイルスのB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008あるいはB/Texas(テキサス)/2/2013に近かったです。

世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2015年9月から2016年1月までで、分離検出された5000以上のインフルエンザウイルスを調べて、耐性のあるウイルスは、まれでした。A(H1N1)pdm09 型については、五つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。いずれも、オセルタミビル(商品名:タミフル)とペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)とに耐性、ザナミビル(商品名:リレンザ)とラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)とに感受性があるインフルエンザウイルスでした。このA(H1N1)pdm09 型インフルエンザウイルスの耐性については、ノイラミニダーゼの275番アミノ酸のヒスチジンからチロシンへの変換(H275Y)によるものでした。五つのウイルスの内、二つのウイルスについては、オセルタミビル(商品名:タミフル)で治療の患者から分離検出されたものです。
A香港(H3N2)型について、一つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。この一つのウイルスでは、ノイラミニダーゼの二つのアミノ酸の変換(Q391K及びK249E)が認められました。オセルタミビル(商品名:タミフル)・ザナミビル(商品名:リレンザ)・ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)に耐性が認められました。
B型の山形系統については、六つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。六つのウイルスは、オセルタミビル(商品名:タミフル)・ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)に耐性がありました。六つのウイルスの内、三つのウイルスは、オセルタミビル(商品名:タミフル)・ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)に耐性があり、ノイラミニダーゼの197番アミノ酸の変換(D197N)が認められました。残りの三つのウイルスは、オセルタミビル(商品名:タミフル)に耐性、ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)に強度の耐性があり、ノイラミニダーゼの273番アミノ酸の変換(H273Y)が認められました。
B型のビクトリア系統については、一つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。この一つのウイルスは、ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)に耐性があり、ノイラミニダーゼの134番アミノ酸の変換(H134Y)が認められました。
一方、A(H1N1)pdm09 型とA香港(H3N2)型について、検査されたすべてのインフルエンザウイルスがM2阻害剤(アマンタジン[amantadine; 商品名:シンメトレル]及びrimantadine)に耐性があります。M2蛋白質の31番アミノ酸のセリンからアスパラギンへの変換(S31N)が関係しています。

横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内153のインフルエンザ患者定点医療機関(小児科94定点および内科59定点:計153定点)により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2015-2016年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下のグラフ(図1)に太い赤線で示すとおりです。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、2016年の第1週(1月4日から1月10日まで)に流行の目安となる定点あたりの報告数1.0人を超え、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。その後、急激に増加し、2016年第5週(2月1日から2月7日まで)に48.9人とピークとなりました。その後、徐々に減少し、2016年第18週(5月2日から5月8日まで)に定点あたり1.0人を下回り、横浜市における2015-2016年冬季のインフルエンザの流行は終息しました(参考文献2)。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関からの報告では、インフルエンザ迅速診断キットでのA型・B型の判定も合わせて報告して頂いています。インフルエンザ迅速診断キットでのA型の報告は、患者発生報告数のピークと一致して2016年の第5週(2月1日-7日)がピークとなりました。横浜市におけるインフルエンザの流行は前半はA型、後半はB型が中心となりました。

(図1)2015-2016年冬季の横浜市内インフルエンザ週間患者発生数推移グラフ

横浜市における2015-2016冬季シーズンにおいては、インフルエンザの流行は、AH1pdm09ウイルスとビクトリア系統および山形系統のB型ウイルス、AH3型ウイルスの混合流行でした。病原体定点調査での分離・検出数の割合は、A型ウイルス(AH1pdm09:47.2%、AH3型:4.5%)とB型ウイルス(ビクトリア系統:26.7%、山形系統:21.6%)がそれぞれ半数を占めました。A型ではAH1pdm09ウイルスが主流であり、B型ではビクトリア系統のウイルスがわずかに優勢でした。
横浜市におけるA(H1N1)pdm09型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/カリフォルニア/07/2009から大きな変異はみられず、HA遺伝子系統樹解析ではクレード6B.1に含まれる株が多数を占めました。
横浜市におけるB型ウイルスの抗原性状は、山形系統・ビクトリア系統ともワクチン株やレファレンス株とほぼ同等でした。HA系統樹解析では、山形系統はクレード3に、ビクトリア系統はクレード1Aに含まれました。
横浜市におけるA香港(H3N2)型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株と低い反応性を示しました。HA遺伝子系統樹解析ではワクチン株(サブクレード3C.3a)と異なるサブクレード3C.2aに全て含まれました。2016-17年冬季のワクチン株A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014 (H3N2)はサブクレード3C.2aに含まれます。
横浜市におけるインフルエンザの入院・重症例ではAH1pdm09ウイルスによる割合が多く、また山形系統のB型ウイルスによる入院・重症例もみられました。
横浜市における抗インフルエンザ薬感受性サーベイランスでは、AH1pdm09ウイルスの耐性株が2例、山形系統のB型ウイルスで低感受性株が1例分離されました。このうちオセルタミビルとペラミビルに対し薬剤感受性の低下がみられたのは、未治療の患者から分離したAH1pdm09ウイルスのみで、地域流行はみられませんでした。(参考文献2)。

WHOによる2016-17冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株

2016年11月-2017年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2016年2月25日に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2015年9月-2016年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。さらに、四価ワクチンを考慮しての4番目のインフルエンザワクチン推奨株(B型)も世界保健機関(WHO)が提示しています。(4番目のインフルエンザワクチン推奨株[B型]については、2013年5月-10月の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株(外部サイト)からWHOが提示するようになりました。)4つのインフルエンザワクチン推奨株について、2015年11月-2016年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株とでは、A香港型に変更がありました。また、B型について、3価ワクチンで含まれる株と、4価ワクチンで追加される株とが入れ替わりました。

*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株

*A香港型:A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014 (H3N2)様株

*B型:B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株

なお、三価ワクチンとしては、以上ですが、四価ワクチンとしては下記も追加されます。

*B型:B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)様株

また、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008様株としては、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008の他に、B/Bangladesh/5945/2009、B/HongKong/259/2010、B/Nevada/3/2011、B/Texas/2/2013があります。

2016(平成28)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株

*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09

*A香港型:A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014(X-263)(H3N2)

*B型:B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)

*B型:B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)

2016(平成28)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記4株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています(参考文献5)。これは、2016年2月に世界保健機関(WHO)が提示した、2016年11月-2017年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)は、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株です。
2014(平成26)年度まで、日本におけるインフルエンザワクチンは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだ3価ワクチンでした。2015(平成27)年度からは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型(山形系統)、B型(ビクトリア系統)の中から一つずつ選んだ4価ワクチンとなりました。

インフルエンザワクチンの接種法

日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。

(参考)各年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2000年度のインフルエンザワクチン

* 2001年度のインフルエンザワクチン

* 2002年度のインフルエンザワクチン

* 2003年度のインフルエンザワクチン

* 2004年度のインフルエンザワクチン

* 2005年度のインフルエンザワクチン

* 2006年度のインフルエンザワクチン

* 2007年度のインフルエンザワクチン

* 2008年度のインフルエンザワクチン

* 2009年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2010年度のインフルエンザワクチン

* 2011年度のインフルエンザワクチン

* 2012年度のインフルエンザワクチン

* 2013年度のインフルエンザワクチン

* 2014年度のインフルエンザワクチン

* 2015年度のインフルエンザワクチン

* 2016年度のインフルエンザワクチン

参考文献

  1. WHO; Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2016-2017 northern hemisphere influenza season(外部サイト). ; Weekly Epidemiological Record(WER). No.10, 11 March 2016, 91th year, p.121-132.
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  2. 横浜市衛生研究所微生物検査研究課ウイルス担当および感染症・疫学情報課、「横浜市における2015/2016シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析」、横浜市衛生研究所 「検査情報月報」2016年8月号、p.1-4.
  3. WHO; WHO recommendations on the composition of influenza virus vaccines(外部サイト).
  4. 厚生労働省 :第12回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会(外部サイト)(平成28年7月27日[木])配付資料(外部サイト).
    ・小田切 孝人:2016/17シーズンのインフルエンザワクチン株の選定理由について(外部サイト) [pdf:542KB]:国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター.
  5. 厚生労働省 :インフルエンザ(総合ページ)(外部サイト).
    関連法令・通知・事務連絡(外部サイト).
    平成28年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(通知):2016年6月7日(外部サイト) [pdf:75KB]:厚生労働省健康局長.

2016年10月28日初掲載

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電話:045-370-9237

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