第1章、計画の概要 1、計画策定の趣旨 カッコ、1、依存症を取り巻く現状 依存症とは、アルコールや薬物などの物質の使用や、ギャンブル等(脚注1)やゲームなどの行為を繰り返すことによって脳の状態が変化し、日常生活や健康に問題が生じているにもかかわらず、「やめたいと思わない」「やめたくても、やめられない」「コントロールできない」状態を指します。その背景には、障害や貧困、失業、虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)など、様々な生きづらさの問題が複合的に存在しているケースが多く見られます。 近年においては、オンラインギャンブルや市販やく・処方やくなどに依存対象が拡大してその内容が見えづらくなっているほか、いわゆる「ホスト依存」など人への依存も指摘されるなど、年齢や性別、職業、家庭環境を問わず、誰もが容易に直面しうる問題となっています。 依存症になると、心身の健康状態の悪化、仕事や学業の継続困難、借金の増大や生活困窮、社会的な孤立、違法薬物の使用による法的な問題など、多岐にわたる課題に直面します。併せて、その影響はこどもを含む家族や周囲の人々にもおよび、家族をうつ状態にしたり、経済的に困窮させるなど、本人の依存症によって生じる様々な問題は周囲の人も巻き込んでいきます。 加えて、依存症について本来は複合的な要因が絡み合い、適切な支援につながることで回復可能であるにもかかわらず、「本人の意志の弱さが原因である」といった考えや、「依存症は治らない」といった誤解や偏見(スティグマ(脚注2))が社会全体に根強く残っています。そして、そうした見方が依存症に悩む人が支援を求めたり、回復をしながら社会生活を送る上で、大きな障壁になっています。 そのため、依存症の問題に取り組む上では、社会全体を対象とした理解促進のための普及啓発を進めるとともに、行政、福祉、医療、法律、教育など様々な領域の専門家が連携した支援体制を講じていくことが重要となります。 脚注1 ギャンブル等依存症対策基本法では、ギャンブル等を「法律の定めるところにより行われる公営競技(競馬・競輪・オートレース・モーターボート競走)、ぱちんこ屋にかかる遊技その他のしゃこう行為」と定義している。 脚注2 差別・偏見と訳されるが、特定の事象や属性を持った個人や集団に対する、間違った認識や根拠のない認識のこと。 カッコ、2、国及び神奈川県における取組 こうした問題に対応し、依存症の本人又は依存症が疑われる人及びその家族等を適切に支援していく体制を整備するため、国において平成26年6月の「アルコール健康障害対策基本法」の施行を皮切りに、平成28年5月に「アルコール健康障害対策推進基本計画」が策定され、平成28年6月には「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」が施行されました。さらに、平成30年10月には「ギャンブル等依存症対策基本法」が施行、平成31年4月に「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」が閣議決定され、アルコール・薬物・ギャンブル等の各依存症に関する支援体制の制度が整えられてきました。 また、令和3年3月には、「アルコール健康障害対策推進基本計画」が改定され、都道府県や指定都市における関係者間の連携会議の推進、「一時多量飲酒」問題の啓発などの施策が盛り込まれました。 さらに、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」は令和4年3月の改定を経て、令和7年3月に第3期の基本計画が閣議決定されました。同基本計画では、新型コロナ感染症の感染拡大かにおいてオンラインギャンブルの利用者が増加したことを受けた、違法オンラインカジノの取り締まり強化、若年者対策の強化などが施策に盛り込まれました。 加えて、平成29年4月には、都道府県と指定都市が行うアルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等依存症対策等の総合的な依存症対策に関する指針を定めた国の「依存症対策総合支援事業実施要綱」(現「依存症対策地域支援事業実施要綱」。以下「実施要綱」という。)が適用となりました。神奈川県でも「アルコール健康障害対策推進基本計画」に沿った形で「神奈川県アルコール健康障害対策推進計画」(現在は第2期計画に移行)が策定されました。また、令和3年3月には、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」に沿う形で「神奈川県ギャンブル等依存症対策推進計画」(現在は第2期計画に移行)が策定されました。 (囲みここから) 【コラム】依存症対策における国と県・指定都市の担う役割 国においては、アルコール健康障害対策推進基本計画やギャンブル等依存症対策推進基本計画などに基づき、様々な依存症対応施策が展開されています。ギャンブル等依存症を例に取れば、ギャンブル等事業者と連携した各種の予防・回復支援施策や学校教育の場における普及啓発、消費者向けの啓発、依存症を支援する人材の確保・育成などの施策が、各省庁において進められています。 また、都道府県及び指定都市は、「依存症対策地域支援事業」の一環として、地域の関係機関と連携をしながら、依存症の専門医療機関・治療拠点機関(脚注3)や依存症相談拠点(精神保健福祉センター等)の設置、地域支援計画の策定を行うほか、関係機関による連携会議の運営や依存症の本人や家族への支援、依存症支援者を対象とする研修、普及啓発・情報提供などの施策を展開する役割を担っています。 このうち、専門医療機関や治療拠点機関は、神奈川県が神奈川県精神保健福祉審議会の意見を踏まえ、本市を含む県内の指定都市と調整し、選定しています。それ以外の事業については県と指定都市が連携を図りながら、それぞれの実状に即した取組を実施しています。 (囲みここまで) 脚注3 依存症の専門医療機関とは、依存症に関する所定の研修を修了した医療スタッフを配置し、専門性を有した医師が担当する入院医療や依存症に特化した専門プログラムを有する外来医療を行うなど、依存症に関する専門的な医療を提供できる医療機関のこと。 また、治療拠点機関とは、医療機関を対象とした依存症に関する研修や、専門医療機関の活動実績の取りまとめを行うなど、地域の依存症専門医療機関の連携拠点となる医療機関を指し、専門医療機関の中から選定される。 カッコ、3、本市における取組 本市においては、令和3年度から令和7年度までの5年間を計画期間とする「横浜市依存症対策地域支援計画」(以下「第1期計画」という。)を策定しました。 第1期計画では、民間支援団体等(図表1の1:本計画における用語の定義参照)と連携をしながら、依存症に関する気付きと相談を促す広報活動、身近な支援者とこころの健康相談センターなどの専門的な支援者の連携強化に向けた『入門・イチから学ぶ依存症支援~横浜市内で依存症及び関連課題に携わる支援者向けガイドライン~』(以下「依存症支援者向けガイドライン」という。)の策定や横浜市依存症関連機関連携会議(以下「本市連携会議」という。)の開催、支援者や依存症の本人や家族等を対象とする研修会・講演会の開催など、一次支援(予防・普及啓発)・二次支援(早期発見・早期支援)・三次支援(回復支援)に関する各種施策を展開してきました。 他方、第1期計画の期間中において、公営競技におけるインターネット投票の浸透や違法オンラインカジノへのアクセスの拡大、若年層による市販やく・処方やくへの依存など、依存対象の拡大や依存症の見えづらさの問題が深刻化しています。 また、依存症の本人が適切な医療につながっていない、「トリートメントギャップ」(脚注4)の問題や、依存症の本人に対する偏見やスティグマ(セルフスティグマ(脚注5)を含む)の問題も依然として根強く残っています。 このような状況を踏まえ本市では、これまでの施策を振り返り、市民全体の依存症の問題に対する更なる理解の促進を図り、依存症の本人や依存症が疑われる人、その家族が適切な支援につながり、回復し続けられる環境を整備することを目的として、「第2期 横浜市依存症対策地域支援計画」(以下「本計画」という。)を策定します。 脚注4 本来依存症の治療が必要であるにもかかわらず、治療につながっていない状態。 脚注5 依存症の本人が、自分自身のことについて「依存症は恥ずかしいことだ」と感じてしまうこと。 (囲みここから) 【コラム】 民間支援団体等の活動と依存症回復支援の経緯 本市における依存症の支援の歴史を見ると、昭和38年4月に開設された「せりがや園」(現:地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立精神医療センター)が、全国に先駆けて麻薬中毒患者専門医療施設として収容治療を開始しました。また、同年7月には、県内で「国立療養所久里浜病院」(現:独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)が、日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設立し、本市における専門的な依存症治療体制の基礎が築かれていきました。そのご、平成3年には、依存症専門のクリニックとして「大石クリニック」が開設し、平成5年に民間病院として「せいしんかい神奈川病院」がアルコール依存症の病棟を開設しました。 神奈川県内でのこうした動きに加えて、依存症の自助グループの活動や回復支援施設の開設が見られるようになりました。 市内では、昭和44年に横浜断酒新生会が結成され、昭和54年には「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」のミーティングが開始されました。昭和59年には「横浜マック」が開設、平成2年には「横浜ダルク・ケア・センター」が全国3番目のダルクとして開設、平成4年には「寿アルク」が開設されました。そのご、平成12年には全国初のギャンブル依存症の回復支援施設として「ワンデーポート」が開設され、平成17年にはギャンブル等依存症者の家族を支援する全国初の施設「ギャンブル依存ファミリーセンターホープヒル」が開設、平成19年には、全国初の女性のギャンブル等依存症者を対象とした「デイケアぬじゅみ」が開設されました。 現在では、アルコール依存症・薬物依存症・ギャンブル等依存症、それぞれの回復支援施設(図表2の31:市内回復支援施設一覧参照)や自助グループ(図表2の33:市内自助グループ・家族会一覧参照)が多数市内にあります。本人の回復過程は様々であり、それを多種多様な社会資源がそれぞれの強みを生かして支え続けています。 このように本市では、先進的・意欲的な医療機関や民間支援団体等が依存症の本人や家族等の支援の取組を積極的に進め、長年にわたって依存症対策に関する取組が進んできた経緯があります。 (囲みここまで) 2、用語の定義 本計画では、以下のように用語の定義を行いました。 図表1の1:本計画における用語の定義 (図表ここから) 用語:依存症 定義:アルコールや薬物などの物質の使用や、ギャンブル等やゲームなどの行為を繰り返すことによって脳の状態が変化し、日常生活や健康に問題が生じているにもかかわらず、「やめたいと思わない」「やめたくても、やめられない」「コントロールできない」状態を指す 疾病及び関連保健問題の国際統計分類(第11回改訂版)(ICD-イレブン(脚注ろく))では、物質使用及びしへき行動による障害に位置付けられている 用語:ギャンブル等 定義:ギャンブル等とは、「法律の定めるところにより行われる公営競技(競馬・競輪・オートレース・モーターボート競走)、ぱちんこ屋に係る遊技その他のしゃこう行為」のことを指す 用語:家族等 定義:依存症の本人の配偶者等(婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者、同性パートナーを含む)の家族(同居別居を問わず)のほか、本人との関係から依存症による影響を受ける交際相手や友人、職場の同僚など、本人の回復のために働きかけを行う人を含む 用語:身近な支援者(2章2、カッコ、2、身近な支援者参照) 定義:依存症支援を専門としていないものの、初期の相談対応や早期発見、地域の中での回復支援などの面で重要な役割を担う行政・福祉・医療・法律・教育といった幅広い領域の相談・支援者 用語:民間支援団体等(2章2、カッコ、4、民間支援団体等参照) 定義:依存症の支援を専門とする回復支援施設、家族会を含む自助グループ等 用語:専門的な医療機関(2章2、カッコ、3、医療機関参照) 定義:依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関、その他の依存症の治療を行う医療機関 用語:専門的な支援者 定義:民間支援団体等、専門医療機関(2章2、カッコ、3、ア、専門医療機関参照)、依存症の治療を行う医療機関(2章2、カッコ、3、イ、依存症の治療を行う医療機関参照)、こころの健康相談センター(2章2、カッコ、1、こころの健康相談センター(依存症相談拠点)参照)、区役所の精神保健福祉相談などの依存症に関する相談・支援・治療を行う窓口及び機関 (図表ここまで) 脚注6 世界保健機関(World Health Organization,WHO)が作成する国際的に統一した基準で定められた死因及び疾病、関連保健問題に関する分類のこと。 (囲みここから) 【コラム】 「依存症」の定義について 依存症の定義に関しては、支援者間でも様々な議論がなされており、確定的な定義を示すことは簡単ではありません。これまでも依存症の定義をめぐって、以下のような意見が聞かれました。 まず、特にギャンブル等依存症について、状態像は幅広く、自力で回復できる人や自然回復をする人もいるため、「脳の病気であり、相談・治療しないと回復できない」といったイメージを与える定義は避けるべきとの意見が聞かれました。また、「依存症は病気」「脳の病気」というと恐怖しん等を抱いてしまう場合があるとの意見も聞かれました。 一方で、依存症が「病気」であるということを理解すると、本人も家族も回復に向かって前向きになり、勉強をしていこうというきっかけになるという意見、依存症が病気であるから医療の対象になり、障害であるから福祉的支援の対象になるということを押さえておく必要がある、という意見が聞かれました。 定義の幅についても、自然回復できるような人から対象とすべきという意見から本当に困っている重症の人に対象を絞るべきという意見までありました。 さらに、自然回復できる/できないという話については、依存症からの回復者として、アルコール依存症から回復したとしても、完全に「治った」と言える状況は想定されにくく、「治ったから、また飲める」という誤解を与えてしまうのでは、という危惧も示されました。依存症からの回復に関しては、支援につながれば直ちに回復につながる場合ばかりではなく、数年以上の長期にわたって、本人に粘り強く寄り添っていく必要があるとの意見も聞かれました。 このように、依存症は、疾患としての病態が非常に多様で幅広い状態像を包含するものであり、回復についても様々な経過や形があるとの議論がなされました。 本計画では、これらの意見を踏まえつつ、依存症の定義を図表1の1、本計画における用語の定義のとおりとしました。 (囲みここまで) 3、計画策定の位置付け カッコ、1、計画の位置付け 本計画は国の実施要綱において定められた、地域支援計画として策定するものです。地域支援計画は、依存症患者等の状況、地域の社会資源や支援の実施状況に関する情報収集とそれらの評価に努め、その内容を反映させることが求められており、これらの情報については、本計画の第2章に記載しています。 また、本計画については、本市の中期計画が掲げる関連する目標の達成を念頭に置くとともに、国や神奈川県の関連計画及び医療・福祉・こども子育て領域の本市関連計画との整合を図りながら策定します。 図表1の2:本計画の位置付け (図表ここから) 横浜市依存症対策地域支援計画 依存症対策地域支援事業実施要綱に基づく地域支援計画 国の法律や計画との整合性に配慮アルコールとして、 アルコール健康障害対策基本法 アルコール健康障害対策推進基本計画 アルコール健康障害対策推進ガイドブック 薬物として、 再犯の防止等の推進に関する法律 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律 再犯防止推進計画 薬物乱用防止五か年戦略 ギャンブル等として、 ギャンブル等依存症対策基本法 ギャンブル等依存症対策推進基本計画 その他として、 依存症対策地域支援事業実施要綱 障害福祉サービス等及び障害児つうしょ支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針 県の関連計画との整合性に配慮 県は国の基本法等を踏まえた県計画の策定 アルコールとして、 神奈川県アルコール健康障害対策推進計画 ギャンブル等として、 神奈川県ギャンブル等依存症対策推進計画 本市の中期計画の目標達成に寄与 本市中期計画 本市の関連計画との整合性に配慮 本市関連計画として よこはま保健医療プラン 横浜市障害者プラン 健康横浜21 横浜市自殺対策計画 横浜市再犯防止推進計画 横浜市地域福祉保健計画 こども、みんなが主役!よこはまわくわくプラン (図表ここまで) カッコ、2、計画策定の流れ 本計画については、以下の取組を通じ、依存症の問題に関する有識者、民間支援団体等や身近な支援者等の関係者、市民などの意見を広く取り入れながら策定します。 ◆第1期計画の取組に関する振り返りの実施 第1期計画において展開した各種の施策の実施状況や到達点の振り返りを行い、その内容を踏まえて課題の整理や施策の見直し等を実施しました。 ◆横浜市精神保健福祉審議会及び同審議会 依存症対策検討部会での議論 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の第9条第1項に基づき、横浜市精神保健福祉審議会条例により設置する横浜市精神保健福祉審議会及び依存症の問題に精通する学識経験者や医療関係者、法律関係者、民間支援団体等の関係者などから構成される依存症対策検討部会(以下「検討部会」という。)において計画の全体像や計画に盛り込むべき課題及び対応策の検討などを進めました。 ◆本市連携会議での意見集約 回復支援施設や自助グループ等の民間支援団体等、行政・福祉・医療・法律・教育等の幅広い関係機関で構成する本市連携会議の場において、計画の検討状況を共有し、現場の意見をうかがいながら検討を進めました。 ◆各種調査・データ分析の実施 計画の策定に向けて依存症に関する市民意識調査を実施したほか、医療機関へのアンケート調査や、民間支援団体等を対象としたヒアリング調査を行いました。 また、医療保険の利用状況に関するデータから、市民の依存症による医療機関の受診状況の分析を行いました。 これらの調査結果を踏まえ、依存症の本人の状態や支援ニーズ、民間支援団体等のニーズ、本市の社会資源の現状などを把握するとともに、依存症対策における課題の抽出・検討を行いました。 4、計画の期間 本計画の計画期間は、令和8年度~令和12年度の5年間とします。 図表1の3:本計画の計画期間 (図表ここから) 第2期 横浜市 依存症対策地域支援計画:計画期間:令和8年度から令和12年度まで (図表ここまで) (囲みここから) 【コラム】 本計画の計画期間について 国の依存症対策関連計画の計画期間を見ると、アルコール健康障害対策推進基本計画は5年間、ギャンブル等依存症対策推進基本計画は3年間とされています。 これらを踏まえつつ、本計画は、関係者と支援の方向性を中長期的に共有していくものを目指していることから、計画期間を5年間と設定しました。 また、計画期間中は毎ねん度、計画の進捗状況などの点検や評価を行い、その結果を踏まえ、計画期間中であっても必要に応じて事業の見直しや改善、新規事業の追加などを実施していきます。 (囲みここまで) 5、計画で取り扱う依存対象 本計画は、アルコール・薬物・ギャンブル等依存症やゲーム行動症のほか、その他の依存症を含む依存症全般を視野に入れた内容として策定しています。 図表1の4:本計画の対象とする依存症 (図表ここから) 依存症の種類:アルコール依存症 定義:飲酒を続け、耐性・精神依存・身体依存が形成され、飲酒のコントロールができなくなる状態 また、過度の飲酒による健康障害も大きな問題であり、肝臓や膵臓、脳・神経などの様々な臓器に悪影響を及ぼす 依存症の種類:薬物依存症 定義:覚醒剤・シンナー・大麻などの依存性のある薬物に対する精神依存、身体依存が形成され、現実に色々と不都合が生じているにもかかわらず薬物を使い続けてしまう状態 近年、市販の鎮痛やくや咳止めやく、病院で処方される睡眠薬や精神安定剤などへの依存も問題になっている 依存症の種類:ギャンブル等依存症 定義:ギャンブル等にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態 近年、公営競技のオンライン投票やオンラインカジノサイトへのアクセス数増加など、ギャンブル等のオンライン化が進行している 依存症の種類:ゲーム行動症 定義:健康を維持するための食事や休養・睡眠、適度な運動、学業や交友といった日常の活動よりもゲームが優先され、心身の健康や社会生活に問題が生じている状態 WHOの国際疾病分類では、「ゲームする時間をコントロールできない、他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先するといった症状が1年以上続く(症状が重い場合は1年以内でも該当)」とされる (図表ここまで) 出典:厚生労働省資料・本市ホームページより作成 (囲みここから) 【コラム】 その他の依存症について 依存症は、アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル等依存症、ゲーム行動症にとどまらず、その種類は多様です。すべての種類の依存症を網羅することは難しいですが、例えば、「特定の行動に対する依存症」には、買い物、インターネット利用、せいこうい、窃盗などへの依存が挙げられます。 いずれも、依存することによって日常生活や健康に問題が生じているにもかかわらず、自らコントロールできない状態に陥っている点が共通しています。 本市では後述するこころの健康相談センター等において相談支援を実施していますが、これまでに見られなかったような依存対象に関する相談や、依存症の定義に当てはまらない周辺課題についての相談も増えており、依存症の問題の多様化が進んでいると言えます。 (囲みここまで) (囲みここから) 【コラム】 オンラインギャンブルの拡大と「ギャンブル等依存症対策基本法」の改正 図表2の20に掲載した日本中央競馬会(JRA)のデータからも分かるように、公営競技における電話やインターネットを利用した投票が拡大しています。また、オンラインカジノについても近年アクセスすうの増加が指摘されており、急速に社会問題となっています。 手元に現金がなくても参加できるオンラインギャンブルは、賭けきんや借金の額が従来よりも大きくなりやすい傾向があります。さらに、オンラインカジノの利用は賭博ざいに問われる可能性がある違法な行為です。 スマートフォンアプリなどでの課金に慣れている若者の中には、オンラインカジノを含むオンラインギャンブルでお金を賭けることへの心理的ハードルが低い人も多いと考えられており、ギャンブル等依存症の人の増加が懸念されます。また、依存症の問題が家族や周囲から気付かれにくくなる可能性があります。 こうした問題を受けて、違法なオンラインカジノの規制を強化する改正「ギャンブル等依存症対策基本法」が、2025年7月に公布されました。改正法では、オンラインカジノサイトの開設・運営やSNSなどを通じてカジノサイトへ誘導する行為が禁止されました。また、国及び地方公共団体には、家庭、学校、職場、地域その他の様々な場での教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じオンラインカジノの違法せいについて周知徹底することが定められました。 (囲みここまで) (囲みここから) 【コラム】 オンラインギャンブルに熱中していくプロセスについて インターネットの普及により、ギャンブルはこれまで以上に私たちの身近な存在となりました。オンラインギャンブルは、そのハードルの低さや依存性の高さ、課金額の大きさなどが問題視されています。 まず、スマートフォンやパソコンから24時間いつでもどこでも参加できるため、時間や場所に縛られることがありません。特にコロナかにおいては外出自粛や娯楽施設の営業制限が続いたことにより自宅で過ごす時間が増え、オンラインでギャンブルを始める人が増えました。 また、友人・知人の勧めや広告、SNSなどを通じて興味を持ち、初回登録や入金の手続きが非常に簡単であることから、「試しに少しだけ」と始めるケースも多く見られます。最初は少額の賭けで遊び感覚でも、偶然の勝利や高額の配当を経験すると強い高揚感を味わい、更なる興奮や期待感を求めて「もう一度」と繰り返すようになります。負けが続くと「取り戻したい」という気持ちが強まり、次第に賭けきんが増え、気づけば依存状態に陥ってしまうことも少なくありません。近年では高画質なストリーミングや拡張現実(AR)技術が取り入れられ、臨場感のある体験ができるようになったことも、オンラインギャンブルに熱中してしまう要因の一つと考えられます。 近年では、公営競技のインターネット投票に加え、「オンラインカジノ」に熱中する人が増加傾向にあります。日本国内において、海外のオンラインカジノサイトを利用して金銭を賭けることは、刑法上の賭博ざいに問われる可能性のある違法な行為です。しかし、サイト運営者である海外の事業者の多くが、アクセス制限措置が十分に講じられていない日本を主要なターゲットとしており、日本語に対応したサイトや広告を積極的に展開しています。その結果、違法せいを認識しないまま利用してしまうケースも見受けられます。 上記の行為を「やめたくてもやめられない」「コントロールができない」という状態になっている場合は、依存症の支援が必要であり、早期に相談・治療することが重要です。本市では、依存症に関する相談窓口や支援体制を整備しています。 (囲みここまで)