7頁 第2章 横浜市における再犯防止を取り巻く状況 1 犯罪の発生状況 (1)横浜市内における刑法犯の認知件数の推移 横浜市 平成16年74,667件、平成17年54,902件、平成18年46,769件、平成19年43,649件、平成20年44,830件、平成21年37,490件、平成22年35,458件、平成23年32,571件、平成24年29,484件、平成25年30,323件、平成26年26,146件、平成27年23,668件、平成28年21,454件、平成29年20,046件 平成30年17,617件(資料:神奈川県警察本部より) (注) 認知件数:警察等捜査機関が被害届などを受けて犯罪の発生を把握した件数 (注) 発生場所に関わらず、横浜市内の警察署で取り扱った件数を掲載 (2) 神奈川県内での刑法犯検挙者中の再犯者数及び再犯者率 神奈川県 平成26年 検挙人員18,841人、再犯者8,809人、再犯者率46.8% 平成27年 検挙人員18,185人、再犯者8,805人、再犯者率48.4% 平成28年 検挙人員16,356人、再犯者7,891人、再犯者率48.2% 平成29年 検挙人員14,431人、再犯者7,004人、再犯者率48.5% 平成30年 検挙人員12,734人、再犯者6,255人、再犯者率49.1% (資料:再犯防止推進計画に掲げられた施策の指標一覧(法務省)より) (注) 再犯者率:刑法犯検挙人員に占める再犯者の人員の比率。なお再犯者とは、前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり、再び検挙された者 8頁 (3) 非行少年の検挙・補導状況 横浜市 平成26年 刑法犯1,558人、特別法犯183人、ぐ犯少年3人 平成27年 刑法犯1,364人、特別法犯198人、ぐ犯少年6人 平成28年 刑法犯1,040人、特別法犯183人、ぐ犯少年7人 平成29年 刑法犯 832人、特別法犯134人、ぐ犯少年2人 平成30年 刑法犯 762人、特別法犯170人、ぐ犯少年1人 (資料:警察統計より) (注)非行少年(非行のある少年):少年法が家庭裁判所の審判に付すべきとする犯罪少年、触法少年及びぐ犯少年の総称    刑 法 犯:刑法に規定する罪(道路上の交通事故に係るものは除く)のほか、爆発物取締罰則、決闘罪ニ関スル件、暴力行為等処罰ニ関スル法律、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律、航空機の強取等の処罰に関する法律、火炎びんの使用等の処罰に関する法律、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律及び人質による強要行為等の処罰に関する法律に規定する罪を犯した者    特別法犯:刑法犯以外の罪で、危険運転致死傷及び過失運転致死傷等の罪を除いたもの    ぐ犯少年:保護者の正当な監督に服しない性癖がある等の事由があって、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年 9頁 (4) 刑事司法手続きにおける件数・人数推移(横浜地検管内) 神奈川県 平成26年 受理件数50,377人、不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分・その他)36,527人、起訴8,738人、自由刑(懲役・禁固)の確定裁判を受けた者2,483人、(内訳)懲役2,271人、禁固212人、刑の全部執行猶予者総数1,623人(うち、保護観察付執行猶予者数182人)、全部実刑の裁判確定による刑務所入所者860人、少年院入所者172人 平成27年 受理件数48,200人、不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分・その他)34,585人、起訴9,385人、自由刑(懲役・禁固)の確定裁判を受けた者2,660人、(内訳)懲役2,455人、禁固205人、刑の全部執行猶予者総数1,786人(うち、保護観察付執行猶予者数177人)、全部実刑の裁判確定による刑務所入所者874人、少年院入所者189人 平成28年 受理件数45,966人、不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分・その他)32,821人、起訴9,429人、自由刑(懲役・禁固)の確定裁判を受けた者2,625人、(内訳)懲役2,394人、禁固231人、刑の全部執行猶予者総数1,825人(うち、保護観察付執行猶予者数185人)、全部実刑の裁判確定による刑務所入所者720人、少年院入所者171人 平成29年 受理件数44,975人、不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分・その他)32,603人、起訴9,180人、自由刑(懲役・禁固)の確定裁判を受けた者2,638人、(内訳)懲役2,386人、禁固252人、刑の全部執行猶予者総数1,881人(うち、保護観察付執行猶予者数192人)、全部実刑の裁判確定による刑務所入所者639人、少年院入所者205人 平成30年 受理件数41,532人、不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分・その他)30,194人、起訴9,024人、自由刑(懲役・禁固)の確定裁判を受けた者2,518人、(内訳)懲役2,285人、禁固233人、刑の全部執行猶予者総数1,809人(うち、保護観察付執行猶予者数199人)、全部実刑の裁判確定による刑務所入所者563人、少年院入所者241人 (資料:検察統計年報及び神奈川県再犯防止推進計画より) (注)全部実刑の裁判確定による刑務所入所者(人)及び、少年院入院者(人)については、犯行時(非行時)の居住地が神奈川県であったものを取りまとめたものである。 (注)神奈川県とは横浜地方検察庁の管轄である、地検(本庁、川崎、相模原、横須賀、小田原) 区検(横浜、神奈川、保土ケ谷、川崎、鎌倉、藤沢、相模原、横須賀、平塚、小田原、厚木)の合計値 10頁 (5) 刑務所出所時に帰住先がない者(注)の数及びその割合〔出所施設の所在する都道府県別〕 神奈川県 平成26年 刑務所出所者677人 出所時に帰住先がない者237人、帰住先がない者の割合35.0% 平成27年 刑務所出所者659人 出所時に帰住先がない者217人、帰住先がない者の割合32.9% 平成28年 刑務所出所者634人 出所時に帰住先がない者215人、帰住先がない者の割合33.9% 平成29年 刑務所出所者649人 出所時に帰住先がない者175人、帰住先がない者の割合27.0% 平成30年 刑務所出所者636人 出所時に帰住先がない者187人、帰住先がない者の割合29.4% (資料:法務省再犯防止推進計画に掲げられた施策の指標一覧より) (注)「帰住先がない者」とは、健全な社会生活を営むうえで適切な帰住先を確保できないまま満期釈放により出所した者をいい、帰住先が不明の者や暴力団関係者のもとである者などを含む。 11頁 2 更生保護に関する状況 (1) 保護観察終了時に無職である者の状況 神奈川県 平成26年 保護観察終了人員(職業のものを除く)856人、うち保護観察終了時に無職である者の数126人、14.7% 平成27年 保護観察終了人員(職業のものを除く)727人、うち保護観察終了時に無職である者の数119人、16.4% 平成28年 保護観察終了人員(職業のものを除く)670人、うち保護観察終了時に無職である者の数120人、17.9% 平成29年 保護観察終了人員(職業のものを除く)651人、うち保護観察終了時に無職である者の数136人、20.9% 平成30年 保護観察終了人員(職業のものを除く)669人、うち保護観察終了時に無職である者の数115人、17.2% (資料:法務省横浜保護観察所管内より) (注)保護観察:犯罪をした者または非行のある少年が、社会の中で更生するように、保護観察官及び保護司による指導と支援を行うもの。 (2) 協力雇用主数 横浜市 平成26年 協力雇用主64社、うち実際に雇用している協力雇用主10社、協力雇用主に雇用されている刑務所出所者等3人 平成27年 協力雇用主74社、うち実際に雇用している協力雇用主19社、協力雇用主に雇用されている刑務所出所者等10人 平成28年 協力雇用主106社、うち実際に雇用している協力雇用主26社、協力雇用主に雇用されている刑務所出所者等9人 平成29年 協力雇用主128社、うち実際に雇用している協力雇用主33社、協力雇用主に雇用されている刑務所出所者等17人 平成30年 協力雇用主158社、うち実際に雇用している協力雇用主32社、協力雇用主に雇用されている刑務所出所者等14人 (資料:法務省横浜保護観察所内より) (注)犯罪・非行の前歴のために定職につくことが容易でない刑務所出所者等を、その事情を理解したうえで雇用し、改善更生に協力する民間の事業主 12頁 (3) 保護司数及び充足率 横浜市 平成26年 保護司632人、充足率86.7% 平成27年 保護司613人、充足率84.1% 平成28年 保護司621人、充足率85.2% 平成29年 保護司606人、充足率83.1% 平成30年 保護司606人、充足率83.1% (資料:法務省横浜保護観察所より) (4) 「社会を明るくする運動」参加人数 横浜市 平成26年20,121人、平成27年16,722人、平成28年41,693人、平成29年50,279人 平成30年54,137人 (資料:法務省横浜保護観察所より) (注)平成27年までは7月実施分を,平成28年以降は年間分を計上 13頁 (5) 保護観察対象者に関する状況 平成26年 1号観察394人、2号観察106人、3号観察289人、4号観察121人、薬物事犯保護観察対象者78人 平成27年 1号観察283人、2号観察59人、3号観察299人、4号観察118人、薬物事犯保護観察対象者93人 平成28年 1号観察315人、2号観察87人、3号観察292人、4号観察117人、薬物事犯保護観察対象者86人 平成29年 1号観察308人、2号観察75人、3号観察246人、4号観察113人、薬物事犯保護観察対象者79人 平成30年 1号観察397人、2号観察114人、3号観察269人、4号観察146人、薬物事犯保護観察対象者106人 (資料:法務省横浜保護観察所より) 保護観察開始人員は、1号観察から4号観察(更生保護法)までの合計人数 1号観察:保護観察処分少年 2号観察:少年院仮退院者 3号観察:仮釈放者 4号観察:保護観察付執行猶予者 (6) 神奈川県地域生活定着支援センター年度別支援対象者数 神奈川県 平成26年度57人、平成27年度57人、平成28年度51人、平成29年度66人、平成30年度77人 (資料:神奈川県地域生活定着支援センターが支援した矯正施設等出所者の状況 平成30年9月 神奈川県社会福祉士会神奈川県地域生活定着支援センターより) 14頁 3 横浜市保有データ (1) 非行相談に係る新規相談受付件数推移(児童相談所) 平成26年 ぐ犯240人、触法369人 平成27年 ぐ犯280人、触法297人 平成28年 ぐ犯214人、触法176人 平成29年 ぐ犯276人、触法191人 平成30年 ぐ犯221人、触法183人 (資料:横浜市児童相談所より) ・犯罪被害に遭うということ 多くの人は、犯罪被害について「自分には無関係」「自分には起きるはずがない」などと考えてしまいがちです。しかし、ある日突然、犯罪や事故に巻き込まれ、命を奪われたり負傷してしまうことが、誰にでも起こりえます。 横浜市では、平成24年から「横浜市犯罪被害者相談室」を開設し、犯罪等の被害に遭い、様々な問題に直面する市民とその御家族、御遺族の相談に応じ、支援を行ってきました。 平成31年4月からは「横浜市犯罪被害者等支援条例」に基づき、心のケアや日常生活、住居等に関する支援を拡充しています。(支援には一定の要件があります。支援内容により、対象者が異なります。) まずは、一人で悩まず御相談ください。 また、犯罪被害に遭われた方々を支えるために、周囲の皆様の御協力等が必要です。被害者が置かれている状況や心情、二次被害等についての御理解をお願いします。 【横浜市犯罪被害者相談室】 社会福祉専門職の相談員(市職員)が犯罪被害に遭われた皆様の御相談をお受けします。 рO45-671-3117 相談無料 受付時間 9時〜17時(月〜金 ※祝日・年末年始を除く。) 15頁から16頁 4 司法手続きの流れ (1) 成人による刑事事件の流れ @警察など 警察などが犯人を検挙して必要な捜査を行った事件は、原則としてすべて検察官に送致されます。 A検察庁 検察官は、送致された事件について必要な捜査を行い、法と証拠に基づいて、被疑者を起訴するか、不起訴にするかを決めます。また、検察官は、自ら事件を認知したり、告訴・告発を受けて捜査することもあります。 B裁判所 裁判所は、公開の法廷で審理を行い、有罪と認定した場合は、死刑、懲役、禁錮、罰金などの刑を言い渡します。また、その刑が3年以下の懲役・禁錮などの場合は、上場によりその執行を猶予したり、さらには、その猶予の期間中保護観察に付することもあります。なお、比較的軽微な事件で、被疑者に異議がない場合は、簡易な略式手続で審理が行われることもあります。 C刑務所など 有罪の裁判が確定すると、執行猶予の場合を除き、検察官の指揮により刑が執行されます。懲役、禁錮、拘留は原則として刑務所などの刑事施設で執行されます。刑事施設では、受刑者の改善更生と社会復帰のための矯正処遇を行っています。なお、罰金や科料を完納できない人は、刑事施設に附置されている労役場に留置されます。 D保護観察所 受刑者は、刑期の満了前であっても、地方更生保護委員会の決定で仮釈放が許されることがあり、仮釈放者は、仮釈放の期間中、保護観察に付されます。また、保護観察付執行猶予判決の言渡しを受け、判決が確定した人も猶予の期間中は保護観察に付されます。保護観察に付された人は、改善更生と社会復帰に向けて、保護観察所の保護観察官と民間のボランティアである保護司による指導監督・補導援護を受けることになります。 E婦人補導院 売春防止法違反で補導処分となった成人の女子は、婦人補導員に収容され、仮退院が許可されると保護観察に付されます。 (資料:法務省 再犯防止推進白書より) 17頁から18頁 (2) 非行少年に関する手続きの流れ @警察など 警察などが罪を犯した少年を検挙した場合、捜査を遂げた後、原則として、事件を検察官に送致します。 A検察庁 検察官は、捜査を遂げた上、犯罪の嫌疑があると認めるとき、又は犯罪の嫌疑がないものの、ぐ犯(犯罪至らないものの、犯罪に結びつくような問題行動があって、保護する必要性が高いことをいう。)などで家庭裁判所の審判に付すべき事由があると認めるときは、事件を家庭裁判所に送致します。 B家庭裁判所 家庭裁判所は、調査官に銘じて、少年の素質、環境などについて調査を行ったり、少年を少年鑑別所に送致して鑑別を行ったりします。 C少年鑑別所 少年鑑別所は、医学、心理学、教育学等の専門的知識に基づき、少年鑑別を行い、その結果は家庭裁判所に提出されます。 D家庭裁判所 家庭裁判所は、事件記録等の調査の結果、審判に付する事由がない、または審判に付することが相当でないと認めるときは、審判不開始の決定を行い、審判を開始するのが相当と認めるときは、非公開で審判を行います。なお、少年審判において、一定の重大事件で非行事実を認定するため必要があるときは、家庭裁判所の決定により、検察官も審判に関与します。B家庭裁判所の調査やC少年鑑別所の鑑別を踏まえた審判の結果、保護処分に付する必要がないと認めるなどの場合は、不処分の決定を行い、保護処分に付することを相当と認める場合は、保護観察、少年院送致などの決定を行います。 EF検察官送致、起訴 家庭裁判所は、審判の結果、死刑、懲役、または禁錮にあたる罪の事件について刑事処分を相当と認めるときは、事件を検察官に送致します。なお、16歳以上の少年が、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合、その事件は、原則として検察官に送致され、事件送致を受けた検察官は、原則、起訴しなければならないとされています。 G少年院 少年院送致となった少年は、第1種、第2種又は第3種のいずれかの少年院に収容され、矯正教育、社会復帰支援等を受けながら更生への道を歩みます。 H保護観察所 家庭裁判所の決定で保護観察に付された場合、少年院からの仮退院が許された場合などにおいては、改善更生と社会復帰に向けて、保護観察所の保護観察官と民間のボランティアである保護司による指導監督・補導援護を受けることになります。 (資料:法務省 再犯防止推進白書より) 19頁 ア 生活環境の調整 保護観察所では、矯正施設に収容されている人の円滑な社会復帰等のため、釈放後の住居や就業先などの帰住環境を調査し、改善更生と社会復帰にふさわしい生活環境の調整を行っています。 イ 矯正施設、保護観察所、地域生活定着支援センターによる特別調整  矯正施設に収容されている人の中には、高齢又は障害のために自立した生活を送ることが困難であるのに、身寄りがなく福祉的支援が必要な状況にありながら、適切な支援体制が確保されないまま出所し、社会復帰を果たすうえで困難な状況に陥っている者が少なからず存在します。 そこで、法務省及び厚生労働省は、平成21年4月から受刑者等のうち、適当な帰住先が確保されていない高齢者又は障害のある者等が矯正施設出所後に、福祉サービスを円滑に利用できるようにするため、矯正施設、保護観察所、地域生活定着支援センター等の関係者が連携して、矯正施設在所中から必要な調整を行い出所後の支援につなげる特別調整の取組を実施しています。 (資料:平成30年度版 犯罪白書より) 20頁から31頁 5 国や民間団体の取組 国や民間団体等による更生支援及び、再犯防止に関連する取組について紹介します。 【国の取組】 (1) 刑務所 刑務所、少年刑務所及び拘置所を総称して刑事施設と呼んでいます。刑務所 (少年刑務所を含む。)は、主として受刑者を収容し、その者の資質及び環境に 応じその自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図るべく、矯正処遇を行い、円滑な社会復帰に資することを目的として設けられた施設です。 刑務所における再犯防止に向けた矯正処遇は、大きく刑務作業、改善指導、教科指導に分けられます。 刑務作業は、受刑者の勤労意欲を高め、職業上有用な知識、技能を習得させることを目的に実施しています。刑務作業は、生産作業、社会貢献作業(公園等の除草作業など社会への貢献を実感し、改善更生等に資すると認められる作業)、自営作業(炊事、清掃など施設の運営に必要な作業)、職業訓練に分かれますが、中でも職業訓練は、自動車整備、電機通信設備、介護福祉、情報処理技術など50種類以上の訓練が各地の刑務所で行われており、それぞれ、全国から、地域から、あるいは施設ごとに希望者を募り、適格者を選定して実施しています。 改善指導は、受刑者に犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培い、社会生活に適応するために必要な知識や生活態度を習得させることを目的に行われており、一般改善指導と特別改善指導に分けられます。 一般改善指導は、広く受刑者一般を対象として行われているもの(被害者感情理解指導など)のほか、全国共通の標準化されたプログラムに基づいて行うもの(暴力防止プログラム、アルコール依存回復プログラム、社会復帰支援指導、窃盗防止指導、特殊詐欺防止指導など)があります。 特別改善指導は、特定の事情を有することによって改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し、その事情の改善に資するよう特に配慮して行うもので、@薬物依存離脱指導、A暴力団離脱指導、B性犯罪再犯防止指導、C被害者の視点を取り入れた教育、D交通安全指導、E就労支援指導の6類型があり、いずれも全国共通の標準化されたプログラムに基づいて行っています。取り分け、専門性の高い性犯罪再犯防止指導や薬物依存離脱指導は、認知行動療法を取り入れ、教育専門官(法務教官)、調査専門官(法務技官)やこれに精通した処遇カウンセラー(公認心理師など)が取り組んでいます。薬物依存離脱指導では、社会復帰後の支援を視野に入れ、民間団体の方の協力もいただいています。 教科指導は、社会生活の基礎となる学力を欠くために改善更生や円滑な社会復帰に支障があると認められる者、学力向上が円滑な社会復帰に特に資すると認められる者に対して学校教育の内容に準じた指導を行っており、高等学校卒業程度認定試験も実施しています。 近時は、出所時の就労の確保に向けて厚生労働省の協力を得て、施設内でハローワークの職員による職業相談、職業紹介等を実施するなど就労支援に取り組んでおり、また、高齢又は障害を有する受刑者に対しては、社会福祉士等を通じて出所後速やかに福祉サービスにつながるよう調整する福祉的支援に力を入れています。 ・横浜刑務所 横浜刑務所は、主として26歳以上の犯罪傾向の進んだ男性受刑者を収容する施設です。溶接科、フォークリフト運転科などの職業訓練、特別改善指導の全類型、一般改善指導では、アルコール依存回復プログラム、暴力防止プログラム、窃盗防止指導、特殊詐欺事犯指導、生活改善指導など幅広く取り組んでいます。 (2) 少年院 少年院は、家庭裁判所の決定により保護処分として送致された少年を収容する、法務省所管の施設です。 少年院では、在院者の特性に応じた適切な矯正教育その他の健全な育成に資する処遇を行うことにより、改善更生と円滑な社会復帰を図っています。面接や心理検査、行動観察などを通じて少年鑑別所が策定した処遇指針等に基づき、在院者それぞれに個人別矯正教育計画を策定し、体系的な教育を行っています。矯正教育では、善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる知識及び生活態度を習得させる生活指導、勤労意欲を高め、職業上有用な知識及び技能を習得させる職業指導、教科指導、体育指導、情操を豊かにし、自主、自律及び協同の精神を養うため、クラブ活動や社会貢献活動等を行う特別活動指導を行っています。このうち生活指導では、在院者の抱える特定の事情の改善に資するため、被害者の視点を取り入れた教育、薬物非行防止指導、交友関係指導など特定生活指導についても実施されています。 少年院の標準在院期間は、短期の者を除くと、おおむね11か月であり、この期間、個別に指定される担任を中心とした法務教官からの指導を受けます。また、保護者等への協力の求め、就労支援や復学等に向けた修学支援など円滑な社会復帰に向けた支援にも力が入れられています。 少年院からの出院のほとんどは、地方更生保護委員会による仮退院の決定によるもので、出院後は保護観察を受け、保護観察官・保護司の監督の下、社会復帰を目指します。 少年院在院中に培われた担任教官等との絆は、彼らにとって初めて築く大人との信頼関係であることが多く、平成27年には、少年院法改正により担任教官らが出院者等からの相談に対応する仕組みが取り入れられ、業務として出院後の少年とその保護者、関係機関等の相談に対応できることとなりました。 ・少年院に入院する人 平成30年に少年院に入院した者は、全国で2,108名(男1,933名、女175名)でした。 年齢は19歳が最も多く、次いで18歳が続いており、合わせると5割を超えます。 非行名では、高いものから順に並べると、男子の場合、窃盗、傷害、詐欺となります。なお、女子の場合はこれに加え、覚せい剤取締法違反とぐ犯が多くなっています。 保護者の状況を見ると、実父母は3分の1です。また、虐待を受けた経験のある者が少なくなく、入院の時点で35.2%の少年に何らかの被虐待経験が認められています。 学歴については、中学卒業が25.3%、高校中退が40.9%となっています。 少年院在院者の多くは、何らかの生きづらさを抱えていると言え、彼らが出院するに当たって、どのようにその生きづらさを解消していくのかが再非行防止に向けたポイントとなります。 ・神奈川県内の少年院 神奈川県内には、横須賀市に久里浜少年院が所在しています。 久里浜少年院では、「反社会的な価値観・行動傾向があるなど、非行の程度が深い少年」「外国人等で日本人と異なる処遇上の配慮を要する少年」等を対象に、健全な価値観を養い、堅実に生活する習慣を身に付けるための指導などを重点的に行っています。 (3) 横浜少年鑑別所(法務少年支援センターよこはま)の取組 少年鑑別所は、家庭裁判所等の求めに応じ、鑑別を行うこと、観護の措置が執られ、収容されている者等に対して、観護処遇を行うことなどを目的とする法務省所管の施設です。 これに加えて、法務少年支援センターとして、地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行っています。 横浜市港南区にある横浜少年鑑別所も、法務少年支援センターよこはまとして、少年鑑別所法第131条に基づき、学校、児童福祉機関、地方公共団体等と連携を図りながら、地域における非行及び犯罪の防止に関する活動に取り組んでいます。対象者の年齢制限はなく、非行及び犯罪の防止に関する問題等について、どなたでも利用することができます。 少年鑑別所の鑑別業務で培ってきた心理アセスメントや、観護処遇で培ってきた青少年の生活指導等に関する専門性を活用し、心理学等を専門とする職員が相談や依頼に応じています。 [具体的な取組(例)] ・一般の方からの相談への対応 保護者や本人からの、非行、犯罪行為、親子関係に関する相談、刑務所出所者等を雇用した事業主や雇用された本人からの職場トラブルや交友関係に関する相談等に対応 ・県内の関係機関等とのネットワークへの参画 児童支援・生徒指導専任教諭協議会への参加、自治体の学齢期支援に係る定期的な連絡会への参加、児童相談所とよこはま法務少年支援センターとの連絡会の開催、支援会(障害者福祉)への参加 ・研修・講習会・講演への職員派遣 生徒指導担当、特別支援学校等、学校教諭を対象とした研修への講師派遣、青少年指導員等を対象とした研修への講師派遣 ・青少年の指導に関する助言 学校や教育委員会を通じて依頼を受けて、非行傾向のある児童・生徒への面接、心理検査、ワークブックを実施し、結果を踏まえた指導上の助言・提案 ・法教育授業等への職員派遣 特別支援学校の生徒を対象とした出前授業を実施 ・小児療育相談センターとの連携 利用者に対する助言、利用者家族向け講義を実施 【一般の方からの相談への対応例】 (保護者からの相談) 小学校高学年で転校し、その後、母親の財布から小銭をこっそり持ち出すようになった。また、同級生のキーホルダーがなくなったことがあり、息子が盗んでいるのではないかと疑われた。厳しくしつけをしたつもりなのに、息子は犯罪者になってしまうのか。 ⇒ 犯罪心理学を専門とする職員が、保護者と個別面接を行い、金銭持ち出しの背景要因を共に考え、叱責や厳しいしつけで解決するものではなく、転校後の息子の気持ちを引き出すように促すなど、具体的な助言を継続的に行ったところ、問題行動が改善しました。 (4) 横浜保護観察所 横浜保護観察所は、神奈川県下における、@保護観察処分少年(家庭裁判所で保護観察に付された少年)、A少年院仮退院者(少年院からの仮退院を許された少年)、B仮釈放者(刑事施設からの仮釈放を許された者)、C保護観察付執行猶予者(裁判所で刑の全部又は一部の執行を猶予され保護観察に付された者)等に対する保護観察を実施しています。 保護観察においては、対象者の社会内での立ち直りに向けた指導や支援を行っており、具体的には、定期的に対象者と面接して指導・助言を行うほか、個々の対象者の特性に応じて、4種類の専門的処遇プログラムやしょく罪指導プログラムを実施するとともに、社会貢献活動に参加させたり、就労支援や医療・保健・福祉機関との調整を行うなどしています。 この保護観察は、(8)の更生保護施設や(9)の保護司を始めとする更生保護ボランティアの協力を得ながら実施されています。 このほか、横浜保護観察所は、刑務所や少年院に収容されている者の生活環境の調整、“社会を明るくする運動”を始めとする犯罪予防活動、更生保護における被害者等施策、医療観察制度上の精神保健観察等も担っています。 (5) 横浜地方検察庁刑事政策総合支援室の社会復帰支援 検察庁では、警察等から事件が送検された後、捜査をして真実を解明し、起訴(公判請求・略式命令請求)か不起訴かを判断し、起訴のうち公判請求した事件については、裁判で適切な判決が宣告されるよう公判立証を行っています。 加えて、刑事政策総合支援室を設置して、@犯罪被害者の支援や、A児童虐待事案の児童相談所・警察との三機関連携とともに、B罪を犯した人のうち高齢者・障害者・生活困窮者等の社会復帰支援を行っています。 このうち、社会復帰支援は、再犯の防止(再被害の防止でもある。)のために、医療・福祉の支援が必要な被疑者・被告人には、本人の同意を得て、刑事政策総合支援室の非常勤職員である社会福祉アドバイザー(社会福祉士と精神保健福祉士の有資格者)、との面談を実施し、福祉的・医療的ニーズを引き出します。面談後、社会福祉アドバイザーは居住・就労・医療・生活等の支援を検討し、本人の希望を踏まえて、検察官に助言する取組です。 捜査段階で支援した事案には、例えば、認知症が疑われる高齢者やひとり親家庭の親による食料品の万引き、知的障害や精神障害が疑われるのに福祉や医療の支援につながっていない人による軽微な犯罪などがありました。捜査段階の支援は、刑務所出所者への支援と異なり、地域に居住し、家族がいて、学校や職場ともつながっている被疑者が多く、早期発見・早期対応による再犯防止の効果が高いものです。もちろん、被疑者が地域に戻るには、被害者や地域住民の理解が不可欠であり、犯罪被害者の支援を十分に行うことが前提となり、地域福祉の推進も必要です。 また、公判段階で支援した事案には、例えば、精神障害があって限定的な責任能力しかないとして執行猶予付きの判決が宣告された住居不定の被告人を、福祉事務所や医療機関と協力して、入院医療につなぐことができた事案がありました。この事案では、弁護人も被告人の意思確認を行うなど協力してくれました。公判段階では、弁護人による被告人への福祉的・医療的支援も積極的に行われており、弁護士会との連携も進めています。 (6) 横浜地方検察庁の社会復帰支援に関する「ふれあい広報」 各地の地方検察庁では、平成24年に再犯防止が閣僚会議で宣言された後、刑事政策を行う部門を設置して、福祉職(社会福祉士・精神保健福祉士)を配置するようになりました。 もちろん、検察の主たる職務は、送検された事件につき、捜査して適正な刑事処分を決め、公判請求した事案につき、立証して適正な量刑を確保することです。そして、その権限は法に基づき、謙抑的に行使されています。 しかし、他方で、検察は刑事政策として再犯防止を目指す使命があり、福祉や医療の支援を必要としている人のニーズを発見する機能を果たすことも求められています。すなわち、検察は再犯防止を目指して支援対象者を発見し、検察に配置されている福祉職は、支援対象者のために、ソーシャルワークの価値や理念に基づく支援を行い、司法と福祉が、異なる目的のもと、協働しています。 横浜地方検察庁においても、このような社会復帰支援の取組を、「ふれあい広報」として、見学に来てくれる市民の皆様に紹介したり、地域の福祉機関や医療機関に出向いて説明したりしています。地域の福祉機関や医療機関の福祉職は、罪を犯し支援を必要としている人の存在を知ると、積極的に協力を申し出てくれます。 社会復帰支援の「ふれあい広報」は、刑事司法と医療・福祉の接点を、堅い壁ではなく、開かれたドアにするものであり、今後の司法と福祉のネットワークづくりの第一歩になると考えています。 ・神奈川県弁護士会の取組 神奈川県弁護士会では、再犯防止を目的とするものではありませんが、本人の更生を支援する取組として、平成23年11月より、司法と福祉の連携に関する研修受講を登載要件とした障害者刑事弁護人担当者名簿(当番弁護士、被疑者・被告人国選)を整備し、平成27年12月には、神奈川県社会福祉士会と障害者刑事弁護における連携(接見同行、更生支援計画書の作成、社会復帰後の環境調整、刑事裁判における証言等)に関する協定書を締結しています。 また、協力してくれる福祉職に対しても、平成30年2月から、人権救済基金を使用して、上限5万円の範囲で費用を支払う制度を創設しました。今後、罪に問われた本人の生きづらさに寄り添った更生支援の結果、再犯防止にもつながるという観点から積極的な取組を展開していく予定です。 【神奈川県の取組】 (7) 神奈川県地域生活定着支援センター 神奈川県では、「神奈川県地域生活定着支援センター」を平成22年12月1日に開設し、保護観察所等と協働して以下の業務に取り組んでいます。 ・ コーディネート業務 保護観察所からの依頼に基づき、福祉サービスに係るニーズの内容の確認等を行い、受入れ先施設等のあっせん又は福祉サービスに係る申請支援等を行います。 ・ フォローアップ業務 コーディネート業務を経て矯正施設から退所した後、社会福祉施設等を利用している人に関して、本人を受け入れた施設等に対して必要な助言等を行います。 ・ 相談支援業務 懲役若しくは禁錮の刑の執行を受け、又は保護処分を受けた後、矯正施設から退所した人の福祉サービスの利用に関して、本人又はその関係者からの相談に応じて、助言その他必要な支援を行います。 【民間団体等の取組】 (8) 更生保護施設 更生保護施設とは、矯正施設から釈放された人や保護観察中の人等で、身寄りがないことや、現在住んでいるところでは更生が妨げられるおそれがあるなどの理由で、直ちに自立することが困難な人たちに対して、一定期間、宿泊場所や食事を提供する民間の施設です。宿泊場所や食事の提供だけでなく、保護している期間、生活指導や就労支援等を行い、自立を援助することで、その再犯・再非行の防止に貢献しています。 横浜市内には、更生保護法人横浜力行舎と更生保護法人まこと寮の2つの更生保護施設があり、各施設が関係機関と連携しながら犯罪をした者等の社会復帰を支援しています。 横浜力行舎は、社会福祉法人幼年保護会更生施設甲突寮と併設されており、法務大臣の指定を受けて高齢・障害等により特に自立が困難な人たちを受け入れ、近隣の福祉関係機関等と連携して円滑に福祉等に移行できるよう支援する取組を行っています。また、窃盗事犯者に対する処遇プログラム(p38参照)や、施設の退所者に対する相談・支援などの取組を実施しています。 まこと寮は、法務大臣から薬物処遇重点実施更生保護施設の指定を受け、薬物回復プログラムの実施や依存症の専門医療機関への受診調整など、薬物依存からの回復に重点を置いた取組を実施しています。また、退所後においてもプログラムや生活相談を実施しています。 これら更生保護施設では、地域の更生保護女性会による食事会や餅つき会、地域の保護司会によるバーベキュー会や清掃奉仕、地域のBBS会(Big Brothers and Sisters の略であり、非行少年の自立を支援するとともに、非行防止活動を行う青年ボランティア団体)による映画会やボーリング大会、バレンタインデーの訪問を実施してもらうなど、地域との融和を心掛けて運営されています。 (9) 更生保護ボランティア 更生保護の活動は、保護観察所などの国の機関と、更生保護ボランティアなどの民間の方々が連携・協働して行っています。近年、更生保護が当面する課題が複雑多様化する中、更生保護ボランティアである、保護司、更生保護女性会員及びBBS会員は、それぞれの特性を生かしながらも、今まで以上に連携を強化して、更生保護の一層の充実・強化を図る必要があるとの認識の下、平成29年3月に「更生保護ボランティアの協働に関するかながわ宣言」が行われました。令和元年5月には、更生保護施設と協力雇用主を支援する就労支援事業者機構を加えて「更生保護団体の協働に関する五者宣言」が行われ、安全・安心な地域づくりのために、相互に連携して活動に取り組んでいます。 ・保護司 保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える民間のボランティアです。身分は非常勤の国家公務員ですが、給与は支給されていません。民間人としての柔軟性と地域の実情に通じているという特性を生かし、地域で保護観察官と協働して保護観察を受けている人と面接を行い指導や助言をするほか、刑務所や少年院に入っている人が、釈放された後にスムーズに社会生活を営めるよう、帰住先の生活環境の調整などを行っています。横浜市では約600人の保護司が活躍しています。近年、保護司の人員が減少傾向にあることから、適任者の確保が課題となっています。 ・更生保護女性会 更生保護女性会は、犯罪や非行のない明るい地域社会の実現に寄与することを目的として、地域の犯罪予防活動や犯罪や非行をした人の立ち直り支援を行うとともに、次代を担う青少年の健やかな成長を願って、関係団体と連携しながら地域の子育て支援などにも取り組んでいる女性ボランティア団体です。横浜市では約1,800人の会員が活躍しています。 ・BBS会 BBS会は、非行少年等様々な立場の少年に「兄」や「姉」のような立場で接し、非行少年たちの話し相手、相談相手となって、彼らの成長や悩みの解消を手助けする「ともだち活動」などを通じて、少年の立ち直りや自立を支援するとともに、非行防止活動を行う青年ボランティア団体です。横浜市では約30 人の会員が活動しています。 ・協力雇用主 犯罪・非行の前歴のために定職に就くことが容易でない刑務所出所者等を、その事情を理解した上で雇用し、その立ち直りに協力する民間の事業主です。横浜市では約150の事業主が協力しています。