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2013(平成25)年度のインフルエンザワクチンについて

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月9日

2012(平成24)年度の北半球世界でのインフルエンザ流行状況

2012-2013年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、2012年9月から2013年1月まででは、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。Aソ連(H1N1)型の発生の報告はなかったです。A(H1N1)pdm09 型は、アフリカ(アルジェリア)・アジア・中南米・ヨーロッパの一部の国々を除き、概して低調な発生でした。A香港(H3N2)型が北アメリカの大部分(カナダ・アメリカ合衆国)・北アフリカの一部(アルジェリア)・ヨーロッパの一部・アジアの一部(韓国・日本)で優勢でした。B型は、発生した国が多く、優勢になった国(メキシコ・ヨーロッパの国々)も一部ありました。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、分離検出されたA(H1N1)型ウイルスのすべてはA(H1N1)pdm09 型ウイルスでした。A(H1N1)pdm09 型ウイルスは、ワクチンウイルスのA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09と抗原的に一致しているか、たいへん近いものでした。また、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスの大部分は、抗原的に、A/Victoria(ビクトリア)/361/2011(H3N2)の細胞培養株と近かったです。なお、分離検出されたB型ウイルスは、ビクトリア系統も山形系統も見られました。ビクトリア系統が優勢となった国(オーストラリア・中国)もありますが、多くの国で山形系統が増加傾向にあり優勢となりました。ビクトリア系統のウイルスの大部分は、抗原的にも遺伝子的にも、ワクチンウイルスのB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008に近かったです。最近の山形系統のウイルスの大部分は、抗原的に、山形系統のワクチンウイルスのB/Wisconsin(ウィスコンシン)/1/2010(clade 3)からは比較的に遠く、B/Massachusetts(マサチュセッツ)/2/2012(clade 2)に近かったです。

世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、検査されたすべてのインフルエンザウイルスがザナミビル(商品名:リレンザ)に感受性があります。
一方、A(H1N1)pdm09 型とA香港(H3N2)型について、検査されたほとんどすべてのインフルエンザウイルスがM2ブロッカー(アマンタジン[商品名:シンメトレル])に耐性があります。M2蛋白質の31番アミノ酸のセリンからアスパラギンへの変換(S31N)が関係しています。
また、B型とA香港(H3N2)型について、検査されたすべてのインフルエンザウイルスがオセルタミビル(商品名:タミフル)にもザナミビル(商品名:リレンザ)にも感受性があります。A(H1N1)pdm09 型についても、大部分がオセルタミビル(商品名:タミフル)に感受性があります。
A(H1N1)pdm09 型については、オセルタミビル耐性インフルエンザウイルスもWHOに報告されていますが、その大部分の患者は治療や予防のためのオセルタミビル(商品名:タミフル)の服薬と関連していました。しかし、オセルタミビル(商品名:タミフル)の服薬との関連がはっきりしない例も少数知られています。A(H1N1)pdm09 型インフルエンザウイルスのオセルタミビル耐性については、ノイラミニダーゼの275番アミノ酸のヒスチジンからチロシンへの変換(H275Y)によるものです。
なお、ペラミビル(peramivir; 商品名:ラピアクタ点滴用)とラニナミビル(laninamivir; 商品名:イナビル吸入粉末剤)とに対する感受性が少数のインフルエンザウイルスについて検査されていますが、すべて感受性がありました。

横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内150のインフルエンザ患者定点医療機関により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2012-2013年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下のグラフに太い赤線で示すとおりです。年末の2012年第51週(12月17日から12月23日まで)に1.00人以上となり、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、年が明けてから、急激に増加し本格的な流行となりました。2013年第4週(1月21日から2月27日まで)の41.5人をピークとして、その後は、減少が見られました。2013年第18週(4月29日から5月5日まで)以後は1.00人未満となり、横浜市における2012-2013年冬季のインフルエンザの流行は終息しました。

(図1)横浜市内インフルエンザ週間患者発生数推移グラフ

横浜市における2012-2013冬季シーズンのインフルエンザの流行は、A香港(H3N2)型ウイルスが主流であり、横浜市衛生研究所での分離・検出数の84%(180件)を占めました。B型ウイルスは15%(32件)の割合で、このうち山形系統が81%(26件)を占め優勢でした。A(H1N1)pdm09型ウイルスは2株分離されたのみで流行はみられませんでした。
A香港(H3N2)型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/ビクトリア/361/2011と類似していました。HA遺伝子系統樹解析ではワクチン株A/ビクトリア/361/2011と同じサブクレード3Cに含まれました。
B型ウイルスの抗原性状は、山形系統ではワクチン株B/ウィスコンシン/01/2010と類似していましたが、HA系統樹解析ではワクチン株B/ウィスコンシン/01/2010(クレード3)とは異なるクレード2に含まれました。一方、ビクトリア系統ではレファレンス株B/ブリスベン/60/2008と類似しており、HA系統樹解析でも昨シーズン流行株と同じクレードに含まれました。
A(H1N1)pdm09型ウイルスの抗原性状は、ワクチン株A/カリフォルニア/07/2009と類似していました。HA系統樹解析では、海外で流行している株同様クレード7に含まれました。
横浜市衛生研究所で分離したインフルエンザウイルスのうち、A(H1N1)pdm09型ウイルス2株、A香港(H3N2)型ウイルス180株、B型ウイルス32株について、ノイラミニダーゼ阻害薬に対するNA遺伝子耐性変異部位を調べました。AH3型ウイルスはM遺伝子においてはアマンタジン耐性変異(S31N)をもっていましたが、NA遺伝子では耐性変異はみられませんでした。また、A(H1N1)pdm09型ウイルスとB型ウイルスのNA遺伝子においても耐性変異はみられませんでした(参考文献2)。

WHOによる2013-14冬季の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株

2013年11月-2014年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2013年2月21日に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2012年9月-2013年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。さらに、四価ワクチンを考慮しての4番目のインフルエンザワクチン推奨株(B型)も世界保健機関(WHO)が提示しています。(4番目のインフルエンザワクチン推奨株[B型]については、2013年5月-10月の南半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株(外部サイト)からWHOが提示するようになりました。)A(H1N1)pdm09 型以外は、2012年11月-2013年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と変化があります。

*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株

*A香港型:A/Victoria(ビクトリア)/361/2011(H3N2)の細胞培養株と抗原的に類似した株

*B型:B/Massachusetts(マサチュセッツ)/2/2012(山形系統)様株

なお、三価ワクチンとしては、以上ですが、四価ワクチンとしては下記も追加されます。

*B型:B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)様株

A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株としては、A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09、A/Christchurch(クライストチャーチ)/16/2010(H1N1)pdm09があります。
A/Victoria(ビクトリア)/361/2011(H3N2)の細胞培養株と抗原的に類似した株としては、A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)があります。A/Victoria(ビクトリア)/361/2011(H3N2)の卵での培養では抗原の変化が認められることがあるため、卵での培養でも細胞培養でも抗原が安定なA/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)がワクチン株として推奨されます。
B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008様株としては、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008の他に、B/Brisbane(ブリスベン)/33/2008があります。

2013(平成25)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株

*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09

*A香港型:A/Texas(テキサス)/50/2012(H3N2)

*B型:B/Massachusetts(マサチュセッツ)/2/2012

2013(平成25)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記3株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています。これは、2013年2月に世界保健機関(WHO)が提示した、2013年11月-2014年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。

インフルエンザワクチンの接種法

日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。

(参考)各年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2000年度のインフルエンザワクチン

* 2001年度のインフルエンザワクチン

* 2002年度のインフルエンザワクチン

* 2003年度のインフルエンザワクチン

* 2004年度のインフルエンザワクチン

* 2005年度のインフルエンザワクチン

* 2006年度のインフルエンザワクチン

* 2007年度のインフルエンザワクチン

* 2008年度のインフルエンザワクチン

* 2009年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2010年度のインフルエンザワクチン

* 2011年度のインフルエンザワクチン

* 2012年度のインフルエンザワクチン

参考文献

  1. WHO; Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2013-2014 northern hemisphere influenza season. ; Weekly Epidemiological Record(WER). No.10, 8 March 2013, 88th year, p.101-114.
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  2. 横浜市衛生研究所検査研究課微生物部門ウイルス担当および感染症・疫学情報課、「横浜市における2012/2013シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析」、横浜市衛生研究所「検査情報月報」2013年8月号、p.1-4.
  3. 川上千春、小澤広規、百木智子、七種美和子、宇宿秀三、森田昌弘、水野哲宏、佐藤瑞紀、中尾祐次、勅使川原栄子、濱田奈々、大森正成、高橋秀明、椎葉桂子、岩田真美、豊澤隆弘、吉村幸浩、立川夏夫、浅賀知也、道下一朗;[速報]2012/13シーズン最初に分離されたA(H1N1)pdm09、A(H3N2)亜型およびB型インフルエンザウイルスの性状-横浜市(外部サイト); IASR(病原微生物検出情報月報:国立感染症研究所):2012年11月号, Vol. 33, No. 11, p. 300-302.
  4. WHO; WHO recommendations on the composition of influenza virus vaccines(外部サイト).

2013年11月8日初掲載

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電話:045-370-9237

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