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2014(平成26)年度のインフルエンザワクチンについて

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月9日

2013(平成25)年度の北半球世界でのインフルエンザ流行状況

2013-2014年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、2013年9月から2014年1月まででは、A(H1N1)pdm09型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。Aソ連(H1N1)型の発生の報告はなかったです。A(H1N1)pdm09型は、アフリカ・中南米では、概して低調な発生でした。ヨーロッパでは2014年1月に、ブルガリア・フランス・ギリシア・ポルトガル・スペイン・スイスで流行がみられました。2013年9-10月にオーストラリアで、12-1月に中国と北アメリカで、2014年1-2月に日本で流行が見られました。A香港(H3N2)型は、南北アメリカ・アフリカ・ヨーロッパでは、概して低調な発生でした。ヨーロッパでは2014年1月に、フランス・アイルランド・スペインで流行がみられました。2013年9-10月にオセアニアで、12-1月に中国で流行が見られました。B型は、南北アメリカ・アフリカ・ヨーロッパ・オセアニアでは、概して低調な発生でした。2013年9-10月にオーストラリアで、2013年9-12月にカンボジアで、11-1月に中国で、12-1月に日本・韓国で流行が見られました。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、分離検出されたA(H1N1)型ウイルスのすべてはA(H1N1)pdm09型ウイルスでした。分離検出されたA(H1N1)pdm09型ウイルスの大部分は、ワクチンウイルスのA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09と抗原的に一致しているか、たいへん近いものでした。また、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスの大部分は、抗原的に、A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)と近かったです。なお、分離検出されたB型ウイルスは、ビクトリア系統も山形系統も見られました。B型の流行が見られた国では山形系統が優勢でした。ビクトリア系統のウイルスの大部分は、抗原的にも遺伝子的にも、ワクチンウイルスのB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008に近かったです。最近の山形系統のウイルスの大部分は、抗原的に、山形系統のワクチンウイルスのB/Massachusetts(マサチュセッツ)/2/2012(clade 2)に近かったです。

世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、検査されたすべてのインフルエンザウイルスがザナミビル(商品名:リレンザ)に感受性があります。
一方、A(H1N1)pdm09型とA香港(H3N2)型について、検査されたすべてのインフルエンザウイルスがM2ブロッカー(アマンタジン[amantadine;商品名:シンメトレル]及びrimantadine)に耐性があります。M2蛋白質の31番アミノ酸のセリンからアスパラギンへの変換(S31N)が関係しています。
また、B型とA香港(H3N2)型について、検査されたほとんどのインフルエンザウイルスがオセルタミビル(商品名:タミフル)、ペラミビル(peramivir;商品名:ラピアクタ点滴用)、ザナミビル(商品名:リレンザ)に感受性があります。例外は、ノイラミニダーゼの119番アミノ酸の変換(E119V)によるオセルタミビル耐性のA香港(H3N2)型インフルエンザウイルス一例と、ペラミビル耐性の山形系統B型インフルエンザウイルス一例とです。
A(H1N1)pdm09型については、大部分がオセルタミビル(商品名:タミフル)に感受性がありますが、オセルタミビル耐性インフルエンザウイルスが中国、日本、米国で報告されています。北海道札幌市でオセルタミビル(商品名:タミフル)とペラミビル(peramivir;商品名:ラピアクタ点滴用)とに耐性、ザナミビル(商品名:リレンザ)とラニナミビル(laninamivir;商品名:イナビル吸入粉末剤)とに感受性があるインフルエンザウイルスが地域での患者発生を起こしました(参考文献4)。同様の耐性を示すウイルスが米国でも見つかっています。そのようなすべての場合について、A(H1N1)pdm09型インフルエンザウイルスの耐性については、ノイラミニダーゼの275番アミノ酸のヒスチジンからチロシンへの変換(H275Y)によるものです。大部分が抗インフルエンザウイルス薬の投与を受けていない患者から分離されています。
また、ラニナミビル(laninamivir;商品名:イナビル吸入粉末剤)に対する感受性が少数のインフルエンザウイルスについて検査されていますが、すべて感受性がありました。

なお、2014年4月に、日本国内の抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいて初めてH275Y耐性変異に加えてI223R耐性変異をもち、オセルタミビルおよびペラミビルに高い耐性を示し、さらにザナミビルおよびラニナミビルに対しても感受性が低下したA(H1N1)pdm09ウイルスが広島県で検出されたことが報告されました(参考文献5)。2009年にも同様のH275Y/I223R二重耐性変異ウイルスが検出された米国ペンシルバニア州の症例が報告されています。いずれの症例においても、抗インフルエンザウイルス薬の投与を受けている患者からウイルスは分離されています。また、他の人へのウイルスの伝播は確認されていません(参考文献5)。

横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内152のインフルエンザ患者定点医療機関(小児科92定点および内科60定点:計152定点)により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2013-2014年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下のグラフ(図1)に太い赤線で示すとおりです。年末の2013年第51週(12月23日から12月29日まで)に1.00人以上となり、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、年が明けてから、急激に増加し本格的な流行となりました。2014年第5週(2月3日から2月9日まで)には48.5人で一回目のピークとなりました。第7週(2月17日からの週)には26.9人まで減少しましたが、翌週は上昇に転じ3月第9週に30.7人と二回目のピークとなりました。その後、徐々に減少し、5月第18週(5月5日から5月11日まで)に定点あたり1.0人を下回り、横浜市における2013-2014年冬季のインフルエンザの流行は終息しました。

(図1)2013-2014年冬季の横浜市内インフルエンザ週間患者発生数推移グラフ

横浜市における2013-2014冬季シーズンにおいては、横浜市衛生研究所でのインフルエンザウイルス分離・検出数総数265件中、山形系統B型ウイルスは47.9%(127件)、A(H1N1)pdm09型ウイルスは29.1%(77件)、ビクトリア系統B型ウイルスは13.6%(36件)、A香港(H3N2)型ウイルスは9.4%(25件)を占めました。流行の前半ではA(H1N1)pdm09型ウイルス、後半では山形系統B型ウイルスが優勢でした。
A香港(H3N2)型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)と類似していました。HA系統樹解析ではワクチン株と同じサブクレード3Cに含まれ、その中でもサブクレード3C.3が多数を占めました。
B型ウイルスの抗原性状は、、山形系統・ビクトリア系統ともワクチン株やレファレンス株とほぼ同等でした。HA系統樹解析では、山形系統はクレード2とクレード3に、ビクトリア系統はクレード1Aに含まれました。NA系統樹解析では、山形系統とビクトリア系統のウイルスが交雑したリアソータント株が2株検出され、アミノ酸が1つ挿入されたビクトリア系統のウイルスが3株検出されました。
A(H1N1)pdm09型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/カリフォルニア/07/2009と類似していました。HA系統樹解析では、、これまでのクレード7からクレード6に移行しました。入院サーベイランスではAH1pdm09ウイルスの割合が多く、肺炎や脳症等重症例が目立ちました。
抗インフルエンザ薬感受性サーベイランスでは、AH1pdm09ウイルスで薬剤投与歴のある患者から耐性株(感受性株とのミックスを含む)が4株検出されましたが、耐性株による地域流行はみられませんでした。B型ウイルスでは、山形系統のウイルスでノイラミニダーゼ阻害薬4剤(タミフル、ラピアクタ、リレンザ、イナビル)に対して薬剤感受性が低下した株が5株検出されました(参考文献2)。

WHOによる2014-15冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株

2014年11月-2015年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2014年2月20日に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2013年9月-2014年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。さらに、四価ワクチンを考慮しての4番目のインフルエンザワクチン推奨株(B型)も世界保健機関(WHO)が提示しています。(4番目のインフルエンザワクチン推奨株[B型]については、2013年5月-10月の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株(外部サイト)からWHOが提示するようになりました。)4つのインフルエンザワクチン推奨株について、2013年11月-2014年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と大きな変化はありません。

*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株

*A香港型:A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)様株

*B型:B/Massachusetts(マサチュセッツ)/2/2012(山形系統)様株

なお、三価ワクチンとしては、以上ですが、四価ワクチンとしては下記も追加されます。

*B型:B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株

A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株としては、A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09、A/Christchurch(クライストチャーチ)/16/2010(H1N1)pdm09、A/Brisbane/10/2010(H1N1)pdm09があります。
A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)は、A/Victoria(ビクトリア)/361/2011(H3N2)の細胞培養株と抗原的に類似した株です。2013年11月-2014年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株はA/Victoria(ビクトリア)/361/2011(H3N2)の細胞培養株と抗原的に類似した株とされていましたが、A/Victoria(ビクトリア)/361/2011(H3N2)の卵での培養では抗原の変化が認められることがあるため、卵での培養でも細胞培養でも抗原がより安定なA/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)がワクチン株として推奨されています。A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)様株としては、A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)の他、A/New York(ニューヨーク)/39/2012、A/Almaty/2958/2013があります。
B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008様株としては、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008の他に、B/Bangladesh/5945/2009があります。

2014(平成26)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株

*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09

*A香港型:A/New York(ニューヨーク)/39/2012(X-233A)(H3N2)

*B型:B/Massachusetts(マサチュセッツ)/2/2012(BX-51B)

2014(平成26)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記3株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています(参考文献6)。これは、2014年2月に世界保健機関(WHO)が提示した、2014年11月-2015年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。A/New York(ニューヨーク)/39/2012(X-233A)(H3N2)は、A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)様株です。

インフルエンザワクチンの接種法

日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。

(参考)各年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2000年度のインフルエンザワクチン

* 2001年度のインフルエンザワクチン

* 2002年度のインフルエンザワクチン

* 2003年度のインフルエンザワクチン

* 2004年度のインフルエンザワクチン

* 2005年度のインフルエンザワクチン

* 2006年度のインフルエンザワクチン

* 2007年度のインフルエンザワクチン

* 2008年度のインフルエンザワクチン

* 2009年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2010年度のインフルエンザワクチン

* 2011年度のインフルエンザワクチン

* 2012年度のインフルエンザワクチン

* 2013年度のインフルエンザワクチン

参考文献

  1. WHO; Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2014-2015 northern hemisphere influenza season. ; Weekly Epidemiological Record(WER). No.10, 7 March 2014, 89th year, p.93-104.
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  2. 横浜市衛生研究所検査研究課微生物部門ウイルス担当および感染症・疫学情報課、「横浜市における2013/2014シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析」、横浜市衛生研究所「検査情報月報」2014年8月号、p.1-5.
  3. WHO; WHO recommendations on the composition of influenza virus vaccines(外部サイト).
  4. 国立感染症研究所.<速報>2013/14シーズンに札幌市で検出された抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルス(外部サイト). 病原微生物検出情報(IASR) 2014年2月号;Vol.35,No.2:p.42-43.
  5. 国立感染症研究所.<速報>日本国内で初めて検出されたH275Y/I223R二重耐性変異をもつノイラミニダーゼ阻害剤耐性インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルス(外部サイト). 病原微生物検出情報(IASR) 2014年7月号;Vol.35, No.7:p.176-177.
  6. 国立感染症研究所.<通知>平成26年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(外部サイト).病原微生物検出情報(IASR) 2014年6月号;Vol.35, No.6:p.157.

2014年11月6日初掲載

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