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新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)について

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年11月28日

流行は?

 2002年2月6日、世界保健機関(WHO)および英国の公衆衛生検査サービス(Public Health Laboratory Service : PHLS)が、英国・イスラエル・エジプトで人の検体から新しい亜型(subtype)のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されたと報告しました。アメリカ合衆国においても、疾病管理センター(CDC)が過去の検体を検査したところ、2001年7月以後の人の検体からこの新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されています。また、WHOとPHLSの報告後、2002年3月8日まででは、カナダ、フランス、インド、ラトビア、マレーシア、オマーン、シンガポールでも新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されています。日本においても、横浜市内において2002年2月上旬の中学校の第1学年全8学級での集団発生事例から新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されています。これは、当・横浜市衛生研究所と国立感染症研究所とが協力して日本国内で初めて新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)を分離したものです。詳細は、国立感染症研究所ホームページの病原微生物検出情報月報(IASR Vol.23 No.8, August 2002, p 198-199)「<速報>国内で最初に確認されたA/H1N2型インフルエンザウイルスの分離-横浜市」(外部サイト)に掲載されていますので、ごらん下さい。
 新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、1988年12月から1989年3月までの間、中国の6都市で分離されたことがありました。しかし、当時、このウイルスはそれ以上広がることはありませんでした。
 新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)によるインフルエンザの広がり方については、ウイルスとして共通のhemagglutininの1型(H1)というたんぱく質を持つAソ連型インフルエンザに近い広がり方をすることが考えられます。Aソ連型インフルエンザは、比較的より若い人たちでよく見られ、子供たちで流行したりします。Aソ連型インフルエンザは、老人での発生はそれほど多くありません。英国の公衆衛生検査サービス(PublicHealth Laboratory Service:PHLS)によれば、2001-2002年冬季の英国でのインフルエンザウイルスの分離状況は、分離されたインフルエンザウイルスの99%がA型インフルエンザウイルスです。そのうち、H1型が54%、H3型(H3N2:A香港型)が45%を占めています。このH1型では、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)ではなく新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が多数を占めているとのことです。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)によるインフルエンザの学校などでの集団発生も英国では観察されています。英国での新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)の分離は、15歳未満の年齢層で多く見られました。
 1977年以来、A型インフルエンザの流行は、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)とによって起こされてきました。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)の出現がこのような状況に変化を生じるのかどうかについて、その後の世界におけるA型インフルエンザの流行におけるウイルスの分離結果が注目されました。

 2001年度(2001-2002年冬季)は、新たにA香港型(H3N2)でもAソ連型(H1N1)でもないA型(H1N2)インフルエンザの流行が英国で見られました。日本でも横浜市内でこのA型(H1N2)インフルエンザの集団発生事例が当・横浜市衛生研究所と国立感染症研究所との協力により確認されました。エジプト・イスラエル・米国等でもこのA型(H1N2)インフルエンザウイルスが分離されています。A型(H1N2)インフルエンザウイルスは、抗原的には、2000年度・2001年度のワクチン株であるA/New Caledonia/20/99(H1N1)株に近いものでした。横浜市で分離されたA型(H1N2)インフルエンザウイルスについても同じ結果でした。
 2002年度(2002-2003年冬季)は、A(H1N2)型インフルエンザは、カナダで多く発生しました。A(H1N2)型インフルエンザウイルスは、カナダ、アメリカ合衆国、フランス、イギリスで分離されました。Aソ連(H1N1)型インフルエンザの発生は少なめでした。日本では、まずA香港(H3N2)型インフルエンザの流行が見られ、次いでB型インフルエンザの流行が見られました。2002-2003年冬季に海外で見られたAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスとA(H1N2)型インフルエンザウイルスは、HA抗原については抗原的にA/New Caledonia/20/99(H1N1)株と同様のものが大部分です。横浜市衛生研究所では、Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスとA(H1N2)型インフルエンザウイルスとは、分離されませんでした。日本全体でも、Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスが1株分離されたのみであり、日本ではAソ連(H1N1)型インフルエンザとA(H1N2)型インフルエンザの流行は見られませんでした。
 2003年度(2003-2004年冬季)は、A(H1N2)型インフルエンザウイルスは、アフリカのセネガル、北米のカナダ、アメリカ合衆国、南米のブラジル、チリ、欧州のフランス、アイスランド、ノルウェー、ポルトガルで分離されました。B型インフルエンザの発生は少なかったです。日本では、A香港(H3N2)型インフルエンザの流行が見られました。2003-2004年冬季に海外で見られたAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスとA(H1N2)型インフルエンザウイルスは、HA抗原については抗原的にA/New Caledonia/20/99(H1N1)株と同様のものが大部分です。横浜市衛生研究所では、Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスとA(H1N2)型インフルエンザウイルスとは、分離されませんでした。日本全体でも、Aソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスが3株分離されたのみであり、日本ではAソ連(H1N1)型インフルエンザとA(H1N2)型インフルエンザの流行は見られませんでした。
 2004年度(2004-2005年冬季)は、A(H1N2)型インフルエンザウイルスは、ヨーロッパでわずかに分離されました。
 2005年度(2005-2006年冬季)以後は、A(H1N2)型インフルエンザウイルスについて分離の報告はなくなりました。

どんな病気?

 新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)でもA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)でもないA型インフルエンザウイルスです。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)の遺伝子とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)の遺伝子との組み合わせ(遺伝子再集合)で生じたウイルスと考えられています。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、インフルエンザの症状を起こしますがインフルエンザの症状で新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)によるインフルエンザを、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)やA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)によるインフルエンザと区別することはできません。しかし、どちらかと言えば、共通のhemagglutininの1型(H1)というたんぱく質を持つAソ連型インフルエンザに近い症状を新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は起こすと思われます。

病原体は?

 A型インフルエンザウイルスは、ウイルスを構成する二つのたんぱく質によって区別されます。hemagglutininというたんぱく質とneuraminidaseというたんぱく質とによって区別されます(当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の「インフルエンザについて」、「高病原性鳥インフルエンザについて」および「人間への感染が見られたA型インフルエンザウイルスの亜型について」を参照のこと)。Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)は、hemagglutininの1型(H1)とneuraminidaseの1型(N1)との組み合わせです。A香港型インフルエンザウイルス(H3N2)は、hemagglutininの3型(H3)とneuraminidaseの2型(N2)との組み合わせです。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、hemagglutininの1型(H1)とneuraminidaseの2型(N2)との組み合わせであり、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)やA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)とは違うのです。しかし、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)のhemagglutininは、流行中のAソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)のhemagglutinin とたいへんよく似ています。また、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)のneuraminidaseは、流行中のA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)のneuraminidaseとたいへんよく似ています。そこで、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、流行中のAソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)の遺伝子と流行中のA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)の遺伝子との組み合わせで生じたウイルスだと考えられています。

予防のためには・・・

 2001-2002年冬季に使用されていたインフルエンザワクチンの株には、新しい亜型のA型インフルエンザウイルス (H1N2)を構成するhemagglutininの1型(H1)およびneuraminidaseの2型(N2)にそれぞれよく似たhemagglutininの1型(H1)を持つAソ連型インフルエンザウイルスとneuraminidaseの2型(N2)を持つA香港型インフルエンザウイルスとが選ばれていました。このため、2001-2002年冬季に使用されていたインフルエンザワクチンは、新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)の予防について有効だったものと思われます。また、世界保健機関(WHO)による2002-2003年冬季の北半球世界のインフルエンザワクチンの推奨株についても、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)に対して有効なAソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)との組み合わせが選択されています。世界保健機関(WHO)による2002-2003年冬季の北半球世界のインフルエンザワクチンの推奨株では、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)については、2001-2002年冬季に使用されていたインフルエンザワクチンと同じものとすることが決定されたのです。日本においても、2002-2003年冬季のインフルエンザワクチンの株には、世界保健機関(WHO)による2002-2003年冬季の北半球世界のインフルエンザワクチンの推奨株を採用することが決定されました。
 今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、人類にとって今まで出会ったことのない新種のhemagglutininやneuraminidaseを持ったインフルエンザウイルスではありません。多くの人にとって出会ったことのあるhemagglutininやneuraminidaseを持ったインフルエンザウイルスです。そのため、多くの人は、弱いながらある程度の免疫をもっています。今までも行ってきた予防接種などの予防対策を徹底することが大切だと思われます。
 

最近のA(H1N2)インフルエンザウイルス・・・

 最近になって、A(H1N2)インフルエンザウイルスによる患者発生報告が、欧州で3例ありました。
 1例目[A/Netherlands/10407/2018(H1N2)]は、2018年3月、オランダでの症例です(参考文献4)。生後19か月のこどもで、発熱、のどの痛み、咳、息切れ、鼻水、下痢などが見られました。完全に回復し、周囲への感染の広がりは確認されていません。
 2例目[A/Ystad/1/2018(H1N2)]は、2018年12月、スウェーデンでの症例です(参考文献5)。COPD(慢性閉塞性肺疾患)の既往のある68歳女性で、摂氏40度にも達する発熱が5日続き入院。A型インフルエンザウイルスが検出されオセルタミビル5日間治療。入院5日間で軽快し退院。2018/19年冬季のワクチンの接種は受けていませんでした。周囲への感染の広がりは確認されていません。
 3例目[A/Denmark/3176/2019(H1N2)]は、2019年4月、デンマークでの症例です(参考文献6)。喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のある女性で、下気道炎の症状で2019年4月7日発病し、2019年4月11日入院。全快し2019年4月13日退院。、2018/19年冬季のワクチンの接種は受けていませんでした。周囲への感染の広がりは確認されていません。患者は、2019年3月29日から2019年4月5日までクロアチア、ボスニア、ヘルツェゴビナ、モンテネグロを旅行していました。旅行中に同行者で発病した人はいませんでした。
 3例とも、A(H1N2)インフルエンザウイルスについては、A(H1N1)pdm09インフルエンザウイルスの遺伝子とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)の遺伝子との組み合わせ( 遺伝子再集合)で生じたウイルスと考えられています。A型インフルエンザウイルスのゲノムは、8つのゲノム分節からなります。3例について、A(H1N2)インフルエンザウイルスの各ゲノム分節がA(H1N1)pdm09インフルエンザウイルスとA(H3N2)香港型インフルエンザウイルスとでいずれに由来するかを示すと下の表1のとおりです。

【表1】最近のA(H1N2)インフルエンザウイルスのゲノム分節の由来
ゲノム分節ウイルス蛋白[1例目]2018年3月オランダ[2例目]2018年12月スウェーデン[3例目]2019年4月デンマーク
1PB2H3N2H1N1H1N1
2PB1H3N2H1N1H1N1
3PAH3N2H1N1H1N1
4HAH1N1H1N1H1N1
5NPH3N2H1N1H1N1
6NAH3N2H3N2H3N2
7MH3N2H1N1H1N1
8NSH1N1H1N1H1N1

 なお、2009年の新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)のとき、東インドでA(H1N2)インフルエンザウイルスが検出されています。このウイルスのゲノム分節の由来は、ゲノム分節4(HA)のみA(H1N1)pdm09インフルエンザウイルス由来で、他の7つのゲノム分節の由来は、A(H3N2)香港型インフルエンザウイルス由来でした。1988-89年の中国や2000-03年に世界的に流行の見られたA(H1N2)インフルエンザウイルスについても、ゲノム分節の由来は、ゲノム分節4(HA)のみA(H1N1)ソ連型インフルエンザウイルス由来で、他の7つのゲノム分節の由来は、A(H3N2)香港型インフルエンザウイルス由来でした(参考文献1,4)。

参考文献

  1. Komadina N, McVernon J, Hall R, Leder K. A Historical Perspective of Influenza A(H1N2) Virus(外部サイト). Emerg Infect Dis. 2014;20(1):6-12. https://dx.doi.org/10.3201/eid2001.121848(外部サイト)
  2. WHO announce the isolation of a new strain of influenza virus-A (H1N2), and the vaccine composition for next winter : WEEKLY INFLUENZA REPORT No.17 ,PHLS, week 6 : 6 February 2002.
  3. Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2002-2003 season : Weekly Epidemiological Record (WER), No.8, 22 February 2002, 77th year , pp.62-66
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)
  4. Meijer Adam, Swaan Corien M, Voerknecht Martin, Jusic Edin, van den Brink Sharon, Wijsman Lisa A, Voordouw Bettie CG, Donker Gé A, Sleven Jacqueline, Dorigo-Zetsma Wendelien W, Svraka Sanela, van Boven Michiel, Haverkate Manon R, Timen Aura, van Dissel Jaap T, Koopmans Marion PG, Bestebroer Theo M, Fouchier Ron AM. Case of seasonal reassortant A(H1N2) influenza virus infection, the Netherlands(外部サイト), March 2018. Euro Surveill. 2018;23(15):pii=18-00160. https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2018.23.15.18-00160(外部サイト)
  5. Wiman Åsa, Enkirch Theresa, Carnahan AnnaSara, Böttiger Blenda, Hagey Tove Samuelsson, Hagstam Per, Fält Rosmarie, Brytting Mia. Novel influenza A(H1N2) seasonal reassortant identified in a patient sample, Sweden(外部サイト), January 2019. Euro Surveill. 2019;24(9):pii=1900124. https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2019.24.9.1900124(外部サイト)
  6. Trebbien Ramona, Koch Anders, Nielsen Lene, Kur Dår Kristian, Westerström Pontus, Krause Tyra Grove. A case of reassortant seasonal influenza A(H1N2) virus, Denmark, April 2019(外部サイト). Euro Surveill. 2019;24(27):pii=1900406. https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2019.24.27.1900406(外部サイト)

2002年3月18日初掲載
2002年8月2日改訂増補
2005年12月5日改訂増補
2019年11月28日改訂増補

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