区長瓦版 平成29年3月 　(区長からのメッセージ)

3月5日、横浜市民防災センターで、神奈川防災セミナーを開催しました。「女性の視点で見た被災地の現実」をテーマにＮＰＯ法人かながわ女性会議の吉田洋子理事長の講演と川井眞理子氏の脚色・演出で「まりこ☆みゅーじあむ」の皆様による寸劇が披露されました。
この寸劇は、防災を考えるとともに、非常時においては男女の性差に基づく問題が顕著に出ることを皆様に知っていただき、男女共同参画社会の実現に向けて、日常的な生活の中にもその意識を持っていただくことへのねらいも込められたものです。
かながわ女性会議は、男女共同参画社会の実現を目指して、様々な地域活動や女性サポート活動とともに、「女性と防災」の視点から阪神大震災や東日本大震災等の被災地で震災を経験した人による講座やワークショップなどを各地で開催しています。そこでは、男女共同参画に直接関係がない防災関係団体に、女性の視点からの課題について分かりやすく共感を得られるように、防災寸劇の普及を目指しています。

【今までに防災寸劇を上演してきた様子】

【吉田洋子理事長の講演】

吉田氏の講演では、防災寸劇の上演に至った経緯や、そのシナリオが大学生など若い世代の共感を呼び、若い人への啓発ツールとして有効であること、自治会町内会長等の地域のリーダーに女性の比率を高めるきっかけにしたいことなどを話されました。
寸劇は、吉田氏の原作をもとに、音楽や言葉遊びのゲームを取り入れた朗読講演の活動をされている川井氏が脚色・演出して、日頃、音楽活動や演劇活動をしている芝居の経験者が「まりこ☆みゅーじあむ」のメンバーとして上演したものです。

【避難所を想定した防災寸劇の場面】

避難所を想定した場面では、援助物資の受入れ時の女性用品等への配慮や洗濯干場をめぐったトラブル、避難所運営での役割分担、赤ちゃんの夜泣き、性被害の予防のための夜警団の結成など、実際に起こり得るケースをコミカルに演じて来場者を場面に引き込みました。

【避難所での洗濯干場でのトラブルの場面】

また、日常生活の中でも働いている女性が地域のことで休暇を申請しても上司が良い顔をしない場面やマンションなどの防災対策はコミュニティづくりが必要と思わせる場面など、演劇を通じて男女共同参画社会の構築へのメッセージが伝わってきました。
災害時に外国人が戸惑う場面では、来場者も飛び入りで寸劇に参加して、コミュニティの輪には外国人、障害者等も含めた広がりが大切だと呼びかけました。

【赤ちゃんの夜泣きによるトラブルの場面】

【マンションで地震発生直後を想定した場面】

避難所や職場、マンションなどの場面で、避難所生活や防災訓練などを女性の視点からとらえた防災寸劇は、地域防災において今まで認識していなかった新たな課題に気づかせていただけたのではないかと思います。
寸劇の後にワークショップとして、防災への思いや寸劇への感想を来場者全員に2枚の色紙に掲げていただき、会場の皆様の意識の見える化をしました。さすがに来場者は、防災や男女共同参画に対して高い意識があることをうかがわせてくれました。

【ワークショップの様子】

防災科学技術研究所が全国地震動予測地図を公表しています。それによると、神奈川区に30年以内に震度6弱以上の地震が来る確率は82.4％、6強以上では31.9％となっています。30年という年数が、ややもすると危機感を薄れさせてしまいますが、一人の人が交通事故でけがをする確率を2012年データをもとに保険会社で計算した結果は、30年間で18％だそうです。交通事故は日常的なリスクとして常に意識されていると思いますが、その交通事故にあう確率より相当高いことになります。地震がいつ来るかわからないでなく、日頃から必ず来るという前提で備えをしておくことがとても大切だと思います。
今回のセミナーは、来場者にとって災害の備えの一助になったと思います。ご来場いただきました皆様、本当にありがとうございました。吉田氏、川井氏はじめ防災寸劇で迫真の演技をしていただいた皆様に心から感謝を申し上げます。

平成29年3月
神奈川区長　二宮　智美