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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。
最終更新日 2019年11月8日
インフルエンザは鼻水、くしゃみ、咳などの風邪症状だけでなく、高熱、頭痛、筋肉痛などを起こし、気管支炎や肺炎を併発することもある重篤な全身感染症で高齢者などでは死亡原因となることもあります。こどもたちでは、同時に中耳炎や嘔気・嘔吐などが見られることもあります。インフルエンザは、突然の発病が特徴的です。3-7日で症状は軽快する場合が多いですが、咳や気分不快などが2週間以上続く場合もあります。慢性の呼吸器疾患や心臓疾患を持っている人では、その病状を悪化させることもあります。肺炎を併発する場合には、肺炎は、主として、インフルエンザウイルスによる場合、細菌による場合、他のウイルスや細菌とインフルエンザウイルスとによる場合とがあります。
小さなこどもたちでは、突然の高熱が最初の症状で、他のウイルスや細菌による感染症とまぎらわしいことがあります。また、小さなこどもたちでは、突然の高熱のために、熱性痙攣(けいれん)が見られることもあります。インフルエンザは、また、ライ症候群や脳症とも関係します。
インフルエンザの潜伏期は、1-4日、平均で2日です。大人(おとな)の患者では、症状が出現する前日から発病後5日までが、周囲の他の人に感染する可能性がある時期です。こどもの患者では、この周囲の他の人に感染する可能性がある時期は長く、発病の数日前から10日以上にわたって周囲の他の人に感染する可能性があります。この間の患者のインフルエンザウイルスを含む鼻腔、咽頭、気道粘膜の分泌物からの咳による飛沫を吸い込んでの感染が多いと考えられます。なお、重度に免疫が抑制された人がインフルエンザに感染した場合には、数週間から数ヶ月にわたって、インフルエンザウイルスを排出することがあります。
インフルエンザは、日本では、毎年、冬季の12月ころから翌年3月ころにかけて流行します。A型は大流行しやすいですが、B型は局地的流行にとどまることが多いです。急激に発病し潜伏期が短いため、流行の期間は比較的短いけれども、流行は爆発的で、地域的には発生から3週間以内にピークに達し、3~4週間で沈静化する場合が多いです。また、インフルエンザは学校感染症の一つです。学校保健安全法施行規則(第19条)での出席停止の基準は、「インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあっては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあっては、三日)を経過するまで出席停止とする。ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときはこの限りではない。」となっています。潜伏期間が短いことから、学校での流行が懸念されるときには、学級や学校の臨時休業(学級閉鎖や学校閉鎖)も有効とされています。なお、特定鳥インフルエンザとは、病原体がアルファインフルエンザウイルス属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型が新型インフルエンザ等感染症の病原体に発展するおそれが高い血清亜型として政令で定めるものである鳥インフルエンザです。この特定鳥インフルエンザは、感染症法上、二類感染症に分類され、H5N1亜型とH7N9亜型とが定められています。
インフルエンザ関連の死亡としては、肺炎を起こしての場合があります。また、肺や心臓等の慢性疾患が悪化しての場合等があります。インフルエンザ関連の死亡は、高齢者に多いです。アメリカ合衆国において、1990-1999年には、1シーズンあたり、36,000人のインフルエンザ関連の死亡があったと考えられていますが、高齢者が大部分を占めます。高齢者の死亡数に比べれば、こどもの死亡数は少ないです。
2003-2004年冬季のインフルエンザ・シーズンでは、40州において、153人のこどものインフルエンザ関連の死亡がアメリカ合衆国では確認されています。このうち、2歳未満が61人(40%)、5歳未満が96人(63%)と多いです。一方で、2-17歳の92人のうちでは、インフルエンザ関連の合併症を起こしやすいとみなされない健康状況だったこどもたちが64人(70%)を占めます。
2005年の勧告では、2歳未満のこどものインフルエンザ関連の死亡を少なくするため、月齢6-23ヶ月の健康なこどもと、月齢0-23ヶ月のこどもの密接な接触者とは、インフルエンザの予防接種を受けるべきことを、アメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices )は勧告しました。さらに、2006年の勧告では、月齢6-59ヶ月の健康なこどもと、月齢0-59ヶ月(5歳未満)のこどもの密接な接触者とは、インフルエンザの予防接種を受けるべきことを、アメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices )は勧告しました。
最近のアメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices )のインフルエンザワクチン等の定期予防接種に関する勧告については、当・横浜市衛生研究所ホームページの「インフルエンザワクチンについて」、「アメリカ合衆国のこどもの定期予防接種について」および「アメリカ合衆国の大人の定期予防接種について」をご参考にしてください。アメリカ合衆国では、月齢6ヶ月以上の人に対して毎冬のインフルエンザの予防接種を勧告しています。
インフルエンザウイルスは、下の表1のように、A型(ウイルス分類上はアルファインフルエンザウイルス属インフルエンザAウイルス)、B型(ウイルス分類上はベータインフルエンザウイルス属インフルエンザBウイルス)、C型(ウイルス分類上はガンマインフルエンザウイルス属インフルエンザCウイルス)、D型(ウイルス分類上はデルタインフルエンザウイルス属インフルエンザDウイルス)に分類されます。A型が過去にインフルエンザの大流行を引き起こしてきました。A型インフルエンザウイルスはウイルスの表面に赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)をもち、これを介してヒトの細胞に感染します。ヒトはA型インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(H)やノイラミニダーゼ(N)に対する抗体を作ることによって感染をさけようとしますが、A型インフルエンザウイルスも突然変異を利用して赤血球凝集素(H)やノイラミニダーゼ(N)を微妙に変化させたり(抗原連続変異)、赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せを大胆に変えて(抗原不連続変異)ヒトの抗体に攻撃されないようにします。
インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型が人に呼吸器系の感染症を起こします。三者の比較では、A型が重症、C型が軽症です。しかし、C型がこどもなどで下気道炎など重症の呼吸器感染症を起こすこともあります(参考文献22, 24)。インフルエンザウイルスのD型が人に呼吸器系の感染症を起こすかどうかは知られていません。2006-2008年の英国スコットランド南東部の病院・診療所の呼吸器系の3300検体についてRT-PCR法でインフルエンザCウイルスとインフルエンザDウイルスとを検査した調査研究報告があります(参考文献24)。インフルエンザCウイルスが6検体(0.2%)から検出されましたが、インフルエンザDウイルスは検出されませんでした。インフルエンザDウイルスはウシやブタに感染します。一方で、米国フロリダ州でウシに関わる仕事をしている人たちでは、インフルエンザDウイルスに対する抗体陽性率は94-97%と高かったです(参考文献25)。
属(2017年7月まで) | 属(2017年7月から) | 種 | 種(略称) |
---|---|---|---|
インフルエンザウイルスA属(Influenzavirus A) | アルファインフルエンザウイルス属(Alphainfluenzavirus) | インフルエンザAウイルス(Influenza A virus) | IAV |
インフルエンザウイルスB属(Influenzavirus B) | ベータインフルエンザウイルス属(Betainfluenzavirus) | インフルエンザBウイルス(Influenza B virus) | IBV |
インフルエンザウイルスC属(Influenzavirus C) | ガンマインフルエンザウイルス属(Gammainfluenzavirus) | インフルエンザCウイルス(Influenza C virus) | ICV |
インフルエンザウイルスD属(Influenzavirus D) | デルタインフルエンザウイルス属(Deltainfluenzavirus) | インフルエンザDウイルス(Influenza D virus) | IDV |
1918年に世界的に大流行したスペイン風邪ウイルスは、A型で赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の変異体がいずれも1に分類され「H1N1」と表記されています。1957年のアジア風邪のウイルスはA型で赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)のいずれもそれまでとは異なった形状を持っていたので「H2N2」と表記されています。1968年の香港風邪のウイルスはA型で赤血球凝集素(H)のみ形状が異なっていたので「H3N2」と表記されています。1918年のスペイン風邪では全世界で2000万人が死亡したとの記録もあります。
インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)において、各国での流行は、冬季に限りません。英国では、下の表2のように夏季や秋季に流行のピークが見られたことがあります。
インフルエンザの世界的大流行(パンデミック) | 英国での流行のピークの月 |
---|---|
1889-1890年のパンデミック | 1890年1月 |
スペイン風邪第1波 | 1918年7月 |
スペイン風邪第2波 | 1918年11月 |
スペイン風邪第3波 | 1919年2月 |
アジア風邪 | 1957年9-10月 |
香港風邪第1波 | 1969年3-4月 |
香港風邪第2波 | 1970年1月 |
H1N1-2009パンデミック第1波 | 2009年7月 |
H1N1-2009パンデミック第2波 | 2009年10月 |
過去の大流行に観るように、A型で赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せが変化するような「抗原不連続変異」を起こした、ヒトからヒトへと感染するインフルエンザウイルスを「新型インフルエンザウイルス」と言います。そのような場合、赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せがヒトにとって感染の経験のない新しいものなので、抗体を持っている人はなく、そのために新型インフルエンザの世界的な大流行(パンデミック)が起こる可能性があります。
1997年に香港で、A型で赤血球凝集素(H)がH5であるA(H5N1)型インフルエンザウイルスによるインフルエンザの患者が報告されました。それまで、A(H5N1)型インフルエンザウイルスはトリのインフルエンザを引き起こすことは知られていましたが、ヒトのインフルエンザで分離されたことはありませんでした。赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せはこれまでにない新しいものなのですが、香港で報告された18人の患者はトリからの直接感染とみられ、ヒトからヒトへの感染は証明されておらず、日本でもこのウイルスは分離されませんでした。その後、中国国外に広がることもなく、このA(H5N1)型インフルエンザの発生は沈静化しました。
しかし、2004年以来、東南アジア等でA(H5N1)型インフルエンザウイルスによる患者発生が続いて、ヒトからヒトへの持続的な感染を起こして新型インフルエンザとしてパンデミック(世界的大流行)を起こさないかと心配されています。日本では、A(H5N1)型鳥インフルエンザを感染症法上の指定感染症とする指定政令が、平成18年(2006年)6月2日公布、平成18年(2006年)6月13日施行となりました。その後、A(H5N1)型鳥インフルエンザについては、感染症法上の二類感染症とされました。
また、平成25年(2013年)3月31日に鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス[英語: avian influenza A(H7N9) virus]によるインフルエンザ患者発生が初めて中国からWHOに報告されて以来、中国でのA(H7N9)型鳥インフルエンザ患者発生が継続しました。鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスについても、今のところ、ヒトからヒトへの感染は大変起こりにくいですが、ヒトからヒトへの持続的な感染を起こして新型インフルエンザとしてパンデミック(世界的大流行)を起こさないかと心配されています。日本では、A(H7N9)型鳥インフルエンザを感染症法上の指定感染症とする指定政令が、平成25年(2013年)4月26日公布、平成25年(2013年)5月6日施行となりました。その後、A(H7N9)型鳥インフルエンザについても、感染症法上の二類感染症とされました(平成27年[2015年]1月9日公布、平成27年[2015年]1月21日施行)。A(H5N1)型鳥インフルエンザ・A(H7N9)型鳥インフルエンザを除く鳥インフルエンザについては、感染症法上の四類感染症とされました(鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く)の医師の届出基準はこちらのページから)。
中国でのA(H7N9)型鳥インフルエンザ患者発生については、下の表3のように、2013年春から多数の報告があり、冬季を中心に、第1波(2013年4月がピーク)、第2波(2014年1月がピーク)、第3波(2015年1月がピーク)、第4波(2016年2月がピーク)、第5波(2017年1月がピーク)と繰り返されました。第5波が一番大きく、第4波までは中国東部中心だったのが中国西部でも患者発生が見られるようになりました(参考文献26)。しかし、家きんへのA(H7N9)型鳥インフルエンザに対するワクチンを中国で開始したことで、中国でのA(H7N9)型鳥インフルエンザ患者発生は減り、第5波の後は、2017年11月、2018年1月、2018年2月、2019年3月に一人ずつの患者発生となっています。
波 | 期間 | 患者数 | 死亡者数 | 致死率 |
---|---|---|---|---|
第1波~第4波 | 2013年2月~2016年9月 | 798 | 324 | 40.6% |
第5波 | 2016年10月~2017年9月 | 766 | 288 | 37.6% |
計 | 2013年2月~2017年9月 | 1564 | 612 | 39.1% |
A(H5N1)型鳥インフルエンザ及びA(H7N9)型鳥インフルエンザについては、人に感染・発病した場合の致死率が高いことから注目されていますが、下の表4のように、他の亜型でもA型インフルエンザウイルスが動物から人に感染した例が知られています(参考文献23)。当・横浜市ホームページ「人間への感染が見られたA型インフルエンザウイルスの亜型について」もご参照下さい。
表4の中で、A(H7N2)型猫インフルエンザがネコから人へ感染したのは、2016年に、米国ニューヨーク市の動物シェルターにおいて、ネコの間でA(H7N2)型猫インフルエンザに約500匹が罹患する集団発生が起こったときのことです(参考文献23)。。シェルターのイヌ、ニワトリ、ウサギなど他の動物は感染しませんでした。罹患したネコと濃厚に接触していた獣医が発病し、A(H7N2)型インフルエンザウイルスへの感染が確認されました。シェルターの従業員121人を調べたところ、他にも1人、A(H7N2)型インフルエンザウイルスへの感染が確認されました。
宿主の動物 | 人へ感染した亜型 |
---|---|
ブタ | H1N1, H1N2, H3N2 |
トリ | H5N1, H5N6, H7N2, H7N3, H7N7, H7N9, H9N2, H10N7, H10N8 |
ネコ | H7N2 |
ウマ | 報告なし |
イヌ | 報告なし |
インフルエンザは飛沫感染といって、セキやくしゃみを介して感染しますので、人混みをさけ、帰宅後はうがい、手洗いを欠かさないことが大切です。特に、インフルエンザにかかっている恐れがあって、セキなどの症状のある人は、周囲の人を感染させないために、マスクの着用が望ましいです。マスクを持っていない場合には、セキ・くしゃみの際に、ティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ1メートル以上離れることが望ましいです(咳エチケット)。また、そのような時などに用いられた、鼻汁・痰などを含んだティッシュを、すぐに蓋(ふた)付きの廃棄物箱に捨てることができるような環境の整備も望ましいです。
また、インフルエンザには予防接種(ワクチン)という予防法があります。しかし、前述のようにインフルエンザウイルスは抗原連続変異や抗原不連続変異を引き起こすことがあるので、流行するインフルエンザウイルスの予想が大きくはずれると予防の効果が乏しい可能性もあります。インフルエンザワクチンについて、詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページ「インフルエンザワクチンについて」をご覧下さい(下線部をクリックして下さい)。
そのほか、以前は、抗A型インフルエンザウイルス剤として、アマンタジン(一般名)という薬(商品名:シンメトレル、アテネジン、アマンタジン塩酸塩)がA型インフルエンザの予防や初期の治療に効果があるとされました。以前は、アマンタジンは、A型インフルエンザの感染において、発病を防ぐことに約60-90%で有効とされました。しかし、近年は、アマンタジンが有効でない、耐性があるA型インフルエンザウイルスの占める割合が増加して、最近は、ほとんど(99-100%)がアマンタジンに耐性があるA型インフルエンザウイルスとなっています。
さらに、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として、オセルタミビル(一般名)という薬(商品名:タミフル)やザナミビル(一般名)という薬(商品名:リレンザ)がA型およびB型のインフルエンザの予防や初期の治療に有効です。家族の一員がインフルエンザと診断された際には、他の家族が服薬することでインフルエンザの発病を予防することに有効です。なお、オセルタミビルやザナミビルなどの抗インフルエンザウイルス剤はインフルエンザワクチン(不活化ワクチン)接種により人が抗体を作ることを妨げません。そのため、流行期においてインフルエンザに対する十分な免疫がない人がいた場合、インフルエンザを予防するためには、最初に予防接種(不活化ワクチン)を行って、接種が終わって2週間経過してしっかりして十分な免疫がつくまでの間、最初から抗インフルエンザウイルス剤を服薬して予防するという方法も考えられます。
病院内において、院内感染の可能性があれば、インフルエンザ患者の同室患者・接触者には、タミフルあるいはリレンザなどの予防投与が考慮されます。タミフルは接触から48時間以内の開始が有効です。リレンザは接触から36時間以内の開始が有効です。いずれも、早く開始することが望ましく、24時間以内の開始が推奨されます。ある病棟内で複数の病室での患者発生が見られるなら、その病棟の全患者への予防投与も考慮されます。
オセルタミビル、ザナミビルといった薬によるインフルエンザの予防を化学的予防(chemoprophylaxis)と言います。予防について、インフルエンザワクチンの効果が期待できないときには、化学的予防(予防投与)が重要になります。アマンタジンが有効でない、耐性があるA型インフルエンザウイルスがほとんど(99-100%)となっている現状では、化学的予防(予防投与)は主に、オセルタミビル(商品名:タミフル)やザナミビル(商品名:リレンザ)などによることになると考えられます。アマンタジン、オセルタミビルやザナミビルについては、後の「インフルエンザの治療について」の項でも触れます。
なお、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として治療に用いられてきたラニナミビルオクタン酸エステル(略称:ラニナミビル、商品名:イナビル 吸入粉末剤)についても、2013年12月、予防の効能が追加されました。ラニナミビルオクタン酸エステル(商品名:イナビル 吸入粉末剤)を予防に用いる場合は、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とします。
( 1 )高齢者(65歳以上)
( 2 )慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
( 3 )代謝性疾患患者(糖尿病等)
( 4 )腎機能障害患者
ラニナミビルオクタン酸エステル(商品名:イナビル 吸入粉末剤)を予防に用いる場合、成人及び10歳以上の小児では、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを1回のみ吸入投与します。または、20mgを1日1回、2日間吸入投与します。10歳未満の小児では、20mgを1回のみ吸入投与します。なお、予防に用いる場合は、インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始します。また、ラニナミビル(イナビル)の服用開始から10日以降のインフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は確認されていません。
インフルエンザの診断のための検査には、ウイルス培養検査、血液中の抗体の検査、迅速抗原検査、PCR(polymerase chain reaction)検査および、蛍光抗体検査などがあります。中でも、医療機関を訪れた患者から30分以内にインフルエンザウイルスを検出する迅速抗原検査が、近年になって医療機関で行われるようになってきました。この迅速抗原検査には、A型とB型のインフルエンザウイルスを検出しA型とB型のインフルエンザウイルスを区別できるものがあります。この迅速抗原検査の感度や特異性は、ウイルス培養検査に劣ります。また、この迅速抗原検査の検体の採取法には、のどをこするものや、鼻の中をこするものなどがあります。この迅速抗原検査によるインフルエンザの早期の診断は、次の項「インフルエンザの治療について」で触れるインフルエンザウイルスに特異的な抗ウイルス剤による治療に役立ちます。なお、横浜市の感染症発生動向調査においては、インフルエンザの定点医療機関において、週間のインフルエンザ患者発生の報告を頂く際に、この迅速抗原検査によるA型とB型のインフルエンザウイルスの型別の患者発生数もできるだけご報告頂いていて、A型とB型の発生動向の把握に努めています。
迅速抗原検査のような、簡便な検査法が出てきても、ウイルス培養検査の有用性は変わりません。横浜市衛生研究所では、ウイルス培養によるインフルエンザウイルスの収集を行っています。実際の流行におけるインフルエンザウイルスの流行株を把握し、来季のワクチン株の決定に役立てたり、抗ウイルス剤に対する耐性出現や新型インフルエンザの出現を把握したりするために、ウイルス培養検査は、欠かせない検査なのです。
横浜市内のインフルエンザウイルスの収集にあたっては、市内の学校にもご協力いただいています。当・横浜市衛生研究所ホームページ「学校感染症について」の「保健所(福祉保健センター)と学校との協力」の項をご参照下さい。
風邪症状のみで軽症の場合は2週間程度で治癒します。インフルエンザはウイルス感染症なので細菌に対して働く抗生剤(抗生物質)は直接効きませんが、インフルエンザウイルスは呼吸器の粘膜を破壊し細菌などによる二次感染を引き起こすことがあるので抗生剤が処方されることがあります。
肺炎などを併発する等して重症化した場合は入院しての治療が必要になります。
近年になって、インフルエンザウイルスに特異的な抗ウイルス剤が、インフルエンザの治療や予防目的で使用されるようになりました。アメリカ合衆国では、治療薬として、amantadine、rimantadine、zanamivir、oseltamivirの4種類の薬が認可されていました。日本では、この内、塩酸アマンタジンamantadineが、1998年11月、A型インフルエンザ用抗ウイルス剤として認可されました。さらに、ザナミビルzanamivirが1999年12月、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として認可されました。また、2001年2月2日からザナミビルおよびオセルタミビルoseltamivirが、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として健康保険の適用になりました。アマンタジン(商品名:シンメトレル、アテネジン、アマンタジン塩酸塩)は錠剤・細粒です。ザナミビル(商品名:リレンザ)は、粉末状で、専用用具で自分で吸入するようになっています。ザナミビルは呼吸機能を悪化させることがあるので、喘息あるいは慢性呼吸器疾患がある人は、投与を控えた方が良いでしょう。オセルタミビル(商品名:タミフル)はカプセルあるいはドライシロップの飲み薬です。オセルタミビルの副作用としては、嘔吐・吐き気・下痢などの症状が出る場合があります。オセルタミビルは、食事と一緒に服薬した方が、嘔吐・吐き気が出ることは少ないようです。オセルタミビルの副作用としては、この他、頻度不明ですが、ショック、アナフィラキシー様症状、肺炎、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis: TEN)、急性腎不全、白血球減少、血小板減少、精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)、出血性大腸炎、虚血性大腸炎等があらわれることがあるとされています。
また、オセルタミビル(商品名:タミフル)については、服用した十代の小児・未成年者が転落等により死亡した事例が報告されました。厚生労働省は、平成19年3月20日に、予防的な措置として、タミフルの製造販売元の中外製薬株式会社に対して、医療関係者への緊急安全性情報の配布を指示しました。緊急安全性情報の内容は次のとおりでした。
#1 10歳以上の未成年の患者は、合併症などを有するハイリスク患者を除いては、原則使用を差し控えること。
#2 小児・未成年者は、本剤(タミフル)による治療が開始された後は、異常行動発現の恐れがあり、少なくとも二日間、小児・未成年者が一人にならないよう、患者・家族に説明すること。
オセルタミビル(商品名:タミフル)の服用と異常な行動との関係については、厚生労働省において、因果関係を究明するための検討を進めました。インフルエンザに感染したがオセルタミビル(商品名:タミフル)を服用していない場合でも、異常行動の発現が認められています。インフルエンザと診断され治療が開始された後は、オセルタミビル(商品名:タミフル)の服用の有無を問わず、異常行動発現の恐れがあると考えられます。そのため、万が一の事故を防止するためには、特に小児・未成年者に対して、少なくとも二日間、オセルタミビル(商品名:タミフル)の服用の有無を問わず、小児・未成年者が一人にならないよう周囲の保護者等が注意することが重要です。
オセルタミビル(商品名:タミフル)の添付文書では、使用上の注意(重要な基本的注意)として、「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。」とされています。また、重大な副作用として、精神・神経症状、異常行動(頻度不明)があり、「精神・神経症状(意識障害、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)があらわれることがある。因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。」とされています。
なお、ザナミビル(商品名:リレンザ)については、添付文書で、使用上の注意(重要な基本的注意)として「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、[1]異常行動の発現のおそれがあること、[2]自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。」とされています。なお、「軽度又は中等度の喘息患者(ただし、急性のインフルエンザ症状を有さない症例)を対象とした海外の臨床薬理試験において、13例中1例に気管支攣縮が認められた。インフルエンザウイルス感染症により気道過敏性が亢進することがあり、本剤投与後に気管支攣縮や呼吸機能の低下がみられたという報告がある(呼吸器疾患の既往歴がない患者においても同様な報告がある)。このような症状があらわれた場合、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患等の慢性呼吸器疾患のある患者に本剤を投与する場合には本剤投与後に気管支攣縮が起こる可能性があることを患者に説明することとし、必要時に使用できるよう短時間作用発現型気管支拡張剤を患者に所持させること。なお、慢性呼吸器疾患の治療に用いる吸入薬(短時間作用発現型気管支拡張剤等)を併用する場合には、本剤を投与する前に使用するよう指導すること。」とされています。また、「本剤投与後に失神やショック症状があらわれたとの報告がある。この失神やショック症状はインフルエンザウイルス感染症に伴う発熱、脱水等の全身状態の悪化に加え、本剤を強く吸入したこと、または長く息を止めたことが誘因となった可能性がある。患者には使用説明書に記載されている吸入法を十分に理解させ、くつろいだ状態(例えば座位等)で吸入するよう指導すること。また、このような症状があらわれた場合には、患者に仰臥位をとらせ安静に保つとともに、補液を行うなど適切な処置を行うこと。」とされています。
アマンタジン(商品名:シンメトレル、アテネジン、アマンタジン塩酸塩)はもともとパーキンソン症候群の治療薬です。アマンタジンの副作用としては、中枢神経系の症状(神経質、不安、集中困難、フラフラ感)および胃腸症状(吐き気、食欲不振)などが出ることがあります。車の運転を避ける必要があります。また、アマンタジンの90%以上は、尿の中に排出されます。そのため、腎臓機能の悪い患者では、アマンタジンの血中濃度が上昇して副作用が出る恐れがあるので、用量を減らす必要があります。腎臓機能の悪い患者などで、強い中枢神経系の症状(著明な行動変化、痙攣、興奮、幻覚、譫妄)が出ることがあります。インフルエンザの予防や治療に短期投与中の患者で自殺企図の報告があるので、精神障害のある患者又は中枢神経系に作用する薬剤を投与中の患者では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与することとされています。てんかん又はその既往歴のある患者及び痙攣素因のある患者では、発作を誘発又は悪化させることがあるので、患者を注意深く観察し、異常が認められた場合には減量する等の適切な措置を講じることとされています。催奇形性が疑われる症例報告があり、また、動物実験による催奇形性の報告があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこととされています。なお、アマンタジンには抗コリン作用があり、散瞳を起こすことがありえるので、緑内障患者は使用しない方が良いでしょう。
耐性のないウイルスであれば、インフルエンザの発病2日以内に投与を始めれば、アマンタジンは、A型インフルエンザの病気の期間を短縮できます。ザナミビル、オセルタミビルも、発病2日以内に投与を始めれば、A型、B型のインフルエンザの病気の期間を約1日短縮できます。抗ウイルス剤に対する耐性ウイルスの出現を避けるために、A型インフルエンザに対するアマンタジンの治療は、3-5日間で、あるいは、A型インフルエンザの症状が消えて後24-48時間以内に打ち切ります。ザナミビル、オセルタミビルの推奨治療期間は5日間です。また、抗ウイルス剤を服薬しているうちに、抗ウイルス剤に対する耐性ウイルスが出現しインフルエンザ患者から排出されることがありえます。抗ウイルス剤に対する耐性ウイルスを広げないために、これらの抗ウイルス剤を服薬中のインフルエンザ患者は、他の人との接触をできるだけ控えることが望ましいです。
なお、近年、アマンタジンについては耐性のあるA型インフルエンザウイルスがほとんど(99-100%)となっているため、A型インフルエンザの治療や予防の目的でアマンタジンが使用されることはありません。また、アマンタジン(商品名:シンメトレル)については、添付文書で、使用上の注意(重要な基本的注意)として「『A型インフルエンザウイルス感染症』に本剤を用いる場合、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。」とされています。また、重大な副作用として異常行動(頻度不明)があり「因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。」とされています。
2010年1月には、新たに、ペラミビル(商品名:ラピアクタ点滴静注液)という抗インフルエンザウイルス剤が、日本国内で販売開始されました。A型又はB型インフルエンザウイルス感染症に対して静脈内に点滴投与されます。症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていないとされ、症状発現後,可能な限り速やかに開始することが望ましいとされています。通常は一回の点滴投与で終了ですが、症状に応じて連日反復投与される場合もあります。
2010年10月には、さらに、ラニナミビル(商品名:イナビル)という抗インフルエンザウイルス剤が、日本国内で販売開始されました。A型又はB型インフルエンザウイルス感染症に対して一回だけ吸入投与されます。症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていないとされ、症状発現後,可能な限り速やかに開始することが望ましいとされています。また、「本剤投与後に失神やショック症状があらわれたとの報告がある。この失神やショック症状はインフルエンザウイルス感染症に伴う発熱、脱水等の全身状態の悪化に加え、本剤を強く吸入したこと又は長く息を止めたことが誘因となった可能性及び本剤による可能性がある。患者には使用説明書に記載されている吸入法を十分に理解させ、くつろいだ状態(例えば座位等)で吸入するよう指導すること。」とされています。また、ラニナミビル(商品名:イナビル)については、2013年12月、A型・B型インフルエンザウイルス感染症の予防の効能が追加されました。
なお、ペラミビル(商品名:ラピアクタ点滴静注液)とラニナミビル(商品名:イナビル)、いずれとも、添付文書で、使用上の注意(重要な基本的注意)として、ザナミビル(商品名:リレンザ)と同様に、「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。」とされています。また、重大な副作用として異常行動(頻度不明)があり「因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。」とされています。
2018年3月に、新たに、バロキサビル-マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)という抗インフルエンザウイルス剤が、世界に先駆けて日本国内で販売開始されました。A型又はB型インフルエンザウイルス感染症に対して内服投与されます。一回の内服投与で終了です。症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていないとされ、症状発現後,可能な限り速やかに投与することが望ましいとされています。予防投与の適応はありません。
なお、バロキサビル-マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)について、重要な基本的注意として、「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず,インフルエンザ罹患時には,異常行動を発現した例が報告されている。異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として,(1)異常行動の発現のおそれがあること,(2)自宅において療養を行う場合,少なくとも発熱から2日間,保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること,について患者・家族に対し説明を行うこと。なお,転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については,就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと,発熱から2日間以内に発現することが多いこと,が知られている。」とされています。
また、バロキサビル-マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)について、重大な副作用として、「異常行動(頻度不明):因果関係は不明であるものの,インフルエンザ罹患時には,転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す,徘徊する等)があらわれることがある。」とされています。
バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)については、日本の製薬会社により開発され、海外では2018年10月まで発売されていませんでしたが、2018年10月24日、米国において、米国FDA(食品医薬品局)が、発病後48時間以内の12歳以上のインフルエンザ患者の治療薬として、バロキサビル-マルボキシル[baloxavir marboxil](商品名:ゾフルーザ[Xoflusa])を推奨しました。
一般名 (製品名) | 治療における用法・用量 | 予防における用法・用量 |
---|---|---|
オセルタミビル (タミフル:TAMIFLU) | 1回75mg内服、1日2回、5日間。 | 1回75mg内服、1日1回、7-10日間。 |
ザナミビル (リレンザ:RELENZA) | 1回10mg吸入(5mgブリスターを2ブリスター)、1日2回、5日間。 | 1回10mg吸入(5mgブリスターを2ブリスター)、1日1回、7-10日間。 |
ラニナミビル (イナビル:INAVIR) | 1回40mg吸入、1回投与のみ。重症化が予想される場合、倍量・複数回投与も可。 | 1回40mg吸入、1回投与のみ。 または、1回20mg吸入、1日1回、2日間。 |
ぺラミビル (ラピアクタ:RAPIACTA) | 1回300mgを15分以上かけて点滴静注、1回投与のみ。 | 予防投与の適応なし。 |
バロキサビル マルボキシル (ゾフルーザ: XOFLUZA) | 1回40mg(体重80kg以上であれば80mg)内服、1回投与のみ。 | 予防投与の適応なし。 |
インフルエンザでは高熱が見られます。高熱に対して解熱剤が使われることがあります。この解熱剤の使用については、注意が必要です。インフルエンザにかかったときに、使用を避けるべき解熱剤として、サリチル酸系医薬品(アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サザピリン、サリチルアミドおよびエテンザミド)、ジクロフェナクナトリウムおよびメフェナム酸があげられます。サリチル酸系医薬品については、ライ症候群(当・横浜市衛生研究所ホームページの「インフルエンザワクチンについて」・「水痘について」参照)の発生の恐れから、15歳未満の水痘、インフルエンザの患者には投与しないことが原則となっています。ジクロフェナクナトリウムについては、インフルエンザ脳炎・脳症を悪化させる恐れがあります。メフェナム酸についても、インフルエンザ脳炎・脳症を悪化させる可能性などについて研究が進行中です。このように使えない解熱剤が多いと、「どんな解熱剤を使ったら良いの?」ということになります。小児のインフルエンザでの高熱に対して、解熱剤を使用するのであれば、アセトアミノフェンが適切であるとされています。
こどもの急な発熱に備えて、以前にもらった熱さましの座薬などを冷蔵庫に保管している方もいらっしゃるかもしれません。インフルエンザにかかって急に高熱が出たときに、そのような取り置きの解熱剤をむやみに使ってはいけません。たとえば、インフルエンザ以外の病気でもらった熱さましの座薬などであれば、インフルエンザにかかったときに使用を避けるべき解熱剤である可能性があります。インフルエンザにかかって急に高熱が出たときに、解熱剤の使用を考える場合には、医師の助言を得て、適切な解熱剤を選択しましょう。
インフルエンザにかかった時には、抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無にかかわらず、異常行動が報告されています。異常行動としては、
・ 突然立ち上がって部屋から出ようとする、
・ 興奮状態となり手を広げて部屋を駆け回り意味不明なことを言う、
・ 興奮状態となり窓を開けてベランダに出ようとする、
・ 自宅から出て外を歩いていて話しかけても反応がない、
・ 人に襲われる感覚があり外に飛び出す、
・ 変なことを言い出し泣きながら部屋の中を動き回る、
・ 突然笑い出し階段を駆け上がろうとする、
等があります。また、因果関係は不明ですが、抗インフルエンザウイルス薬の服用後に、異常行動と関連すると考えられる転落死等が報告されています。厚生労働省では、異常行動による転落等のリスクを低減するための具体的な対策を示しています。小児・未成年者がインフルエンザにかかり、自宅で療養する場合は、以下のような対策を保護者等は実践しましょう(参考文献15、17)。
<具体的な対策>
原則
・ 小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無によらず、少なくとも治療開始後2日間は、保護者等は小児・未成年者を一人にしない
小児・未成年者が住居外に飛び出ないための追加の対策(例)
(1)高層階の住居の場合
・ 玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む)
・ ベランダに面していない部屋で寝かせる
・ 窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)
(2)一戸建ての場合
・ (1)に加え、できる限り1階で寝かせる
2000年11月17日改訂増補
2001年2月5日一部改訂
2001年10月1日改訂増補
2002年3月13日増補
2002年11月29日改訂増補
2003年9月24日増補
2004年10月13日増補
2005年12月7日改訂増補
2006年2月15日増補
2006年11月9日増補
2007年1月29日改訂増補
2008年1月4日改訂増補
2012年5月1日一部改訂
2013年4月24日改訂増補
2015年3月12日改訂増補
2017年11月22日改訂増補
2017年11月30日改訂増補
2019年1月23日改訂増補
2019年11月8日改訂増補
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電話:045-370-9237
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