表紙 誰もが安心して自分らしく健やかに暮らすための更生支援の方向性 −横浜市再犯防止推進計画− 目次 第1章 概要         1頁 1 策定にあたって     1頁 (1) 趣旨 1頁 (2) 国や神奈川県の状況 2頁 (3) 位置付け     4頁 (4) 計画期間     4頁 (5) 対象者         5頁 2 基本方針         6頁 第2章 横浜市における再犯防止を取り巻く状況 8頁 1 犯罪の発生状況            8頁 2 更生保護に関する状況 12頁 3 横浜市          15頁 4 刑事司法手続きの流れ 16頁 5 国や民間団体の取組      21頁 (1) 刑務所          21頁 (2) 少年院          23頁 (3) 横浜少年鑑別所(法務少年支援センターよこはま)     25頁 (4) 横浜保護観察所                     27頁 (5) 横浜地方検察庁刑事政策総合支援室の社会復帰支援     28頁 (6) 横浜地方検察庁の社会復帰支援に関する「ふれあい広報」 29頁 (7) 神奈川県地域生活定着支援センター         30頁 (8) 更生保護施設                     31頁 (9) 更生保護ボランティア                 32頁 第3章 施策の展開                     33頁 1 福祉保健医療サービスの活用 34頁 (1) 生活保護、生活困窮者自立支援制度         35頁 (2) 高齢者支援                     36頁 (3) 障害者支援                     37頁 (4) 薬物依存症者等への支援                 39頁 2 住まいの充実                     41頁 3 就労の場の確保                     43頁 4 普及啓発                         44頁 5 非行の防止、修学支援                 47頁 6 安全・安心のまちづくり(地域防犯)             51頁 第4章 誰もが安心して自分らしく健やかに暮らすための更生支援の推進  52頁 資料 資料1 再犯の防止等の推進に関する法律 53頁 資料2 再犯防止推進計画(概要) 60頁 資料3 地域再犯防止推進モデル事業 61頁 資料4 計画策定経緯          62頁 1 横浜市再犯防止推進計画策定検討会 62頁 2 庁内再犯防止推進計画策定会議 64頁 資料5 用語集             65頁 1頁 第1章 概要 1 策定にあたって (1) 趣旨 警察が犯罪の発生を認知したことを示す刑法犯認知件数は全国的に年々減少傾向にあります。 横浜市の刑法犯認知件数も平成16年の74,667件をピークに平成30年には17,617件となっており、これに伴い、刑法犯で検挙される者の数も減少傾向にあります。 一方、刑法犯による検挙者のうち、検挙が2回目以上となる再犯者の減少幅は検挙が1回目の者(初犯者)と比べて小さくなっており、刑法犯検挙者に占める再犯者の割合〈再犯者率〉は年々増加傾向にあります。ここ数年では、神奈川県内で検挙される者の約半数(平成30年は49.1%)は再犯者です。 誰もが安心して地域生活を送るため地域防犯の取組は必要なものであり、これまでの地道な取組で着実に成果を上げることができています。 今後、より一層推進していくためには、再犯者の減少に向けた取組(再犯防止)も必要であり、そのためには、これまでの取組に加えて、罪を犯した人(犯罪をした者等)の抱える課題を踏まえた取組も重要となります。  国の統計資料等によれば、生きづらさを抱える犯罪をした者等を地域社会で孤立させないため、関係者間での緊密な連携協力による『息の長い』支援を行っていくことが課題となっています。 これまでも横浜市は市民に最も身近な行政機関として、市民一人ひとりに寄り添った支援を実施してきました。 再犯防止の取組を進めるにあたっても、関係者と連携しながら、犯罪をした者等に寄り添い、更生(立ち直り)を支援していく必要があります。 このため、助けを必要としながらも孤立した状況にある犯罪をした者等が、自分らしく健やかに暮らすための支援のあり方を明らかにするとともに、市内で更生支援のために取り組んでいる民間協力者等への支援と連携を促進し、犯罪被害に遭う人の減少と立ち直ろうとする者を受け入れる地域社会を実現させるため、「誰もが安心して自分らしく健やかに暮らすための更生支援の方向性―横浜市再犯防止推進計画―」を策定します。 2頁 (2) 国や神奈川県の状況 国全体の刑法犯認知件数は平成14年に約285万件と戦後最多を記録すること となり、国は警察官等を大幅に増員するとともに、地域におけるボランティア団体に対する支援を充実するなどし、国民と一体となって身近な犯罪の抑止に取り組みました。こうした取組の成果もあって、平成19年には刑法犯認知件数が10年ぶりに200万件を下回り、少年犯罪への対応をより厳正・的確に行うことで少年犯罪も平成19年には10万3千件まで減少するなど治安の改善が見られました。 その一方で、平成16年から17年にかけて刑務所出所者等による重大再犯事犯が立て続けに発生したほか、刑法犯により検挙された再犯者が平成18年には149,164人と最多となりました。 また、この時期、法務総合研究所(法務省)で昭和23年から平成18年までの間に裁判が確定した犯歴100万人を調査した結果、人数においては全犯罪者の3割にあたる再犯者が件数においては全犯罪の6割を実行している状況となっていることが明らかとなっています。 そのため、国は一度犯罪をした者による犯罪をどのように防止するかが犯罪対策上避けては通れない重要課題であるとの認識のもと、刑務所出所者等の再犯防止対策として、安定的な収入を確保できない者等に対して就労を促進することや高齢や障害等により自立が困難な刑務所出所者等が出所後ただちに福祉サービスを受けられるよう支援体制を整備することなども積極的に行いました。 その後も国は様々な施策を展開させ、刑法犯認知件数は減少してきましたが、初犯者の減少と比較し、再犯者の減少が緩やかであることから、検挙人員に占める再犯者の人員の比率(再犯者率)は一貫して上昇し続け、平成28年には、統計を取り始めた昭和47年以降最も高い48.7%となりました。 こういった状況から、平成28年12月には「再犯の防止等の推進に関する法律」(以下「再犯防止推進法」という。)が制定・施行され、都道府県及び市町村に国との適切な役割分担を踏まえ、地域の実情に応じた再犯の防止等の施策を展開させる責務と「地方再犯防止推進計画」を策定する努力義務が課されました。 そして、再犯防止推進法に基づき、国は平成29年12月に「犯罪をした者等が円滑に社会の一員として復帰することができるようにすることで、国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与する」ことを目的として「再犯防止推進計画」を閣議決定しました。  また、神奈川県では平成31年3月に「罪を犯した人が立ち直り、地域社会の一員としてともに生き、支え合う社会づくりを促進する」ため、「神奈川県再犯防止推進計画」を策定しています。 3頁 【国や県の状況】 年 出来事〈・ 国 ○ 神奈川県〉 平成14年 ・ 刑法犯の認知件数が戦後最多を記録(約285万件) 平成15年 ・ 犯罪対策閣僚会議を初開催 平成15年 ・ 犯罪に強い社会の実現のための行動計画-「世界一安全な国、日本」の復活を目指して-を策定 平成18年 ・ 刑法犯で検挙された再犯者が最多(149,164人) 平成19年 ・ 刑法犯の認知件数が10年ぶりに200万件を下回る。 平成20年 ・ 犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008-「世界一安全な国、日本」の復活を目指して-を策定。刑務所出所者等の再犯防止対策を積極的に実施 平成21年 ・ 高齢又は障害により支援を必要とする矯正施設退所者に対して、保護観察所と協働し退所後直ちに福祉サービス等につなげる地域生活定着支援センターの整備を開始 平成22年 ・ 犯罪対策閣僚会議の下に「再犯防止対策ワーキングチーム」を設置。政府全体で再犯防止対策に取り組む体制を構築 平成22年 ○ 神奈川県地域生活定着支援センターの設置 平成23年 ・ 短期間に集中的に取り組むべき施策として「刑務所出所者等の再犯防止に向けた当面の取組」を策定 平成24年 ・ 犯罪対策閣僚会議において「再犯防止に向けた総合対策」を決定 平成25年 ・ 「世界一安全な日本」創造戦略を閣議決定。「犯罪の繰り返しを食い止める再犯防止対策の推進」を柱の一つとして位置付け 平成26年 ・ 犯罪対策閣僚会議において「宣言:犯罪に戻らない・戻さない〜立ち直りをみんなで支える明るい社会へ〜」を決定 平成28年 ・ 犯罪対策閣僚会議において「薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策〜立ち直りに向けた“息の長い”支援につながるネットワーク構築〜」を決定 平成28年 ・ 「再犯の防止等の推進に関する法律」の公布・施行 平成29年 ・ 「再犯防止推進計画」を閣議決定 平成31年 ○ 「神奈川県再犯防止推進計画」を策定 4頁 (3) 位置付け 再犯防止推進法第8条第1項に規定する「地方再犯防止推進計画」として策定します。 なお、横浜市では、「よこはま笑顔プラン(横浜市地域福祉保健計画)」のほか、福祉保健の分野別計画や住宅分野の基本計画である「横浜市住生活基本計画」、 地域の防犯力向上のための基本的な考え方や方策、推進体制を示した「よこはま安全・安心プラン」等分野に応じた計画を策定しています。 この計画は「地域共生社会の実現」を目的とする福祉保健をはじめ、関連する分野別計画との調和のとれたものとして策定しています。 (4) 方向性(計画)の期間 犯罪をした者等に対する横浜市の支援や取組の方向性を示すものとして策定し、再犯防止推進法や国、県計画等の改訂状況などを踏まえ、随時改訂できることと します。 5頁 (5) 対象者 再犯防止推進法及び国の再犯防止推進計画を踏まえ、対象者は「犯罪をした者等」とします。 再犯防止推進法では、「犯罪をした者等」とは犯罪をした者又は非行少年若しくは非行少年であった者と規定されており、矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院)の退所(退院)者に限定されていません。 捜査機関において犯罪行為を行った事実(被疑事実)が認められたものの、犯罪の軽重や情状等が考慮され、微罪処分や不起訴処分(起訴猶予)となり裁判に至らなかった人や、刑の執行を猶予された人、保護観察を終えた人なども含まれています。 犯罪をした者等の全てが矯正施設に入所することはありません。保護観察官や保護司が更生に向けた指導や支援を行う保護観察についても全員が対象となることはありません。 犯罪をした者等の多くは矯正施設に入所することなく、刑事司法手続きの様々な段階において地域社会に戻り、犯罪行為をする前と同様の社会生活を送ることとなります。 6頁 2 基本方針 再犯の防止等の取組は、これまで主に刑事司法関係機関により実施されてきました。 しかし、様々な生きづらさを抱える犯罪をした者等が地域社会で孤立せず立ち直っていくためには、刑事司法関係機関とともに地方自治体、民間協力者等の関係者が一丸となった取組が必要となります。 このため、横浜市では市民に身近な行政機関として、犯罪をした者等を含め誰もが安心して自分らしく健やかに暮らせるよう、次のとおり基本方針を設定します。 (1) 関係者との緊密な連携協力    犯罪をした者等には刑事司法手続等を通じて国や司法関係者、民間団体など多くの機関・団体が関わります。 犯罪をした者等が孤立することのない社会の実現に向けた施策を効果的に推進していくためには、関係者相互の連携が重要となることから、関係者間での緊密な連携協力関係を築いていきます。 (2) 切れ目のない支援    刑事司法手続は非常に複雑で、検挙後すぐに地域社会に復帰することがある一方、状況によっては、地域社会に復帰するまでに長い時間がかかることもあります。 関係者との連携協力を通じて、犯罪をした者等が刑事司法手続きのいずれの段階で地域社会へ復帰することとなっても、本人の希望を踏まえ切れ目のない支援を受けることができるようにします。 (3) 犯罪被害者等の尊厳への配慮 地域社会では、犯罪をした者等だけでなく、犯罪行為によって傷つけられ辛い思いをさせられた犯罪被害者等も生活しています。 犯罪をした者等の立ち直りを支援するに際しては、犯罪被害に遭う人を減らすという視点を持ったうえで、「横浜市犯罪被害者等支援条例(平成30年12月公布)」等に基づき、犯罪被害者等の人としての尊厳を重んじ、その安全及び心情等に最大限配慮します。 (4) 普及・啓発   犯罪をした者等が立ち直り、円滑な社会復帰を果たすためには、本人の努力だけでなく、周囲の人や地域社会の理解と協力が必要です。 地域社会の理解や協力を進めるために、犯罪をした者等への更生支援の必要性について幅広く普及・啓発をしていきます。