32頁 第3章 施策の展開 横浜市では、市民に最も身近な行政機関として、これまでも犯罪をした者等を含め様々な生きづらさを抱えている市民一人ひとりに寄り添った支援を実施してきました。 基本方針を踏まえ、関係者との緊密な連携協力を通じて、犯罪をした者等含め支援を必要としている人が支援につながり、自分らしく健やかに暮らすことができるよう従来から実施しているものを含め必要な施策を展開させていきます。 33頁 1 福祉保健医療サービスの活用 【取組の方向性】 国の再犯防止推進計画によれば、犯罪をした者等のうち、刑務所出所者について高齢者(65歳以上の者)が出所後2年以内に刑務所に再び入所する割合は全世代の中で最も高いほか、出所後5年以内に再び刑務所に入所した高齢者のうち、約4割の者が出所後6か月未満という極めて短期間で再犯に至っています。知的障害のある受刑者についても全般的に再犯に至るまでの期間が短いことが明らかになっています。 また、罪に問われる前に被虐待経験のある人がいることも明らかになっています。 このほか、薬物依存症者等を対象とした刑の一部の執行猶予制度が平成28年6月に施行されており、薬物依存症からの回復に向けた治療・支援のための取組が必要とされています。 国では、刑務所出所者等への支援(いわゆる「出口支援」)だけでなく、起訴猶予者等刑事司法手続きの入口段階にいる者に対してもいわゆる「入口支援」としての取組が実施されてきています。 横浜市においても、犯罪をした者等含め生きづらさを抱えている人が孤立せず適切な支援につながり、安心して生活できる支援体制づくりが必要となります。加えて、関係者が相互に連携し、切れ目のない支援を図ることも重要です。 困りごとの状況と本人の希望を踏まえ、福祉保健医療サービスを適切に活用し自分らしく健やかに暮らすための支援を行うとともに、社会的に孤立している人に気づき、切れ目なく支援につなげる仕組みづくりを進めます。 34頁 【施策の展開】 (1) 生活保護、生活困窮者自立支援制度 生活の困りごとや不安を抱えている方の相談を受けるとともに、本人の状況に応じて寄り添い、各種事業等を活用しながら、自立に向けた支援を行います。 生活保護制度を利用する場合は、最低限度の生活を保障しながら、自立に向けた支援を行います。 生活困窮者自立支援制度においては、社会的なつながりの維持・確保に配慮した支援を行います。そのため、関係機関とのネットワークづくりや地域の資源を活用した支援を通じて、地域づくりを推進します。 ・生活困窮者自立支援制度 生活困窮者自立支援制度は、「なかなか仕事が見つからない」「家計のやりくりに悩んでいる」等の様々な事情により生活にお困りの方が周囲から孤立することなく安定した生活が送れるよう、お一人おひとりの状況に応じた包括的な支援を行うため創設されました。 横浜市では、各区の生活支援課に相談窓口を設け、主に就労に関する相談支援や家計の見直しに関する支援などを行っています。 複合化・多様化している課題の状況に合わせ、経済的な自立だけにとどまらず、相談者御本人に応じた「自立」に向けて、関係機関等との連携・協働によりチームで支援に取り組むと共に、地域関係の改善・再構築といった「地域社会とのつながり」も大切な視点を捉え、「相互に支え合う」地域づくりに向けた事業にも取り組んでいます。 対象者 横浜市にお住まいで、生活にお困りの方ならどなたでも御相談できます。 ただし、生活保護受給中の方は対象外です。 相談方法 お住まいの区役所生活支援課へ 支援の内容等 お困りごとをお聞きし、支援内容(ジョブスポットと連携した就労支援や下記支援メニュー等による支援等)を一緒に考え、寄り添いながら自立に向けた支援します。(自立相談支援) (1) 様々な職場での実習体験などを通して、 働く力を高める支援(就労準備支援等) (2) 借金の整理・お金のやりくりなどについて継続的に支援(家計改善支援) (3) 就職活動を支えるために、家賃相当額を一定期間支給(支給には条件あり)(住居確保給付金) (4) 一時的な宿泊場所や食事を提供しながら、 自立に向けて支援(一時生活支援) 35頁 (2) 高齢者支援 地域住民や幅広い関係団体・機関と連携し、地域で支援を必要とする人の早期発見や見守りの仕組みづくりを進めます。また、的確に支援に結び付けてい く取組を推進します。 認知症に関する正しい知識の普及啓発を行い、市民理解を深めます。 また、認知症の方や認知症が疑われる方に対する早期診断・早期対応に向けた取組を進めるとともに、認知症の方が地域で安心して暮らせる見守り体制づくりを進めます。 高齢者が、支援を受けるだけではなく、自分自身ができることを活かして社会的な役割を持つことができるよう、「地域の支え合いの仕組みづくり」を進めます。 地域ケアプラザ(地域包括支援センター)は、「地域の身近な福祉保健の拠点」として「地域づくり」「地域のつながりづくり」を行うとともに、地域及び行政と連携し、地域の中での孤立を防ぎ、支援が必要な人を把握し支援につなげていきます。 住まい・施設 多様なニーズに対応できる住まいや施設を供給します。また、「高齢者施設・住まいの相談センター」を活用し、相談内容に応じた情報提供や施設との橋渡しを実施します。 地域とつながり、地域で支え合う活動の基盤となるサロン等、高齢者が参加できる居場所づくりを支援します。 ・地域ケアプラザ 地域ケアプラザは、高齢者、子ども、障害のある人など、誰もが地域において健康で安心して暮らせるよう、地域の皆様と一緒に、様々な取組を行っている横浜市独自の施設です。概ね中学校区圏域程度に1館設置されています。 地域の皆様の福祉・保健活動やネットワークづくりを支援するとともに、住民主体による支え合いのある地域づくりを支援しています。また、地域の中での孤立を防ぎ、支援が必要な人を把握して支援していくとともに、地域の課題を明らかにして地域住民と一緒に解決に取り組んでいます。 ■対象者   高齢者、子ども、障害のある人などどなたでも御利用いただけます。 ■お問合せ   お住いの地域の地域ケアプラザまたは、区役所福祉保健課へ ■支援内容等   地域ケアプラザ ・福祉・保健に関する相談・助言 ・地域の福祉・保健活動やネットワークづくりの支援 ・地域の福祉・保健活動の拠点として活動の場の提供 ・ボランティア活動の担い手の育成・支援  地域包括支援センター  ・高齢者に関する相談・支援 ・介護予防・認知症予防教室の開催など ・介護予防の取組 ・成年後見制度の活用や高齢者虐待防止などの権利擁護 ・地域のケアマネジャー支援や事業者や地域の関係者などとの支援のネットワークづくり ・介護予防ケアマネジメントの作成 36頁 (3) 障害者支援 障害のある人は特別な存在ではありません。障害があっても一人の市民として、住み慣れた地域で当たり前のように生活していけるまちを実現することが必要です。 障害のある人が社会の一員として、誰もが安心して自分らしく健やかに生活していくため、住民相互の共助の取組を進めていきます。 その中で、障害のある人一人ひとりが抱えている暮らしにくさなどを地域で共有できる場の確保や、地域活動に参加しやすくなるための環境づくりを進めます。 困った時に相談できる場所や、どこに相談しても適切に対応できる支援体制の構築を進めていきます。 希望する住まいで安心して暮らしていけるよう多様な形態の住まいの構築を進めるとともに、本人の生活力を引き出す支援の充実を図ります。 障害のあるなしにかかわらず、自分の病気や老後のこと、家族の健康や生活上の問題は大きな課題だと考えられます。医療受診環境の向上や障害特性を踏まえた心身の健康対策等を進めていきます。 自立した生活につなげたり、生きがいを高めるためにも、一人ひとりの適性や希望に合った仕事を見つけることができ、外出や趣味を楽しむなど、様々な余暇が充実したまちを目指します。 ・精神障害者生活支援センター 統合失調症をはじめとした精神障害者の社会復帰、自立及び社会参加を支援するため、各区に1か所設置している精神障害者の地域生活支援における本市の拠点施設です。 精神保健福祉士を配置し、日常生活に関する相談や助言、情報提供のほか、専門医による相談や生活維持のためのサービス(食事、入浴、洗濯等)等を提供しています。 ■対象者  主に在宅の精神障害のある方 ■お問合せ  お住いの区の精神障害者生活支援センターへ ■支援の内容等 (1)日常生活に関する相談・助言情報提供 (2)専門医による相談 (3)生活維持のためのサービス(食事・入浴、洗濯等) (4)各センターによる自主事業、地域交流活動 37頁 ・基幹相談支援センター 平成28年4月から、各区にある社会福祉法人型障害者地域活動ホームに、障害のある方やその御家族などのための総合相談支援機関として「基幹相談支援センター」を設置しています。 基幹相談支援センターでは、区福祉保健センターや精神障害者生活支援センターと連携し、障害のある方やその御家族などからの御相談にお応えするとともに、地域の方や関係機関等とも連携し、地域づくりに取り組みます。 ■対象者  市内在住の障害(疾病)のある方及びその御家族、地域の方、関係機関等  ※年齢や障害種別、障害の診断の有無は問いません。 ■お問合せ  お住まいの区の基幹相談支援センターへ ■ 支援の内容等 (1)総合的・専門的な相談支援の実施 (2)地域の相談支援体制の強化の取組 (3)地域移行・地域定着の促進の取組 (4)権利擁護・虐待の防止の取組 (5)その他地域の状況に応じた独自の取組 (6)地域生活支援拠点機能の整備に向けた取組 38頁 (4) 薬物依存症者等への支援 薬物への依存を有する方等に対し、早期に治療や支援につながることができるよう、薬物依存への対応も含めた依存症相談拠点の設置等による依存症相談の充実を行います。 回復にむけた支援を行う民間団体等の活動の促進に向け、薬物依存への支援を行う団体も対象とした民間団体への支援策の充実を行います。 薬物への依存を有する方等を早期の回復につなげるため、支援者にむけた、研修の実施や関係機関の連携強化を図ります。 ・更生保護施設での窃盗回復プログラム 横浜市内の更生保護施設の1つである横浜力行舎では、万引きやスリといった窃盗を繰り返してしまう人たちを対象に『YRARP-K』(ワイラープ-ケイ:Yokohama Rikkousha Koutsukiryo Addiction Rehabilitation Program for Kleptomania)と呼ばれる再犯防止を目的としたプログラムを実施しています。 このプログラムは集団で行われる心理療法の一種で、なぜ窃盗をくりかえしてしまうのか、その人の考え方のクセと行動とのつながりに注目していきます。 約3か月間、毎週1回のプログラムと毎回出される宿題を通して、ストレスとの付き合い方や再犯の危険を避ける方法を具体的に考え、参加者一人ひとりが自分だけの再犯防止計画を立てていきます。さらに、その計画が計画倒れにならないよう日常生活で立てた計画を実践していきます。 ・保護観察の対象となった薬物依存症者の国調査(コホート調査)への協力 これまで、わが国での薬物問題対策は取り締まりに重点が置かれ薬物使用の悩みを抱える人への支援が不十分であったことから、国立精神・神経医療センター精神保健研究所薬物依存研究部において、支援策等の開発及び保護観察と地域支援をつなぐ仕組みづくりを目的に、保護観察所の協力も受け、保護観察中の方で研究参加に同意いただけた方を対象とした調査を、平成28年度から開始しました。 この内容としては、3年間の追跡調査を行います。年数回の電話調査等の中で、生活や健康に関する困りごとの相談や必要な支援についての御相談にも応じています。 横浜市は令和元年度から調査に参画しています。 39頁 ・こころの健康相談センターでの依存症対策の取組 アルコール・薬物・ギャンブル等の総合的な依存症対策について、精神保健福祉センターであるこころの健康相談センターにおいて、普及啓発の強化、依存症専門相談、回復プログラム及び家族教室などの取組を推進、拡充しています。 依存症専門相談において、特定の依存症に限定することなく、御本人と御家族からの相談を受けており、依存症に対応する市内の医療機関、自助グループや回復施設の情報提供を行っています。 依存症支援にあたっては、医療機関や民間団体等の関係者との連携が重要と考えています。引き続き、関係者の皆様との連携を進めながら、依存症に悩む御本人と御家族の支援に向けて、取り組んでいきます。 ■主な取組 ■依存症専門相談  依存症に悩む御本人、御家族の個別相談(電話・面談)に、専門職が対応しています。  TEL 045-671-4408  (祝休日を除く、8:45〜17:00)  ※各区高齢・障害支援課においても、精神保健福祉相談の中で、依存症に対応しています。 ■回復プログラム  依存症の特性や行動パターンなどのメカニズム、再発のサインや「やりたい」気持ちが出た時の対処法について、一緒に考えるプログラムです。  ※1クール:8回、10人程度 ■家族教室  御家族を対象に、専門家の講義や当事者の体験談等を通して、依存症の特徴や対応方法、家族自身の家族の回復について考える「家族教室」を、月1回実施しています。 ■支援者研修  依存症者支援に携わる支援機関を対象に、依存症の疾病の知識や、相談方法等の研修会を開催しています。 ■普及啓発  相談等の支援につなげていくために、依存症の関する知識や理解を深めていくことが重要です。  リーフレットの作成ともに、アルコールやギャンブル等の啓発週間にあわせて、広報よこはまへの掲載、講演会やセミナーの開催など、力をいれています。 40頁 2 住まいの充実 【取組の方向性】  高齢化の進展や社会経済情勢の変化等の様々な要因により、低額所得者、高齢者、障害者、外国人等、住宅の確保に特に配慮を要する方々(以下「住宅確保要配慮者」という。)の増加及び多様化が進んでいます。 また、これまで、既存の住宅セーフティネットの対象になりにくかった低額所得の若年・中高年単身者への対応も求められています。 平成30年に神奈川県内の刑事施設(刑務所、少年刑務所及び拘置所)を出所した者のうち、健全な社会生活を営むうえで適切な帰住先を確保できずに出所した者が29.4%を占めています。適切な帰住先の確保は、地域社会において安定した生活を送るために必要不可欠なものであり、更生支援の観点からも重要です。 住宅セーフティネットの根幹である市営住宅をはじめ公的賃貸住宅及び民間賃貸住宅を含めた重層的なセーフティネットを構築し、住宅確保要配慮者が安心して暮らせる住まいを確保し、住み続けられる住環境を実現していきます。 【施策の展開】 住宅に困窮する低額所得者で横浜市内に在住または在勤している方に対しては、公募により、低廉な家賃で市営住宅を提供します。 家賃の支払い能力があるものの、連帯保証人がいないために民間賃貸住宅への入居を断られてしまう高齢者世帯等を対象に、民間住宅あんしん入居事業により、協力不動産店による物件のあっせんと民間保証会社の家賃保証による入居支援を行います。 チラシやホームページ等による広報活動や不動産店等を対象とした説明会を通じて、更生保護対象者等、住宅確保要配慮者の入居を拒まない民間賃貸住宅(以下、「セーフティネット住宅」という。)の登録を推進します。 低額所得者が入居するセーフティネット住宅において、個々の状況に応じて、家賃低廉化及び家賃債務保証料低廉化の支援を行うよう努めます。 横浜市居住支援協議会において、入居希望者、賃貸人及び不動産店等を対象とした相談窓口の設置や、セーフティネット住宅の情報提供を行うことで、住宅確保要配慮者が民間賃貸住宅へ円滑に入居できるよう、取組を進めていきます。 障害者が、希望する住まいで安心して暮らしていけるよう多様な形態の住まいの構築を進めるとともに、本人の生活力を引き出す支援の充実を図ります。(再掲) 高齢者の住まい・施設 多様なニーズに対応できる住まいや施設を供給します。 また、「高齢者施設・住まいの相談センター」を活用し、相談内容に応じた情報提供や施設との橋渡しを実施します。(再掲) 41頁 ・横浜市居住支援協議会 相談窓口 「横浜市居住支援協議会」は、不動産関係団体、居住支援団体、民間団体及び横浜市で構成され、高齢者や障害者など、住まいの確保にお困りの方への入居・居住支援を行っています。 支援の取組の一環として、協議会では、「横浜市居住支援協議会 相談窓口」を開設しています。 相談窓口では、住まいの確保にお困りの方やオーナー・不動産事業者、住まいの相談を受けた福祉支援機関等から相談を受け付け、状況に応じて、住宅の紹介、福祉相談窓口の紹介、居住支援サービスの紹介等を行います。 ■所在地  横浜市住宅供給公社本社4階  横浜市神奈川区栄町8番地1  ヨコハマポートサイドビル ■受付時間  10時〜17時 (土日・祝日・年末年始を除く) ■受付方法  電話、FAX、窓口にて受け付けます。  ※相談は無料です。  電話:045-451-7812  FAX :045-451-7813 ・高齢者施設・住まいの相談センター  高齢者の施設や住まいに関する相談窓口として、専門の相談員が、窓口や電話で個別・具体的な相談や、施設の基本情報・入所待ち状況など様々な情報を提供します。  提供する施設情報:特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、  軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅等  ■受付時間:月〜金曜日 9 時〜17 時(祝休日、年末年始を除く)予約優先  ■住所:港南区上大岡西1-6-1 ゆめおおおかオフィスタワー10 階  ■電話:045-342-8866  FAX:045-840-5816 〜『施設のコンシェルジュ』が一人ひとりの状況に適した施設や住まいを御案内します〜 〇 各施設の入所待ち状況を活用し、比較的早期に入所しやすい特養の案内をするほか、介護老人保健施設や有料老人ホームなど、他の施設サービスについても案内しています。 〇 施設利用料金の支払いに不安を持っている人に、利用料金体系や負担軽減制度を案内しています。 42頁 3 就労の場の確保 【取組の方向性】 平成29年に刑事施設に入所した者のうち、犯罪時の居住地が神奈川県である者の約6割が無職者であり、さらに刑事施設入所が2度目以上となる再入者においては、約7割が無職者という状況です。(神奈川県再犯防止推進計画) 不安定な就労が再犯リスクとなっており、再犯防止に向けては、就労を確保し、生活基盤の安定を図ることが重要です。(神奈川県再犯防止推進計画) 刑務所出所者等を雇用し、改善更生に協力する民間の事業主である「協力雇用主」については、その数が増加傾向にあります。そのうち、実際に対象者を雇用している協力雇用主は1割程度となっています。 また、刑務所出所等の中には、様々な事情から社会人としての基礎的な態度が身に付いていないなど働く中で問題が発生し、早期に退職してしまう人も少なくありません。 このように、協力雇用主や就労後の定着のための場の確保が課題となっていることから、犯罪をした者等の雇用や協力雇用主登録促進を図ります。 【施策の展開】 就労を希望する方に対して、本人の状況に応じて就職活動のサポートを行います。 すぐに就労することが困難な方には、就労に向けた準備として生活習慣や基礎能力を養う支援や、短時間就労の機会を提供しながら自立を支援するいわゆる「中間的就労」を行います。 若者サポートステーションでは、困難を抱える15〜39歳の若者及びその家族を対象とし、総合相談や就労セミナー、就労訓練等を実施し、職業的自立に向けて支援します。 なお、国の就職氷河期世代支援プログラムにより、令和2年度からは、「サポステ・プラス」(愛称)として、40歳から49歳までの方の支援も行います。 障害者就労支援センターは、働くことを希望する障害児・者を対象として、就労に関する相談、職場実習等を通じた適性把握、求職活動支援や就労後の定着支援等を、企業や関係機関と連携しながら行います。 保護観察対象者の円滑な社会復帰に向け、就労訓練の場として市で雇用する仕組みを検討します。 公共調達の本来達成すべき目的が阻害されないように留意しつつ、入札・契約制度における協力雇用主の受注機会に配慮した取組の導入について検討します。 協力雇用主確保の取組として、市内企業等への支援制度や相談窓口等の普及・啓発に努めます。 43頁 ・生活困窮者自立支援制度における就労訓練事業(いわゆる中間的就労) 働いたことがなくて不安、働くことに自信を失ってしまった、仕事が長続きしたことがない…、このような状態にあると就職活動を開始することやすぐに働くことが難しいこともあります。 就労訓練事業は、企業やNPO法人、社会福祉法人等が職場体験や短時間就労の機会を提供し、本人の「働きたい」という意欲を後押しする事業です。福祉的就労と一般就労の間に位置することから中間的就労と呼ばれています。 雇用契約を結ばず、働くために必要なスキルの習得や職場環境への適応を支援する「非雇用型」と雇用契約を締結し、勤務時間や仕事内容等、本人の状況に配慮した就労の場を提供する「雇用型」の2つの形態があります。 さらに、就労訓練事業は、働く意欲の向上だけではなく、社会とのつながりを感じることができる機会ともなるため、地域の多様な主体と連携、協働しながら、協力いただける事業所を増やしていきます。 ・コレワーク(矯正就労支援情報センター)による雇用情報提供サービス 受刑者や少年院在院者の雇用をお考えの事業主の方々に、雇用ニーズにマッチする者を収容する刑事施設、少年院を御紹介しています。この情報をもとに、ハローワークにて「受刑者等専用求人」(受刑者や少年院在院者のみが閲覧できる非公開の求人)を申し込んでいただくと、指定の刑事施設等で求人が展開されることになります。 コレワークでは、事業主の皆様を対象としたセミナーや相談会を随時開催しています。 また、刑務所出所者等の雇用に係る講演の講師派遣なども行っております。 御希望の方は、コレワークまでお問合せください。 ※コレワークについてのお問い合わせは 0120-29-5089 44頁 4 普及啓発 【取組の方向性】 地域には様々な立場や背景のある人が存在しています。真に支え合える地域を実現するためには、誰もが同じ地域の仲間として受け入れられることが基本です。 また、市民一人ひとりが多様性の理解を深め、立場や背景を越えてつながり、お互い認め合うことも大切です。 特に、犯罪をした者等の社会復帰のためには、本人の更生を支援するだけでなく、地域で孤立することがないよう、周囲の理解と協力を得て、犯罪をした者等が再び社会を構成する一員となることを支援することが重要です。 このほか、地域では犯罪をした者等の指導・支援にあたる保護司や社会復帰を支援するための幅広い活動を行う更生保護女性会等の更生保護ボランティア、更生保護法人をはじめとする様々な民間団体等の支援活動が実施されており、立ち直ろうとする者を受け入れる地域社会を実現させるためにもこれらの活動を推進する必要があります。 こういった状況を踏まえ、更生保護ボランティア活動等に対する支援の充実を図るとともに、広報啓発活動を推進し、犯罪をした者等の地域での立ち直りに対する理解を促進します。 【施策の展開】 (1) 更生保護ボランティア活動等に対する支援の充実 保護観察対象者との面接など保護司の活動に際して、福祉保健活動拠点等公的施設の利用を可能とするなど、活動場所の確保を支援します。 保護司人材確保のため、市職員研修などの機会を捉えて更生保護ボランティア活動への参加を呼びかける等の取組を進めます。 市内更生保護法人との連携等を通じ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を助けることを目的とした更生保護事業を推進します。 (2) 広報・啓発活動の推進 犯罪をした者等が社会において孤立することのないよう、地域の理解と協力を得ることを目的に実施している「社会を明るくする運動」を保護観察所や保護司をはじめとする民間協力者と連携して推進します。 関係機関や関係団体と連携して犯罪をした者等への偏見や差別をなくすための取組を進めます。 45頁 自らも当事者であり、現在、「特定非営利活動法人マザーハウス」を設立し、刑事施設被収容者、出所者等への総合支援を行っている五十嵐 弘志さんに更生支援への思いを寄せていただきました。 ・誰もが幸せを享受できる共生社会を目指して  横浜市再犯防止推進計画策定検討会委員   特定非営利活動法人マザーハウス 理事長 五十嵐 弘志 ●再犯してしまうのは自己責任なのか  「社会復帰が困難になるのは、罪を犯した人の自己責任で、報いを受けて当然である」と、受刑者・出所者たちを社会から遠ざけることは簡単です。  しかし、そのように受刑者・出所者たちを社会から排除し、孤立させ、再び罪を犯さざるを得ない状況へと追い込み、新たな被害者が生まれてしまう....そのような社会が本当に望ましい幸せな社会でしょうか。  多くの受刑者・出所者たちはメディアで報道されるような「危険な犯罪者」ではなく、誰とも変わりない同じ社会を生きる人間です。  犯した罪に対する「反省」は一人でできても「更生」は一人ではできません。更生の場は社会にあると考えています。 ・“社会を明るくする運動”とは  “社会を明るくする運動”〜犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ〜は、全ての国民が、犯罪や非行の防止と罪をした人たちの改善更生について理解を深め、犯罪や非行のない地域社会を築くための全国的な運動であり、昭和25年から行われています。  犯罪や非行が生まれるのは地域社会であり、また、罪を償い、改善更生を果たす場も地域社会です。犯罪や非行をした人が立ち直るためには、国の機関が就労・住居確保支援など再犯の防止に向けた各種施策を進めていくことはもちろんのこと、彼らの立ち直りへの意欲を認め、見守り、支えていく環境づくり、すなわち地域のチカラが欠かせません。            街頭キャンペーンやシンポジウム、作文コンテストなど、犯罪や非行のない明るい社会づくりのために、これからも広く地域住民の理解と共感を得られるような活動を各地で展開していきます。 30頁 5 非行の防止、修学支援 【取組の方向性】 非行の背景には、規範意識の低下、人間関係の希薄化、家庭環境の変化、貧困や格差の問題、虐待や発達課題、有害環境等、児童生徒を取り巻く様々な課題が複雑に絡み合っていると考えられます。 また、背景の一つには、自尊感情の低下ということも考えられ、生きていくうえで「自分は大切な存在だ」という自尊感情を高めることが大切です。 それは他の人も自分と同じ大切な存在と考えることにもつながり、差別を許さない人権感覚をはぐくむことにもなります。児童生徒が、安心して自分を表現できる環境や、仲間に認められる体験の中で自尊感情をはぐくむことができるよう、「居場所づくり」や「絆づくり」を進めます。 横浜市の小学校・中学校では児童支援専任・生徒指導専任教諭を配置し、校内児童生徒指導体制の中核になり、組織的に非行の防止に向けた指導や早期対応を行っています。 児童生徒や保護者のカウンセリングや教職員への助言を行うスクールカウンセラーや、児童生徒の福祉に関する支援を行うスクールソーシャルワーカーを活用し、専門的な知見から、関係機関との連携や組織的な対応が適切にできるよう、支援体制を構築しています。 児童相談所においては、非行や虐待に関する通告・相談を受け、警察・学校等との関係機関との十分な連携のもとに、子どもの最善の利益の観点から支援を進めます。 地域の中で困難を抱える子ども・若者・家庭に寄り添い、見守ることにより、孤立を防ぎ、安心して暮らすことができる環境づくりを進めます。 【施策の展開】 課題を抱える児童生徒への指導・支援について、児童支援・生徒指導専任教諭を中心に、関係機関と連携を図りつつ、組織的対応を行うことができるよう、校内体制を整備します。 また、様々な課題や問題行動の未然防止策として、子どもたち一人ひとりの自己 肯定感を高める「子どもの社会的スキル横浜プログラム」の推進を図ります。 学校・警察連絡協議会の定期的な開催を通して、少年の検挙補導状況を把握し、非行の未然防止に向けた協議を行い、学校と警察、少年補導員等が連携した指導(非行防止教室等)を行います。 また、非行や問題行動を起こした少年に対しては、協定に基づく「健全育成を推進するための連絡票」の運用や、県警察少年相談・保護センターでの相談を通し、立ち直り支援や非行を繰り返さない再発防止の教育を進めます。 「スクールスーパーバイザー」による専門家支援が必要な場合は、より総合的な視点から専門性に基づく助言を行い、校内での相談機能の充実を図ります。 当該校カウンセラーや区役所こども家庭支援相談のカウンセラーが相談を受けた 場合には、状況に応じて適切な関係機関へつなぎます。 47頁 児童相談所では、児童の家出、盗癖などのぐ犯行為や、窃盗、傷害などの触法行為に関する相談・支援を進めるとともに、警察・学校等の関係機関との連携の充実に取り組みます。 児童自立支援施設である向陽学園では、こども青少年局と教育委員会が連携して修学環境の向上、修学支援の充実、円滑な進学・復学に向けた関係機関との連携強化に取り組み、児童の規範意識、社会性及び自己肯定感をはぐくみ、孤立を防ぎ、非行の予防・再発防止を図ります。 また、研修等を通じ、学校関係者、関係機関職員との相互理解を深めます。 市内の更生保護活動の円滑な推進に取り組む横浜市保護司会協議会に対して支援を行うことで、青少年の非行防止及び保護育成を図ります。 青少年の非行防止を目的に、青少年指導員が全市一斉夜間パトロールを行います。 また、社会環境の健全化を目的に、神奈川県が行う社会環境実態調査に協力し、有害図書類の区分陳列調査等に取り組みます。 青少年相談センター、地域ユースプラザでは、15〜39歳の若者及びその家族の抱える様々な課題について相談支援を行っています。一人ひとりの状況に応じた支援ができるよう、関係機関と連携し、取り組みます。 また、若者サポートステーションでは、困難を抱える15〜39歳の若者及びその家族を対象とし、総合相談や就労セミナー、就労訓練等を実施し、職業的自立に向けて支援します。 なお、国の就職氷河期世代支援プログラムにより、令和2年度からは、「サポステ・プラス」(愛称)として、40歳から49歳までの方の支援も行います。(一部再掲) 青少年の地域活動拠点づくり事業では、中・高校生世代を中心とした青少年の誰もが安心して気軽に集い、仲間や異世代と交流できる居場所を提供するとともに、ボランティア活動などの社会参加プログラムを実施しています。 また、拠点と地域の人材・団体が連携することで、青少年を見守る意識を醸成します。 子どもの育ちや成長を守り、支援の必要な子どもたちに気づき、受け止め、見守ることのできる「子ども食堂」等の地域における子どもの居場所づくりに対する支援に取り組みます。 48頁 ・若者自立支援機関(青少年相談センター・地域ユースプラザ・若者サポートステーション) 横浜市では、生きづらさを抱える15歳から39歳の若者に対して、青少年相談センター・地域ユースプラザ・若者サポートステーションが連携し、一人ひとりの状態に応じた段階的な支援を行っています。 1 青少年相談センター 様々な困難を抱える若者を支援するための総合相談を行うとともに、グループ活動や社会体験等の多様なプログラムを通じて社会参加に向けた本人への継続的な支援を行っています。また、その家族を対象に、保護者の集いや家族向けのセミナー等も実施しています。 若者自立支援機関の中核を担う機関として、各機関の連携促進や若者自立支援を行っている地域の関係機関・団体・支援者を対象に、人材育成を行っています。 2 地域ユースプラザ 青少年相談センターの支所的機能を有する機関として、市内方面別に4か所設置しています。 ひきこもりなど様々な困難を抱える若者に対する総合相談や社会体験プログラムを行うほか、ひきこもりからの回復期にある若者のための居場所の運営や、音楽やスポーツ等、様々な講座を実施しています。 また、身近な地域に出向いた相談や啓発等を行っています。 3 若者サポートステーション 若年無業者など困難を抱える若者の職業的自立を支援するため、就労に向けた相談への対応や一人ひとりに合った支援プログラムの作成を行い、他の就労支援機関と連携しながら、就労前後の継続的な支援を行います。 若者サポートステーションは、国が設置する支援機関ですが、横浜市では、国の事業と連携し、「よこはま若者サポートステーション」及び「湘南・横浜若者サポートステーション」において、セミナーや就労訓練等、よりきめ細かな支援を実施しています。 49頁 ・児童相談所 18歳未満の児童について、子育てや非行、障害などの様々な相談に応じています。 また、児童虐待に関する相談・通告への対応や里親に関する相談を行います。 児童相談所では児童福祉士や児童心理士など様々な専門職が勤務しており、専門的な調査・判定や法律に基づく助言などを通じ、問題解決や改善の方法を家族や児童本人が考えていけるよう、関係機関と連携し、支援を行っています。  なお、学校との情報共有や、主任児童委員との連携などを通じて地域の子どもに関する困りごとへの支援を行っています。 ■ 対象者   子どもに関する相談をお持ちの方 ■ お問合せ   お住まいの地域の児童相談所へ  【横浜市中央児童相談所】   担当区 鶴見、神奈川、西、中、南  【横浜市西部児童相談所】   担当区 保土ケ谷、旭、泉、瀬谷  【横浜市南部児童相談所】   担当区 港南、磯子、金沢、戸塚、栄  【横浜市北部児童相談所】   担当区 港北、緑、青葉、都筑 ■ 支援の内容等 (1)子どもの養育に関する相談    育児への不安    身近に相談する人がいない 等 (2)子どもの虐待に関する相談・通告 (3)非行に関する相談    盗み、家出や外泊    集団でのいじめ 等 (4)障害に関する相談    身体的な障害や知的な障害等 (5)不登校に関する相談 (6)性格や行動の問題に関する相談    家庭内乱暴、落ちつきがない等 (7)その他の相談    里親、保健指導に関すること等 50頁 【取組の方向性】 自治会町内会をはじめ、警察や関係機関等が連携し、地域でパトロールや見守りなどの防犯活動の取組が行われており、刑法犯認知件数はピークであった平成16年以降減少傾向に転じています。 地域が絶えず犯罪に対して注意し、パトロールをはじめとした活動を犯罪に陥りそうな人に見せることで、その地域での犯行を思いとどまらせることが期待できます。 地域における自主的な取組が力を合わせることで、犯罪に強く快適な地域をつくり、身近な犯罪の発生の防止につなげます。 【施策の展開】  防犯に関する各種キャンペーンや防犯講習会・研修会などを通じて、市民の防犯知識・防犯意識を高めます。 各区が警察署と連携し、犯罪の発生状況を「防犯情報メール」として配信するほか、自治会町内会の回覧など様々な媒体を活用し、犯罪の発生状況の提供や防犯対策等の呼びかけを行います。 自治会町内会をはじめ警察署、防犯協会、小学校など関係者が連携し、防犯パトロールなど、地域での防犯活動・見守り活動に取り組みます。 青色回転灯装着車によるパトロールの実施や、地域への防犯パトロール用具の提供、「子ども110番の家」プレート配布等を通じて、地域における防犯活動の取組を支援します。 自治会町内会等による地域防犯カメラ設置に対する補助やLED防犯灯の設置等を通じて、犯罪が起こりづらい環境づくりに取り組みます。 51頁 第4章 誰もが安心して自分らしく健やかに暮らすための更生支援の推進 犯罪をした者等の更生には、刑事司法手続を通じて犯罪をした者等に関わる関係者と社会生活を送るうえで関わることがある横浜市の福祉関係者が一丸となって切れ目のない支援につなげていく必要があります。 このため、「横浜市更生支援ネットワーク会議」を設け、司法関係者と市内福祉関係者相互の情報や課題を共有するとともに、対話を通じて司法と福祉の顔の見える関係を構築していきます。 司法と福祉が緊密な連携協力関係を築き、一丸となって取組を進めることで効果的、効率的に更生支援を推進します。