広報よこはま神奈川区版 5・8・9ページ 2021(令和3)年 11月号 No.289 ◯特集 神奈川区のものづくり  神奈川区の工業は、1890年代以降、東京から横浜の湾岸の埋立とともに発展し、日本の経済成長に大きく貢献してきました。現在も、ものづくりは息づいています。  今回は新型コロナウイルス感染症の影響のなか、活躍している区内の中小企業のものづくりを紹介します。 〈真剣な眼差しがかっこいい〉 株式会社ムラノセイコー【三枚町】  昭和14年創業。昭和35年から三枚町に移転。「当初はこの辺りは田んぼばかりで、電気も通っていなかった」と村野 隆(むらの たかし)社長。  現在は板金・溶接等金属加工工場として、高速道路のトンネルに設置されている防災消火栓のフレームや、ランドマークタワーの屋上にも設置されている消火用の泡原液槽等を製造しています。防災用消火栓のフレームは年間1,000台以上を受注し、国内で20%以上のシェアを誇っています。  金属を丸く加工したり、圧力がかかる容器の溶接は手作業で行っています。受注生産のため、時期により生産量に波があるなか、品質と納期に応えることで、お客様の信頼を獲得し続けています。 ●わが社の社会貢献・・工場敷地内には社宅があり、地域密着。地域清掃等に積極的に参加してきました。 〈縁の下の力持ち〉 株式会社内田ボールト【新子安】  昭和8年創業。ネジ・ボルトの販売、製作を請け負っているネジの総合商社です。  京浜工業地帯に広く納品しており、1個何銭の小さなものから1個何万円もする特殊なものまで商品の種類は数えられないほど。曽我圭介(そが けいすけ)部長によると、東京ディズニーシー建設の際にも大量に納品されたそうです。また、橋や高速道路などでも使われ、私たちの生活のさまざまな場面を支えています。  事業者だけでなく、個人のお客様にもネジ1本から販売。オーダーメイドのネジも受注していて、「ネジ・ボルト類のことなら内田ボールトに相談すれば全てが揃う」そういう存在になれるように、日々ネジ・ボルトと向き合っている会社です。 ●わが社の社会貢献・・企業の成長には地域への貢献が不可欠。会社の敷地の一部を学童保育へ貸し出しています。 〈伝統の息づかいを今に〉 エス山本繊維加工有限会社【三ツ沢上町】  大正10年に横浜で創業。100年続く老舗のタオル、手拭染色製造販売の会社です。関東大震災の後、松本町に移転。昭和23年から現在の三ツ沢上町で工場を始めました。当初はアメリカへの輸出が主でしたが、その後、国内向け商品に切り替え、百貨店等で販売していました。山本昭一(やまもと しょういち)社長によると、「現在は小学校の運動会やお祭りの手拭・タオルの注文が多い」とのこと。  手作業で行う本染めを数多く製造していましたが、時代とともに移り変わり、現在は機械等を使ったプリント染めを中心にオーダーメイドの製品を製造しています。 ●わが社の社会貢献・・伝統技術を伝えるため、町の先生として区内中学校の生徒に本染めの体験を行ってきました。 〈守り続ける伝統の製法〉 岩井の胡麻油株式会社【橋本町】  岩井の胡麻油株式会社は安政4年に千葉県佐倉で創業。当初は菜種、落花生、胡麻等を製油していましたが、明治中頃より胡麻油一筋。当時から原料は輸入に頼っていたため、輸入の要所である横浜へ明治26年に本社・工場を移転し、以来120年余り神奈川区で操業しています。  「製油における焙煎(ばいせん)という工程は胡麻油特有」と岩井徹太郎(いわい てつたろう)社長は話します。胡麻原料は産地により、油分・水分・皮の厚さが違うため、「匠の技」を伝承した技術者が、その日の温度・湿度に合わせ、焙煎の温度や時間の微調整を行っています。煎(い)り上がった胡麻を耳(パリパリとした音)・目(煎り上がりの色)・舌(苦味・焦げ味)で実際に確認します。  圧搾製法にこだわり、化学的製法は一切採用していません。搾油された後も遠心分離機は使用せず2週間静置し、不純物を沈殿・分離させ、上澄みを濾過(ろか)し、不純物を完全に除去しています。手間暇は掛かりますが、その分雑味のない、風味・香味抜群の胡麻油を生産しています。 ●わが社の社会貢献・・環境活動にも力を入れており、商品はリサイクル可能な瓶かブリキ缶としています。搾油後の搾りかすは粉砕し、養鶏場で飼料となり、捨てるところがありません。 問合せ 地域振興課 電話411-7087 ファクス323-2502