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2章 1.地域福祉計画

最終更新日 2019年2月1日

2章 地域福祉の推進と資源開発

1 地域福祉計画

  • 社会福祉法は、基本理念のひとつとして「地域福祉の推進(第4条)」の規定を設け、その主旨は、国民の福祉ニーズに十分応え社会福祉の増進を図るためには、福祉サービスの総合的な提供体制の確立とともに、社協、ボランティア等民間団体、地域住民の積極的な参画と相互連携により、福祉サービスを必要とする住民の自立を地域全体で支え合う仕組みづくりが求められているとされている。
    また、第10章「地域福祉の推進」が新設され、地域福祉計画(平成15年4月施行)については、計画自体の策定は自治事務のため義務づけはないが、計画の策定又は変更する場合の住民等の意見反映と公表に関し規定するとともに、計画に盛り込むべき事項として、福祉サービスの利用促進、社会福祉を目的とする事業の健全な発達、住民の福祉活動への参加促進などとしている。
  • 現在、厚生労働省においては、全国社会福祉協議会の地域福祉に関する調査研究事業の実績を見つつ、審議会における検討等を経て、平成14年度の早い時期を目途に「計画策定指針」を示すこととしている。
  • 厚生省社会・援護局に設置された「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」の報告が平成12年12月に公表され、その報告の「終わりに」において、「地域福祉計画の策定に向けて、本提言を参考とされることを期待する。」とある。
  • 最大の基礎自治体である横浜市においては、計画単位をどう設定するか、市民参加で策定する計画の方法やイメージづくり、地域ケアの拠点施設である地域ケア施設の機能と計画づくりとの関わりなど、大都市横浜の固有の課題がある。

(分野別計画を総合化する地域福祉の基盤計画)

  • 国の資料を見ると、地域福祉計画の内容は「サービスの基盤整備と、総合的・計画的な推進」などとなっていて、これはある意味では、高齢者、障害者、児童などの分野別計画の総合化であり、地域福祉基盤整備計画とでもいうべきものである。この点では、「ゆめはま2010プラン」が重要な柱になると思うが、それぞれの分野別計画と区社協の策定に係る地域福祉活動計画が先行しているので、それらの計画を単純に統合した計画にならないよう本来あるべき地域福祉計画との位置付けの整理をするとともに、まちづくり計画にどう連動させるのか、つまりノーマライゼーションの理念のもとで、まちづくりを変えていくということもこの計画の非常に大きな要素と考えられる。

(地域福祉計画の多様性)

  • 地域福祉計画の検討では、「地域福祉計画」のほかにも、「地域福祉活動計画」や「住民活動計画」などいろいろな意味合いの計画があるので、一度、言葉の概念整理をしておかないと議論が噛み合わなくなる。例えば今回の地域福祉計画の中に、住民の自主的な活動自体も入ると理解するのかどうか、また、住民の自主的な活動と公的サービスの連携方法を入れるのかどうかによって、計画の内容や守備範囲は違ってくる。

(住民の自主的な活動と公的サービスの連携)

  • 住民の自主的な活動と公的サービスの連携は、相互に連携するための仕組みをどのように組立てるのかということだと思うが、横浜では、区社協レベルの地域福祉活動計画があるので、それに対応する計画として今回の地域福祉計画をどう考えるのか。
    この点についていえば、地域福祉活動計画とどう摺り合わせていくのかということは今まであまり議論されてこなかったように思う。横浜のような大都市では、全市域をカバーする計画を「地域福祉総合計画」、区レベルの計画を「地域福祉計画」と位置づけることで、区社協レベルの計画と摺り合わせが可能となると思う。今までの行政計画という概念でいくと、市民の自主的な活動は対象ではなく、「行政責任でつくります。コミュニティは自主的にやってください。したがって分けましょう。」ということになっていたけれども、社会福祉法によって新たな仕切方が求められていることに留意しながら検討する必要がある。

(縦割りでない地域ケアシステムを示す大きなイメージ図)

  • 今までの措置制度では、個別分野に対応する縦割りの地域福祉であり、それも高齢者に偏りがちの地域ケアシステムであった。今後、障害者のケアマネジメントや精神障害者の在宅福祉サービスの実施がでてくるとすれば、高齢者も障害者も精神障害者も含めて本当に縦割りでない地域ケアをどう展開するのかが課題となる。地域福祉計画は、利用者の立場に立った社会福祉制度の構築をバックアップしていく仕組みとして、地域生活をトータルに捉え、縦割りでなく、市民が安心して暮らしていける福祉ビジョンが示されているような、大きなイメージ図であることが望まれる。そのような計画であれば、市民からさまざまな場面で活用されると思う。

(「ぶどう」のような計画)

  • 「すいか」と「ぶどう」のたとえがある。計画を横浜市1つの「すいか」でまとめると、それは大きすぎて栄養が行き渡らない。「ぶどう」のようなものにすると、区レベルあるいはもっと狭い範囲に自主的に活発に活動をしている団体が見えてくる。横浜市でみると何百もあるうちの一つの団体だが、そういう自主的な活動が一房のぶどうの甘さを決める。ぶどうのツルを通してそれぞれの房に栄養を補給するのは地域福祉総合計画である。

(地域福祉推進の大きな課題は情報の論点)

  • 地域福祉は捉えどころがなく、ダイナミックな生き物のようなものである。機械を組み立てるようにはいかない。極く一部の地域でしか取組まれていないことや、市民団体だけが取り組んでいることなど良いことであればそれらを取り上げていくことが大事である。そこで、地域福祉の推進にとって大きな課題は情報の課題である。情報提供の仲立ちになる機能や機関が地域福祉計画の中での論点となる。

(計画の単位は)

  • 計画の単位としては、市なのか、区なのか、生活レベルなのか。いずれにしても全市1本で調査して、ニーズの総量を出して全市1つの計画を策定するというのは、地域福祉計画にはふさわしくないだろう。取り組みにばらつきがでても、青写真を局として作って、区単位にまとめて、積み上げるという方法がある。横浜は地域ケアシステムの拠点として地域ケア施設があるので、地域ケア施設と地域福祉計画をどう連携させるのかという課題があり、地域ケア施設を単位としてサービスの整備計画と地域の自主的な活動との連携と全体の仕組みが盛られると素晴らしい。そうはいっても地域ケア施設は整備途上にあり、その活動は始まったばかりの地域もあるため区レベルで作って、各地域ケア施設の独自性のある活動を計画に盛り込んでいくという方が現実的ともいえる。

(市民参加の新たな手法の開発)

  • 計画策定には、行政と市民と事業者が共働して、つまり相互作用しあいながら計画を作るということが重要な要素で、計画を活かすための大切な仕組みとなっている。行政が網をかぶせて一律の計画をつくるのではなく、また既存団体代表者の参加だけでなく新たな市民参加の手法をどう開発するかが課題である。地域福祉計画は、問題の洗い出し方の工夫や当事者団体とのさまざまな関係づくり等を通じて、単に印刷物をつくったり、委員会を運営したりするのとは違う、新たな市民参加の手法を取り入れる必要がある。

(計画づくりの手法の開発を)

  • 計画づくりの手法の開発としては、情報基盤として福祉計画づくりの場(サイト)の立ち上げなど、さまざまな人の参加による多元的な活動が考えられる。ホームページを立ち上げて、当初は、大事なことだけが書かれていて、他は何もないところから出発して、計画期間が終わってみると、各地域に網の目のようにいろいろな活動計画のようなものが塗り絵に色が塗られていくようにできあがっていくイメージはどうか。また骨格は作っておいて中身は地域の特性に合わせて区レベルから積み上げていく方法もある。全部一斉でなくとも、各区で数地区をモデル方式で丁寧に作り上げて、それらを18区で統合する作業は、横浜ならできると思う。

(計画づくりは合意形成づくり)

  • 計画策定の過程が今までの計画と違って非常に大事になる。策定過程を重視する計画づくりは、行政のスタイルを相当変えることになるだろう。ある種の「働きかけ」とそれに「呼応」する仕掛けづくりとも言える。計画づくりは合意形成づくりの手段である。

(現場の困難事例を計画に活かす)

  • 地域の課題を個々の事例の解決策を検討する中から洗い出し、それを総合化して計画策定に活かす方法がある。マスで統計処理したニーズではなく、個々の事例に対応できるかどうかという方法を重視する。現場の第一線のソーシャルワーカー等が数人集まり、現行サービスで対応できない相談の課題や抱えている困難事例を出し合う。現状では解決できない事態が必ず出てくる。そこでその困難に対応するには何が必要かと詰めていき、計画に反映させる。そのプロセスを踏むと計画ができあがる。

(対抗計画という考え方)
計画策定についてはコンペという方法があるが、行政が作る計画の対案というか、対抗計画があってもいいという考え方もある。

(生活支援がキーワード)

  • 生活支援というキーワードで、ライフステージに合わせて、生活を構成する地域、生活圏域でどのように必要な資源が整備されるのかという課題がある。障害者を例にあげると、毎日が家庭と施設の往復で障害者だけの集団で過ごすだけでなく、地域の中で本当に生活できるという部分をどう作るのかが大きな問題である。単に困ったときの相談といったレベルを越えて、日常生活の部分に働きかけるソフトが非常に大事である。その点からも障害の当事者に届く、当事者が関わり合う計画となる必要がある。また、地域の中に点在している最重度の方々は数が少ないこともあって、対応する制度がなく、それを必死に支えているのはボランティアという場合がある。その部分に対してどのように体制を整えるのか。それと同時にそれぞれの年代の人達が持つ生活課題に応じて、集まれる場やその仕掛けづくりの準備なども必要な事柄である。地域福祉に遠い存在であると思われている男性会社員や若い人達のことも視野に入るとよい。

(人と人とのつながりの計画を目指す)

  • 今までの措置は公的責任で個別で対応し、縦割りのサービスであるため、トータルな問題意識がでてこない。地域福祉計画が大事なのは、障害者がいて、高齢者がいて、児童がいて、そして健常者がいる、そのような地域の持つ総合性の中でどう個別の課題に対応していくかということであり、今までの分野別計画では出てこないことが大事なポイントとなる。要するにこの計画は人と人のつながりの計画といえる。縦割りでなく総合的で横断的な社会資源のあり方にもふれられる計画でありたい。

(連携には地域の独自性があって当然)

  • その地域に住んでいる人達の参加がなければ地域ケア、地域福祉は成り立たない。国が地域福祉計画の内容として提案している「住民の自主的な活動と公的サービスの連携」においては、各々の地域の独自性があるのは当然で、独自性がなければいけない。

(情報システムを組み込んだ地域福祉)

  • 情報のあり方でも述べた通り、情報システムは、単にハードをつなぎ合わせるものとしてではなく、人と人とのつながりを含めた地域福祉の推進が大きな課題である。その点から、情報管理の拠点は市内の中央に一つだけとはせず、分散させて、計画をつくる時に集める。日常業務のなかでやってきたことを地域に返しながら点検する方法をどうつくっていくか。

(横浜的基盤を計画にどう活かすか)

  • 地域福祉計画との関連で、地域ケア施設などの地域拠点を、単にサービス実施機関と捉えるのか、市民参加の拠点と捉えるのか。
    また、地域ケア施設や横浜市在宅障害者援護協会などの横浜固有の地域資源について、その役割や使命を市民にアピールするための仕組みの検討からはじめると、さまざまな意見が出てきて拡がりができるだろう。それらの意見を無理にひとつにまとめるのではなく、そのアピールするための仕組みもやはり「ぶどう」の栄養補給のためのツルとして、市の計画に何らかの位置づけがあるとよいと思う。

(計画づくりのアプローチがコミュニティーソーシャルワーカーを育てる)

  • 現場で福祉サービスの相談や提供に携わっている人が集まって困難事例を出し合い、計画に活かす時に、それができる職員、地域ケアを担っていくキーパーソンになる職員をどう育成していくのかが課題である。横浜の場合は、専門職採用されている職員が計画づくりのアプローチを通じて、ケースワーカーからコミュニティベースのソーシャルワーカーとしての力量をつけて、変化していくことになるはずである。

(計画づくりで第一線の福祉職の参画を)

  • 現場で福祉サービスの相談や提供に係わっている人は、個別の困難課題が見えていてそれを解決するために計画づくりに関わる。1年たって計画を評価するときに、解決できていない事柄があれば、さらに引き続き課題とする。計画づくりに第一線の福祉職が参画すると、現在のサービスで対応できていないものが明らかになるであろう。

(総合的な地域福祉推進に必要な体制)

  • 個々の事業部局が所管している高齢者、児童、障害者等の各分野の福祉サービスを、地域ケアの視点から総合化する部署が必要であるが、今の地域ケア推進部はそれらのサービスを総合化する役割を担っている訳では必ずしもない。このため、総合的な地域福祉の推進を図るためには、組織改革や権限問題にまで及ぶ課題となる。

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健康福祉局地域福祉保健部福祉保健課

電話:045-671-4044

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ファクス:045-664-3622

メールアドレス:kf-fukushihoken@city.yokohama.jp

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