第2章 横浜市の障害福祉について 1 横浜市の障害福祉 (1)横浜市の知的・身体障害者の福祉施策の展開 (地域活動の視点から)   昭和40年代は、教育委員会が学齢期に達した子の保護者に対し、その子を学校に就学させる義務を猶予または免除する法律が、障害児に適用されていた時代でした。  そのような状況下においても、本市には、数えるほどの知的障害児・者施設しかなく、公設の「ときわ学園」や「さざんか学園」に、就学猶予・免除された子どもたちの一部が通っており、多くは「家族が面倒を見る」というような時代でした。  また、当時障害者施策の責務は都道府県にあり、本市が独自に施策を展開していくことが難しい時代でもありました。  このような時代の中で、市内で障害児の保護者たちが立ち上がり、障害児の療育・レクリエ−ションや保護者の学習会などを行う「地域訓練会」、成人した障害者の日中活動の場として「地域作業所」を立ち上げて活動を進めました。その後、地域で暮らし続けられる住まいについて、行政と共に検討を重ね、「グループホーム」の制度化へつながっていきます。 これらの活動に対する助成制度創設の要望をいただき、本市としても必要な支援として運営費の助成を開始しました。 そして、この活動の中心にあったのが、重い障害者の家族によって設立された「横浜市在宅障害児援護協会※1」(以下「在援協」といいます。)であり、横浜市は、この在援協に補助を行い、在援協が各訓練会や横浜市障害者地域作業所(以下「地域作業所」といいます。)へ運営費として、助成を行ってきました。 ※1…重い障害のある人の家族によって、1973年(昭和48年)に設立されました。設立当時、障害児の保育活動グループ(地域訓練会)の支援に力を注いでいましたが、その後は地域作業所、障害者地域活動ホームといった日中活動の場を支援しながら、暮らしの場であるグループホームへとその支援の範囲を広げ、総合的に障害児者の地域生活を推進してきました。また、後に「在宅障害児援護協会」から「在宅障害者援護協会」へと、名称を変更しました。その後、社会福祉法人横浜市社会福祉協議会との組織一体化を経て、横浜市社会福祉協議会障害者支援センター(以下「障害者支援センター」といいます。)として、在援協の理念や支援を継承し、活動しています。 (社会福祉法人 横浜市社会福祉協議会のホームページから引用) 当事者の活動が広がる中、その活動場所の確保に苦慮していたことから、運営団体と本市の助成金をもとに、安定的な地域活動の場として「横浜市障害者地域活動ホーム」(以下地活ホーム」といいます。)の建設を開始し、昭和55年から平成6年までの間に、市内で23か所建設しました。 そして、地活ホームの目的は「地域生活の拠点」へと転換していきました。そのような中で、運営委員会の統合や職員体制の一体化等による運営体制の効率化や、地活ホームの機能充実が求められてきたことから、平成7年度から夜間の介助や見守りを行う「ショートステイ事業」等を始めたことで「機能強化」が行われました。25年10月までで、すべての地活ホームに行われ、形を「機能強化型障害者地域活動ホーム」(以下「機能強化型地活ホーム」といいます。)と変えてきました。  しかし、障害児・者が、自宅での生活から、地域での生活へ転換していく中で、機能強化型地活ホームが地域の拠点として全てを担っていくには、施設や事業の規模が小さいために、非常に困難な状況が発生してきました。  そこで、この機能強化型の「発展形」として、施設や事業の規模を拡大した地域生活の拠点「社会福祉法人型障害者地域活動ホーム」(以下「社会福祉法人型地活ホーム」といいます。)の設置を平成11年から開始しました。  この社会福祉法人型地活ホームでは、相談支援事業として専任の職員配置やショートステイの機能など、多彩な機能を備えています。  平成25年3月には、市内各区1館整備を完了し、地域生活の拠点としての役割を担い、活動を進めています。  一方、社会福祉法人における通所施設の支援では、重症心身障害者の地域生活を支援するため、昭和61年に、重症心身障害者にとって初めての通所施設を全国に先駆けて整備しました。この取組は、その後の本市における重症心身障害者の生活の姿を大きく変えるものとなりました。 また、平成5年度の知的障害者福祉法改正により、大都市特例が導入され、それまで都道府県が行っていた障害者施策の権限が政令指定都市に移譲されたことにより、本市独自の展開が可能となりました。 それを受けて、社会福祉法人における入所施設の支援では、いち早くユニット化(小舎制)・個室化を導入し、施設生活の質の向上だけでなく、地域生活移行を想定した支援が行えるよう、取組を行ってきました。 (2)横浜市の精神障害者の保健福祉施策の展開 一方で、精神障害については長く医療の対象とされ、福祉の対象とはなっていませんでした。 そうした中で本市においては、全国的な施策展開よりはるかに早期の昭和23年から保健所(当時)に医療社会事業員を配置し、3区に精神衛生相談所を設け、これを発展させて、全区に専任の医療ソーシャルワーカーを配置してきました。医療ソーシャルワーカーが中心となって、家族会の創設やその後の横浜市精神障害者地域作業所(以下「精神障害者地域作業所」といいます。)の設置など、様々な地域活動を展開してきました。57年に初めて2か所の精神障害者地域作業所が開所し、「病院の外」で社会復帰の場所ができました。そして62年、社会復帰施設が初めて法律上位置付けられ、平成元年には初めて精神障害者のための授産施設が市内に設置されるなど、社会復帰のための福祉施設が整備されてきました。また、この頃から県レベルでの当事者活動が開始され、本市の障害者も参加しました。その後、平成11年に精神障害者への地域生活を支援する拠点として、相談支援事業や居場所の提供などのサービスから地域交流まで、様々な機能を備えた、横浜市精神障害者生活支援センター(以下「生活支援センター」といいます。)の設置を開始しました。そして25年3月に市内各区に1館整備が完了しています。 今後とも精神障害は「疾病」と「障害」を併せ持っていることに配慮した施策展開が必要です。 【平成21年度以降の横浜市の障害福祉施策】 平成21年4月 第2期障害者プランを策定 平成22年4月 在宅心身障害者手当を廃止し、障害者施策推進協議会等での議論を踏まえて「将来にわたるあんしん施策」を開始 平成22年10月 横浜市障害者後見的支援制度(以下「後見的支援制度」という。)を4区で開始 平成24年4月 第2期障害者プラン改定版を策定、神奈川県から事業者指定業務が移管される 平成24年10月 横浜市障害者虐待防止センターの開設、横浜市多機能型拠点(以下「多機能型拠点」という。)1か所目の開所 平成25年3月 後見的支援制度を新たに3区で開始(計7区)、社会福祉法人型地活ホームの18区整備完了、生活支援センターの18区整備完了 平成25年4月 「移動支援施策の再構築」を実施(一部は平成25年10月から実施)、「横浜市における障害者就労施設等からの物品等の調達方針」を年度ごとに作成、横浜市障害者就労支援センター(以下「就労支援センター」という。)9か所目の開所、横浜市地域療育センター(以下「地域療育センター」という。)8か所目の開所 平成25年10月 多機能型拠点2か所目の開所 平成26年3月 後見的支援制度を新たに4区で開始(計11区) 平成27年3月 第2期障害者プラン 計画期間終了、後見的支援制度を新たに3区で開始(計14区) 平成27年4月 第3期障害者プランを策定 ●横浜市の各障害者手帳等統計の推移 (1)横浜市の障害者手帳所持者数  横浜市発行の各障害者手帳(身体障害者手帳・愛の手帳(療育手帳)・精神障害者保健福祉手帳)の平成26年3月末時点での所持者数の合計は、約 14万9千人(横浜市全体人口比で4.03%)となっています。  表1によると21年の約12万5千人から、現在までに、約2万3千人増加し(増加率約18.9%)、年々所持者数が伸びていることが分かります。  また、表2からわかるように、障害者手帳所持者数の増加率については、ここ数年3%から4%の間で推移しており、横浜市人口の増加率と比べても大きいことから、障害者手帳所持者の割合が増えてきているといえます。今後も障害者手帳所持者数の割合は増えていくことが推測されます。 (2)障害種別の状況 ア 身体障害者手帳 手帳所持者数は、肢体不自由が最も多く、次いで、内部障害となっており、各障害も年々増加しています。 また、18歳から65歳未満の人数が横ばいとなっているのに対して、65歳以上の人数は、年々増加しています。 イ 愛の手帳 26年3月末時点では、21年と比べ、5千5百人以上増えています。中でも、B2の手帳を所持している方が、約3千3百人と、全体の増加数の約6割を占めています。   また、全体の所持者数における各年齢の所持者数の割合は、この6年間を通して、ほぼ横ばいとなっています。 ウ 精神障害者保健福祉手帳  身体障害・知的障害・精神障害の3障害の手帳所持者のうち、この5年間でもっとも増加してきているのが、精神障害です。表7からわかるように、26年3月末時点)では、21年と比べ、9千人以上増えており、特に2級が約5千人(約1.5倍)増えています。  また、20歳〜65歳未満の所持者数が大きく増加してきている傾向に対し、20歳未満の所持者数はほぼ横ばい、65歳以上の所持者数は、若干の増加という傾向となっています。 エ 横浜市の難病患者数  平成25年4月に施行された障害者総合支援法では、制度の谷間の無い支援を行うため、障害者の範囲に、新たに難病等を加えました。  このことにより、「難病患者等居宅生活支援事業」の対象疾病(130疾病及び関節リウマチ)にり患している難病患者等で、症状の変動があり身体障害者手帳を取得することができなかった方が、障害福祉サービスを利用できることとなりました。  その後、国の障害者総合支援法対象疾病検討会での議論を経て、27年1月には対象疾病が130疾病から151疾病へと拡大されました。  今後、障害福祉サービスの推進に当たっては、難病等の患者数も考慮しながら、進めていきます。 3 第2期の振り返り  第2期では、障害者が自己選択・自己決定のできる社会の構築という視点を中心とし、また、障害者の力を充分に発揮していくことを念頭において「プランでめざす社会」を4つ設定しました。 そして、その社会を目指すために、重点的に進めていく項目を7つの「重点施策」として取りまとめました。また、ニーズ把握調査などの結果、特に重要で緊急と思われる課題認識を「将来にわたるあんしん施策」としてまとめ、「親亡き後の生活」・「高齢化・重度化」・「地域生活のためのきめ細かな対応」といった視点を柱として、施策を着実に進めてきました。 (1)将来にわたるあんしん施策   将来にわたるあんしん施策は、「在宅心身障害者手当」の質的転換策として、平成21年度から進めてきた施策です。 「在宅心身障害者手当」とは、障害のある方への在宅福祉サービスがほとんどなかった昭和48年につくられた制度です。その後、30年以上経過する中で、障害基礎年金の創設やグループホーム、地域作業所、地活ホーム、ホームヘルプなど、在宅福祉サービスが充実してきました。  このような変化のもと障害者やその家族、学識経験者などが参加する横浜市障害者施策推進協議会で在宅心身障害者手当のあり方について話し合いを重ねました。その結果、個人に支給する手当を、多くの障害者や家族が切実に求めている「親亡き後の生活の安心」「障害者の高齢化・重度化への対応」などの必要な施策に転換すべきであると確認されました。  これらの声を受けて、本市では在宅心身障害者手当を廃止して、その財源を活用し、将来にわたるあんしんのための施策に転換することとしました。そこで、それらの施策を進めていくための課題認識を示すものとしてあんしん施策をとりまとめ、第2期のプランに明記しました。 ≪親亡き後も安心して地域生活が送れる仕組みの構築≫ 障害児・者やその家族へのニーズ把握調査などでは、「親亡き後の不安」や「将来を見据えた支援の必要性」などの声が多く聞こえてきました。  それを受けて、障害児・者が地域で安心して暮らすために必要な、日常生活の見守りや将来の不安に関する相談等を行う、後見的支援制度を開始しました。  また、常に医療的ケアが必要な重症心身障害児・者やその家族の地域での暮らしを支援するため、その支援機能を一体的に提供できる拠点として、多機能型拠点の整備を開始しました。 主な事業名:後見的支援推進事業、当初目標(第2期改定時):拡充 平成26年度末実績(見込み):累計14区、進行状況:○ 主な事業名:多機能型拠点の整備、当初目標(第2期改定時):拡充 平成26年度末実績(見込み):2館開所、3館目整備開始、進行状況:△ 主な事業名:緊急時ホットライン、当初目標(第2期改定時):検討 平成26年度末実績(見込み):部内で検討を行い、本事業としての実施は見送り、進行状況:× 進行状況の説明  ○:想定した目標を達成し、想定したとおりの効果が得られた。 △:一定程度の効果は得られた。 ×:想定した目標は達成できず、効果も得られなかった。 【振り返り】  後見的支援制度の実施区の展開は、概ね想定どおりの進ちょくとなりました。後見的支援制度は、親亡き後の不安の解消のために期待も大きく、利用者及び家族にアンケートを実施した結果、利用者の79%、家族の89%以上が「登録して良かった」という回答だったこと等もあり、早急に18区展開を行う必要があります。  また、多機能型拠点の整備についても、早期に整備してほしいという要望が多く、市としても医療が必要な方の地域生活支援のさらなる充実が必要との認識から、整備手法を検討しながら、早急に市内6カ所への整備を進めていく必要があります。  なお、緊急時ホットラインについては、平成22年度から検討を進めてきましたが、実効性のある手法を見出すことができなかったため、本事業としての実施は見送ることとし、代替する仕組みについては、引き続き検討していきます。 ≪障害者の高齢化・重度化への対応≫  親亡き後の不安と並んで、多くの声が寄せられたのが、「高齢化に伴って、これまで自分でできていたことができなくなる」といった、「障害者の高齢化・重度化」による将来の不安でした。  これを受けて、障害児・者が住みなれた地域で安心して暮らせるために、高齢化や重度化にも対応できるグループホームにおける支援体制について、検討を進めてきました。 主な事業名:障害者グループホーム設置運営費補助事業 当初目標(第2期改定時):推進 平成26年度末実績(見込み):重度化対応モデル事業実施(※平成26年度から法定グループホームへ移行)、・高齢化対応モデル事業実施 進行状況:△ 【振り返り】  高齢化対応グループホームのモデル事業については、設置場所の調整に時間が掛かり、実施が遅れましたが、重度化対応グループホームはモデル事業を実施し、検証を進めることができました。  重度化対応モデル事業については、現在も検証を進めていますが、持続可能な仕組みを検討していくことが必要です。 このモデル事業結果をしっかりと検証し、今後のグループホーム重度化対応として、社会資源の活用など、様々な選択肢も含めて検討します。 ≪地域生活のためのきめ細かな対応≫ 障害児・者が住みなれた地域で安心して生活し続けるために、一人ひとりの生活を個別に支援するための取組を充実させていくことが必要と考え、各施策を進めてきました。  第2期では、障害者の社会参加や活動範囲をさらに広げ、現行の移動支援施策がより使いやすく、必要な人に必要な支援が適切に行われるように、移動支援施策体系の再構築に取り組みました。  また、障害の種類や程度にかかわらず、安心して受診することができるような医療環境の充実に向けて、医療従事者の障害理解を深めるための研修等を実施してきました。 主な事業名:障害者移動支援事業、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):制度見直し実施、通学・通所支援の実施、進行状況:○ 主な事業名:移動情報センター運営事業、当初目標(第2期改定時):拡充9区・検討 平成26年度末実績(見込み):累計9区 進行状況:○ 主な事業名:障害児者の医療環境推進事業、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):知的障害者対応専門外来の実施、医療従事者への研修実施、進行状況:△ 主な事業名:福祉人材の確保・育成、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):就職フェア実施、 来場者数:130人(平成26年9月実施時)、採用人数:累計45人、ガイドヘルパースキルアップ研修(サービス提供責任者向け累計694人、ガイドヘルパー現任者向け、累計1,175人)、進行状況:○ 主な事業名:精神障害者の家族支援事業、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):緊急滞在場所:累計483日、講習会:4講座実施、1講座につき5回開催(平成26年度)、進行状況:○ 【振り返り】  訪問看護師や障害児・者施設に対する障害特性を理解するための研修実施や、障害者移動支援施策体系の再構築の実施など、概ね想定どおりの進ちょくとなりました。  しかし、医療従事者に対する障害理解の機会については、例年どおりの規模での開催になっており、訪問看護の事業所等が増加しているにもかかわらず、拡充がはかられていない状況であり、引き続き、取り組んでいく必要があります。  また、移動支援については、ガイドヘルパー・ガイドボランティアの発掘・育成に伴う利用状況の改善や、移動情報センター機能等の充実を図る必要があります。  さらに、人材の確保・育成について、着実に取り組みましたが、就職フェアでの来場者の減少が続いており、今後、効果的な手法へと見直していく必要があります。 (2)重点施策   第1期での振り返りから、各項目について第1期に構築した内容を、より充実させ強化していくことが必要と考え、基本的な方向性を継承しながら、新たに発達障害の視点を加え、7つの項目を設定し進めてきました。  また、これらの重点施策を進めていくに当たっては、障害特性や乳幼児期から高齢期におけるそれぞれのライフステージに応じた課題に対応していくという視点に立って施策の充実に取り組んできました。 重点施策1 普及・啓発のさらなる充実 障害のある人もない人も同じように地域で生活することができる社会の実現を目指し、すべての人が、疾病や障害に対する正しい理解を深めることが重要と考え、当事者や市民団体による普及・啓発活動への支援等に取り組んできました。 第2期では、市内の障害福祉関係団体・機関で組織する、セイフティーネットプロジェクト横浜への活動支援や、当事者による市庁舎等でのパン販売を行うことにより、障害理解の促進を図る「わたしは街のパンやさん」事業を継続して実施してきました。  また、障害者週間における障害者のコンサートや芸術作品展などの実施、また小学生を対象として、夏休み期間に車いすの利用や点字を読む体験を行うなど、障害理解促進のためのイベントを開催しました。  さらには、特別支援学校の児童生徒が、居住地の小・中学校の児童生徒と一緒に学ぶための仕組みである、副学籍による交流教育及び共同学習を通した学齢期への障害理解の促進など、様々な普及啓発を進めてきました。 主な事業名:当事者や市民団体による普及啓発活動への支援、当初目標(第2期改定時)推進、平成26年度末実績(見込み):普及啓発イベント等の実施、進行状況:△ 主な事業名:副学籍による交流教育及び共同学習、当初目標(第2期改定時)推進、平成26年度末実績(見込み):実施率(平成25年度)小学部42%、中学部9%、進行状況:○ 【振り返り】  各種イベント等を開催した後、さらに別の取組等へ広げていくことが大切ですが、そこまでは取り組むことができませんでした。 また、障害の理解を進めていくためには、早い段階から障害児と健常児が、様々な生活の場を共有し、交流を促進していくことが重要です。 第2期で取り組んできた事業を継続するほか、小学校期における交流を進め、子どもの時から障害理解が図られる機会を提供していくことによって、啓発を効果的なものとすることができると考えます。 重点施策2 相談支援システムの機能強化 障害児・者やその家族が、地域で自立した生活を送ることができる社会の実現を目指し、どこに相談しても適切に課題解決が行えるようにするため、情報提供から一般相談、緊急性及び専門性を必要とする相談を、一体的に支援していく相談体制の構築・推進に取り組んできました。  第2期では、相談支援システムを広めるために、各区の横浜市障害者相談支援事業地域自立支援協議会(以下「区自立支援協議会」といいます。)などを活用した相談支援体制の普及活動に取り組むとともに、相談業務に関わる人材の育成を図るため、相談支援従事者初任者研修及び現任者研修に加え、事例検討研修等を実施してきました。また、研修体系の整理に向けた取組を開始するなど、相談体制の強化を進めました。  さらには、当事者相談を「ピア相談センター」として一つにまとめ、障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下「横浜ラポール」といいます。)にある横浜市障害者社会参加推進センター(以下「社会参加推進センター」といいます。)内に設置し、相談支援機関等へ相談員の派遣を開始しました。 主な事業名:相談支援システムの普及(広める)、当初目標(第2期改定時)推進、平成26年度末実績(見込み):区自立支援協議会で本人・家族への普及活動を展開、進行状況:△ 主な事業名:相談支援従事者の養成、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):相談支援従事者に関わる研修の実施、進行状況:△ 主な事業名:当事者相談の推進(深める)、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):ピア相談センターの集約化、進行状況:○ 【振り返り】  区自立支援協議会において、区内にある事業者や本人及び家族等への相談支援体制や計画相談支援等諸制度の周知に取り組んできたことにより、区内事業者間の連携の構築には一定の効果が表れていますが、本人等からは「どこに相談したらよいかわからない」との声もあるなど、その取組には課題が残っています。 また、各区の区自立支援協議会の活動内容には差があるため、全市的に取り組むテーマ等の設定を検討する必要があります。 さらに、計画相談支援の対象者拡大に伴い、これまで築いてきた相談支援体制の見直しも必要になっています。また、それぞれの機関で活躍する相談支援従事者に加え、計画相談支援を実施する指定特定相談支援事業所の相談支援専門員の質の向上についても、今後、さらに力を入れて取り組む必要があります。 重点施策3 地域生活を総合的に支える仕組み 障害児・者やその家族が、安心して地域での生活を継続していくためには、一人ひとりの障害特性や意向を踏まえた総合的な支援の仕組みを構築することが必要と考え、施策に取り組んできました。  第2期では社会福祉法人型地活ホームや生活支援センター、多機能型拠点の整備など、ハード面の整備を実施するとともに、横浜市障害者自立生活アシスタント事業(以下「自立生活アシスタント」といいます。)の推進や「移動支援施策体系の再構築」を行うなど、ソフト面における事業も着実に進め、地域で安心して暮らせるように、社会資源の充実を図ってきました。  また、安心できる住まいの確保を目指し、グループホームの設置促進を図ってきました。 主な事業名:地域生活を支援する拠点施設の整備と機能拡充、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):地活ホーム41か所(累計)、生活支援センター 18か所(累計)、進行状況:○ 主な事業名:自立生活アシスタント、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):36事業所、進行状況:○ 主な事業名:グループホームの設置促進、当初目標(第2期改定時):680か所、3,400人、平成26年度末実績(見込み):647か所(累計)、3,510人分、進行状況:○ 【振り返り 】  社会福祉法人型地活ホームや多機能型拠点の整備、また、自立生活アシスタントの拡充などにより、地域生活支援の充実を図る ことができましたが、医療的ケアが必要な方からは、さらに生活支援の充実を求める声があります。 今後は、多機能型拠点の整備推進や、これまで整備してきた社会資源の一層の活用のほか、障害児・者の受診環境充実のために、医療機関のネットワーク構築などの取組を進め、安心した地域生活を送れる環境を整えていく必要があります。 また、グループホームの設置については、当初想定したとおりに進めるとともに、福祉施設から地域生活への移行なども進めてきました。しかし、多くの入所施設サービスを必要する方がいることから、さらなる地域移行の取組を進めていくことが必要です。 精神障害者の地域移行に関わる目標値には届いていない状況があります。引き続き、生活支援センターで行っている横浜市精神障害者地域移行・地域定着支援事業(以下「精神障害者地域移行・定着支援」といいます。)と法定サービスである指定地域移行支援(以下「地域移行支援」といいます。)を活用し、国の動向も踏まえながら、地域移行を促進していくことが必要です。 重点施策4 医療環境・医療体制の充実 障害児・者やその家族が、地域で生活するためには、身近なところに安心して受診できる医療機関があり、適切な医療を受けられることが必要と考え、医療環境の充実に取り組んできました。 第2期では、訪問看護師、障害児・者施設の看護師等が、障害特性に対する知識や看護・介護技術を習得するための研修を開催し、障害に関わる知識向上を図りました。  また、在宅療養中の重症心身障害児・者が、家族等による介護が一時的に困難になった場合、協力医療機関に一時的に入院することができる横浜市メディカルショートステイ事業(以下「メディカルショートステイ」といいます。)や、知的障害者が受診しやすい環境を整備するために、知的障害者対応専門外来を設置するなど、障害児・者の医療環境や療養環境の拡充に努めてきました。    横浜市の精神科救急については、神奈川県、川崎市や相模原市と協調して行ってきており、県内の病院が当番病院となるため、市外の遠方になることも少なくありませんでした。しかしそのような中、横浜市民専用の精神科救急病床を増やしたことにより、横浜市民の方が市内の病院に受診できる機会を増やすことができました。  また、当番病院の土曜日・日曜日の午後の受入床について、時間帯をずらすなどの対応を取ることで、切れめのない精神科救急対応を目指してきました。それに加えて、深夜帯の土曜日・日曜日の受入病院の枠が少なかったため、民間の精神科病院の協力を得て、当番の病院数を増やしました。  さらに、神奈川県精神神経科診療所協会の協力を得て、精神科救急医療情報窓口の相談員が、夜間、深夜及び休日に精神保健指定医へ連絡をとり、精神症状急変時の対応方法について相談ができる体制の確保や救急医療体制の整備を図るなど、医療環境・体制の充実を図ってきました。 主な事業名:障害児者の医療環境推進事業、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):知的障害者対応専門外来の実施、医療従事者への研修実施、進行状況:△ 主な事業名:二次救急医療体制の拡充、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):三次救急との共用の病床数を確保し、土・日の深夜に対応できる病院を増やす等体制を強化、進行状況:○ 【振り返り 】  医療従事者へ障害特性に対する知識や看護・介護技術を習得するための研修を開催し、障害に関わる知識向上を図った結果、継続して障害に関する取組を行うようになった訪問看護ステーション等が出てくるなど、一定の効果はありました。しかし、全市レベルから見ればそれは少数派で、まだ十分な状況ではありません。  知的障害者対応専門外来については、障害年金に必要な医師意見書等の作成を行うなど、知的障害者の外来診療の一助になっています。しかし、2病院の設置だけでは十分な状況ではありません。 重点施策5 障害児支援の体制強化 障害児とその家族が、地域の中で安心して安定した生活を送り、自らの力で自らの生活を切り開いて いくことができるようになるためには、早期療育体制の拡充や学齢期の障害児に対する 個別支援、集団活動支援の推進・強化などのサービスの充実が必要と考え、施策に取り組んできました。  第2期では、療育相談支援などを行う地域療育センターを、新たに1か所整備し計8か所とし、療育体制の充実を図るとともに地域療育センターに専門スタッフを配置することで、学校への支援の充実も図りました。 また、学齢後期(概ね中学校期以降)から成人期への切れめのない支援を目指すため、中学校期以降の発達障害児の対応を主に行う3か所目の専門機関を設置するとともに、関係局が定期的に課題を共有し、検討を行いました。  さらに、肢体不自由特別支援学校に看護師を配置し、医療的ケア体制整備等を実施するなど、サービスの充実を図ってきました。 主な事業名:地域療育センターの整備、当初目標(第2期改定時):8か所(累計)、平成26年度末実績(見込み):8か所目の整備完了、進行状況:○ 主な事業名:中学校期以降における支援の充実、当初目標(第2期改定時):専門機関の設置(4か所(累計))、平成26年度末実績(見込み):発達障害者の相談支援体制と研修、市域での連携について検討を実施、3か所目の相談機関で事業実施、進行状況:○ 【振り返り 】 平成25年4月に「よこはま港南地域療育センター」が開所し、周辺区を担当する地域療育センターにおける初診までの待機期間は短縮されましたが、市全体での初診件数は引き続き増加しており、待機期間短縮に向けた取組が必要です。 また、教育について特別な支援が必要な児童生徒に対する理解は進んできましたが、具体的な対応や環境整備についてはまだ十分とは言えません。今後もさらに理解を深めると共に、適切な指導体制や教育環境・設備の充実を目指していくことが必要です。 重点施策6 障害者の就労支援の一層の拡充強化 障害者が当たり前に働ける社会を実現するためには、企業への障害理解の促進や安心して働き続けるための定着支援などが必要と考え、施策に取り組んできました。  第2期では、就労相談及び定着支援等を行う障害者就労支援センターを、新たに1か所 整備し市内9か所体制とするなど、就労支援の充実を図りました。  また、障害者雇用を広く啓発するための「働きたい!あなたのシンポジウム」や、市内企業と就労支援機関をつなぐための個別相談セミナーを開催し、雇用の場の拡大や企業への障害理解を促進しました。  さらに、障害者優先調達推進法施行に伴い、平成25年10月には横浜市における「調達方針」を策定し、区局等の物品・役務の調達において、障害者施設等からの優先的な調達にも取り組み、福祉的就労の充実を進めてきました。 主な事業名:企業への雇用支援の強化、当初目標(第2期改定時):雇用事例紹介企業(累計)40社、平成26年度末実績(見込み):雇用事例紹介企業、累計:11社、進行状況:△ 主な事業名:働き続けるための定着支援の強化、当初目標(第2期改定時):就労支援センター利用登録者数3,678人、平成26年度末実績(見込み):就労支援センター利用登録者3,500人、進行状況:○ 【振り返り 】  企業等への障害者雇用の啓発について、企業が参考としやすい取組をより多く発信していくため、従来の「企業表彰」という手法から、「事例紹介」へ転換したものの、いまだ掲載企業数が少ないため、今後は紹介企業を増やしていくことが必要です。 また、就労支援センターにおいては、精神障害及び発達障害のある方からの相談及び登録件数の増加が続いており、就労後の定着支援における関係機関との連携などが十分に取り組むことができていません。就労支援センターは、他の福祉施設や関係機関と連携し、地域の中での包括的な支援体制の構築を目指すことが必要です。 重点施策7 発達障害児・者支援の体制整備 発達障害についての社会的な関心が高まりを見せていることなどから、発達障害に対する理解の促進や発達障害児・者への支援の体系化を図る必要があると考え、発達障害児・者の支援等に関する検討を行う委員会で、様々なご意見をいただきながら施策に取り組んできました。  第2期では、発達障害に関する相談支援、就労支援、発達支援及び研修の実施等を行う「横浜市発達障害者支援センター」(以下「発達障害者支援センター」といいます。)が、市内2区において相談支援機関を巡回しフォローを行う、サポートコーチ事業をモデル実施し、地域の相談機関のスキルアップを図るとともに、相談支援機関と発達障害者支援センターの連携を強化する仕組みの地盤をつくりました。  また、発達障害者に特化し利用期間を制限したうえで、コーディネーターが地域での生活に向けた支援を行う住まいの場として、横浜市発達障害者サポートホーム事業(以下「サポートホーム事業」といいます。)を実施しました。その他、発達障害の特性を有しているものの、確定診断や障害者手帳のない方々に対して、実践的な就労体験を通じた自己理解の場の提供と支援手法の開発を目的とした、横浜市発達障害者就労支援事業をモデル実施し、今後の発達障害者の就労支援の検討を行うなど、発達障害児・者支援の体制整備を進めてきました。 主な事業名:発達障害者支援体制整備事業、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):「世界自閉症啓発デーin横浜」を実施、サポートコーチ事業を実施、サポートホーム事業を開始 進行状況:○ 主な事業名:関係機関の連携の促進、当初目標(第2期改定時):推進、平成26年度末実績(見込み):地域の相談支援機関に向けた研修を実施、進行状況:○ 【振り返り 】  「発達障害」という言葉については、マスコミや第2期の障害者プランを通じて広く浸透してきました。一方で、その支援体制はいまだ不十分な状況にあります。発達障害の特性は多様であり個別性も高く、その支援には特性を十分理解したうえでの対応が必要となるため、関係機関における人材の育成が課題です。 その課題を受けて、まず発達障害に関する相談支援について、身近な場所で相談が受けられる体制をつくるための研修を開始しました。 また、今後は「サポートホーム事業」及びモデル実施した「就労支援事業」を通じて取り組むことで得られた、ある一定の層に対して有効な支援手法等の活用が必要です。 【振り返り 】  「発達障害」という言葉については、マスコミや第2期の障害者プランを通じて広く浸透してきました。一方で、その支援体制はいまだ不十分な状況にあります。発達障害の特性は多様であり個別性も高く、その支援には特性を十分理解したうえでの対応が必要となるため、関係機関における人材の育成が課題です。 その課題を受けて、まず発達障害に関する相談支援について、身近な場所で相談が受けられる体制をつくるための研修を開始しました。 また、今後は「サポートホーム事業」及びモデル実施した「就労支援事業」を通じて取り組むことで得られた、ある一定の層に対して有効な支援手法等の活用が必要です。 (3)第2期 振り返りの 総括   これまでに振り返ったとおり、第2期においては、着実に施策を進め、国の制度も含めて、社会資源やサービスの整備は進んできました。 しかし、それでもまだ障害児・者やその家族の周りには、いまだに多くの生活のしづらさが残されており、第3期策定に向けて行ったグループインタビューやアンケート等でいただいたご意見では、 ・「普及・啓発」では、他人の言動や対応などで悩むことが多いこと ・「相談」では、どこに相談したら良いかが分からないこと ・「住まい」では、安心した生活を送れる環境や選択肢が整っていると感じられないこと ・「暮らし」では、サービスをどのように使えばよいかが分からないこと ・「医療」では、身近にかかれる医療機関がないこと ・「療育・教育」では、療育と教育の密接な連携が求められていること ・「就労」では、働き続けるための支援が足りていないこと ・「発達障害」をはじめ、障害特性に応じた支援が足りていないこと …などの声が多くありました。 こうしたことに対応していくためには、国の制度やそれだけでは足りないところを、横浜市の障害福祉施策を組み合わせるなどの工夫を行うとともに、関連する本市の様々な施策を連携させることが必要です。また、行政として必要な支援を整えるとともに、障害児・者やその家族が住み慣れた地域で、どのように暮らしていきたいかということについて、障害者本人主体で考えていく姿勢も必要となります。 その他、グループインタビューやアンケート等を通じて、行政の情報が障害児・者やその家族に十分行き届いていないという声があり、情報発信についても課題の一つだと認識しています。 以上を踏まえ、今後の施策展開を支える基本的な視点を3つ掲げ、第2期での振り返りを踏まえた課題に対して、第3期では5つのテーマを設定し取り組んでいきます。 4 第2期を踏まえた今後の施策推進の視点 障害状況に合わせた支援やライフステージを通じて一貫した支援  第2期では、身体・知的・精神の3障害に加えて、難病、発達障害及び高次脳機能障害など、これまでの障害認定基準ではとらえきれない方々のニーズにも対応できるよう、きめ細かな支援を進めてきました。  また、「障害児を育てる家族が不安や困難を感じることなく、適した教育を受け成長し、本人の自己選択と自己決定ができる生活支援と生活基盤の充実」を図っていくことも計画に位置付け、ライフステージに応じた支援体制の構築を進めてきました。  しかし、きめ細かい対応や学齢期における支援が十分に行き届いていない現状があります。  また、地域における社会資源が整いつつあるなかで、障害者が安心して生活し続けていくためには、地域住民の障害に対する理解を進め、見守りや支え合いの仕組みづくりを進めていくことや、本人が生活における主体性を獲得する力(エンパワメント)を引き出し、高めていくための支援等も必要です。  そこで、障害者が地域社会の一員として、誰もが安心して自分らしく健やかに生活していくため、地域福祉保健計画等において、住民相互の共助の取組を推進していきます。その中で、障害者それぞれが抱えている暮らしにくさなどを地域で共有できる場の確保や、障害者が地域活動に参加しやすくなるための環境づくりを進めます。 また、学齢期における相談支援体制の充実や療育・教育との連携強化をはじめ、卒業後の企業就労の促進や施設等での福祉的就労の充実など、本人のライフステージを通じて一貫した支援の強化と、自己選択・自己決定のためには、個々の状況に応じた本人の主体性を獲得する力(エンパワメント)への支援が基本という視点を持って、施策に取り組みます。 障害者の高齢化・重度化への対応  団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」に象徴されるように、今後10数年間で全国的に高齢化が一層進んでいくことが予測されています。横浜市においても、2025年には、約3.8人に1人が65歳以上になることが見込まれています。  そのような中で、障害者のなかには、比較的早い段階から加齢に伴う諸症状が出現する方がいるといった声が、現場のスタッフから聞こえています。高齢化すると、体力や運動機能の低下及び病気への抵抗力などが弱くなり、新たな病気やけがのリスクも高くなります。それに加えて、日常生活での主な身辺動作や活動及び社会生活への参加などに少しずつ不自由さや困難性が増えてくるため、見守りや介助などの具体的支援が不可欠な状態になります。今回のアンケートでは、「高齢になった時に、これまでと同じように生活を続けていけるかが不安」といった声が挙がっています。  そのため、障害の原因となる疾病の予防及び再発防止の取組や、リハビリテーション等による身体機能の維持など、重度化を予防する観点も踏まえておく必要があります。  さらに、行動障害や医療的ケア等については、専門的な対応が求められており、「高齢化・重度化」と併せて取り組んでいくことが必要です。  それと同時に、障害者本人はもちろんのこと、保護者の高齢化も視野に入れて取り組んでいくことも必要です。これまで支えていた家族の高齢化により、障害者本人が従来通りの生活を続けることが難しくなるといったことが、今後さらに増えていくことが予想されます。  これらの問題に対応していくためには、現在の障害者の生活状況を丁寧に把握しながら、家族を含めて地域で生活していくことを支える仕組みの充実が必要です。 将来にわたるあんしん施策の継承  第2期では、「将来にわたるあんしん施策」として、@親亡き後も安心して地域生活が送れる仕組みの構築、A障害者の高齢化・重度化への対応、B地域生活のためのきめ細かな対応という項目を中心に、様々な取組を推進してきました。  しかし、「将来にわたるあんしん施策」の実施から数年を経た今でも、グループインタビューやアンケートからは、親亡き後の不安の解消が求められている現状があります。  今後も「将来にわたるあんしん施策」で確認された課題については、障害児・者や家族の方などのご意見をいただきながら、継続して取り組んでいく必要があると考えています。  また、当事者や家族のニーズをあらゆる場面で継続して把握し、その課題解決に当たっては、「将来にわたるあんしん施策」策定時の視点を継承しながらも、それにとどまらず、広く障害福祉施策全体でとらえ、一体的に進め、様々な施策展開を図っていきます。 コラム 横浜市後見的支援を要する障害者支援条例 横浜市では、障害者等の安心を実現することを目的として、平成13年度に「横浜市後見的支援を要する障害者支援条例」を制定しました。この条例では、その目的を達するために市(行政)・市民・当事者がそれぞれの責務を果たすことが必要であるとしています。  第3期横浜市障害者プランについても、この条例を基本としながら各事業等に取り組み、地域生活を送るうえでの安心の実現を目指します。 条例本文  (目的) 第1条 この条例は、障害者に対する支援のうち特に後見的支援を要する障害者に対する支援に関し、横浜市(以下「市」という。)及び市民の責務を明らかにするとともに、市が行う施策の基本的事項を定めることにより、後見的支援を要する障害者が地域において安心して生活を営むことができる環境づくりを推進し、もって障害者及びその養護に当たる親等の安心を実現することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において「障害者」とは、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第2条に規定する障害者をいう。 2 この条例において「後見的支援を要する障害者」とは、現に福祉サービス等を選択して利用することができないため、生活を営むことが困難である市内在住の障害者であって、親等がいない、又は親等が養護を行うことができないものをいう。  (市の責務) 第3条 市は、第1条の目的を達成するため、後見的支援を要する障害者に対する支援施策を講ずるものとする。  (市民の責務) 第4条 市民は、ともに生活する地域社会の一員として、後見的支援を要する障害者が安心して生活を営むことができるように協力するものとする。  (自ら生活を営む努力) 第5条 後見的支援を要する障害者は、必要な支援を受けながら、地域において自ら生活を営むことに努めるものとする。  (市の支援施策) 第6条 市が実施する後見的支援を要する障害者に対する支援施策は、次のとおりとする。 (1) 後見的支援を要する障害者の生活に関する相談を受け、及び助言、指導等を行うこと。 (2) 民法(明治29年法律第89号)の規定による後見開始、保佐開始又は補助開始の審判の請求を行うために必要な支援を行うこと。 (3) 後見的支援を要する障害者が地域において生活を営むための場及び費用の確保を行うこと。 (4) 後見的支援を要する障害者が保有する資産の保全又は活用のための助言、あっせん等を行うこと。 (5) 現に障害者を養護している市内在住の親等を対象として、後見的支援を要する障害者に対する支援に関する相談を受け、及び助言、指導等を行うこと。 (6) その他後見的支援を要する障害者に必要な支援を行うこと。 第7条及び第8条 省略 コラム 障害の表記について 「障害」という言葉については、他にも「障がい」とひらがなでの表記や「障碍」という文字での表記といった例が見られます。  過去の経緯を見ると、「障害」という表記は、昭和24年の身体障害者福祉法の制定によって使われるようになったものです。それまでは「障害」、「障礙(碍)」という表記がそれぞれ使われていましたが、「礙(碍)」という字が当用漢字の使用制限によって法律では使えなくなったことにより、「障礙」と意味が同じ「障害」という語が採用されたものです。  今回の第3期障害者プラン策定に関わるパブリックコメントでも、少数ですが「障害」の表記に関するご意見をいただきました。 それらのご意見も踏まえ 、表記について検討をして参りましたが、第2期策定時に「そこだけ変えて も意味がない」や「漢字や平仮名ということではなく、障害という言葉自体が受け入れられるかどうか」といったご意見が多数あったという経過や、現時点では市民の方々から変えるべきとのご意見が少ないことを踏まえ、引き続き第3期においても、これまでどおりの「障害」という表記で統一し、その表記に影響されることなく、施策を着実に進めていくこととしました。 しかし、今後も国の動向なども踏まえ、引き続き皆さんと話し合っていきたいと考えています。