2.横浜市のスポーツにおける現状と課題。 本市では、市民の「する」「みる」「ささえる」スポーツの向上を目指し、スポーツ実施状況等の現状を把握するため、平成19年度から毎年市民を対象とした横浜市民スポーツ意識調査(以下「意識調査」)を実施しています。意識調査の結果を踏まえて、「する」「みる」「ささえる」スポーツに関する本市の現状と課題を整理しました。 (1)、市民のスポーツ活動。 ア、成人のスポーツ活動。 (ア)、運動不足と感じている市民の割合。 運動不足と感じている市民の割合は、平成29年度まで60%台となっていましたが、平成30年度には75.9%、令和2年度には81.3%となっています。一方、国の調査結果をみると、本市が70%を超えた平成30年度の1年前である平成29年度に79.5%となっており、その後は横ばいに推移しています。 運動不足と感じている市民の割合が平成30年度に大きく上昇した要因を明らかにすることは困難ですが、1年遅れで国と同様の傾向になっていること、新型コロナウイルス感染症の拡大もあって、80%を超える市民が運動不足と感じている事実については注視していくことが重要です。 (イ)、大人のスポーツ実施率。 a、成人のスポーツ実施率とスポーツへの感じ方。 成人における週1回以上のスポーツ実施率について10年間の経年変化をみると、平成26年度の39.4%から増加傾向にあり、令和2年度には64.5%と、おおむね本市の目標値65.0%※2と同程度となっています。週3回以上のスポーツ実施率についても同様に、平成26年度から増加傾向にあり、令和2年度には33.5%と、本市の目標値30.0%※2を上回っています。 また、スポーツを「することが好き」と回答した市民の割合は、毎年40%前後と横ばいで推移していましたが、令和2年度には48.1%に増加しました。 運動不足と感じている市民及びスポーツをすることが好きな市民、スポーツ実施率は、平成26年度から令和2年度まで増加傾向が認められます。また、平成26年度と令和2年度の割合を比較すると、「運動不足を感じている人」が15.3ポイント、「成人の週1回以上実施率」が25.1ポイント、「成人の週3回以上実施率」が17.4ポイント増加している一方、「スポーツをすることが好き」が7.2ポイントと増加の幅が小さいことがわかります。このことから、スポーツをすることが好きという意識よりも、運動不足の意識を持つ市民が増えたために、スポーツ実施率が高まっていると推察できます。 ※2、本市の目標値とは、第2期計画において掲げていた目標値を指し、成人のスポーツ実施率について、週1回以上実施が65%、週3回以上実施が30%と設定しています。 b、女性及び働く世代・子育て世代のスポーツ実施率。 本市の女性における週1回以上のスポーツ実施率について5年間の経年変化をみると、平成29年度から上昇傾向にあり、令和2年度には66.8%まで上昇しています。平成29年度、令和元年度、令和2年度については、女性の割合が成人全体を上回っており、さらに、5年間において国の割合よりも高く推移していることを踏まえると、国が課題ととらえている女性のスポーツ実施率が高いのは本市の特徴と言えます。 一方、30~40代のいわゆる働く世代・子育て世代に該当する世代のスポーツ実施率についてみると、成人全体に比べて、低くなっています。 c、高齢者のスポーツ実施率。 高齢者(65歳以上)における週1回以上のスポーツ実施率について5年間の経年変化をみると、平成28年度から毎年本市の目標70.0%を上回っており、令和2年度には80.2%となっています。 介護予防及び医療費削減に向けたスポーツ及び身体活動の効果に関する先行研究においては、スポーツのコミュニティ参加者が他分野のコミュニティ参加者と比べて要介護状態になりにくいことを明らかにした研究※3や、科学的根拠に基づいた健康づくり教室の導入により、導入後3年で医療費が年間一人あたり10万円程度抑制されたことが明らかとなった研究※4などがあり、スポーツ及び身体活動によって得られる効果が確認されています。 本市においても、市民で取り組む健康づくり推進のひとつとして、「よこはまウォーキングポイント事業*」を実施しており、外部機関による検証で、60歳代において3年連続の事業参加者は未登録者に比べ高血圧の新規発症者数が少なかったという結果や、参加高齢者における運動機能維持の効果が確認されています。※5。 ※3、出典:日本老年学的評価研究(平成26年)「プレスリリース(平成26年7月14日発行)」。 ※4、出典:筑波大学久野研究室、株式会社つくばウェルネスリサーチ、新潟県見附市の共同研究結果(平成23年)。 ※5、出典:横浜市記者発表(令和2年)。 d、障害者のスポーツ実施状況。 障害者における週1回以上のスポーツ実施率について3年間の経年変化をみると、平成30年度から令和元年度までは30%台と横ばいで推移していましたが、令和2年度は58.3%と、本市の目標40.0%を大きく上回っています。 本市では、障害のある子どもを対象としたスポーツ教室や特別支援学校での運動指導、市内各区への出張スポーツ指導・地域支援など、障害者が子どもの頃からスポーツに親しめるよう、取組を行ってきました。また、障害に対する理解促進に向けて、パラリンピアンによる学校訪問や障害者スポーツの指導者、ボランティア等の人材育成などの取組を進めており、障害者がスポーツに取り組みやすい環境づくりに努めてきました。 e、外国人の現状。 令和3年1月1日現在、本市の外国人人口は約10万人であり、20の政令指定都市のうち、大阪市に次いで2番目に多いことがわかっています。 横浜市外国人意識調査によると、生活で困っていることや心配なこととして、「日本語の不自由さ」と回答した外国人は29.8%となっており、外国の方がスポーツに親しむためには意思疎通への配慮も必要です。 (ウ)、スポーツの観戦状況。 過去1年間にトップスポーツを会場で直接観戦した市民の割合(以下「トップスポーツ観戦率」)について10年間の経年変化をみると、平成23~27年度まで20から40%台と増減を繰り返し、平成28年度以降30%前後で推移していることがわかります。令和2年度について、スポーツをみることが好きな市民は39.0%である一方で、トップスポーツ観戦率は29.7%であり、本市の目標値(50.0%)を約20ポイント下回っています。スポーツをみることが好きな市民が、必ずしもトップスポーツを観戦しているとは限らないことがうかがえます。 令和2年度の意識調査によると、会場で観戦した理由としては、「好きな種目・競技だから」と回答した市民が60%以上を占めており、コロナ禍においてもみることが好きという意識が上回っていたことがうかがえます。新型コロナウイルス感染症の拡大により、トップアスリートが参加する大規模スポーツ大会等の開催が制限されていたものの、トップスポーツ観戦率に大きな影響は認められませんでした。 (エ)、スポーツボランティアの実施状況。 過去1年間にスポーツボランティアを行ったことがある市民の割合(以下「スポーツボランティア実施率」)について10年間の経年変化をみると、平成24年度以外は6.0~7.0%台を横ばいに推移しており、令和2年度も7.0%と本市の目標値(10.0%)を3.0ポイント下回っています。 ボランティア参加の意識について、令和2年度の結果をみると、スポーツをささえることが好きな市民が4.4%である一方で、スポーツボランティア実施率は7.0%と上回っており、スポーツボランティアを行っている市民は、ささえることが好きで活動している人と、好きまではいかないが頼まれて活動している人とが混在していることが推察できます。また、ボランティアに参加するようになるきっかけは、「参加したい活動があれば」が多い結果となりました。 イ、子どものスポーツ活動。 (ア)、子どもの体力・運動能力の推移。 子どもの体力・運動能力について、目標である昭和60年と平成29年度、平成30年度、令和元年度の直近3年を比較すると、小学5年生では男女ともに反復横跳び以外の項目、中学2年生ではほぼ全ての項目が目標に達しておらず、横ばいが続いている状態となっています。また、体力合計点も全ての学年において横ばいとなっています。 (イ)、スポーツへの感じ方。 運動やスポーツへの感じ方について、小・中学生ともに「好き」「やや好き」の合計は男子の方が割合が高くなっています。小学生と中学生を比較すると、男子、女子のどちらにおいても「好き」「やや好き」の合計は、小学5年生よりも中学2年生の方で割合が低くなっています。 また、運動やスポーツが好きと感じている子どもは体力が高く、1週間の総運動時間も多いことが明らかになっています。 (ウ)、学校部活動の状況。 学校生活を一緒に送っている仲間と、同じスポーツや文化活動に取り組むことを通して、知識や技能だけでなく、人間性や社会性を育むことができる「部活動」には、市立中学校の生徒の80%以上が加入しており、生徒の心身の成長に大きな役割を果たしています。 一方で国からは、将来にわたって持続可能な部活動となるよう「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革」が示されており、これに先立って、平成29年度には学校教育法施行規則が改正され、校長の監督を受け、部活動の技術指導や大会への引率等を行うことを職務とする「部活動指導員」が、学校職員として規定されました。 本市では、平成30年度から、部活動の充実と教職員の負担軽減などを目的に部活動指導員の配置を進めており、市立学校のニーズに合わせた任用に取り組んでいます。