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最終更新日 2019年7月29日
A型インフルエンザウイルスの亜型(subtype)については、A型インフルエンザウイルスのH抗原とN抗原との組み合わせによって決められます。近年、アメリカ合衆国で人間への感染が見られた豚由来変異型インフルエンザウイルス(A型)の亜型について、下の表にまとめました。
近年、アメリカ合衆国で豚でよく見られるA型インフルエンザウイルスの亜型は、H1N1型、H3N2型、H1N2型です。いずれの亜型のA型インフルエンザウイルスとも、豚インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、人インフルエンザウイルスの三つのインフルエンザウイルスから由来する遺伝子を持っている三種遺伝子再集合(triple reassortant: tr)豚インフルエンザウイルスとされます。これらの豚インフルエンザウイルスの亜型は、trH1N1型、trH3N2型、trH1N2型と表記されることもあります。これらが人から検出された場合などに、豚由来(S-O : swine-origin)であることも併記して、S-OtrH1N1型、S-OtrH3N2型、S-OtrH1N2型と表記されることもあります。
豚インフルエンザに罹患している豚との接触により、人が豚インフルエンザに罹患した例がアメリカ合衆国では報告されています。そのような場合に人から分離されたインフルエンザウイルスを豚由来変異型インフルエンザウイルス(swine origin variant influenza virus)と呼びます。これらのA型インフルエンザウイルスの亜型は、H1N1v型、H3N2v型、H1N2v型と表記されることもあります(v: variant: 変異型)。
中には、感染した人たちで相互の接触は確認されるものの、豚との接触が確認されない、人から人への感染が起こったと考えられる例も報告されています(参考文献4)。2011年11月、アメリカ合衆国アイオワ州で、インフルエンザの様な症状を呈した小児の患者三人から、S-OtrH3N2型A型インフルエンザウイルス(H3N2v型)が検出されました。三人は、一回のこどもの小さな集まりでの相互の接触は確認されるものの、豚との接触は確認されず、S-OtrH3N2型A型インフルエンザウイルス(H3N2v型)の人から人への感染が起こったと考えられました。しかし、この小児の患者三人の周囲の人たちからは、S-OtrH3N2型A型インフルエンザウイルス(H3N2v型)は検出されず、人から人への感染の連続は確認されませんでした。
2011年7-11月、アメリカ合衆国では、10人でS-OtrH3N2型A型インフルエンザウイルス(H3N2v型)の人への感染が確認されています。検出されたウイルスはいずれも2009パンデミックA(H1N1)型インフルエンザウイルスのM(: matrix)遺伝子を持っていました。10人の内、上記の小児の患者三人を除く七人については、本人あるいは本人に身近な人に豚との接触を認めました。
2011年には、アメリカ合衆国では、結局、患者12人から、A(H3N2v)型インフルエンザウイルスが検出されました。2012年には、アメリカ合衆国では、患者309人から、H3N2v型A型インフルエンザウイルスが検出されました(インジアナ州138人、オハイオ州107人、ウィスコンシン州20人等)。内、2012年7-9月の発生が306人で大部分でした。2012年7-12月に、16人が入院し、一人が死亡しました。
A(H3N2v)型インフルエンザウイルスについては、最初、2010年に、アメリカ合衆国で、豚に認められました。患者の大部分は豚との接触があった人々です。特に夏から初秋にかけて開かれる農業関係の催しでの豚との接触が多かったです。人から人への感染の可能性がある事例は報告されているものの、人から人への感染の連続は確認されていません。大人たちで弱い免疫を認めることから、大人の世代は、抗原的に近い季節性A(H3N2)型インフルエンザウイルスに昔、感染したことがあると考えられます。1990年台に人で流行したインフルエンザウイルスに近いともされます。季節性A(H3N2)型インフルエンザウイルスのワクチンではこの免疫の強化も期待されます。こどもたちにはこのような免疫はほとんどなく、季節性A(H3N2)型インフルエンザウイルスのワクチンでの免疫の強化も期待できません。患者の多くはこどもたちです。ノイラミニダーゼ阻害剤のオセルタミビルやザナミビルが治療に有効です。今のところ、A(H3N2v)型インフルエンザウイルスは、通常のインフルエンザの様な症状を呈するものの、インフルエンザの様に人々の中で感染が広がって行く状況にはありません。
2013年、アメリカ合衆国のインジアナ州で、患者12人から、A(H3N2v)型インフルエンザウイルスが検出されています(2013年7月5日現在)。この患者12人については、入院も、死亡も、人から人への感染も認められません。また、農業関係の催しでの豚との接触が認められた患者が多かったです。
2012年、アメリカ合衆国で患者1人から、カナダで患者1人から、A(H1N1v)型インフルエンザウイルスが検出されました。二人の患者とも豚との接触がありました。二人の患者とも軽快しました。二人の患者の周囲への感染の広がりは認められませんでした。ノイラミニダーゼ阻害剤のオセルタミビルやザナミビルが治療に有効と考えられます。
2012年、アメリカ合衆国のミネソタ州で患者3人から、A(H1N2v)型インフルエンザウイルスが検出されました。ミネソタ州の催しで三人の患者とも豚との接触がありました。三人の患者とも軽快しました。このA(H1N2v)型インフルエンザウイルスのHA(haemagglutinin)抗原は、最近では2007年に流行したA(H1N1)型インフルエンザウイルス(A/New Caledonia /20/99-様ウイルス)のHA(haemagglutinin)抗原に近く、多くの人がある程度の免疫を持っていると考えられました。しかし、小さな乳幼児は免疫を持っていない可能性があります。ノイラミニダーゼ阻害剤のオセルタミビルやザナミビルが治療に有効と考えられます。
2012年にアメリカ合衆国で患者から検出されたH3N2v型、H1N1v型およびH1N2v型のA型インフルエンザウイルスは、すべて、2009パンデミックA(H1N1)型インフルエンザウイルス由来のM遺伝子を持っていました。おそらく、アメリカ合衆国で以前に豚で流行していたA型インフルエンザウイルスと2009パンデミックA(H1N1)型インフルエンザウイルスとの間の遺伝子再集合が豚で起こって、M遺伝子を持つようになったと考えられます。アメリカ合衆国で、豚においては、2009パンデミックA(H1N1)型インフルエンザウイルス由来のM遺伝子を持つ遺伝子再集合(triple reassortant: tr)豚インフルエンザウイルスが増えています。M遺伝子の役割はよくわかっていませんが、M遺伝子によってインフルエンザウイルスの動物から人への感染能力が高まるのではないかとの示唆もあります。
抗原の種類 | N1 | N2 |
---|---|---|
H1 | H1N1v:2012年、アメリカ合衆国で患者1人から、カナダで患者1人から、検出されました。 | H1N2v:2012年、アメリカ合衆国のミネソタ州で患者3人から、検出されました。 |
H3 | H3N2v:2011年、アメリカ合衆国で、患者12人から、検出されました。 2012年、アメリカ合衆国で、患者309人から、検出されました。 2013年、アメリカ合衆国のインジアナ州で、患者12人から、検出されています(2013年7月5日現在)。 |
2013年7月10日初掲載
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