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2015(平成27)年度のインフルエンザワクチンについて

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月9日

2014(平成26)年度の北半球世界でのインフルエンザ流行状況

2014-2015年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、2014年9月から2015年1月まででは、A(H1N1)pdm09型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。
A(H1N1)pdm09型は、アジア・アフリカ・アメリカ・ヨーロッパでは、概して低調な発生でした。オセアニアでは、2014年9-10月にオーストラリア・ニュージーランド・ニューカレドニア(フランス)で流行がみられました。アフリカでは、コンゴ民主共和国で2014年9-11月に流行が、チュニジアで2014年12-2015年1月に地域的な流行が見られました。アジアでは、バーレーン・カンボジア・中国・イランで2014年9-11月に地域的な流行が見られました。アメリカでは、パラグアイで2014年9-11月に、エルサルバドルで2014年10月に、地域的な流行が見られました。ヨーロッパでは、2015年1月に、クロアチア・イタリア・オランダ・ポルトガル・スロベニアで流行が見られました。
A香港(H3N2)型は、アフリカ・オセアニアでは、概して低調な発生でした。アメリカ・アジア・ヨーロッパでは流行が見られました。アジアでは、バーレーン・カンボジア・中国・香港・イラン・イスラエル・韓国・シンガポール・タイで、2014年11月-2015年1月に、地域的な流行が見られました。日本では2014年12月-2015年1月に流行が見られました。アメリカでは、中米・北米で2014年10月-2015年1月に流行が見られました。アメリカ合衆国で2014年11月-2015年1月に、カナダで2014年12月に流行が見られました。ヨーロッパでは、ベルギー・クロアチア・エストニア・フィンランド・フランス・ドイツ・ハンガリー・アイスランド・アイルランド・ラトビア・オランダ・ポルトガル・スペイン・スウェーデン・スイス・イギリスで2015年1月に流行が見られました。アフリカでは、エジプトで、2014年12月-2015年1月に流行が見られました。マダガスカルで2014年9月-2015年1月に、セネガルで2014年9月に、地域的な流行が見られました。
B型は、アメリカ・アフリカ・ヨーロッパ・オセアニアでは、概して低調な発生でした。アジアでは、2014年9月-2015年1月に、バーレーン・カンボジア・ジョージア・イラン・ネパール・ベトナムで、地域的な流行が見られました。アフリカでは、2014年11月-2015年1月にアルジェリアで、2014年9月-2015年1月にエジプトで、2014年11月-2015年1月にモロッコで、地域的な流行が見られました。2014年12月にマダガスカルで流行が見られました。ヨーロッパでは、2015年1月に、フランス・ポルトガルで流行が見られました。オセアニアでは、2014年11月にオーストラリアで、2014年9月にニュージーランドで、地域的な流行が見られました。中南米では、2014年9-10月にブラジル・ニカラグアで、2014年9-12月にパラグアイで、地域的な流行が見られました。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、2014年9月から2015年1月までで、分離検出されたA(H1N1)pdm09型ウイルスの大部分は、ワクチンウイルスのA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09と抗原的に一致しているか、たいへん近いものでした。また、分離検出されたA(H1N1)pdm09型ウイルスの大部分は、HA系統樹解析でクレード6Bに属しました。
2014年9月から2015年1月までで、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスは、HA系統樹解析でクレード3C.2あるいは3C.3に属しました。中国等を除き、世界中の多くの地域で、サブ-クレード3C.2aが優勢となりました。中国やアジアの国々、東欧やアフリカでサブ-クレード3C.3aが優勢となった国もあります。また、サブ-クレード3C.3bも依然見られました。抗原的に、A/Texas(テキサス)/50/2012(3c.1)と遠く、A/Switzerland/9715293/2013(3C.3a)の細胞培養株に近かったです。サブ-クレード3C.2aと3C.3aとは抗原的に近かったです。卵培養はウイルス抗原に変化を生じる可能性があることが最近のA香港(H3N2)型ウイルスで問題とされていますが、2015年の南半球のA香港(H3N2)型ウイルスのワクチン推奨株であるA/Switzerland/9715293/2013(3C.3a)の卵培養株は、大部分の流行ウイルスと抗原的に近かったです。
2014年9月から2015年1月までで、分離検出されたB型ウイルスは、ビクトリア系統も山形系統も見られました。B型の流行が見られた国では山形系統が優勢でした。山形系統のウイルスは、HA系統樹解析でクレード2あるいはクレード3に属しましたが、クレード3に属するウイルスが優勢でした。2015年の南半球世界のB型ウイルスのワクチン推奨株であるB/Phuket/3073/2013の卵培養株に抗原的に近かったです。ビクトリア系統のウイルスの大部分は、抗原的にも遺伝子的にも、ワクチンウイルスのB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008に近かったです。

世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、A(H1N1)pdm09型については、二つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。一つはオーストラリアからのウイルスで、もう一つはアメリカ合衆国からのウイルスでしたが、いずれも、オセルタミビル(商品名:タミフル)とペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)とに耐性、ザナミビル(商品名:リレンザ)とラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)とに感受性があるインフルエンザウイルスでした。このA(H1N1)pdm09型インフルエンザウイルスの耐性については、ノイラミニダーゼの275番アミノ酸のヒスチジンからチロシンへの変換(H275Y)によるものでした。
A香港(H3N2)型について、大部分がノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。中国からの三つのウイルスが、ザナミビル(商品名:リレンザ)に耐性、オセルタミビル(商品名:タミフル)に感受性を示しました。オーストラリアからの一つのウイルスが、ザナミビル(商品名:リレンザ)に耐性、オセルタミビル(商品名:タミフル)・ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)・ラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)に感受性を示しました。これらの四つのウイルスでは、ノイラミニダーゼの136番アミノ酸の変換(Q136K)が認められました。アメリカ合衆国からの一つのウイルスが、オセルタミビル(商品名:タミフル)・ザナミビル(商品名:リレンザ)・ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)・ラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)に耐性を示しました。このウイルスでは、ノイラミニダーゼの142番アミノ酸の変換(N142S)が認められました。
B型については、四つのウイルスを除いてノイラミニダーゼ阻害剤に感受性がありました。中国からの山形系統の三つのウイルスは、オセルタミビル(商品名:タミフル)・ザナミビル(商品名:リレンザ)に耐性があり、ノイラミニダーゼの197番アミノ酸の変換(D197N)が認められました。シンガポールからのビクトリア系統の一つのウイルスは、ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)に耐性、オセルタミビル(商品名:タミフル)・ザナミビル(商品名:リレンザ)・ラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)に感受性があり、ノイラミニダーゼの151番アミノ酸の変換(N151T)が認められました。
一方、A(H1N1)pdm09型とA香港(H3N2)型について、検査されたすべてのインフルエンザウイルスがM2阻害剤(アマンタジン[amantadine; 商品名:シンメトレル]及びrimantadine)に耐性があります。M2蛋白質の31番アミノ酸のセリンからアスパラギンへの変換(S31N)が関係しています。

横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内152のインフルエンザ患者定点医療機関(小児科94定点および内科59定点:計153定点)により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2014-2015年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下のグラフ(図1)に太い赤線で示すとおりです。2014年第47週(11月17日から11月23日まで)に1.00人以上となり、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、例年より早く、年内に急激に増加し本格的な流行となりました。2014年第52週(12月22日から12月28日まで)に35.8人と第一のピークとなりました。年末年始に減少するものの年が明けてから再び増加し、2015年第4週(1月19日から1月25日まで)に26.4人と第二のピークとなりました。その後、徐々に減少し、第14週(3月30日から4月5日まで)に定点あたり1.0人を下回り、横浜市における2014-2015年冬季のインフルエンザの流行は終息しました。横浜市における流行の主流はA香港(H3N2)型ウイルスであり、ワクチン株や前シーズン流行株とは抗原変異していました。シーズン後半には山形系統やビクトリア系統のB型ウイルスが分離・検出されましたが小規模な流行であり、前シーズン流行したA(H1N1)pdm09型ウイルスは散発で分離・検出されたのみでした(参考文献2)。

(図1)2014-2015年冬季の横浜市内インフルエンザ週間患者発生数推移グラフ

横浜市における2014-2015冬季シーズンにおいては、横浜市衛生研究所でのインフルエンザウイルス分離・検出数総数239件中、A香港(H3N2)型ウイルスは88.7%(212件)、山形系統B型ウイルスは8.8%(21件)、ビクトリア系統B型ウイルスは1.7%(4件)、A(H1N1)pdm09型ウイルスは0.8%(2件)を占めました。A香港(H3N2)型ウイルスによる流行が主体でした。山形系統B型ウイルスは2月以後の検出が多かったです。
横浜市におけるA香港(H3N2)型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株と低い反応性を示し、83%が抗原変異していました。HA遺伝子系統樹解析ではワクチン株と異なるサブクレード3C.2aに含まれました。
横浜市におけるB型ウイルスの抗原性状は、山形系統・ビクトリア系統ともワクチン株やレファレンス株とほぼ同等でした。HA系統樹解析では、山形系統はクレード3に、ビクトリア系統はクレード1Aに含まれました。
横浜市におけるA(H1N1)pdm09型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/カリフォルニア/07/2009と類似していました。HA系統樹解析では、海外で流行している株同様クレード6Bに含まれました。
横浜市における抗インフルエンザ薬感受性サーベイランスでは、全調査で分離したAH3型ウイルス205株、B型ウイルス25株、AH1pdm09ウイルス1株について、ノイラミニダーゼ阻害薬に対するNA遺伝子耐性変異部位を調べました。すべての分離株で耐性変異はみられませんでした(参考文献2)。

WHOによる2015-16冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株

2015年11月-2016年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2015年2月26日に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2014年9月-2015年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。さらに、四価ワクチンを考慮しての4番目のインフルエンザワクチン推奨株(B型)も世界保健機関(WHO)が提示しています。(4番目のインフルエンザワクチン推奨株[B型]については、2013年5月-10月の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株(外部サイト)からWHOが提示するようになりました。)4つのインフルエンザワクチン推奨株について、2014年11月-2015年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株とでは、A香港型とB型(山形系統)とに変更がありました。なお、2015年の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株とでは、変更はありません。

*A(H1N1)pdm09型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株

*A香港型:A/Switzerland(スイス)/9715293/2013(H3N2)様株

*B型:B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)様株

なお、三価ワクチンとしては、以上ですが、四価ワクチンとしては下記も追加されます。

*B型:B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株

また、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008様株としては、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008の他に、B/Bangladesh/5945/2009、B/HongKong/259/2010、B/Nevada/3/2011、B/Texas/2/2013があります。

2015(平成27)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株

*A(H1N1)pdm09型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09

*A香港型:A/Switzerland(スイス)/9715293/2013(NIB-88)(H3N2)

*B型:B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)

*B型:B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)

2015(平成27)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記4株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています(参考文献6)。これは、2015年2月に世界保健機関(WHO)が提示した、2015年11月-2016年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)は、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株です。
2014(平成26)年度まで、日本におけるインフルエンザワクチンは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだ3価ワクチンでした。2015(平成27)年度からは、インフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09型、A香港(H3N2)型、B型(山形系統)、B型(ビクトリア系統)の中から一つずつ選んだ4価ワクチンとなりました。

インフルエンザワクチンの接種法

日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。

(参考)各年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2000年度のインフルエンザワクチン

* 2001年度のインフルエンザワクチン

* 2002年度のインフルエンザワクチン

* 2003年度のインフルエンザワクチン

* 2004年度のインフルエンザワクチン

* 2005年度のインフルエンザワクチン

* 2006年度のインフルエンザワクチン

* 2007年度のインフルエンザワクチン

* 2008年度のインフルエンザワクチン

* 2009年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2010年度のインフルエンザワクチン

* 2011年度のインフルエンザワクチン

* 2012年度のインフルエンザワクチン

* 2013年度のインフルエンザワクチン

* 2014年度のインフルエンザワクチン

参考文献

  1. WHO; Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2015-2016 northern hemisphere influenza season. ; Weekly Epidemiological Record(WER). No.11, 13 March 2015, 90th year, p.97-108.
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  2. 横浜市衛生研究所微生物検査研究課ウイルス担当および感染症・疫学情報課、「横浜市における2014/2015シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析」、横浜市衛生研究所「検査情報月報」2015年8月号、p.1-4.
  3. WHO; WHO recommendations on the composition of influenza virus vaccines(外部サイト).
  4. 厚生労働省/平成27年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(外部サイト)[pdf:129KB].
    :第10回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会(外部サイト)(平成27年6月1日[月])配付資料(外部サイト).
  5. 国立感染症研究所/平成27年度インフルエンザワクチン株選定理由(外部サイト)[pdf:151KB]:ワクチン株選定検討会議.

2015年10月1日初掲載

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