(2)市のスポーツ環境 ア スポーツをする場 (ア)公共スポーツ施設 市内には屋内・屋外の様々な公共スポーツ施設があり、各区にスポーツセンターが1館配置されています。本市は、他都市と比べてスポーツ施設数は多いものの、人口1万人当たりのスポーツ施設数を算出すると、20の政令指定都市のうち、第16位(1.60施設、第1位の静岡市は6.07施設)に位置しており、他都市と比べて人口1万人当たりのスポーツ施設数が少ないことがわかっています。また、スポーツ施設の老朽化も進んでいます。 市内スポーツ施設の室場別平均抽選倍率は、土日祝日の倍率が高く、特に球技場の倍率が高い傾向があります。 (イ)学校体育施設 本市では、学校教育に支障のない範囲で、地域の身近なスポーツ・レクリエーション活動などの場として公立小中学校等の体育施設を市民が利用できるように開放しています。各開放施設の開放日・時間は学校により異なりますが、目安としては平日が18~21時、土日祝日及び長期休業日が9~21時となっています。 また、スポーツを気軽に楽しむ機会を創出するため、一部の市内小中学校校庭に夜間照明を設置していますが、他都市と比べて設置率が低い状況です。 イ スポーツを支える担い手 (ア)横浜市スポーツ推進委員 委員数は令和3年4月1日現在2,513人であり、神奈川県内の委員数の約半数を占めており、国内の地方自治体で最多となっています。 本市のスポーツ事業への協力だけでなく、特に活動の拠点を地域におき、地域住民と連携し地域に根ざしたスポーツ・レクリエーション振興事業を展開しており、本市のスポーツ行政の推進者として重要な役割を担っています。 なお、スポーツ推進委員の活動と委員相互の連絡及び協議を行うため、各区連絡協議会の会長により構成される横浜市スポーツ推進委員連絡協議会が設けられています。 (イ)スポーツボランティア 本市では、スポーツイベント等をささえるスポーツボランティアを支援するため、平成29年に「横浜市スポーツボランティアセンター」を立ち上げ、スポーツボランティアの募集・登録、市内で開催される「横浜マラソン」や「ワールドトライアスロンシリーズ横浜大会」など、大規模スポーツイベント等の活動機会の情報提供を行うとともに、ボランティアのスキルアップにつながる研修会や講習会も開催しています。登録者数は開設とともに順調に増えていますが、特に東京2020大会の都市ボランティアを募集したことを契機により多くの方に登録をしていただき、約13,000人の方が積極的にボランティア活動に関われるよう、支援しています。 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前までは様々なスポーツイベントで活動していましたが、影響後はスポーツイベント自体の中止もあり、ウィズコロナでの継続的な活動が求められています。 (ウ)スポーツ指導者 地域で活動できるスポーツ指導者を養成・育成する役割の一端を担っているのは市スポーツ協会です。同協会が開催する「横浜市スポーツ・レクリエーション人材養成講座」は、昭和60年に開講以来35年以上にわたり、スポーツやレクリエーション、健康づくりに関する各種講座を開催しており、これまでの修了者は4,000人を超えています。しかし、障害に関する知識・理解のある指導者は不足しており、「障害の特徴がわからない」、「介助方法がわからない」等の理由で障害者スポーツに関する大会やイベントの開催をためらう競技団体が数多くあります。 (エ)総合型地域スポーツクラブ 総合型地域スポーツクラブは、多種目、多世代、自主運営を特徴とした地域住民により自主的・主体的に運営されるスポーツクラブです。 子どもから高齢者まで誰もが、様々な種目に体力や技術レベルに応じて気軽に参加でき活動することを基本理念としています。 スポーツの他にも文化・社会的な活動を組み入れたり、地域を盛り上げるイベント等を実施しています。 市内では令和3年8月時点で27団体の総合型地域スポーツクラブが活動しています (オ)企業・大学 本市では、民間企業と連携した子ども向けスポーツイベントの開催や、東京2020大会を契機に多くの東京2020パートナー企業と連携しながら大会の節目をとらえた機運醸成の取組や企業の資源を活用した学校向け体験プログラムなどを展開しており、連携事例が蓄積しています。今後も企業の特徴を生かした連携が継続していけるよう、対話を重ねていきます。 市内には、体育・スポーツ関連の学部がある大学や、各競技の強豪校など、スポーツとつながりの深い大学が多くあります。 国は、第2期スポーツ基本計画において大学のスポーツ資源の活用を目標に掲げており、他都市では、大学の学生による中学校運動部活動への指導者派遣や、所有体育館をトップスポーツチームのホームアリーナとして貸し出す連携事例が蓄積されつつあります。 (カ)公益財団法人横浜市スポーツ協会 市スポーツ協会は、「いつまでもスポーツが楽しめる明るく豊かな社会の実現」を理念に掲げ、各種競技会・大会、教室、イベントなどのスポーツを実践できる場や機会の提供、インクルーシブスポーツの普及啓発、スポーツ指導者やボランティアの養成と活用、スポーツ施設の運営などを行っています。 昭和4年に前身の「横浜体育協会」が設立され、平成23年に公益財団法人化、平成24年に社団法人横浜市レクリエーション協会と事業統合し、令和2年に「横浜市体育協会」から「横浜市スポーツ協会」に改名しました。 現在、同協会には、競技団体52団体、各区スポーツ協会18団体、学校団体3団体、横浜市レクリエーション連合1団体の計74団体が加盟しています。 ウ スポーツによるまちの賑わい創出 (ア)トップスポーツチームとの連携 市内には、野球、ソフトボール、サッカー、フットサル、バスケットボール、アイスホッケー、ラグビーといった多くのトップスポーツチームがあります。本市は、令和2年10月1日に「横浜スポーツパートナーズ」を創設し、市内を活動拠点とする13のトップスポーツチームと連携・協働することで、スポーツ振興や地域活性化などにつながる取組を進めています。 令和2年度の意識調査によると、過去1年間に会場でトップスポーツの試合を観た人について、「野球・ソフトボール」は約15%、「サッカー・フットサル」「マラソン」は10%弱、その他の競技種目は5%未満となっています。また、トップスポーツチームが活動する施設において、三ツ沢公園球技場は比較的多くのチームが利用しています。 (イ)大規模スポーツ施設を核としたまちづくり 令和2年6月の市庁舎移転を契機とした関内・関外地区の更なる活性化に向けて、関内駅周辺地区の新たなまちづくりを進めています。横浜スタジアムの増築・改修、横浜文化体育館の再整備により、「スポーツ・健康」のまちづくりが進むエリアとなっています。 令和2年7月に開館した、本市として初の本格的武道場を備えた横浜武道館(サブアリーナ)、令和6年4月に開設予定の、スポーツだけでなくコンサートなどの興行利用もできるメインアリーナ、この両施設を利用して、大規模スポーツ大会も可能な施設となり、関内周辺地区のまちづくりの促進や賑わい創出の核となる役割・機能が期待されています。 また、2つのアリーナを整備する再整備事業は、経済産業省・スポーツ庁が進めるスタジアム・アリーナ改革に基づく、「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として、当該施設が全国20拠点のひとつとして選定(令和3年3月)されました。 (ウ)国際スポーツ大会及び国内大規模スポーツ大会の開催 市内には、国際スポーツ大会を開催できる横浜スタジアムや横浜国際総合競技場、横浜アリーナ、横浜国際プールなどが整備されており、東京2020大会、ラグビーワールドカップ2019™、FIVBワールドカップバレーボール2019女子横浜大会などの開催会場となりました。東京2020大会の開催にあたっては、安心・安全を最優先に、野球・ソフトボール、サッカーの各競技で全38試合が開催されました。また、英国、チュニジア共和国、ボツワナ共和国をはじめとする全12か国の事前キャンプの受け入れは、優れたスポーツ環境や受入能力の高さを伝えるとともに、宿泊環境やおもてなし、各関係団体との連携など都市の総合力を証明することとなりました。 さらに、横浜マラソンやワールドトライアスロンシリーズ横浜大会などの大規模スポーツ大会も本市主催で開催しており、市内には国内に加え国際的な大規模スポーツ大会の開催実績が豊富にあります。 (エ)スポーツの新たな楽しみ方の可能性 東京2020大会において新たな競技として採用されたスケートボード、スポーツクライミングなどのアーバンスポーツは、都会や街にある環境を利用して個人でできるエンターテイメント性の高いスポーツとして全国的に注目を集めています。 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、自宅でも気軽にスポーツに取り組むための動画配信による「する」スポーツの推進は全国各地で取り組まれています。また、ICTの技術革新の進展により、VR・ARを活用した新しいスポーツの実施及び観戦の楽しみ方が生まれています。 さらに、スポーツを媒介として国内外の人々を地域に呼び寄せて着地・周遊させるスポーツツーリズムの取組が全国的に進んでいます。自然環境を生かしたアウトドアスポーツの取組事例が多くみられる中、本市では令和2年に新設した横浜武道館を中心に武道ツーリズムを推進する環境が整いつつあります。