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2章 2.社会福祉協議会の新たな課題

最終更新日 2019年2月22日

2章 地域福祉の推進と資源開発

2 社会福祉協議会の新たな課題

  • 社会福祉法は、従来の「共同募金及び社会福祉協議会」の章を、第10章「地域福祉の推進」として再構成した。社会福祉協議会に関しては、
    ア 社会福祉協議会は、「地域福祉の推進を図ることを目的とする団体」である旨を明確化するとともに、
    イ 新たに「社会福祉に関する活動を行う者(ボランティア等)」が協議会に参加する構成員であることを明記している。これに伴い、「法人社協モデル定款」によると、役員(理事)の選任については、「ボランティア活動を行う団体の代表者を加えること」としており注目される。
  • 今回の改正において、利用者本位の社会福祉制度を確立するためには、利用者が身近な地域で多様な福祉サービスを利用し、自立した生活を送ることを支援する仕組みを構築するとともに、地域福祉の推進を図ることが必要となるという基本的考え方に立っている。
  • 現在の社会福祉協議会の活動は、事業者間の連絡調整に止まらず、社会福祉活動への住民参加を推進するための事業や住民参加による社会福祉を目的とする事業の実施が中心となっており、今回の改正により、社会福祉協議会の役割が地域福祉の推進の中心的担い手として明確に位置づけられたものと理解できる。
  • さらに、社会福祉協議会はその公共的な性格ゆえ、都道府県社協に止まってはいるが、権利擁護や苦情解決などの新しい事業に取り組むこととされている。今後ともさらに、その公共性を活かし行政とのパートナーシップを押し進めながら、新しい課題にどのように応えていくのか、現状脱皮も含めて、その役割への期待はますます大きくなると思われる。
    この検討会においても、地域福祉の推進の中心的な担い手として社会福祉協議会への期待を込めて検討を行った。
  • 本市は、指定都市として、市社会福祉協議会と18区社会福祉協議会を合わせ19社協が社会福祉法人格を有しており、市社協と区社協の職員数は332人となっている(平成12年12月1日現在)。また、245の地区社協が任意団体として存在している。
    財政規模では、市社協の12年度予算額は約141億円となっている。
  • 今回、福祉局において関連基礎調査として、1、18区社協の面接聞き取り調査、2、245地区社協への往復郵送調査、3、49地区社協への面接聞き取り調査を実施した。

(寝たきり社協、寝たふり社協)

  • 寝たきり社協、あるいは寝たふり社協という表現がある。寝たきりとは、地域福祉活動をやろうと思ってもさまざまな障害があってできない、寝たふりとは、分かっていても、あまり仕事に身を入れず、頬被りしてしまう姿を指している。そこには一般的に、理事会の形骸化、行政からの派遣やOB職員を数多く抱えるなどの事務局の問題、定型業務に安住して谷間の課題を見つける感性に欠ける職員の意識、若くてやる気のある職員を組織がうまく育成できない等々、気づいていても解決への着手がなかなか難しいという社協の持つジレンマが見られる。
    これらは、本市の社会福祉協議会にも当てはまる部分があるのかどうか、一度検討する必要性があると言えるだろう。

(職員体制等)

  • 横浜市社協と18の区社協は別法人であるが、協定を結び、区社協116人の職員はすべて市社協の職員でもある。人事権は市社協が一括して持っていて、市社協、18区社協、事業の委託を受けている地域ケア施設等の間での配置換が行われている。16か所の地域ケア施設運営事業の委託契約については、区役所から市社協に委託されており、区役所と区社協との連動性は希薄である。

(区社協調査の結果から)

  • 今回の区社協の調査結果から、地区社協の会合へ「毎回出席」と「時々出席」を合計しても50%を超えていない等、区社協担当者は忙しくて地域に出られないという実情が見えてきた。その中でも少数であるが、地区担当制を採るなどの工夫をして、地域との関係づくりをしている区社協もある。また、個人の生活相談、問題解決に関しては、区社協の役割かどうかを疑問視しているなどの社協活動の根本に関わる意見もあった。区社協活動が区民の生活から遊離してしまうことがないよう、区民にとって社協活動の持つ大切な部分をどう構築するかを考えなくてはならない。

(市の働きかけの歴史が現状に反映)

  • 現在の社協の姿には、市の働きかけの歴史が反映している。初期は、高額療養費の貸付事業等が仕事であった。その後、各区社協が法人化され、事務局長と職員1人と、嘱託員1人の3人体制となった。平成11年度に職員が2人増員になったが、同時に区から8団体の事務を任された。そのほか事務局次長が1人ずつと、福祉保健活動拠点が設置された9区にボランティアコーディネーター1人が配置されている。この人員構成では、もともと新しい事業を行う余地はほとんどないといえるが、事業にメリハリをつけ、ビジョンと指導力を持った管理職がいると内容は随分変わるであろう。また、人口7万人の区も29万人の区も同じ基準で6人ないし7人の職員配置となっている。

(区社協は区役所が地域に働きかける時の最大の連携先)

  • 区役所は機能強化されてきて、指定都市の中でも自由にできる予算の規模は大きい。その区役所が地域に働きかけていく時の最大の連携先は区社協といえる。その際、区役所は単独で事業を企画し、その結果を区社協に一方的に依頼するのではなく、普段から、区と区社協は対等・平等な連携を保つことが理想である。

(きちんとした業務分析が、「忙しさ」を解明する)

  • 区社協は忙しいと言われている。ボランティア活動をしている市民が「地域支えあい連絡会」では何をしたらいいのかとの問いかけに対して、区社協は忙しさを理由に対応が十分できないこともある。また、区社協の調査結果からも、地域のニーズ把握ができないことや、住民活動に関われないことなどの理由に団体事務も含め事務局の忙しさが挙げられている。忙しさの解明のためには、きちんとした現状の業務分析が必要だが、やられていない。過去の地域福祉活動計画を作る時にも業務分析はあまりやられていないようなので、業務分析を行った上で、現行事務事業の継続性の要否を検討することなども含めて業務の見直しが必要である。

1.区社会福祉協議会の大切な機能

(区民の個別相談機能)

  • ボランティアセンターに持ち込まれる個別ニーズへの対応や、生活福祉資金の貸付けでは、行政サービスでは解決しきれない課題が多く持ち込まれ、社協にとっては大切な個別相談のきっかけとなっている。それらの相談に対しては、ボランティア活動やインフォーマルな部分を駆使して課題解決に当たっていくが、今後、区社協において「あんしんセンター」の機能の一部である福祉サービス利用援助事業を地域展開する際に、重要なのはこれらの個別相談機能を充実強化することである。

(社協ならではの相談機能を明確にする)

  • 障害福祉の分野で、各区に順次整備されていく法人型の障害者地域活動ホームが、今後相談機能を持つことも想定すると、社協ならではの相談機能・解決機能とは何か、また、行政が行うものとの役割分担についての整理が課題となる。その際コミュニティワークとしての相談機能を明確にしていくことが必要で、そのことはこれからの社協にとって必要な人材育成の課題とも結びつく。

(地域で"泳ぐ")

  • 区社協はさまざまな制約や限界があるからといって諦めるのではなく、民間性や先駆性を活かして地域で事業を展開していく。地域で"泳ぐ"ことができるのが社協活動である。

2.他機関との連携のあり方

(障害者の生活課題には在援協とともに関わる)

  • 障害者地域作業所への支援を行ってきた在援協は、障害当事者の人たちの声を吸い上げて、地域福祉の推進に重要な役割を果たしている。区社協も在援協とともに地域の重度障害者の生活課題に積極的に関わるべきである。その意味で在援協のあり方も検討課題となる。

(区役所福祉保健センターとの連携により、自主財源を生み出す)

  • 来年度(13年度)、区役所の福祉と保健部門は完全統合され、福祉保健センターになる。福祉保健センターと社協がどのように連携していくかが重要である。福祉保健センターの中に設置される企画部門が区づくり予算を使って、委託、補助の手法により、区社協と連携して取り組めば、その区の地域課題の解決は今までより円滑になる。普段から、区と区社協は対等・平等な関係を保ち、事業の企画段階から一緒に検討していけるとよい。そうなると、区の財源というのは見方を変えると同時に区社協活動の貴重な自主財源と捉えることもできる。

(社協は参加団体みんなの組織)

  • 区社協は構成団体や関係団体の事務の仕事に汲々となるのではなく、反対に事務局は団体が仕事をする仕掛け作りに転換すべきである。社協というのは参加団体みんなの組織だという気持ちを大事にして、できるだけ自分のことは自分でするよう協力しあえば除々に改善できる。そうなれば区社協は新しい仕事にも取り組めるようになるし、最近そのような例も見られる。

(NPOや地域の活動団体の変化をつかむ)

  • 横浜の場合、障害者を含めてさまざまな市民活動が活発に動いており、市社協のレベルではそれらの活動との関係ができてきたが、次にそれを区社協のレベルにどう移し替えていくかが課題である。また、昭和40年代に開発された大規模団地の例で、最初は地縁団体が高齢者にサービスを提供していたが、団体自身が高齢化して自らが利用者になった。地域そのものがサービスの受益者であり、担い手となってきている。そうなると今までの措置の対象者に手を差し伸べるというような構造とは違った意識が現れてきて、その意識の変化は地区社協の活動に大きく反映していく。
    社協は、民生委員と地縁組織が含まれた地域の網羅型の組織といわれているが、当事者団体やNPOが現われて構造変化が起こっている。NPOの方は積極的に新しいことを引き受けますという組織であり、障害者団体も行政に任せず、自分たちがやるという自立型の団体に変わり始めている。地域のさまざまな団体の性格が変わり始めていることを社協としてきちんとつかむ必要がある。

3.今後の期待

(区社協のミッション(使命)とは何か)

  • 今後に向けての大きな課題は、地域の福祉課題を見据えて、区社協が置かれている制約と限界をどう克服するのかということである。区社協は、取り組むべきテーマ、自主性、組織構造、人員構成などさまざまな課題が指摘されるが、区社協とは何か。何が仕事の核心なのか。何をしなければならない組織なのか。端的に言えば区社協のミッションとは何かということだと思う。それを何らかの形にして、是非、自らが提言する試みをする必要がある。また、市の働きかけの歴史が現在の社協に反映している点からも、市が社協に対するビジョンをより明確にすることができたらよいと思う。

(先駆的な事業を担う)

  • 今後も、「あんしんセンター」や「ウィリング横浜」のように社協でなくてはできない先駆的な事業を担っていく。これらを精力的にやっているところは活気がある。また、社協の外出支援サービス事業を障害児が利用していることをきっかけにして、障害児の地域での課題がたくさん出てきている。それらの地域ニーズを掘り起こしながら支援していくことは、どこもやれていないが非常に重要である。掘り起こされたニーズに本気で対応していくべきである。また、情報提供の分野において、選択ができ、他と比べられる情報提供の実施主体として社協が持っている「ウィリングネット」の活用なども検討の値があろう。

(継続している事業の検討を)

  • 新規事業に取り組むためにも、現行事業の継続性についての検討が必要である。例えば、ボランティア対応で行う移送サービスは、市民からは重宝がられているが、障害のある方の通院などは医療保障という面での仕組みを整備する必要があるのではないか、そういう意味でいつまでも全てを社協の事業として行うことでよいのか、事業の方向性を見据えた見極めを必要としている。
    また、地域福祉の推進の観点からは、区と区社協の連動性を高めて行くためにも現在市社協が受託している地域ケア施設の運営を条件整備した上で、区社協に任せるべきと思うが、これも課題のひとつである。

(大事なことは市民にとっての分かりやすさ)

  • 「個別相談」、「総合相談」、「ボランティアコーディネーター」、「組織化」等の言葉は、具体的に何をやるのかが非常に分かりにくい。大事なことは誰にでも分かるようにきちんと説明できることで、それができると社協活動は非常に分かりやすくなる。「ウィリング横浜」や「生活あんしんセンター」は、社協の事業として分かりやすい。地域ケア施設の受託もそれに近い。
    地域でボランティア活動を行っている人達から見ても社協活動は分かりにくい。この分かりにくさは社協は地域のボランティアセンターであったり、さまざまな事業を展開しいろいろな顔を持っているという面もあるが、忙しいとか、数年で職員が異動してしまうとかの理由で、地域とつながっていない、本気でつながろうとしていないからだと思う。最近の「地域支えあい連絡会」でも、「地域との協働ですよ。」と一方的に投げかけられることがあるようで、地域からすると自分たちとどのようにつながって進めるのかが分からず戸惑う。だから、逆に言うと、地域の声を十分聞いて、地域で何か困ったことがあったらきちんとコーディネートして支えるという姿勢を明確にして、事業の組立などのやり方を分かりやすく、具体性のある提案ができるようになれば、必ず地域の賛同が得られると思う。

(地域福祉を推進するための理事会、事務局のあり方)

  • 地域福祉の推進に対応する社協にしていくために、理事会や事務局の問題がある。「事務局中心の活動から住民主体の社協へ」という考え方があるが、現在の役員や組織構成の中で、住民主体とするのはなかなか難しく、全国的に見てもそれができているところは多くない。そこで、「事務局中心の活動をきちんと展開する」方が現実的であり、その結果として住民主体の部分が築きあがっていくという意見や、理事の選出に一部公募制を導入するなどして、今の市民ニーズに見合った活動ができる理事会にしていくべきという意見もある。また、ボランティア活動団体の代表者を理事にする方向が示されているので、実際に活動している人達が参加して発言力を持ってくれば、理事会も自ずと変わっていくであろうという見方もある。いずれにしても事務局長のあり方は大切で、若い人の努力をきちんと受けとめ、新しい時代の動きに応えようと工夫している事務局長がいる社協は、地域のネットワークも広がっていくし、違ってくると思われる。

(区社協へのスーパービジョン体制の整備)

  • これから区社協が中心となって地域福祉の推進に取り組んでいくのであれば、区社協職員の研修が重要となるが、それとともに、スーパービジョン体制を整備することが課題となる。市社協と横浜市は区社協のスーパービジョン体制の整備について、必要な支援も含めて、検討する必要がある。

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健康福祉局地域福祉保健部福祉保健課

電話:045-671-4044

電話:045-671-4044

ファクス:045-664-3622

メールアドレス:kf-fukushihoken@city.yokohama.jp

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