(3) 課題のまとめ ア 市民のスポーツ活動 (ア)健康づくりやスポーツ実施に対する関心の高まりを維持する取組が必要 人生100年時代を迎えようとする中で、誰もが、より長く、元気に活躍できるように、健康寿命を延ばし、心身の健康づくりや仲間づくりに寄与する活動としてスポーツが期待されています。また、運動不足と感じている市民は増加傾向にあり、さらに、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことで、健康づくりや身体を動かすことへの重要性がより強く認識されたと考えられます。 一方、スポーツを実施することが好きな市民の割合は横ばい傾向から令和2年度に高くなり、成人の週1日以上と週3日以上のスポーツ実施率においても、本市が掲げていた目標値とほぼ同等または上回る結果となっています。 健康づくりや運動不足の意識から高まっているスポーツへの関心やスポーツ実施率を維持・向上させることが必要です。 (イ)性別や年代の特徴を踏まえてスポーツの実施を促す取組が必要 女性の週1日以上のスポーツ実施率は全国と比べて高く、全国的に低くなりがちな女性のスポーツ実施率が高い傾向は本市の特徴と言えます。成人全体のスポーツ実施率を下げないためにも、この傾向を引き続き継続させることが重要です。 働く世代・子育て世代の週1日以上のスポーツ実施率は成人全体と比べて低くなっており、この世代は仕事や育児を優先して時間を費やすため、スポーツ実施率が伸び悩む傾向にあります。忙しい中でも、子どもがいても、気軽に安心してスポーツに取り組める場や機会の提供が重要です。 高齢者の週1日以上のスポーツ実施率は本市が掲げていた目標値を上回っており、スポーツを実施する習慣が一定程度あることがわかっていることから、従来掲げていた目標・指標の見直しが必要です。また、スポーツは介護予防や医療費削減に寄与する活動として認められており、スポーツを実施することによってどのような効果が得られたのかを把握することが重要です。 以上のことを踏まえ、働く世代・子育て世代、高齢者などの性別や年齢の異なる市民の特徴を踏まえて、スポーツ実施を促す取組が必要です。 (ウ)障害の有無に関わらずスポーツに親しめる環境づくりが必要 障害者における週1日以上のスポーツ実施率はおおむね目標値とほぼ同等に推移していましたが、令和2年度に上昇しています。本市では、障害者におけるスポーツの推進に力を入れて取り組んできました。 東京2020大会により高まった障害者スポーツの機運を維持しつつ、障害の有無に関わらずスポーツに親しむことができる環境づくりが必要です。 (エ)子どものスポーツを好きな意識を育み体力向上へとつなげる取組が必要 子どもの体力・運動能力は横ばい傾向にあります。スポーツを好きな子どもをみると、小学5年生よりも中学2年生の方が低く、両学年いずれも男子よりも女子の方が低くなっています。スポーツを好きな子どもは体力が高く、総運動時間も長いことから、今後はスポーツを好きな子どもを増やし、自発的にスポーツに取り組みながら体力向上へとつなげる取組が必要です。 また、テレビゲームやスマートフォンの普及によるスクリーンタイムの増加や、新型コロナウイルス感染症の拡大による生活リズムの変化など 、子どもを取り巻く環境が大きく変化している中で、昭和60年頃の体力水準に回復させるという目標設定が適切であるかどうかを検討していくことも必要です。   イ 市のスポーツ環境 (ア)スポーツ実施の場の確保に向けた施設整備と教育機関や民間企業との連携が必要 本市は他都市と比べて人口当たりのスポーツ施設数が少なく、また、土日祝日の抽選倍率が高いことがわかっています。市内小・中学校等の体育施設も貸出を行っているものの、校庭の夜間照明については、他都市と比べて設置率が低い状況です。また、市内にはスポーツ施設を有する企業があるものの、その全てが地域開放されているとは限りません。 今後は、大学などの教育機関や民間企業と連携しつつ、新たな施設の整備や既存施設の有効活用により、スポーツを実施するための場を確保することが必要です。 (イ)スポーツの現場において多様性を認め合うことができるリーダーの育成が必要 スポーツにはジェンダー平等に関する社会課題の解決に寄与する力があると期待されており、スポーツに親しむ場においても、女性のリーダーの育成をはじめ、多様性を尊重し合うことが重要となっています。 スポーツ・インテグリティへの関心も高まっており、ハラスメントや差別などのない環境に向けて、スポーツ団体のガバナンス強化なども取り組まれつつあります。 市内には、市スポーツ協会が養成・育成しているスポーツ指導者がいます。研修の修了者は4,000人以上となっており、このような指導者養成の仕組みを継続しつつ、人材の活用・サポートを推進していくことが重要です。 (ウ)スポーツボランティアにおける発掘・育成・定着の段階的な取組が必要 スポーツボランティア実施率は本市が掲げる目標値に及ばず横ばい傾向にあり、スポーツをささえることが好きで実施する人がいる一方で、頼まれて実施する人もいる可能性がわかっています。 本市では、これまで横浜市スポーツボランティアセンターを立ち上げ、スポーツボランティアの募集・登録・養成を推進してきました。今後も、市内では国際スポーツ大会及び国内大規模スポーツ大会の開催を予定していることから、既存の取組を継続しつつ、発掘・育成・定着のそれぞれの段階に応じた取組を実施することが必要です。 (エ)「する」・「みる」・「ささえる」スポーツの推進に向けて大学との連携が必要 市内には、体育・スポーツに関連のある大学が多数あり、他都市で既に取り組まれている人材の活用、みるスポーツの機会創出、施設の貸し出しなどの連携事例を踏まえると、本市においてもそのような取組が期待できます。地域と大学双方の活性化を見据えて取組を進めていくことが必要です。   (オ)「観る」・「魅せる」スポーツの推進に向けてトップスポーツチームとの連携が必要 市内には、野球、ソフトボール、サッカー、フットサル、バスケットボール、アイスホッケー、ラグビーといった多くのトップスポーツチームがあり、令和2年度に創設した「横浜スポーツパートナーズ」と連携・協働することで、スポーツ振興や地域活性化などにつながる取組を進めています。今後は、市内のトップスポーツチームと更なる連携を図り、トップスポーツチームに対する認知度の向上、愛着の醸成、応援したくなるきっかけづくりを行い、「観る」・「魅せる」スポーツを推進することが重要です。 また、観戦者の増加につながる取組として、施設の長寿命化等の整備に併せ、コンテンツホルダーを始めとした多様なステークホルダーと連携し、市民がまた訪れたいと思うような機能向上や魅力向上につながる整備などが考えられます。 (カ)大規模スポーツ施設や国際スポーツ大会等の開催実績を生かしたまちづくりが必要 本市では、関内駅周辺地区において、大規模スポーツ施設を核としたまちづくりが進められています。また、多くの国際スポーツ大会及び国内大規模スポーツ大会の開催実績があることから、国際競技団体とのつながりや、競技運営、パブリックビューイング、ボランティアによるおもてなしなどのスポーツの財産やノウハウ等を生かし、今後も大規模スポーツ施設の活用や国際スポーツ大会等の開催によるまちの賑わいづくりが必要です。 (キ)市のスポーツの財産を生かしたスポーツの新たな楽しみ方を市民に提供する取組が必要 ICTなどのデジタル技術革新が進展しており、VR・ARを活用した新しいスポーツの実施及び観戦の楽しみ方が生まれてきています。また、東京2020大会において新たな競技として採用されたスケートボード、スポーツクライミングなどのアーバンスポーツが注目を集めており、市内にも専用施設があります。さらに、令和2年7月に新設された横浜武道館を活用した武道ツーリズムなど、スポーツツーリズムの推進が期待できます。 このように本市のスポーツの財産を生かしたスポーツの新たな楽しみ方を市民に提供する取組が必要です。