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1章 4.成年後見制度と福祉サービス利用援助事業

最終更新日 2019年2月1日

1章 利用者の立場に立った社会福祉制度の構築

4 成年後見制度と福祉サービス利用援助事業‐横浜生活あんしんセンターの事業展開‐

4 成年後見制度と福祉サービス利用援助事業‐横浜生活あんしんセンターの事業展開‐

(「あんしんセンター」の設置趣旨)

  • 介護保険制度を嚆矢とする社会福祉基礎構造改革によって、福祉サービスの提供手法が、措置制度から利用契約制度に移行する。新制度の下では、本人の自由な選択に基づいて契約が締結されることになるが、痴呆性高齢者や知的障害者等、判断能力が不十分な人は適切な契約締結が困難な状況にある。
  • 横浜市では、判断能力や身体能力が低下した高齢者や障害者が安心して日常生活を送ることができるように支援するため、生活上の各種相談を受けるとともに、契約に基づく財産保全や定期訪問・金銭管理サービス等を実施する機関として、平成10年10月に市社会福祉協議会を運営主体として、後見的支援機関「横浜生活あんしんセンター」を設置した。

(国の動向と課題)

  • 厚生労働省では、福祉サービスの利用制度化に伴い、利用者の利益を保護するための制度として、福祉サービス利用援助事業の一つとして地域福祉権利擁護事業を創設したが、この事業では、
    ア、既に意思能力を喪失している痴呆性高齢者や知的障害者に対する支援が十分にできない。
    イ、契約締結後、意思能力を喪失した場合は契約が失効するなど、必ずしも十分な対応が取れるものではない。
    そこで、上記ア、イの状態にある人々も、安心して日常生活を継続できるように支援するため、新しい成年後見制度の適切な活用が求められている。

(「あんしんセンター」の取り組み)

  • 「あんしんセンター」では、契約締結後利用者が意思能力を喪失した場合を想定して特約付の契約を締結することにより継続的な生活支援を図ることとしてきたが、今後は、地域福祉権利擁護事業を横浜市の状況を踏まえつつ実施するとともに、新しい成年後見制度の下に、法人後見業務を実施し、両者の一体的な運用により判断能力の不十分な高齢者等の継続的な生活支援に取り組むことを目指している。

(「あんしんセンター」の今後の展開)

  • 新しい成年後見制度の実施や福祉サービスの利用制度化に伴い、今後利用者の増加が確実に見込まれるが、利用者の生活ニーズにきめ細かく応えていくためには、利用者にとってより身近な地域に権利擁護の拠点が求められ、それを担っていく主体として区域における地域福祉の推進役と位置づけられる区社会福祉協議会が期待されている。

(「あんしんセンター」とソーシャルワーカー、保健婦の連携)

  • 「あんしんセンター」の相談事例を通じ、例えば虐待など措置という手法でも対応し切れていない福祉課題が本当にいろいろあるということを改めて実感した。措置での対応が困難な課題について、ソーシャルワーカーや保健婦が「あんしんセンター」と連携することによって解決する手法を検討することが重要である。
    例えば虐待事例について、保健婦が「あんしんセンター」に持ち込み、解決に結びついた事例がある。横浜の場合は、ソーシャルワーカーと保健婦がチームを組んで、虐待などなかなか本人から訴えられない困難事例を発見してくるという基盤がある。地域福祉権利擁護事業の実績が多いのも、このような発見機能があるからである。大都市でこれだけ発見機能を備えている点で、横浜は自信を持ってよい。

(措置制度と後見制度)

  • 従来の措置制度は、ある意味では、行政が後見的な役割を果たしてきた制度とも言えるのではないか。今回の新しい成年後見制度の中では国家後見という考え方は出てこなかったが、そのような状況下で、措置制度が原則的に廃止され利用契約制度に移行する際に、知的障害者や痴呆性高齢者のように契約制度に馴染みにくい人たちに対しどのように公的に対応していくのか、その手法を「あんしんセンター」が編み出しつつあるのではないかと考えられるが、理論的な整理が必要である。その際、今回、市町村長に付与された後見開始等の審判請求の位置付けも整理する必要がある。
  • 一般市民には成年後見が何なのか、地域福祉権利擁護事業が何なのか、「あんしんセンター」が何なのかは非常に分かりにくいので、なるべく分かりやすい形で広報を行うなど適切に情報提供を行う必要がある。

1. 生活圏レベルでの展開

(増大するニーズ対応としての地域展開)

  • 措置制度から利用契約制度へ移行すると、「あんしんセンター」は、利用者が確実に増加するとともに、これまで以上に利用者の生活ニーズにきめ細かく応えていくことが期待される。その場合に横浜市内全域を桜木町にある「あんしんセンター」の事務所1か所で対応していくことはとても困難である。

(「地域福祉の一環としての地域展開」と「地域展開すべき事業」)

  • 地域福祉の一環として、地域福祉の発想でこの事業を展開していく必要がある。そこで、区域における地域福祉の推進役と位置付けられる区社協で事業展開をすることも考えられるが、その場合、区社協は問題を抱えた地域住民を発掘し、区の福祉行政と連携しながら、地域の視点でこの事業に取り組むことが重要である。
    十分に機能を高度化しながら地域展開することが必要だが、当面、区社協で行う業務内容としては、
    ア、高齢者・障害者に対する一般相談・調整業務
    イ、地域福祉権利擁護事業の生活支援員の活用も踏まえた、見守り的サービス(定期訪問・金銭管理サービス)が想定される。
    これらの業務を通じて、身近な場での市民ニーズの発見と地域の人材を活用した支援体制づくりの中で、新たな地域福祉の展開を目指すことが可能となる。

(市社協の「あんしんセンター」で実施すべき事業)

  • 市社協の「あんしんセンター」では、法人後見業務、専門相談、サービス契約手続、及び財産保全サービス事業を実施するとともに、各区社協への支援業務や連絡調整を実施することで市域全体の水準を確保していくことを目指すべきである。その際、個別の利用者について、どのような状態の人に対して、どのような生活支援が行われ、モニタリングの結果はどのようになっているか等について、情報ネットワークを活用して、利用者の状況を把握し集積していくという情報システムを構築する必要がある。ソーシャルワークとは情報活動である。そういう視点での機能の見直しはとても重要である。

2. 関係機関のネットワーク化

(区社協の活性化)

  • 区社協で事業展開していくことは、区社協の活性化につながる。「あんしんセンター」の業務は、その人がいかにして地域で暮らし続けることができるかということを考え、できるだけ区内のネットワークを活用して支援することであり、そのような事例はたくさんある。このような業務が、区社協業務となれば、区社協が地域住民のニーズに応えていくために、関係機関とのネットワークを新しく構築する一つのきっかけになるのではないか。

(横浜権利擁護関係機関連絡協議会との連携)

  • 「あんしんセンター」が呼びかけて、法務局、家庭裁判所、弁護士会、医師会、労働基準監督署、民生委員・児童委員、横浜市、神奈川県、県社協等々の権利擁護問題に関わる機関や組織、団体で構成する「横浜権利擁護関係機関連絡協議会」が設置された。横浜の場合、福祉事務所ソーシャルワーカーや保健所保健婦などの行政が動いてくれる強みがさまざまな場面で見えており、この連絡協議会の構成機関等と十分連携して「権利擁護ネットワーク」が構築できれば大きな力となる。是非とも密接な連携を確保すべきである。

(エンパワーメントと「あんしんセンター」の地域展開)

  • 契約概念の希薄な日本では、エンパワーメントの部分で、後見的支援機関の役割は何なのか、何が求められていて、それに対する的確な支援とは何なのか、ということを実験を通して見極めている段階ではないかと思う。それを明確にして、区のレベルで何を実施すべきなのかを整理し、地域展開する必要がある。

(エンパワーメントに関する区社協の取り組み)

  • 高齢者も障害者も含めて市民の一人ひとりが福祉サービスを適切に利用するために、適正な契約を締結する力をつけていく事業を身近な区社協で展開してはどうか。契約できる力をつけることへの支援であるとか、サービス利用の仕方の講習会などを充実していくという必要性は今後ますます強くなると思われる。

(指定都市社協を地域福祉権利擁護事業の実施主体に)

  • 地域福祉権利擁護事業は都道府県社会福祉協議会を実施主体としており、現在、「あんしんセンター」は県社会福祉協議会から委託を受けて実施している。従来からの懸案である県社協と指定都市社協の関係の問題が棚上げされたままである。早期に市社会福祉協議会が実施主体となれるよう、国に要望していくべきである。

このページへのお問合せ

健康福祉局地域福祉保健部福祉保健課

電話:045-671-4044

電話:045-671-4044

ファクス:045-664-3622

メールアドレス:kf-fukushihoken@city.yokohama.jp

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