保育所等における医療的ケア検討プロジェクトについての報告 1検討プロジェクトの趣旨 保育所等における医療的ケア児の受け入れにあたっては、本市独自の看護師配置に係る加算等の仕組みを設け、各園での受け入れを行っています。しかしながら、看護師等の雇用の難しさや医療的ケア児の受入れへの仕組みの煩雑さなど、様々な課題があり医療的ケア児の保育ニーズに十分に応えることができない現状にあります。 そのため、本市として保育所等における医療的ケア児の受け入れを含めた支援体制を整備していくために、令和2年度に検討プロジェクトを立ち上げ、検討を進めています。 2検討プロジェクトメンバーの役職名 支援体制等の制度を構築していく「局」と保育所等の入所決定などの実務を担う「区」の合同プロジェクトとして、次のメンバーで構成しています。 区 区こども家庭支援課長、区学校連携・こども担当課長、区こども家庭支援課担当課長。 注 こども家庭支援課担当課長は市立保育所園長です。 局 健康福祉局障害施策推進課長、こども青少年局障害児福祉保健課長、こども青少年局子育て支援課人材育成・向上支援担当課長 事務局 こども青少年局子育て支援課 教育委員会事務局特別支援教育課担当課長も今後追加予定です。 3検討プロジェクトの開催状況 (1)令和2年度 開催回数 1回 主な内容 検討プロジェクトにおける今後の検討内容に関する意見交換 (2)令和3年度 開催回数 2回 主な内容 保育所等の現状把握のためのアンケート調査 令和4年度予算に向けた意見交換 4今後について 保育所等の現状把握のためのアンケート調査の内容等をふまえ、引き続き医療的ケア児の受入れや支援体制の拡充に向けた検討を進めていきます。また、今後医療的ケア児の受入れや支援に関するガイドライン等を作成していく際には、関係機関の皆様のお力も借りて検討していきたいと考えています。 施設・事業者あて医療的ケア児の現状把握のためのアンケート アンケート結果における医療的ケア児の受入れ状況などは、医療的ケア児に該当しないケースも含まれているため、実際の受入れ人数等との差があります。 アンケート送付施設 市立を除いた認可保育所、施設数777か所、回答数526か所、回答率67.70パーセント 認定こども園、施設数60か所、回答数34か所、回答率56.67パーセント 幼稚園、施設数95か所、回答数63か所、回答率66.32パーセント 小規模保育事業者、施設数219か所、回答数160か所、回答率73.06パーセント 市立保育所、施設数65か所、回答数64か所、回答率98.46パーセント 合計、施設数1216か所、回答数847か所、回答率69.65パーセント 設問1 医療的ケア児の受け入れ状況を教えてください。 1現在受け入れている、施設数17か所、割合2.01パーセント 2過去に受け入れたが現在は受けいれていない、施設数49か所、割合5.79パーセント 3受け入れたことがない、781か所、割合92.21パーセント 1もしくは2と回答した中に一部「医療的ケア」に該当しないものも含まれています。 1もしくは2と回答したうちの施設種別割合 市立を除いた認可保育所、施設数41か所、割合62.12パーセント 認定こども園、施設数5か所、割合7.58パーセント 幼稚園、施設数13か所、19.70パーセント 小規模保育事業、1か所、1.52パーセント 市立保育所、6箇所、9.09パーセント 設問1で、「1現在受けれ入れている」「2過去に受け入れたが現在は受け入れていない」を選択した施設は、以下の設問2から14まで回答してください。 設問2 受け入れたお子さんは、どのような医療的ケア、医療的生活援助行為が必要でしたが。複数選択可。 1喀痰吸引、17件 2導尿、27件 3経管栄養、17件 4その他、28件。 その他の内容 酸素療法、糖尿病、人工呼吸器、人工肛門、肢体不自由、脳性麻痺、筋ジストロフィーなど その他の中には一部医療的ケアに該当しないものも含まれています。 設問3 誰が医療的ケアを実施していますか。複数選択可。 1看護師が実施、37件 2喀痰吸引等研修受講職員が実施、4件 3保護者が来援し実施、19件 4その他、26件 その他の内容 フリーの職員、本人及び養護教諭、担任、クリニック受診など 設問4 看護職不在時の医療的ケア児への対応はどのようにしていますか。複数回答可。 1自宅保育を依頼、11件 2喀痰吸引等研修受講職員が医療的ケアを実施、5件 3保護者が来援し対応、28件 4その他、34件 その他の内容 クリニック受診、家庭でケア後登園、本人、ケアが必要な時は降園など 設問5 医療的ケア児を受け入れるために新たに配置した人員体制について教えてください。 注 ご回答いただいた中からいくつか例を抜粋しています。 例1、看護師1名、医療的ケア児1名 例2、保育士1名、医療的ケア児1名 例3、看護師2名、保育士1名、医療的ケア児2名 例4、看護師1名、保育士1名、医療的ケア児1名 設問6 医療的ケア対象児童として助成金の申請をしていますか。またはしましたか。 はい、25件 いいえ、41件 設問7 医療的ケア児を受け入れるために、どのような設備・備品を準備しましたか。 注 ご回答いただいた中からいくつかご意見を抜粋しています。 喀痰吸引 医療ケア室の確保 導尿 保護者が用意した備品の保管場所確保 エレベーターとおむつ台の設置 障害者用トイレ、シャワールーム。 注 人工肛門の子も在園 経管栄養 保護者がお子さんの成長に合わせた特製の椅子を園に持参 注入用器具、洗浄用器具、保管容器、流動食用の専用ミキサー 注入時に落ち着いて過ごせるようサークルや玩具類 その他 ペースメーカー 転んだ時の衝撃を少なくするため、マット、人工芝などを敷く 酸素療法 液体酸素システムのリザーバーユニット インスリン注射 必要物品は持参してもらい、管理記録簿を園で作成 設問8 医療的ケアが必要なお子さんで、医療的ケア対象児童としての認定を受けずに入所したお子さんはいましたか。 はい、22件 いいえ、44件 設問9 設問8で「はい」と回答した方に伺います。 受け入れ後、どのように対応したのかを教えてください。 例 看護師の配置など 注 ご回答いただいた中からいくつかご意見を抜粋しています。 職員が幼稚園免許と看護師免許を持っていたので対応 主治医に指示をお願いし保護者と一緒に説明を受けた職員が対応 保護者の指導を受け職員が対応 園独自で看護師を配置 保護者が対応している 設問1で「3受け入れたことがない」を選択した施設は、以下の設問10から16にご回答ください。 設問10 看護師が配置されていますか。 はい、259件 いいえ、522件 設問11 医療的ケア児の入所相談を受けたことはありますか。 はい、150件 いいえ、631件 設問11で「はい」の場合、令和2年度は何件の相談を受けましたか。 1件、104か所 2件、29か所 3件、2か所 以下の設問12から16まではすべての方にご回答いただく項目です。 設問12 今後、医療的ケア児の入園希望があった場合に、自園で受け入れようと考えていますか。 積極的に受け入れたい、6件 条件が整えば受け入れたい、181件 受入れたいが条件を整えるのが難しい、328件 受け入れは難しい、332件 設問13 設問12で回答した内容について、具体的な理由をお教えください。 注 ご回答いただいた中からいくつかご意見を抜粋しています。 看護師の雇用・不足にかかる理由 看護師を採用したくなるような体制を整えてほしい 看護師は派遣職員のため、いつまで雇用状態にあるか不明なため 看護師が1名だと不在の日も出てくるため対応が難しい 看護師が常勤でないため 仮に看護師を雇用できたとしても対象児が卒園していなくなった後、雇用できない 看護師は配置しているが、怪我や体調不良、乳児対応での配置なので受け入れとなると別途の看護師を採用するしかないが、看護師は賃金が高く、給付金だけではまかなえず、現在雇用している時点で赤字のため 保育士不足にかかる理由 医療的な知識、技術を持った職員がいない 保育祖の人員確保が難しく、また、保育士全員から理解を得るのも難しい 派遣職員などを入れて保育しているが、採用条件があり十分任せられない面がある 施設設備が整っていないことにかかる理由 階段、段差、トイレなどバリアフリーに対応していないため 医療器材やベットの設置スペースがない 2から5歳児は仕切りのない保育室で過ごしているため、安全確保が難しい その他のご意見 0から2歳児のみの保育のため、その後のケアができないため受け入れは難しい 園児数が多くにぎやかなため、落ち着いてケアできる環境がない 万一のときのご家族やかかりつけ医のサポート体制を整え、それを享受できるであろう保育日、保育時間のみの約束でお預かりするという仕組みが必要 障害児の受け入れも多数行っているため受け入れの余裕がない 新規園でできたばかりのため受け入れは難しい 看護師の配置や受け入れ態勢を整えるための準備期間、保育士を含めて医療ケア児についての勉強会等が必要 看護師ではなく、保育士レベルで対応できるケア内容なら受け入れも可能 設問14 医療的ケア児を受け入れるにあたり、課題と考えていることはどのようなことでしょうか。複数回答可。 件数の多い順に記します。 1スペース・設備の不足、640件 2看護師不足・不在、626件 3従事者の経験・技術の不足、573件 4受け入れリスク・事故補償などへの懸念、495件 5看護師以外の職員の不足・不在、454件 6医療機関の支援がないこと、272件 7受け入れ時の費用、221件 8その他、37件 その他の内容 要配慮児と要保護児を多数受け入れているため余裕がない 初年度もしくは1学期だけでも看護師を派遣・常駐してもらえると可能性は広がると思う 保護者対応や地域支援等保育所の役割が多岐にわたるため余裕がない 看護師の体力面・給与ともに雇用しても続かない 在園児の他の保護者からの理解がないと難しい 園医が医療的ケアに対応しているか分からないから 設問15 本市では、エリア別に医療的ケア児・者等コーディネーターが配置されていることを知っていますか。 はい、298件 いいえ、549件 設問16 その他、医療的ケア児受け入れについて、ご意見があればお寄せ下さい。 例 子ども同士の関わり、職員間連携など 注 ご回答いただいた中からいくつかご意見を抜粋しています。 職員の雇用、職員間連携、雇用費加算等にかかるご意見 保育士不足が改善されなければ、個々の園の負担が増すばかり。保育士不足の改善がなければ様々なケアも難しいのではないでしょうか。 こどもたちが理解できるようにするためにはまずは職員の理解が必要と考えますが、労働環境を考えると職員に十分な教育ができてないと感じます。まずは職員が正しい知識を身につけることが大切と思います。 医療的ケア児がいるときだけ優秀な看護職員を雇?するという事は、現実的にはできない。医療ケア時の受け入れを広げるためには、看護師雇用を継続的に?える助成制度が必要。 医療的ケアが必要な児童を受け入れるにあたり看護師雇用に対する加算や看護師、保育士への研修体制などを整えてほしい。 現状の医療的ケアの助成は、正規看護師とは別に他看護師をパート等で雇用しないと助成がでない。喀痰吸引等研修受講職員が実施しているが、現在の横浜市の助成がでない。 医ケア児への加算と障害児加算は同時には受けられないため、身体障害1級の障害がありなおかつ医ケアが必要なお子さんは提出書類が少ない障害児加算認定を申請しています。対象児たちは1対1の対応はもちろんのこと、看護師はじめたくさんのスタッフの支援が必要です。支援に見合った加算が助成されることを願っています。 子ども同士の関わり等にかかるご意見 子どもたちにとってはインクルージョンの観点でも貴重な関わりとなるのではないかと考える。 医療的ケア児を他園では受け入れたことがあるが、児がいることで、他児の思いやりの気持ちが育った。また、園全体で多様性を認めることやノーマライゼーションを考える良い機会となった。 市の役割、バックアップ等にかかるご意見 市や区の安心できるバックアップがあってこそ、各保育所が安?して医ケア児を受け入れることができるのではないか。そこが一番の課題なのではないかと感じている。 医療的ケア児担当の看護師が退職してしまった場合や体調不良で欠勤した場合などのサポートはあるのか。看護師が急遽退職してしまった時一時的に市や区から看護師を派遣する、看護師不在時は医療的ケア児の登園を見合わせることができるなど。 預かる上でリスクの大きいお子様を保育所に入所させる動きがあるのであれば、保育所の理解をした上で、行政の支援や補助が必要だと感じる。 リスクや事故補償も市が関わって共に育てる立場に立ってやっていきたい。また、事前研修も?緒に行っていきたい。 以前、他園で導尿や吸引の医ケア児を受け入れていた時に、看護師のいない土曜日や朝夕の利用、体調不良時の利用など、保育士が不安を感じる場面が入所後にでてきました。入所後も保育園だけで対応するのではなく、区役所やコーディネーター等との連携が必須ではないかと思います。 障がいのあるお子さんの受け入れも難しい状況もある中で、医療的ケア児の受け入れを進めていくために行政側のサポートも必須だと思います。 市立保育所の役割等にかかるご意見 公立保育園での実績を増やし、必要な設備、人的環境も含んだ環境、教育のシステムなどを構築、システム化していくことが、子どもにとって大切だと思います。 受け入れガイドラインやマニュアル等の整備にかかるご意見 横浜市として医療的ケア児の受け?れガイドラインがない。 医療ケア児を受け入れる際に必要な書類、看護師以外が医療ケアを実施することができる制度、研修、登録手続きなど流れを市または県のホームページ等で一覧にするなど情報提供してもらえると助かる。今回、初めて医療ケア児を受け入れたが、わからないことが多かった。 その他のご意見 看護師を雇用している保育園でも、リスクを考え医療的ケア児を受け入れない園があり、受け入れない園があるがために医療的ケア児をうけいれている園に医療的ケア児が多くなっている現状。 横浜市職員の認識不足や受け入れ側の受入れ技量が無い。また、費用負担が多くある。 今まで受け入れをした経験がないので予測ができない為、職員にどの程度の負担がかかるのかもわからない点が多く不安が大きい。 ?時保育利用の加配認定が遅い、複雑。胃ろうや連続酸素投与のお子さんを預かる機会が増えているが手帳等を提出するだけで良いのではないか。医療ケア児がレスパイトで使うには気軽に使えるには至ってないように思う。 積極的に受け入れるにあたっては、人的な保障、保育室環境の充実がなければ現場の職員の負担だけが増すことになる。負担が大きければ大きいほどリスクも大きくなり事故につながる。 医療的ケア児の事故は大事故となる。職員の心的負担をケアしていく体制もあわせて整えていくことも必要と思う。