- 1ページ - 第1章 第4期横浜市教育振興基本計画について - 2ページ - 1 計画策定の趣旨 (1) 本計画の位置付け 「第4期横浜市教育振興基本計画(以下「4期計画」という。)」は、2030年頃の社会を見据えて、横浜の教育が目指すべき姿を描いた「横浜教育ビジョン2030」(2018(平成30)年策定)のアクションプランです。 また、教育基本法第17条第2項に基づく「地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画」として位置付けます。(※1) ※1 横浜市教育大綱:「横浜市教育大綱」は、市として一貫性をもって教育行政を推進するために、令和4年度以降は本計画の第1章をもって代えることが、令和3年度横浜市総合教育 会議において決定された。 (2) 市立学校との関連について 各学校においては、「横浜教育ビジョン2030」に定める、「自ら学び 社会とつながり ともに未来を創る人」の育成を目指して学校教育目標を設定し、 目標を達成するためのアクションプランとして、3か年の中期学校経営方針 (※2)及びそれに基づく毎年の学校経営計画や各種プランを作成しています。 市全体で教育の方向性を共有し、教育政策を連携させることにより、質の高い教育につなげるために、各学校では4期計画を鑑みて学校経営計画を作成することが大切です。 なお、教育委員会においても、学校現場の状況を丁寧に把握・支援するよう努めていきます。 ※2 中期学校経営方針:学校教育目標の実現に向けた3年間の学校経営方針及び取組等を示したもの。 ここに図があります。 左に横浜市、右に各学校の囲みがあります。 横浜市の囲みの中には三角形があり、3つに分かれています。 一番上が「理念・ヨコハマ教育ビジョン2030 10年」 二段目が「施策(しさく)・取組 第4期 横浜市教育基本計画 4か年」 三段目が「事業 年単位予算 1年」 となっています。 次に「各学校」の囲みは、 上から「学校教育目標」矢印「中期学校経営方針・学校経営計画」矢印「児童生徒への教育活動の実践」とあります。 各学校の囲みと「中期学校経営方針・学校経営計画」が横浜市の囲みがの2段目「施策・取組と2本の矢印で相互につながっています。 図の説明は終わりです。 (3) 計画期間 4年間:2022(令和4)年度~2025(令和7)年度 2 横浜市が策定した他の計画等との関係 4期計画の策定に当たっては、「横浜市中期計画2022~2025」及び「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン」や他の計画と関連する部分について整合を図ります。 ここに図があります。 第4期横浜市教育振興基本計画に関連する他の計画 図の説明は終わりです。 - 3ページ - 3 「横浜教育ビジョン2030」 (1) 横浜の教育が目指す人づくり 自ら学び 社会とつながり ともに未来を創る人 (2) 横浜の教育が育む力 「自ら学び 社会とつながり ともに未来を創る人」の育成を目指し、 子どもに身に付けてほしい力を五つの視点「知」「徳」「体」「公」「開」で表し、相互に関連付けながらバランスよく育んでいきます。 知:生きて はたらく知 ●基礎・基本を身に付け、自ら問題を発見し、よりよく解決する力 ●主体的に考え、意欲的に学び続ける力 ●知識や経験を活かし、知恵をはたらかせて生きる力 徳:豊かな心 ●自分を大切にし、しなやかに生きる力 ●自分を律する態度と人を思いやる優しさ ●「本物」に触れることで育む豊かな感性 体:健やかな体 ●自ら健康を保持増進しようとする態度 ●体力づくりを通じ、心身ともにたくましく生きる力 ●生涯にわたって運動やスポーツに親しむ態度 公:公共心と社会参画 ●自分の役割や働くことの意義を理解し、行動する力 ●横浜を愛し、地域や社会のために、他者と協働する力 ●夢や目標を持ち、よりよい社会を創造しようとする態度 開:未来を開く志 ●自分を見つめ、多様性を尊重し、共生する力 ●グローバルな視野を持ち、持続可能な社会の実現に向けて行動する力 ●進取の精神を持ち、新たな価値を創造しようとする態度 (3) 横浜の教育の方向性~多様性を尊重し、つながりを大切にした教育を推進します~ 方向性1:子どもの可能性を広げます 主体的な学び 創造に向かう学び 支え合う風土 学びと育ちの連続性 方向性2:魅力ある学校をつくります 安心して学べる学校 社会とつながる学校 いきいきと働く教職員 学び続ける教職員 方向性3:豊かな教育環境を整えます 安全・安心な環境 地域とともに歩む学校 市民の豊かな学び 方向性4:社会全体で子どもを支えます 家庭教育の支援 多様な主体と連携・協働 切れ目のない支援 4 計画の構成 「横浜教育ビジョン2030」が示す教育の方向性に基づき、柱と施策を示します。(4期計画の柱は、ビジョンの方向性に示される取組を一部統合して構成します。) 施策ごとに、「指標」、「主な取組」、「想定事業量」を掲げ、PDCAサイクルに基づき、進捗管理を行います。 ここに図があります。 計画の構成を示す図 横浜教育ビジョン2030の範囲 方向性、柱 第4期横浜市教育振興基本計画において新たに定める部分 柱、施策、資料、主な取組、想定事業量 図の説明は終わりです。 - 4ページ - 5 3期計画以降の横浜市の教育の主な状況変化等 第3期横浜市教育振興基本計画(以下「3期計画」という。)期間においては、持続可能な学校への変革及びEBPMの推進を基本姿勢に、新学習指導要領の全面実施を見据え、 「横浜教育ビジョン2030」が掲げる「自ら学び 社会とつながり ともに未来を創る人」の育成を目指す教育を着実に推進してきました。 一方、同計画期間内においては、新型コロナウイルス感染症感染拡大を筆頭に、前例のない変化にも直面したほか、多様な教育的ニーズへの対応等の従来からの課題については、 一層の取組が求められており、3期計画の総括等を踏まえた令和の時代にふさわしい計画の策定が求められています。 ◆新型コロナウイルス感染症による影響 新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年春の市立学校一斉臨時休業、6月からの段階的な教育活動の再開、令和3年夏の分散登校をはじめ、前例のない対応が多数生じました。 臨時休業や分散登校の期間中、各学校においては、保護者等の御協力をいただきながら、児童生徒の健康状態や家庭での学習状況の把握に努めました。 また、家庭で過ごすことが困難な児童生徒の居場所の確保を目的とした「緊急受入れ」や「校庭開放」を実施しました。 さらに、家庭での学習習慣の定着、学びの保障を目的とした双方向のICTを活用したオンライン学習など、児童生徒への支援に取り組んできました。 現在は消毒や換気等の「3密」を避けるなどの感染対策を行いながら教育活動を継続しています。 ◆新学習指導要領に基づく主体的・対話的で深い学びとGIGAスクール構想による1人1台端末の整備 横浜市では、令和2年度から全面実施された新学習指導要領に基づき、各学校において「主体的・対話的で深い学び」の実現に取り組んできました。 また、国において、当初令和5年度までとしていた1人1台端末の整備が令和2年度中へ前倒しとなったことを受け、 横浜市では令和2年9月に「横浜市におけるGIGAスクール構想(※3)(以下「GIGAスクール構想」という。)」を公表しました。 GIGAスクール構想に基づき、端末や校内LAN等のICT環境を整備するとともに、今までの横浜の教育と最先端のICTのベストミックスを図りながら、 多様な児童生徒を誰一人取り残すことなく、「個別最適な学び」と「社会につながる協働的な学び」を実現する取組を行っています。 ※3 横浜市におけるGIGAスクール構想:文部科学省が提唱した「児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、多様な子どもたちを誰一人 取り残すことなく、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させる」ことを目指した横浜市の構想 ◆国における教育政策の主な動き及び横浜市の抱える課題等 小学校の学級編制標準の段階的な引下げ(35人学級)や学校における働き方改革の推進、教育ビッグデータを活用した教育DX(Digital Transformation)の推進をはじめとした国における政策を受け、 横浜市でもより良い教育の実現に向けた取組を推進してきました。 また、横浜市においては、特別な支援や配慮が必要な児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒、不登校児童生徒等、多様できめ細かな支援に対するニーズは増加し続けていることに加え、 「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の趣旨等を踏まえ、教育と福祉・医療分野の連携がますます重要になっています。 さらに、いじめ等の児童生徒が抱える様々な課題の早期発見・早期対応に向け、引き続き取り組んでいくことも必要です。 グローバル化の進展やSDGsを通じた持続可能な社会の実現に向けた取組の要請等を踏まえ、英語教育及び国際理解教育の推進や、課題発見・課題解決力の育成も引き続き重要です。 さらに、子どもたちの学びを支える安全・安心な教育環境の実現に向け、学校施設の老朽化が進行している現状を踏まえ、計画的な建替えを含む環境改善等を進める必要もあります。 中学校給食については、令和3年4月より学校給食法上の給食(デリバリー型)の提供を開始し、令和4年4月の喫食率は30.1%となっています。 - 5ページ - 6 第4期横浜市教育振興基本計画の視点 一人ひとりを大切に 子ども一人ひとりの個性や多様性を大切にし、「だれもが」「安心して」「豊かに」の人権尊重の精神を基盤とする教育を推進するとともに、それぞれの資質・能力を育成します。 みんなの計画・みんなで実現 複数で子どもに関わる体制の徹底及び、家庭・地域・関係機関・民間企業・NPO等との連携・協働により、チーム横浜で子どもを育てます。 EBPM(※)の推進 「横浜市学力・学習状況調査」等のデータ分析により授業改善や児童生徒理解を一層推進するとともに、客観的な根拠に基づく教育政策を子どもの成長に関わる人と共有し、連携して質の高い教育につなげます。 ※ Evidence Based Policy Making:エビデンスに基づく政策形成 (1) 一人ひとりを大切に 横浜市は、これまで「横浜教育ビジョン2030」等に基づき、児童生徒一人ひとりの多様性を尊重し、つながりを大切にした教育を推進してきました。 4期計画ではさらに、それぞれの個性や発達の段階に応じて、資質・能力を育成するための指標を掲げ、全ての子どもの資質・能力の向上に取り組み、自ら未来を切り拓き、創る子どもを育成します。 横浜市では、特別な支援や配慮が必要な児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒、不登校児童生徒が年々増加しており、適切な支援を行うことが求められています。 さらに、何らかの理由で学校生活に困難を感じている児童生徒や、虐待やいじめなど口に出せないけれども苦しみを抱えている児童生徒も大勢います。 また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、児童生徒が学校で学ぶ喜びを感じられるよう、教職員の努力や家庭や地域、関係者の方々の御協力により、 感染対策を行いながら教育活動を再開していますが、感染症への不安など、児童生徒の心への影響を意識する必要があります。 私たちは、今だからこそ、子ども一人ひとりの個性や多様性を大切にして丁寧に見守り、「だれもが」「安心して」「豊かな」学校生活を送れるよう日々の教育活動に取り組んでいく姿勢を徹底する必要があります。 そのような学校風土の中で、子どもが失敗を恐れず夢や目標に向かってチャレンジすることを応援していきます。 その上で、それぞれの資質・能力を育成していくよう取り組みます。 平成29年の新学習指導要領の改訂を踏まえ、横浜市では「社会に開かれた横浜らしい教育課程」の実現を目指し、教育課程の基準である「横浜市立学校 カリキュラム・マネジメント要領(※4)」の策定を行ってきました。 これに基づき、各学校では、それぞれの「学校らしさ」を生かした教育課程を編成し、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善をはじめとする教育活動の質の向上に取り組んできました。 また、GIGAスクール構想(※3)の推進に基づき、1人1台端末や、大容量・高速ネットワークが整備され、児童生徒の学びの可能性が広がりました。 さらに、令和4年度には「横浜市学力・学習状況調査」を全面改訂(※5)し、一人ひとりの「学力」(※6)の伸びを、義務教育の9年間経年で把握できるようになりました。 横浜が今まで大切にしてきた教育の強みと、最先端のICTのベストミックスにより、児童生徒が学ぶことがますます楽しくなり、その結果、一人ひとりの資質・能力の育成につなげられるよう、授業改善を推進します。 ※4 横浜市立学校 カリキュラム・マネジメント要領:新学習指導要領の全面実施に向けて、各学校やブロックが自主的・自律的に教育課程を編成・実施・評価・改善するための要領 ※5 「横浜市学力・学習状況調査」を全面改訂:児童生徒一人ひとりの「学力」の伸びの経年変化を捉えられるようにするため、調査問題の作成に項目反応理論(IRT Item Response Theory)を導入するとともに児童生徒に個人番号を付与。    また、今後は端末上で調査を実施すること(CBT Computer Based Testing)を見据えて検討 ※6 「学力」:学校教育法で定義される広義の学力ではなく、横浜市学力・学習状況調査における、学習の理解や習熟の状況を指す。 - 6ページ - (2) みんなの計画・みんなで実現 児童生徒のだれもが安心して豊かな学校生活を送り、それぞれの資質・能力を伸ばしていくためには、学校の内外で連携し、社会全体のみんなで子どもをはぐくむ環境づくりが求められています。 すなわち、①学校において複数で見守る体制や組織的な児童生徒の支援体制の整備、②教職員と家庭、地域、児童相談所、医療・福祉等の関係機関、民間企業及びNPO等との連携・協働に よる「チーム横浜」での児童生徒の成長への関わり、③教職員が児童生徒をしっかり支えることができるよう、教職員の育成・働き方改革の推進が必要です。 横浜市はこれまで、教科分担制によるチーム学年経営の推進、児童支援・生徒指導専任教諭(※7)の授業を代替することを目的とした非常勤講師配置のフルタイム化の推進、 スクールソーシャルワーカー(※8)の拡充等による専門職の活用、部活動指導員(※9)や職員室業務アシスタント(※10)の配置、ICT支援員の派遣など、 様々な取組を通じて複数での見守りや、児童生徒支援体制の拡充に努めてきました。一人ひとりを大切にした教育実践のために、引き続き取組を推進していく必要があります。 また、医療的ケアが必要な児童生徒への看護師の配置・派遣など、引き続き医療・福祉等の関係機関との連携を強化していく必要があります。 さらに、児童生徒のより良い学びや不登校児童生徒支援等に当たっての民間企業・NPO等との連携や、市立図書館など学校教育以外の部署との連携、 幼保小連携、学校運営協議会(※11)と地域学校協働活動(※12)の一体的な推進による地域と学校の連携・協働など学校外との連携も重要です。 「みんな」のうち、子どもたちにとっての最大の教育環境となる教職員については、全国的に教員志望者が減少している中、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の改正に基づき、 小学校の学級編制において1学級当たりの標準が40人から35人へ段階的に引き下げられることに加えて、特別な支援を必要とする児童生徒の増加に伴う個別支援学級(※13)数の増加傾向により、 更なる教員数の増加が見込まれるため、意欲や能力の高い教員を確保していくことが求められます。 また、人権意識を高める中でそれぞれが持つポテンシャルを最大限発揮できるよう持続可能な体制の構築を目指していきます。 その中で、新学習指導要領の実施や1人1台端末の活用など教育内容の多様化に対応するため、教職員の資質・能力の向上が求められており、教職員の学ぶ時間を確保することが必要であ ることから、教職員の資質・能力の向上と働き方改革の両立が重要です。 教職員の働き方改革については、平成30年3月に策定した「教職員の働き方改革プラン(以下「プラン」という。p74.参照)」に掲げた4つの戦略に基づいた40の取組を総合的に推進し てきました。 その結果、時間外在校等時間が月80時間を超える教職員の割合は、プランを策定した平成30年度と令和3年度の市の全体平均を比較すると、小学校で8.1%から5.1%、中学校では32.8%か ら18.0%と着実に減少しているものの、80時間を超える教職員は一定数残っており、道半ばの状況です。 今後は、更に改革の実効性を高め、一人ひとりが改善を実感できるようにするために、プランに基づくこれまでの総合的・全市的な取組に加え、具体的で焦点を絞った取組を加速させるこ とが重要です。 そのため、データ分析により焦点化された課題とその解決に向けた教職員への支援を連動させること等を通じて、働き方改革と教職員の資質・能力の向上をこれまで以上に一体的に推進し ていきます。 ※7 児童支援・生徒指導専任教諭:いじめや不登校等の課題に対応するため、児童生徒指導の学校内での中心的役割や関係機関及び地域との連携窓口を担う教諭 ※8 スクールソーシャルワーカー(SSW):社会福祉の専門的知識、技術を活用し、問題を抱えた児童生徒を取り巻く環境(家庭、地域等)に働きかけ、家庭、学校、地域の関係機関をつ なぎ、問題の解決に向けて支援する専門職 ※9 部活動指導員:校長の監督を受け、技術指導や引率等を行い、単独で顧問も担うことができる会計年度任用職員 ※10 職員室業務アシスタント:職員室における事務的な業務(印刷、電話対応等)をサポートする会計年度任用職員 ※11 学校運営協議会:「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に基づき、地域住民や保護者等が一定の権限と責任をもち、それぞれの立場で当事者として活動し、学校運営に参画 する仕組み。 一定の権限とは、①校長の定める学校運営の基本方針を承認すること(必須)、②学校運営に関して教育委員会や校長に意見を述べること(任意)、③教職員の任用に関し て教育委員会に意見を述べること(任意)の3点 ※12 地域学校協働活動:持続可能な地域社会をつくるために、共に子どもたちを育て、共に地域を創るという理念に立ち、地域と学校がパートナーとして、未来を担う子どもたちの成長 を社会全体で支えていく様々な活動 ※13 個別支援学級:障害種ごとの少人数学級で、障害のある子ども一人ひとりに応じた教育を行う学級。国の「特別支援学級」に相当する学級 - 7ページ - (3) EBPMの推進(客観的な根拠に基づく教育政策の推進) 横浜市はこれまでも、「横浜市学力・学習状況調査」の結果の分析等を通じ、客観的な根拠に基づく教育政策の推進に努めてまいりました。 3期計画の策定から3年経ち、世の中のデータ活用の流れは一層加速しています。 教育においても、GIGAスクール構想(※3)を前倒しで進めたことにより、児童生徒一人につき1台端末が整備され、将来的には学習履歴等の把握・蓄積が進むことが期待されています。 現在、整備を進めている新たな教育センターでは、産学公民が連携し、子どもの新たな学びを創造するために、最先端のICTやデータ等を活用した調査・研究等に取り組む予定です。 なお、データ活用は、教職員による教育実践の蓄積という横浜市の財産に加え、これまで培われてきた実践の成果や課題を可視化し、共有するための手助けになるものです。 日々刻々と状況が変わる学校現場における最終的な判断はプロフェッショナルである「教師」によってなされることはこれまでと変わりありませんが、その一助としてデータを活用し、よ り良い教育への探究を継続することが有効です。 また、EBPMを推進し、客観的なデータに基づいて目指す方向や進捗状況について対話を行うことは、様々な人の共通理解を得るとともに、学校現場における教育実践と教育委員会における 政策を連携させ、教育の質を上げることにつながります。 「一人ひとりを大切に」の視点を実現していくためにもEBPMは大いに貢献します。 これまで横浜市では、小学校6年生及び中学校3年生を対象とした年1回の「全国学力・学習状況調査」に加え、市立の全小中学校、義務教育学校及び特別支援学校の小学校2年生から中 学校3年生約24万人を対象に、「横浜市学力・学習状況調査」を独自に実施してきました。 過去5年間の「全国学力・学習状況調査」の結果では、横浜市の各教科の平均正答率は全国平均と同程度あるいは上回る結果となっています。 市全体の平均は一定程度の結果を安定して示すことができている一方で、「横浜市学力・学習状況調査」を分析すると、個人の正答率の差が大きく、一人ひとりの学習の習熟度に応じたき め細かな指導が求められているという現状があります。 こうした課題に取り組むために、「横浜市学力・学習状況調査」を令和4年4月に全面改訂(※5)し、一人ひとりの「学力」(※6)の伸びを、義務教育9年間を通じて継続的に把握で きるようにしていきます。 今までも、調査した年度の学校や学年の「学力」(※6)の全体像については、横浜市の平均との比較、学力層(※14)や経年変化等により分析し、各学校が学習状況に応じた指導の工夫 を行ってきました。 しかし、あくまでも当該年度の平均値との比較、学校や学年の全体像の把握であり、児童生徒一人ひとりの「学力」(※6)の経年での伸びを捉えることはできていませんでした。 改訂した調査を活用し、児童生徒一人ひとりの「学力」(※6)の伸びを測る指標を計測することで、より一層、個性や発達の段階に応じた教育活動が行われることを目指します。 約24万人の児童生徒を対象にした試みは、基礎自治体としては全国最大・初となります。 引き続き、「全国学力・学習状況調査」を通じた全国平均と横浜市平均との比較や、「横浜市学力・学習状況調査」を通じた学校や学年の「学力」(※6)の概況の把握については継続し ながら、4期計画では、いわゆる非認知能力(※15)の一層の分析を含め、国や企業・大学等の関係機関と連携しながら、一歩踏み込んだ形で客観的なデータに基づいた学力(※16)分析 ・学力向上に挑戦します。さらに、「Y-Pアセスメント(※17)」の活用による深い児童生徒理解、授業改善、支え合う風土づくりを推進します。 ※14 学力層:各教科について、横浜市の当該学年の児童生徒全体を、人数がほぼ等しくなるよう正答率で四分割したもの。正答率が同じ児童生徒が多数いるため、学力層は完全に25%ずつ にはならない。 ※15 非認知能力:意欲・粘り強さ・好奇心など数値で測れない感情や心の働きにかかわる能力で、テストの得点など点数や数値で可視化できる認知能力以外の能力と言われており、最近 の研究では「社会情動的コンピテンシー」とも言われる。 ※16 学力:学校教育法第30条第2項で定義されるもの。一般に「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」と表現されている。 ※17 Y-Pアセスメント:横浜市が開発した、集団や個の社会的スキル育成状況を把握するための分析ツール - 8,9ページ - 第4期横浜市教育振興基本計画の3つの視点の具体化に向けて(イメージ図) ここに見開きページで図があります。 自ら学び 社会とつながり ともに未来を創る人 わたしの・あなたの・みんなの成長 2022年5月1日現在 児童生徒数 26万3,118人 特別支援学校や個別支援学級などで学ぶ児童生徒 約14,000人 日本語指導が必要な児童生徒 約3,100人 不登校児童生徒 約6,600人 ページ中央にたくさんの子どもたちの顔のイラストがあります。顔、表情、髪や肌の色などがみな違います。 子どものイラストから上に向かって、色・太さ・線はまっすぐやまがっているもの途中で途切れながらなど様々な矢印が、「自ら学び 社会とつながり ともに未来を創る人」に向かっており、伸び方のコメントがついています。 回り道をしながら。たちどまりながら、右に左に、まっすぐに、寄り道をしながら 視点1 一人ひとりを大切に ~本気で「誰ひとり取り残さない」を実現~ 特別な支援が必要な子どもも、日本語指導が必要な子どもも、不登校の子どもも、口には出せないけれども苦しみを抱えている子どもも。 26万人全員の個性に応じた「成長」を大切にします。 視点2 みんなの計画・みんなで実現 先生が一人で抱え込む教育は限界。 学校のチカラ、家庭・地域のチカラ、企業・NPOのチカラ、子どもの成長に関わるみんなの力を結集して、みんなではまっ子をはぐくみます。 視点3 経験・勘×データ 先生が培ってきた経験・勘にデータをかけ合わせ、より確かな子どもの理解、早期の子どものサイン発見を実現します。 EBPM(※)の推進 ※ Evidence Based Policy Making:エビデンスに基づく政策形成 クラスや学校、市の平均点の比較にとらわれず一人ひとりの学力に応じて「伸ばす」教育へ。 「学力」(※)の平均値が高い学校≠「学力」を伸ばす学校 どの学校も、子ども一人ひとりの「学力」を伸ばすことができる!! ※ 「学力」…横浜市学力・学習状況調査における、学習の理解や習熟の状況 出典は令和4年度横浜市学力・学習状況調査 さらに図があります。 学力の平均値(令和4年度の結果)と学力の伸び(令和3年度と令和4年度の結果を比較) コップを横から見て左右に「学力の平均値」、右左に「学力の伸び」が色分けされて示されています。 学力の平均値は、高いほうから段階ごとに分かれて表示されていますが、学力の伸びは、平均値で示された学校が、伸びの高い方にも低い方にもランダムに表示されており、 学校の平均値がどうあれ、どの学校も子ども一人ひとりの「学力」を伸ばすことができるということが分かります。 図の説明は終わり。 イメージ図は、本計画の「3つの視点」を分かりやすいように図示したものです。 視点1 一人ひとりを大切に 子ども一人ひとりの個性や多様性を大切にし、「だれもが」「安心して」「豊かに」の人権尊重の精神を基盤とする教育を推進するとともに、それぞれの資質・能力を育成します。 視点2 みんなの計画・みんなで実現 複数で子どもに関わる体制の徹底及び、家庭・地域・関係機関・民間企業・NPO等との連携・協働により、チーム横浜で子どもを育てます。 視点3 EBPMの推進 「横浜市学力・学習状況調査」等のデータ分析により授業改善や児童生徒理解を一層推進するとともに、客観的な根拠に基づく教育政策を子どもの成長に関わる人と共有し、連携して質の高い教育につなげます。 見開きページの図の説明は終わり。