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最終更新日 2019年3月15日
アメリカ合衆国のアリゾナ州は、アメリカ合衆国の南西部に位置し、雄大な渓谷「グランドキャニオン」のある州です。南にメキシコと国境を接し、アメリカ合衆国の西部劇映画でよく見られるサボテンと砂漠の風景もまたアリゾナ州の風景であり、夏の暑さは厳しいです。冬でも暖かく、野球の大リーグの開幕に備えてのキャンプもよくアリゾナ州で行われています。
さて、2004年8月、アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックス郊外で、2歳と4歳の二人の姉妹を自家用車に鍵をかけて残していた母親が、午後5時50分に自家用車に戻ったところ、姉妹が何の反応もない状態になっているのに気づきました。姉妹は、車内に15分以上閉じ込められた状態になっていました。自家用車の車内および車外の気温は記録されていません。当日の当地は暑く、車外の気温は32-38度程度と推測されます。救急隊員が駆けつけたときには、姉妹は心臓の拍動が止まっていました。救急隊員は直ちに救命処置を開始し、ヘリコプターで病院に搬送する間には、骨髄針による緊急輸液路確保後、エピネフリンとアトロピンの投与を繰り返し行いました。病院の救急部で直腸温を計測したところ、姉は40.6度、妹は41.3度でした。病院の救急部に到着後、姉妹は二人とも10分以内に死亡を宣告されました。監察医(ME : medical examiner )による解剖が行われましたが、脳の強度の浮腫が姉妹二人とも、認められました。強い日差しを受けて自家用車の車内が高温となったことによる高熱症(過高熱:hyperthermia)が死因と考えられました。
アメリカ合衆国のアリゾナ州では、夏の高熱環境が直接の原因で毎年30-50人が亡くなっています。大部分が65歳以上の高齢者ですが、乳幼児も亡くなっています。2004年、アリゾナ州では夏の高熱環境が直接の原因で34人が亡くなりましたが、その中には、駐車した自動車に残されて死亡した乳幼児が3人含まれています。
アリゾナ州の夏の暑い日差しの中では、直射日光の中に駐車した自動車内の温度は急速に上昇します。最初の10分で、温度は約11度程度上昇し、摂氏54度以上に上昇する可能性もあります。最初の20分では、温度は17度程度以上上昇し、摂氏60度以上に上昇する可能性もあります。自動車内がこのような高い温度になると、数分間でも、重症の疾患となったり、死に至る可能性もあります。
アメリカ合衆国で、自動車に残されて熱中症で亡くなったこどもの数は、年間で、1998年に25人、1999年に31人、2000年に29人、2001年に35人、2002年に33人、2003年に42人、2004年に35人です。2003年の死亡者数は、42人と多かったですが、テキサス州で10人、フロリダ州で6人、アリゾナ州で4人、カリフォルニア州で3人と南方の州で多かったです。
McLarenらが、カリフォルニア州のFremontで2002年の5月16日から8月8日にかけて快晴の日に、日差しの中に駐車した濃紺の自動車で車内の温度等を測定する研究を行っています。厳しい暑さではない外気温が摂氏22.2度の日でも閉め切った車内の温度は、60分で摂氏47.2度に到達しました。このような高い温度は、クーラーを使ったり、冷たい飲み物を飲んだり、自動車の外に出たり等の対応ができないこどもやペットには特に危険です。また、温度上昇の80%は、前半の30分の間に見られました。なお、外気温が摂氏22.2度から摂氏35.5度にかけての範囲で車内の温度の測定が行われましたが、外気温に対して車内の温度は、60分で平均で22.8度上昇しました。自動車の窓を3.8cm開けての測定も行われましたが、60分後の車内の温度は、閉め切った場合と差が見られませんでした。
熱中症予防のために、こどもやペットを自動車内に残さないようにしましょう。
さて、こどもは、大人にとって思いがけない行動をして大人を驚かせることがあります。2001年の7月下旬、テキサス州で、窓を閉め切った自動車の中に具合が悪くなった2歳の男の子が一人でいるのが見つかりました。どのくらいの時間、閉じ込められた状態にあったのかは、わかりません。2歳の男の子は、自分で自動車に入り込み、自分でドアを閉めてしまい、自動車の外に出れなくなってしまったものと考えられました。自動車の中と外の温度は記録されていません。しかし、その当時の当地の気温は、摂氏35-37度程度だった可能性があります。運ばれた病院での2歳の男の子の口腔内の温度は、摂氏39度でした。2歳の男の子は入院し治療を受けましたが、二日後に死亡しました。死亡には熱中症の関与が考えられました。自動車に小さなこどもが一人で入りこまないように、自動車の管理はきちんとしましょう。
2006年8月31日初掲載
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