第3章、計画の目指すもの 1、第2期計画の基本的枠組み 依存症は徐々に進行する慢性疾患であると言われており、回復には長期にわたる支援が必要であることから、依存症対策も継続的に取り組むことが求められます。したがって第1期計画の「基本理念」、「基本方針」及び「支援フェーズ」の基本的枠組みは、本計画においても継承します。 カッコ、1、基本理念 (囲みここから) 基本理念 依存症の本人や家族等の抱える困難が軽減され、 より自分らしく健康的な暮らしに向かって進み続けるようにできること (囲みここまで) 依存症の本人は、もともと何らかの生きづらさや孤独を抱えていて依存症に至った場合も少なくないと言われています。また、日常生活や健康面で様々な困難を抱えている場合や、依存症によりその家族等も生活に大きな影響を受け、苦しんでいる場合も多くあります。加えて、依存症について周囲から正しく理解されないこと等により、そうした困難が増長されていることもあります。 そのため、依存症の本人や家族等に対して、自分らしく健康的な暮らしに向かって回復を続けていくための支援を提供することが必要であると考えられます。 以上を踏まえ、第1期計画において、「依存症の本人や家族等の抱える困難が軽減され、より自分らしく健康的な暮らしに向かって進み続けるようにできること」、を基本理念としました。本計画においてもこの基本理念を継承します。 カッコ、2、基本方針 (囲みここから) 基本方針 依存症の予防及び依存症の本人や家族等が自分らしく健康てきに暮らすための支援に向け、関係者がそれぞれの強みを生かしながら、連携して施策を推進すること (囲みここまで) 先に掲げた基本理念を達成するため、第1期計画において、「依存症の予防及び依存症の本人や家族等が自分らしく健康的に暮らすための支援に向け、関係者がそれぞれの強みを生かしながら、連携して施策を推進すること」、を基本方針としました。本計画においてもこの基本方針を継承します。 カッコ、3、支援フェーズ 第1期計画では依存症の本人や家族等への支援に着目し、課題を整理するとともに、その解決に向けて行うべき施策を検討するため、「一次支援・二次支援・三次支援」という3つの支援フェーズごとに各依存症の予防や回復支援等に向けた施策を取りまとめました。本計画においてもこの3つの支援フェーズを継承します。 図表さんのいち:一次支援・二次支援・三次支援の対象と考え方 (図表ここから) 支援の段階等 一次支援(予防・普及啓発) 主な施策の対象 ●市民全体を対象とします 依存症のリスクが低い人、依存症のリスクが高い人が該当します 考え方 ●依存症の予防のための取組を実施します ●依存症に関する誤解や偏見は多く、支援につながる妨げとなっていることから、適切な治療や支援により回復可能であること等の正しい理解を普及するための啓発を実施します 二次支援(早期発見・早期支援) 主な施策の対象 ●依存症の本人や依存症の疑いがある人及びその家族等で、支援につながっていない人を対象とします 依存症のリスクが高い人、依存症の疑いがある人が該当します 考え方 ●本人や家族等が依存症であるという認識を持ちにくいことや相談先が分からないことが、相談への障壁となるため、そうした人が早期に相談につながれるよう、普及啓発の取組を実施します ●相談に至った人を、早期に適切な支援につなぐことができるよう、支援者間の情報共有・連携推進を実施します 三次支援(回復支援) 主な施策の対象 ●依存症からの回復段階にある人及びその家族等を対象とします 依存症に対する支援が必要な人が該当します 考え方 ●支援につながった人が回復し、自分らしく健康的な生活を送ることができるよう、依存症の人の回復支援をおこなっている専門的な支援者による支援や、医療機関等との連携などの活動支援を推進します ●依存症からの回復を続け、地域で生活するための支援に向けた取組を行います (図表ここまで) 2、第2期計画のポイント 本計画は、第1期計画の成果と課題を踏まえ、下記の点を重視しながら計画の立案と施策の展開を行います。 ①、施策体系の見直し 第1期計画でアルコール、薬物、ギャンブル等の依存対象別に分類していた施策体系について、本計画では施策の対象者をより明確にするため、「一次支援」を年齢層別に分類し、「二次支援」及び「三次支援」を本人・支援者・家族等別に分類しました。 ②、重点施策の設定 第1期計画の振り返りや市民意識調査の結果から、対応が急務と本市が認識し、かつ「一次支援・二次支援・三次支援」の各フェーズにおいて横断的な対応が必要な課題への対策として、効果的な施策推進を目的に、重点施策を設定します。 ③、数値目標を設定した進行管理 「一次支援・二次支援・三次支援」に関する施策について新たに数値目標を設定し、計画全体の進行管理を進めていきます。 ④、本計画における新たな取組 本計画では第1期計画で掲げた取組の内容を精査し、継続的な取組が求められるものについては、引き続き対策を講じていきます。 また、第1期計画期間中に顕在化してきた問題や第1期計画の振り返りを通じた課題に対応するため、新たに次の取組を実施していきます。 ・市販やく・処方やくの過剰摂取による依存に対する普及啓発 特に若年層において問題となっている市販やくや処方やくの過剰摂取による依存症に対しての普及啓発を行います。 ・オンライン上でのギャンブルへの依存に対する普及啓発 公営競技のインターネット投票や近年問題となっているオンラインカジノをはじめとするオンライン上でのギャンブルへの依存症に対する普及啓発を行います。特にオンラインカジノについては違法せいの周知もおこなっていきます。 ・SNSを活用した相談支援の実施 こどもや若者の依存症対策を強化するため、SNSを活用した相談支援を実施します。こどもや若者の身近なコミュニケーションツールを用いることで、匿名性や利便性を確保し、相談のハードルを下げることで、こどもや若者が、気軽に悩みを打ち明けられる環境を整備し、早期の支援につなげます。 ・依存症に対する偏見や誤解の解消に向けた普及啓発 社会全体の、「依存症になるのは自業自得」、「依存症になる人は意志が弱い」、といった偏見・誤解が、依存症の本人の回復の妨げになっている可能性があります。そこで依存症の本人に対する偏見・誤解の解消、正しい理解の促進に向けた普及啓発を行います。 ・こども関連の支援者や関係機関との連携強化 こども関連の支援者へ依存症に対する正しい理解を促進する情報提供や研修をおこなったり、本市連携会議でのこども関連の課題や事例共有などを行うことを通じてこども関連の支援者やこども関係部局との連携を強化していきます。 ・依存症支援者向けガイドラインの改訂 学校や家庭におけるこどもの問題に関わる支援者をサポートするため、依存症支援者向けガイドラインを改訂し、こどもに関連する事例を掲載します。また、社会情勢や支援ニーズの変化に対応するため、依存症に関連する近年の動向を踏まえたコラムや事例も掲載します。 3、重点施策 本計画では、特に解決すべき課題に対する施策として以下の3つの重点施策を設定します。重点施策は、本計画において特に注力すべき施策として、支援フェーズを横断して課題解決に取り組んでいきます。 図表さんのに:重点施策における施策の方向性 (図表ここから) 重点施策1 多様化する依存対象への対策 施策の方向性 ●市販やく・処方やく、オンラインギャンブルへの依存等、近年、増加傾向にある依存への対応を通じて、若年層の生きづらさを支援する。 重点施策2 偏見の解消 施策の方向性 ●依存症の本人や家族等が相談し、回復に向けた取組が円滑に推進されるよう、依存症の正しい理解の促進と偏見の解消を図る。 重点施策3 連携体制の強化 施策の方向性 ●依存症の多様化や複合化した生活課題への対応が推進されるよう、関係機関同士の連携を強化し重層的な支援体制を構築する。 (図表ここまで) (囲みここから) 【コラム】 依存症に関する普及啓発とスティグマについて これまで依存症の普及啓発においては、様々な表現が用いられてきました。中でも、多くの人々の目に触れたものとして、薬物問題に関して過去に一般社団法人日本民間放送連盟が放映していた「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」という標語を用いたテレビコマーシャルがありました。こうした強い表現を用いた普及啓発活動は、依存症の本人の人格を否定するものであり、社会全体における依存症に対する負のイメージや偏見・差別(=スティグマ)を助長し、さらには、依存症の本人が「依存症は恥ずかしいことだ」といった、自分自身に対する「セルフスティグマ」を持つことにもつながり、結果的に依存症の本人が回復につながることを難しくしてしまう可能性があります。 また、公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターによる「ダメ。ゼッタイ。」といった標語を用いた各種の普及啓発活動については、一般市民を対象に分かりやすく薬物の危険性を伝え、予防の促進を図る上では効果があるものと考えられます。一方で、回復支援の観点からは情報の不足により誤解を招く恐れがあります。 こうした点を踏まえ、依存症の回復支援に向けた普及啓発では、依存症に関する正しい理解を促進し、また、回復につなげていくようなメッセージを発信していくことが重要になると考えられます。 (囲みここまで) 図表さんのさん:本計画の施策体系 (図表ここから) 基本理念、基本方針、支援フェーズ及び重点施策の体系が示されています。 基本理念 依存症の本人や家族等の抱える困難が軽減され、より自分らしく健康的な暮らしに向かって進み続けるようにできること 基本方針 依存症の予防及び依存症の本人や家族等が自分らしく健康的に暮らすための支援に向け、関係者がそれぞれの強みを生かしながら、連携して施策を推進すること 一次支援 予防・普及啓発 二次支援 早期発見・早期支援 三次支援 回復支援 一次支援、二次支援、三次支援にそれぞれ関連する施策があることが示されています。 重点施策:オンラインギャンブル等、急速な拡大が見られる問題等を対象とした横断的な取組が一次支援、二次支援、三次支援をまたいで設定されていることが示されています。 (図表ここまで) (図表ここから) 一次支援の取組は、共通した取組、こどもに向けた取組、若者に向けた取組、中高ねん・高齢者に向けた取組に分類されることが示されています。 二次支援の取組は、本人への取組、支援者への取組、家族等への取組に分類されることが示されています。 三次支援の取組は、本人への取組、支援者への取組、家族等への取組に分類されることが示されています。 重点施策1 多様化する依存対象への対策 重点施策2 偏見の解消 重点施策3 連携体制の強化が一次支援、二次支援、三次支援の各取組を横断して設定されていることが示されています。 (図表ここまで) ※なお、本計画におけるこども、若者、中高ねん・高齢者の定義は下記のとおりである(こどもと若者の定義は、内閣府「子供・若者育成支援推進大綱」による)。 (囲みここから) 共通した取組は、全世代に向けた取組 こどもに向けた取組は、おおむね18歳未満のかたに向けた取組 若者に向けた取組は、おおむね18歳から40歳未満のかたに向けた取組 中高ねん・高齢者に向けた取組は、40歳以上のかたに向けた取組 (囲みここまで) 4、数値目標の設定 本計画においては、下記のアウトカム指標・アウトプット指標を設定し、計画の進行管理や到達点の評価を行います。 図表さんのよん:計画の数値目標 (図表ここから) 【アウトカム指標】 依存症の人のことを「意志が弱い」と答える人の割合 最終目標ち(令和12年度):60.0%未満 直近の現状ち(令和6年度):68.2% 【アウトプット指標】 正しい知識の啓発動画の再生回数(累計) 最終目標ち(令和12年度):100,000回 直近の現状ち(令和6年度):15,393回 横浜市依存症ホームページへのアクセス数(年間) 最終目標ち(令和12年度):年間60,000回 直近の現状ち(令和6年度):年間54,433回 【アウトカム指標】 「依存症の問題に対処したいがどうすればよいか分からない」と答える人の割合 最終目標ち(令和12年度):10.0%未満 直近の現状ち(令和6年度):11.5% 【アウトプット指標】 依存症個別相談人数(累計) 最終目標ち(令和12年度):16,037人 直近の現状ち(令和6年度):10,037人 本市連携会議の参加機関数(年間) 最終目標ち(令和12年度):年間50機かん 直近の現状ち(令和6年度):年間50機かん 依存症家族教室の参加人数(累計) 最終目標ち(令和12年度):2,962人 直近の現状ち(令和6年度):1,762人 支援者向け研修への参加人数(累計) 最終目標ち(令和12年度):1,867人 直近の現状ち(令和6年度):1,267人 (図表ここまで) 5、基本方針の実現に向けた取組体制 基本方針の実現に向けて、本市こころの健康相談センター、精神保健福祉課、区役所の精神保健福祉相談、さらには専門的な医療機関、民間支援団体等、身近な支援者(行政)、身近な支援者(行政以外)、依存症に関連する施策を行う本市関係部署が連携し、関係者が一体となって依存症対策の取組を進めます。 図表さんのご:基本方針の実現に向けた取組体制 (図表ここから) 専門的な支援者として専門的な医療機関 、こころの健康相談センター・精神保健福祉課、区役所精神保健福祉相談及び民間支援団体等が示されています 専門的な医療機関の取組として、 ・身近な支援者や民間支援団体等と連携し、依存症の本人の治療を実施。 ・民間支援団体等や身近な支援者などを対象とする普及啓発や人材育成に関与。 こころの健康相談センター・精神保健福祉課の取組として、 ・依存症の本人やその家族等を対象とする相談対応や回復支援を実施。 ・情報収集や支援施策の企画立案、依存症に関する普及啓発、関係機関間の連携促進、支援人材の育成などを実施。 区役所精神保健福祉相談の取組として、 ・依存症の本人やその家族等を対象とする相談対応、回復支援、専門的な医療機関や民間支援団体等へのつなぎを実施。 ・区内における普及啓発や民間支援団体等と連携した施策を展開。 民間支援団体等の取組として、 ・団体の特性を踏まえ、「本人に合った回復支援」を提供。 ・市民や身近な支援者、一般医療機関等を対象とした普及啓発、関係機関・団体との情報共有などに参画。 身近な支援者等として、依存症に関連した施策を実施する行政の部署、身近な支援者(行政以外)、身近な支援者(行政)が示されています。 依存症に関連した施策を実施する行政の部署の取組として、 ・担当する領域において依存症の予防等に向けた施策を展開。 ・庁内外の関係機関・団体と連携し、施策を展開。 身近な支援者(行政以外)の取組として、 ・依存症に関する情報収集に努め、啓発の担い手となるとともに、福祉・医療・法律・教育などの現場において、依存症の問題に気付き、専門的な支援者へのつなぎを実施。 ・本人が社会生活を送る上で必要な支援を提供。 身近な支援者(行政)の取組として、 ・依存症に関する情報収集に努め、啓発の担い手となるとともに、所管業務における相談対応の中で、依存症の問題に気付き、専門的な支援者へのつなぎを実施。 ・専門的な支援者と連携し、本人が社会生活を送る上で必要な支援を提供。 これらの関係者が一体となった依存症対策の取組を実施することが示されています。 (図表ここまで)