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新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)について

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月5日

流行は?

2002年2月6日、世界保健機関(WHO)および英国の公衆衛生検査サービス(Public Health Laboratory Service : PHLS)が、英国・イスラエル・エジプトで人の検体から新しい亜型(subtype)のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されたと報告しました。アメリカ合衆国においても、疾病管理センター(CDC)が過去の検体を検査したところ、2001年7月以後の人の検体からこの新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されています。また、WHOとPHLSの報告後、2002年3月8日まででは、カナダ、フランス、インド、ラトビア、マレーシア、オマーン、シンガポールでも新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されています。日本においても、横浜市内において2002年2月上旬の中学校の第1学年全8学級での集団発生事例から新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が分離されています。これは、当・横浜市衛生研究所と国立感染症研究所とが協力して日本国内で初めて新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)を分離したものです。詳細は、国立感染症研究所ホームページの病原微生物検出情報月報(IASR Vol.23 No.8, August 2002, p 198-199)「<速報>国内で最初に確認されたA/H1N2型インフルエンザウイルスの分離-横浜市」(外部サイト)に掲載されていますので、ごらん下さい。
新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、1988年12月から1989年3月までの間、中国の6都市で分離されたことがありました。しかし、当時、このウイルスはそれ以上広がることはありませんでした。
新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)によるインフルエンザの広がり方については、ウイルスとして共通のhemagglutininの1型(H1)というたんぱく質を持つAソ連型インフルエンザに近い広がり方をすることが考えられます。Aソ連型インフルエンザは、比較的より若い人たちでよく見られ、子供たちで流行したりします。Aソ連型インフルエンザは、老人での発生はそれほど多くありません。英国の公衆衛生検査サービス(PublicHealth Laboratory Service:PHLS)によれば、2001-2002年冬季の英国でのインフルエンザウイルスの分離状況は、分離されたインフルエンザウイルスの99%がA型インフルエンザウイルスです。そのうち、H1型が54%、H3型(H3N2:A香港型)が45%を占めています。このH1型では、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)ではなく新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)が多数を占めているとのことです。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)によるインフルエンザの学校などでの集団発生も英国では観察されています。英国での新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)の分離は、15歳未満の年齢層で多く見られました。
1977年以来、A型インフルエンザの流行は、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)とによって起こされてきました。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)の出現がこのような状況に変化を生じるのかどうかについて、今後の世界におけるA型インフルエンザの流行におけるウイルスの分離結果が注目されます。

どんな病気?

新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)でもA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)でもないA型インフルエンザウイルスです。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)の遺伝子とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)の遺伝子との組み合わせ(遺伝子再集合)で生じたウイルスと考えられています。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、インフルエンザの症状を起こしますがインフルエンザの症状で新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)によるインフルエンザを、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)やA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)によるインフルエンザと区別することはできません。しかし、どちらかと言えば、共通のhemagglutininの1型(H1)というたんぱく質を持つAソ連型インフルエンザに近い症状を新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は起こすと思われます。

病原体は?

A型インフルエンザウイルスは、ウイルスを構成する二つのたんぱく質によって区別されます。hemagglutininというたんぱく質とneuraminidaseというたんぱく質とによって区別されます(当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の「インフルエンザについて」、「高病原性鳥インフルエンザについて」および「人間への感染が見られたA型インフルエンザウイルスの亜型について」を参照のこと)。Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)は、hemagglutininの1型(H1)とneuraminidaseの1型(N1)との組み合わせです。A香港型インフルエンザウイルス(H3N2)は、hemagglutininの3型(H3)とneuraminidaseの2型(N2)との組み合わせです。新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、hemagglutininの1型(H1)とneuraminidaseの2型(N2)との組み合わせであり、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)やA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)とは違うのです。しかし、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)のhemagglutininは、流行中のAソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)のhemagglutinin とたいへんよく似ています。また、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)のneuraminidaseは、流行中のA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)のneuraminidaseとたいへんよく似ています。そこで、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、流行中のAソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)の遺伝子と流行中のA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)の遺伝子との組み合わせで生じたウイルスだと考えられています。

予防のためには・・・

2001-2002年冬季に使用されていたインフルエンザワクチンの株には、新しい亜型のA型インフルエンザウイルス (H1N2)を構成するhemagglutininの1型(H1)およびneuraminidaseの2型(N2)にそれぞれよく似たhemagglutininの1型(H1)を持つAソ連型インフルエンザウイルスとneuraminidaseの2型(N2)を持つA香港型インフルエンザウイルスとが選ばれていました。このため、2001-2002年冬季に使用されていたインフルエンザワクチンは、新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)の予防について有効だったものと思われます。また、世界保健機関(WHO)による2002-2003年冬季の北半球世界のインフルエンザワクチンの推奨株についても、今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)に対して有効なAソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)との組み合わせが選択されています。世界保健機関(WHO)による2002-2003年冬季の北半球世界のインフルエンザワクチンの推奨株では、Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)とA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)については、2001-2002年冬季に使用されていたインフルエンザワクチンと同じものとすることが決定されたのです。日本においても、2002-2003年冬季のインフルエンザワクチンの株には、世界保健機関(WHO)による2002-2003年冬季の北半球世界のインフルエンザワクチンの推奨株を採用することが決定されました。
今回の新しい亜型のA型インフルエンザウイルス(H1N2)は、人類にとって今まで出会ったことのない新種のhemagglutininやneuraminidaseを持ったインフルエンザウイルスではありません。多くの人にとって出会ったことのあるhemagglutininやneuraminidaseを持ったインフルエンザウイルスです。そのため、多くの人は、弱いながらある程度の免疫をもっています。今までも行ってきた予防接種などの予防対策を徹底することが大切だと思われます。

参考文献

  1. Influenza A(H1N2) Viruses Identified : アメリカ合衆国のCDCのホームページ中の「インフルエンザ情報」の報告書
    http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/flu/factsheetH1N2.htm(外部サイト)
  2. WHO announce the isolation of a new strain of influenza virus-A (H1N2), and the vaccine composition for next winter : WEEKLY INFLUENZA REPORT No.17 ,PHLS, week 6 : 6 February 2002.
  3. Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2002-2003 season : Weekly Epidemiological Record (WER), No.8, 22 February 2002, 77th year , pp.62-66
    http://www.who.int/wer/(外部サイト)

2002年3月18日初掲載
2002年8月2日改訂増補
2005年12月5日改訂増補

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