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妊産婦の喫煙行動に関する研究(平成17年~18年)について

最終更新日 2019年11月12日

生活習慣(喫煙等)の変容、つまり、行動変容には、「無関心期」、「関心期」、「準備期」、「実行期」、「維持期」の5つの段階があります(図1)。多くの妊産婦は、「関心期」に属し、子育てのために必要な情報を積極的に得ようとする傾向にあると思われます。

一方で妊婦が喫煙すると、喫煙しない場合に比べ低出生体重、早産、周産期死亡等のリスクが高まるとされています。また、出産後も母親の喫煙により、こどもの気管支炎や気管支喘息のリスクが高まるとの報告もあります。

これらのことから、妊産婦を対象とした禁煙・防煙教育を行うことは、タバコ問題の対策の一つとして、効果的かつ必要であると考えられます。

図1 行動変容のステージ
図1 行動変容のステージの画像
出典:中村正和、生活習慣改善対策としての禁煙サポート、平成13年度たばこと子ども(東京都衛生局、東京都教育委員会)

今回は、平成17年度横浜市衛生研究所応募型調査研究課題(注1)として採択され、2年間の計画で実施した「妊産婦の喫煙行動に関する研究」の結果から、妊産婦等の喫煙行動に関する実態と妊婦へのタバコ教育の取り組みについて報告します。

(注1) 横浜市衛生研究所応募型調査研究衛生研究所職員が主任研究者となり、区福祉保健センター(保健所)や検査所等、他部署の職員と共に実施する調査研究

平成18年1月から12月にかけて、中区、保土ケ谷区、磯子区、港北区における妊産婦等の喫煙行動に関する実態把握を行いました。

(1) 調査方法

横浜市では、母子健康手帳を発行する際、市民の皆様に妊婦の年齢や出産予定日、仕事の有無、喫煙行動等を「妊娠連絡票」に記入していただいています。また、乳幼児健診のひとつである「4か月児健康診査」では、問診票に家族の喫煙行動の他、乳児の哺乳状況や出生時の体重、身長等についてご記入いただいています。今回の研究では、この「妊娠連絡票」と「4か月児健康診査の問診票」、さらに区福祉保健センターで実施している「母親(両親)教室」の受講者台帳を母親ごとに整理し、解析することで、妊産婦等の喫煙行動の実態を把握しました。

なお、調査資料には個人情報が含まれるため、情報の利用について同意が得られた方の資料のみを用いました。

(2) 結果

調査対象者の内訳

平成18年1月~12月に、4区で実施した4か月児健康診査104回を受診した母子6,408組のうち、妊娠連絡票の情報を母親ごとにつなぎ合わせることができた2,848組(全体の44.4%)が解析の対象になりました(表1)。

表1 調査対象者の内訳

表1 調査対象者の内訳の画像

母親の喫煙率の変化

妊娠連絡票記入時(以下、妊娠中)と4か月児健康診査問診票記入時(以下、産後)では、4区ともに産後の喫煙率の方が高く、妊娠を期にタバコをやめた者が、産後に喫煙を再開するケースが見られました(表2)。

表2 母親の喫煙率の変化
表2 母親の喫煙率の変化の画像
* 妊娠連絡票は、妊娠4か月未満(16週未満)に記入されたものが9割を占めていたため、妊娠連絡票から得られる妊婦の喫煙行動は、妊娠初期のものを反映していると考えられます。

また、母親の年齢、仕事、出産経験、父親の喫煙行動が、母親の妊娠中、産後の喫煙率と禁煙成功率に影響を与えるかを調べたところ、中区に一部例外がみられたものの、4区に共通した実態が明らかになりました(表3)。ここで、禁煙成功率とは、妊娠中に喫煙していたもしくは喫煙をやめた者のうち、産後に喫煙していない者の割合を示します。

表3 母親の喫煙行動に影響を与える因子(4区の共通点)
表3 母親の喫煙行動に影響を与える因子(4区の共通点)の画像
*1 妊娠中に喫煙していたもしくは喫煙をやめた者のうち、産後に喫煙していない者の割合(禁煙成功率)
*2、*3 中区で例外あり

まず、20~24歳の喫煙率が他の年齢階級より高いことがわかりました(図2)。ただし、中区の産後の喫煙率は、25~29歳が最も高く、次いで20~24歳と40歳以上が高く観察されました。次に、仕事を持つ母親より、持たない母親の方が喫煙率は高く(表4)、禁煙成功率は低いことがわかりました。出産経験については、第1子を出産した母親より、第2子以降を出産した母親の方が、喫煙率は高く、禁煙成功率は低いことがわかりました。ただし、中区の妊娠中の喫煙率は、第1子を出産した母親の方が高く観察されました。父親の喫煙行動については、4か月児健康診査の問診票から情報を得ました。父親が喫煙する家庭より、喫煙しない家庭の方が母親の喫煙率は低く、禁煙成功率は高いことがわかりました。

図2 20~24歳の母親の喫煙率が高い(磯子区の例)
図2 20~24歳の母親の喫煙率が高い(磯子区の例)の画像

表4 母親の喫煙率(港北区の例)
表4 母親の喫煙率(港北区の例)の画像

*統計学的な有意差(p<0.05)あり

妊婦の喫煙が及ぼす胎児への影響

出生時の子の体重、身長、胸囲、頭囲をもとに、妊婦の喫煙が胎児の発育に影響を与えるかを調べました。先行調査では、妊婦が喫煙すると、喫煙しない場合に比べ、低出生体重のリスクが増大すると報告されていますが、今回の調査では、4区ともに妊婦の喫煙によって出生時の子の発育に差はありませんでした。これは、調査対象者のうち、タバコを吸う母親がごく少数であったことが一因と考えられます。妊婦の喫煙と胎児の発育状況の関係を調べるには、さらに情報の集積が必要です。

乳児を取り巻くタバコの状況

4か月児の家族の喫煙率は、中区41.7%、保土ケ谷区43.7%、磯子区44.7%、港北区39.2%でした(図3)。タバコを吸う家族の内訳をみると、4区ともに母親以外の家族(主に父親)が最も多く、中区86.5%、保土ケ谷区87.7%、磯子区85.0%、港北区90.3%でした。

図3 家族の喫煙行動とその内訳(保土ケ谷区の例)
図3 家族の喫煙行動とその内訳(保土ケ谷区の例)の画像

4か月児健康診査時の授乳状況は、4区ともに母乳のみを与えている割合が最も高く、中区56.1%、保土ケ谷区55.8%、磯子区56.7%、港北区56.3%でした。

産後の母親の喫煙行動によって授乳状況に違いがあるかを調べたところ、4区ともにタバコを吸う母親は、吸わない母親と比べ、人工乳(ミルク)を与えている割合が高く、母乳のみを与えている割合は低いことがわかりました(図4)。

図4 母親の喫煙行動別授乳状況(中区の例)
図4 母親の喫煙行動別授乳状況(中区の例)の画像

母親(両親)教室の受講状況と喫煙率

第1子を出産した母親で母親(両親)教室を受講したことのある母親の割合は、中区47.0%、保土ケ谷区28.0%、磯子区63.9%、港北区50.4%でした。

4区ともに母親が教室に参加した家庭は、参加しない家庭に比べ、母親と父親の喫煙率が低い傾向がみられました(表5)。

表5 母親(両親)教室受講状況と父母の喫煙率

表5 母親(両親)教室受講状況と父母の喫煙率の画像


*母親(両親)教室の対象者は原則、第1子出産予定者とされています。

まとめ

今回の調査は、情報の利用について同意が得られた方のみを対象としたため、得られた結果は4区の妊産婦等の喫煙行動すべてを反映したものではありません。しかし、このような実態をふまえ、禁煙・防煙の方策をたてていくことは重要だと考えられます。例えば、妊産婦への啓発を考える場合は、その家族への情報提供も考慮して実施していくことは有効と考えられます。

タバコの煙は、胎児だけでなく、生まれてきたこどもにも有害です。健やかなこどもの成長を願い、可能な限りタバコのない環境をこどもへ与えることが必要です。

「妊産婦の喫煙行動に関する研究」では、平成17年に衛生局(現 健康福祉局)、子育て支援事業本部(現 こども青少年局)、福祉保健センターの職員でプロジェクト委員会を組織し、母親(両親)教室を受講する妊婦を対象としたタバコの教育プログラムを作成しました。母親(両親)教室を受講する妊婦の喫煙率は低いことが予想されたため、受動喫煙の害についての情報を多く取り入れました。教育プログラムは、教育ビデオ「妊娠・子育てと"タバコ"」(図5)と配布物で構成され、中区、港北区の母親(両親)教室で実施されました。

なお、配布物は、教育ビデオの概要とカイワレ大根の実験(注2)方法についてのプリント(両面刷り1枚)(PDF:223KB)と、カイワレ大根の実験キット(カイワレ大根の種、コップ、カット綿)としました。

図5 教育ビデオ「妊婦・子育てと"タバコ"」(13分)の概要
(教育ビデオの詳しい内容はこちら(PDF:646KB)図5 教育ビデオ「妊婦・子育てと


(注2) カイワレ大根の実験
注2 カイワレ大根の実験


この教育プログラムを受けた妊婦(137人)の喫煙率(2.2%)は産後下がり(0.7%)、母親が教育プログラムを受けた家庭の父親の喫煙率(33.3%)は、教育プログラムを受けなかった家庭の父親(24.1%)に比べ低いことがわかりました。しかし、もともとタバコを吸う妊婦が少なく数名であったことと、母親が教育プログラムを受ける前の父親の喫煙率が不明であることから、教育プログラムが明らかに有効とは判断できませんでした。

本研究では、紙で別々に保管されている行政資料(4か月児健康診査の問診票、妊娠連絡票、母親(両親)教室受講者台帳)を母親ごとに整理しなおすことで、妊産婦等の喫煙行動の実態という新たな情報を得ることができました。これは、日々の業務で得られる情報を別の角度から観察することで、市民の健康状況等を把握できることの一例になったと考えられます。今後も、市民の皆様からいただいた情報を、より市の事業に反映できるよう、有効に活用する方法を検討していきたいと思っています。

最後に、「妊産婦の喫煙行動に関する研究」は、中区、保土ケ谷区、磯子区、港北区の市民の皆様の御協力を得ることで、実施できました。この場をかりて、厚くお礼申しあげます。

2009年10月1日掲載

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