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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。
最終更新日 2019年7月9日
2010-2011年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、2010年9月から2011年1月まででは、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型のインフルエンザウイルスによるものでした。Aソ連(H1N1)型の発生の報告は極めてまれでした。A(H1N1)pdm09 型が、アジア・ヨーロッパで優勢、A香港(H3N2)型がアメリカ大陸で優勢でした。B型は、他の型と一緒に発生している国が多く、優勢となった国もいくつかありました。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、分離検出されたA(H1N1)pdm09 型ウイルスは、ワクチンウイルスのA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09と抗原的に一致しています。また、分離検出されたA香港(H3N2)型ウイルスは、ワクチンウイルスのA/Perth(パース)/16/2009(H3N2)と抗原的に同様でした。なお、分離検出されたB型ウイルスは、世界的にはビクトリア系統が優勢でした。ビクトリア系統のウイルスの大部分は、ワクチンウイルスのB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008にたいへん近かったです。
横浜市におけるインフルエンザ患者の発生状況については、市内150のインフルエンザ患者定点医療機関により把握されています。インフルエンザの流行期の目安は、インフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数が1.00人以上とされています。2010-2011年冬季について、横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数の推移は、下の図1のグラフに赤線で示すとおりです。2010年第50週(12月13日から12月19日まで)以後は1.00人以上となり、横浜市は、インフルエンザの流行期に入りました。横浜市におけるインフルエンザ患者発生の定点医療機関あたり週間報告数は、年が明けてから増加が続き本格的な流行となりました。2011年第4週(1月24日から1月30日まで)の40.0人をピークとして、減少が見られました。2011年第10週(3月7日から3月13日まで)に18.8人と一時的に増加して小さなピークを作った後は再び減少しました。2011年第18週(5月2日から5月8日まで)には1.00人未満となり、横浜市における2010-2011年冬季のインフルエンザの流行は終息しました。
なお、2010年6月から2011年5月までの12か月間に横浜市内の病原体定点医療機関(小児科9定点および内科3定点)から横浜市衛生研究所に573検体(鼻咽頭ぬぐい液497検体、便42検体、うがい液3検体、気管支吸引液5検体、その他4検体、不明22検体)が搬入され、インフルエンザウイルスとしては、A(H1)pdm09 型が76株、A(H3)型が57株、B型が59株、分離・検出されました(参考文献2)。この内、A(H1)pdm09 型とA(H3)型との重複感染が6例で見られました。
A(H1)pdm09 型については、2010年11月から分離され始め、2011年1月下旬をピークとして、2011年2月まで分離検出が続きました。A(H3)型については、2010年9月から2011年5月まで長期にわたり分離検出が続き、ピークはなだらかで1-2月でした。B型については、ビクトリア系統の株が大部分で、ビクトリア系統の株が2011年1月下旬から2011年5月まで分離検出が続き、ビークは2011年2月下旬でした。
横浜市衛生研究所において、分離株のHA抗原性状を日本のワクチン株と赤血球凝集抑制試験(HI)で比較しました(参考文献2)。A(H1)pdm09 型の分離株のHA抗原性状は、91.3%が日本のワクチン株のA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09と類似していました(HI価で4倍以下の差)。A(H3)型の分離株のHA抗原性状は、90.8%が日本のワクチン株のA/Victoria(ビクトリア)/210/2009(H3N2)と類似していました(HI価で4倍以下の差)。B型のビクトリア系統の分離株のHA抗原性状は、77.1%が日本のワクチン株のB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008と類似していました(HI価で4倍以下の差)。
世界保健機関(WHO)のまとめ(参考文献1)によれば、ほとんどすべてのインフルエンザウイルスがザナミビル(商品名:リレンザ)に感受性があります。
一方、A(H1N1)pdm09 型とA香港(H3N2)型について、検査されたすべてのインフルエンザウイルスがM2ブロッカー(アマンタジン[商品名:シンメトレル])に耐性があります。M2蛋白質の31番アミノ酸のセリンからアスパラギンへの変換(S31N)が関係しています。
また、B型とA香港(H3N2)型について、ほとんどすべてのインフルエンザウイルスがオセルタミビル(商品名:タミフル)に感受性があります。
なお、A(H1N1)pdm09 型について、オセルタミビル耐性インフルエンザウイルスがWHOに報告されていますが、その大部分の患者はオセルタミビル(商品名:タミフル)を服薬していました。しかし、日本や英国などで、オセルタミビル(商品名:タミフル)の服薬との関係がはっきりしない例が少数知られています。A(H1N1)pdm09 型インフルエンザウイルスのオセルタミビル耐性については、ノイラミニダーゼの275番アミノ酸のヒスチジンからチロシンへの変換(H275Y)によるものです。
2011-2012年北半球インフルエンザシーズンにおいても新型インフルエンザ(2009H1N1)ウイルス改めA(H1N1)pdm09 型ウイルスが世界の人々の脅威となるでしょう。WHOが推奨したワクチンウイルスとこれまで流行してきた新型インフルエンザ(2009H1N1)ウイルス改めA(H1N1)pdm09 型ウイルスとは同様のものです。これまで推奨されてきたA/California/7/2009様ウイルスが2011-2012年北半球インフルエンザシーズンにおいても引き続きワクチンウイルスとして推奨されます。
季節性A-H1N1(ソ連型)ウイルスについては、2010-2011年冬季もほとんど流行しませんでした。2011-2012年冬季も流行の可能性は低いです。2011-2012年北半球ワクチンの成分としてWHOは推奨しません。
季節性A-H3N2(香港型)ウイルスについては、全世界的に流行が見られました。すべてはM2ブロッカー(アマンタジン[商品名:シンメトレル])に耐性あり。ほとんどすべてはノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビル[商品名:タミフル]等)に感受性あり。A/Perth/16/2009 様株を引き続き2011-2012年北半球ワクチンにWHOは推奨します。
季節性B型ウイルスについては、引き続き、山形系統よりもビクトリア系統の流行が見られました。ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビル等)への耐性は認められません。ビクトリア系統のB/Brisbane/60/2008の推奨をWHOは続けます。
2011年11月-2012年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2011年2月に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2010年9月-2011年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A(H1N1)pdm09 型、A香港(H3N2)型、B型の中から一つずつ選んだものです。いずれの型とも、2010年11月-2011年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と同じ株が、推奨されています。
*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09様株
*A香港型:A/Perth(パース)/16/2009(H3N2)様株
*B型:B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008様株
A/Perth(パース)/16/2009(H3N2)様株としては、A/Perth(パース)/16/2009(H3N2)、A/Wisconsin(ウィスコンシン)/15/2009(H3N2)の他に、日本のインフルエンザワクチンの製造に使われているA/Victoria(ビクトリア)/210/2009(H3N2)があります。
B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008様株としては、B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008の他に、B/Brisbane(ブリスベン)/33/2008があります。
*A(H1N1)pdm09 型:A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09
*A香港型:A/Victoria(ビクトリア)/210/2009(H3N2)
*B型:B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008
2011(平成23)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記3株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています。これは、2011年2月に世界保健機関(WHO)が提示した、2011年11月-2012年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。また、2010(平成22)年度の日本のインフルエンザワクチンとも一致しています。
日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、6ヶ月以上3歳未満のものには0.25mLを皮下に、3歳以上13歳未満のものには0.5mLを皮下におよそ2~4週間の間隔をおいて2回注射します。13歳以上のものについては、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。
2010(平成22)年度と比較して、13歳以上のものについては、不変ですが、13歳未満のものについて、接種量および接種間隔が改訂されました。13歳未満のものについて、接種量が増加し、接種間隔が「約1-4週間」から「およそ2~4週間」となりました。
2011年11月17日初掲載
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