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2008(平成20)年度のインフルエンザワクチンについて

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月9日

2007(平成19)年度の北半球世界でのインフルエンザ流行状況

2007-2008年冬季について、北半球世界におけるインフルエンザの流行は、2007年9月から2008年1月まででは、例年と比較して低調でした。A香港(H3N2)型インフルエンザは、多くの国で発生が見られ、アメリカ合衆国で流行が見られました。Aソ連(H1N1)型インフルエンザについては、多くの国で発生が多く、アメリカ合衆国・カナダ・日本・ヨーロッパで流行が見られました。B型インフルエンザについては、多くの国で発生が少なく、アメリカ合衆国・中国・ハンガリーで流行が見られました。
2007-2008年冬季について、日本では、Aソ連(H1N1)型を主としたインフルエンザの流行が、例年より早く2007年11月から始まり、2008年1月末をピークとして見られました。ピークとなった2008年第5週の定点医療機関当たり週間インフルエンザ患者発生報告数(17.62人)は過去10シーズンの各シーズンにおける週間最多報告数(最大ピーク)と比較しても2000-2001年冬季に次いで低い値であり、例年と比較すれば低調な流行でした。
2007-2008年冬季について、横浜市でも、Aソ連(H1N1)型を主としたインフルエンザの流行が、例年より早く2007年11月から始まり、2007年12月と2008年1月末とを二つのピークとして見られました。定点医療機関当たり週間インフルエンザ患者発生報告数のピークは、2007年第52週に8.45人、2008年第5週に8.19人であり、例年と比較すれば低調な流行でした。

2007-2008年冬季に海外で見られたAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスは、HA抗原については、抗原的に、2007-2008年冬季のワクチン株であったA/Solomon islands(ソロモン諸島)/3/2006(H1N1)株に近いものが多く見られました。しかし、抗原的に、A/Solomon islands(ソロモン諸島)/3/2006(H1N1)株から遠く、A/Brisbane(ブリスベン)/59/2007(H1N1)株により近いウイルスの割合が増加してきました。横浜市衛生研究所でも、分離されたAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスは、HA抗原については抗原的に、A/Solomon islands(ソロモン諸島)/3/2006(H1N1)から変異したウイルスの割合が約7割と多かったです。シーズン後半ではA/Brisbane(ブリスベン)/59/2007(H1N1)に近いウイルスが増えて来ました。
なお、Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスでは、抗A型インフルエンザウイルス剤であるアマンタジン(商品名:シンメトレル)・リマンタジンが有効でない耐性ウイルスが見られましたが、その割合は国によりまちまちでした。横浜市では、アマンタジン耐性が約7割に増加しました。ヨーロッパなどで、オセルタミビル(商品名:タミフル)耐性が多く見られた国がありましたが、世界保健機関(WHO)のまとめによれば、各国で分離されたAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスにおけるオセルタミビル(タミフル)耐性の割合は0-67%と国によりまちまちでした。Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスにおけるオセルタミビル(商品名:タミフル)耐性が多く見られた国は、ノルウェー(67%)、ベルギー(53%)、フランス(47%)、ロシア(45%)、ウクライナ(34%)などで、日本におけるオセルタミビル(タミフル)耐性の割合は3%(44株/1652株)でした(参考文献4)。下のグラフのとおりです。横浜市では、シーズン後半で増えて来たA/Brisbane(ブリスベン)/59/2007(H1N1)に近いウイルスについて約2割にオセルタミビル(商品名:タミフル)耐性が見られたことから、今後の動向に注意が必要です。なお、横浜市では、オセルタミビル(商品名:タミフル)耐性株による日本初の集団かぜ発生事例がありました。また、国立感染症研究所等による耐性株緊急サーベイランスによれば、日本において、総解析数1,360株中22株のオセルタミビル(商品名:タミフル)耐性株が同定され、耐性株の発生頻度は1.6%でした(参考文献3)。分離されたほとんどの国内耐性株は、A/Brisbane/59/2007に抗原的に近く、ザナミビル(商品名:リレンザ)に対しては感受性があり、ザナミビル(商品名:リレンザ)による治療は有効です。

図1 各国で分離されたAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスにおけるオセルタミビル耐性の割合

北半球世界でインフルエンザの流行がほとんど見られない夏季は、一方で、南半球世界にとって冬季のインフルエンザ・シーズンです。この南半球世界の2008年のインフルエンザ・シーズンにおいても、Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスにおけるオセルタミビル(タミフル)耐性が多く見られた国があります。世界保健機関(WHO)の2008年9月22日現在のまとめによると、下のグラフのとおりです。Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスにおけるオセルタミビル(商品名:タミフル)耐性が多く見られた国は、南アフリカ(100%)、オーストラリア(96%)、フィリピン(91%)、ロシア(45%)、アルゼンチン(44%)などです(参考文献4)。

図2 各国で分離されたAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスにおけるオセルタミビル耐性の割合

2007-2008年冬季に海外で見られたA香港(H3N2)型インフルエンザウイルスは、2007-2008年冬季のワクチン株であったA/Wisconsin/67/2005(H3N2)株に抗原的に近い株も見られました。しかし、A/Brisbane/10/2007に抗原的に近い株が大部分でした。横浜市で分離されたA香港型(H3N2)インフルエンザウイルスについても、2007-2008年冬季のワクチン株であったA/Wisconsin/67/2005(H3N2)様株であるA/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)に抗原的に近いものよりも、A/Brisbane/10/2007に抗原的に近い株が多かったです。
なお、A香港(H3N2)型インフルエンザウイルスでは、抗A型インフルエンザウイルス剤であるアマンタジン・リマンタジンが有効でない耐性ウイルスが世界的に高率に見られました。横浜市でも、アマンタジン耐性が高率(100%;14株中14株)に見られました。A香港(H3N2)型インフルエンザウイルスでは、オセルタミビル(タミフル)耐性は世界的にまれであり、横浜市では0%(14株中0株)でした。

2007-2008年冬季に海外で見られたB型インフルエンザウイルスは、大部分は、B/Florida/4/2006株(山形系統)に抗原的に近いものでした。横浜市で分離されたB型インフルエンザウイルスについても、2007-2008年冬季のワクチン株であったB/Malaysia(マレーシア)/2506/2004株(Victoria系統)からは抗原的に遠く、B/Florida/4/2006株(山形系統)に抗原的に近いものでした。B型インフルエンザウイルスでは、オセルタミビル(タミフル)耐性は世界的にまれです。

抗インフルエンザウイルス剤に対する耐性株の出現や広がりは、耐性株に対しても有効なインフルエンザワクチンによるインフルエンザ予防の重要性を増すことになります。

2008年11月-2009年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株を2008年2月に世界保健機関(WHO)が提示しています(外部サイト)。これは、2007年10月-2008年1月の北半球世界でのインフルエンザの流行で多く流行したインフルエンザウイルスに抗原的に一番近いインフルエンザワクチンウイルスの株を、A香港(H3N2)型、Aソ連(H1N1)型、B型の中から一つずつ選んだものです。2008-2009年冬季のWHO(世界保健機関)による北半球世界におけるインフルエンザワクチンの推奨株は、A香港(H3N2)型、Aソ連(H1N1)型、B型について、2007-2008年冬季のWHO(世界保健機関)による北半球世界におけるインフルエンザワクチンの推奨株といずれも異なるものとなりました。A香港(H3N2)型は、A/Brisbane/10/2007 (H3N2)様株が推奨されています。なお、A/Uruguay/716/2007 は、A/Brisbane/10/2007 (H3N2)様株です。Aソ連(H1N1)型は、A/Brisbane/59/2007 (H1N1)様株が推奨されています。B型は、B/Florida/4/2006様株が推奨されています。なお、B/Brisbane/3/2007 は、B/Florida/4/2006様株です。

2008(平成20)年度の日本のインフルエンザワクチン製造株

*Aソ連型:A/Brisbane(ブリスベン)/59/2007(H1N1)

*A香港型:A/Uruguay(ウルグアイ)/716/2007(H3N2)

*B型:B/Florida(フロリダ)/4/2006

2008(平成20)年度の日本のインフルエンザワクチンは、上記3株のHA蛋白を含むもの(インフルエンザHAワクチン)となっています。これは、2008年2月に世界保健機関(WHO)が提示した、2008年11月-2009年4月の北半球世界でのインフルエンザワクチン推奨株と一致しています。また、2008(平成20)年度の日本のインフルエンザワクチンは、Aソ連(H1N1)型、A香港型(H3N2)、B型について、2007(平成19)年度といずれも異なる株が選定されています。

インフルエンザワクチンの接種法

小さいこどもたちを除けば、大部分の人たちは、今までに生涯の中で、Aソ連型(H1N1)インフルエンザ、A香港型(H3N2)インフルエンザ、B型インフルエンザに感染したことがあると考えられます。以前に感染したことがあれば、弱い基礎的な免疫を持っていると考えられ、インフルエンザワクチンの1回の接種によりその冬を持ちこたえる免疫を獲得すると考えられます。以前にインフルエンザに対する免疫を獲得したことがない、小さなこどもたちについては、短くとも4週間以上の間隔を空けてのインフルエンザワクチンの2回の接種をするべきだと、世界保健機関(WHO)は、勧奨しています。

日本におけるインフルエンザワクチンの接種法は、0.5mlを皮下に、1回または約1-4週間の間隔を空けて2回注射します。ただし、6-12歳は0.3ml、1-5歳は0.2ml、0歳は0.1mlを皮下に約1-4週間の間隔を空けて2回注射します。なお、2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいとされています。

(参考)各年度のインフルエンザワクチン

* 2000年度のインフルエンザワクチン

* 2001年度のインフルエンザワクチン

* 2002年度のインフルエンザワクチン

* 2003年度のインフルエンザワクチン

* 2004年度のインフルエンザワクチン

* 2005年度のインフルエンザワクチン

* 2006年度のインフルエンザワクチン

* 2007年度のインフルエンザワクチン

* 2008年度のインフルエンザワクチン

* 2009年度の季節性インフルエンザワクチン

* 2010年度のインフルエンザワクチン

参考文献

  1. WHO; Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2008-2009 influenza season. ; Weekly Epidemiological Record. No.9, 29 February 2008, 83nd year, p.81-87.
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  2. 川上千春・他、「横浜市における2007/2008シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析」、横浜市衛生研究所「検査情報月報」2008年8月号、p.1-5.
  3. 国立感染症研究所ウイルス第3部第1室 インフルエンザ薬剤耐性株サーベイランスチーム、製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部ゲノム解析部門・インフルエンザウイルス遺伝子解析チーム、全国地方衛生研究所;インフルエンザA/H1N1オセルタミビル耐性株H275Yの国内発生状況 [第1報];IASR 2008年6月号、Vol.29p.155-159.
    http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/340/pr3403.html(外部サイト)
  4. WHO;Influenza A(H1N1) virus resistance to oseltamivir - 2008 influenza season, southern hemisphere;22 September 2008.
    WHO---Influenza A(H1N1) virus resistance to oseltamivir(http://www.who.int/csr/disease/influenza/h1n1_table/en/index.html)(外部サイト)

2008年10月14日掲載

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