78ページ 第5章 保土ケ谷区の地域福祉保健を取り巻く状況 1 高齢者 高齢化の進行  総人口は2020年代後半にかけてやや増加し、その後は減少に転じると推計されています。  2020年に26.51%だった高齢化率は、今後も上昇が続きます。  2040年には31.76%となり、65歳以上の高齢者人口が区内人口の3割を超えると見込まれています。 高齢の夫婦のみ世帯・高齢単身世帯の増加  65歳以上の高齢夫婦のみの世帯、高齢単身世帯はともに増加が続いており、区の総世帯数に占める割合は、2015年には高齢夫婦世帯が11.5%、高齢単身世帯が11.4%と、ともに10%を超えています。特に高齢単身世帯は10年前に比べて1.6倍増加しています。 要介護認定者の増加  2016年3月から2020年3月までの4年間で要介護認定者(要支援以上)が約2,000人増加しています。  自立した生活を長く続けるためには、健康づくりや介護予防が重要です。  一方、65歳以上の高齢者のうち、要介護認定を受けていない人は、全体の8割以上おり、元気な高齢者を増やし、その力を生かしていくことが大切です。 79ページ 地域包括ケアシステム  地域包括ケアシステムとは、今後、増大する介護・医療ニーズや課題に対し、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けていけるよう、介護・医療・介護予防・生活支援・住まいが一体的に提供される包括的な支援・サービス提供体制を構築することです。  地域包括ケアシステムの推進にあたっては「ほっとなまちづくり」の策定・推進を通じて築いてきた地域との信頼関係や様々な福祉保健活動といった財産を生かしながら、双方の取組を連動させて効果的に進めていく必要があります。 【重点取組分野】 @介護予防 A認知症支援 B在宅医療・介護連携 C生活支援の充実 D意思決定 [問合せ先]区高齢・障害支援課 電話 334-6328 FAX 331-6550 80ページ 2 障害者 障害者手帳所持者数と人口割合の増加  区の人口に対する障害者手帳所持者の割合は増加傾向にあり、2018年度で5.01%となっています。  身体障害者数は横ばいで推移していますが、知的障害者数、精神障害者数が増加しており、特に精神障害者数が大きく増加しています。 現在暮らしているところ  市全体では、身体障害では「自宅(配偶者やこどもと生活)」が最も多く53%、次いで「自宅(親などと生活)」が24%、「自宅(ひとり暮らし)」が14%の順となっています。  知的障害では「自宅(親などと生活)」が72%と7割以上を占め、次いで「グループホーム・ケアホーム」が12%となっています。  精神障害では「自宅(親などと生活)」が最も多く44%、次いで「自宅(配偶者やこどもと生活)」「自宅(ひとり暮らし)」がともに22%となっています。 地域とのつきあい  市全体では、身体障害では、全ての年代で「地域の友人」と回答した人の割合が高く、知的障害ではおおむね全ての年代で「福祉施設職員」と回答した人の割合が高くなっています。また、精神障害では「知り合いはいない」と回答した人の割合が他に比べて高い傾向にあるというデータもあります。 81ページ 精神障害にも対応した地域包括ケアシステム  高齢者福祉では「地域包括ケアシステム」が導入されていますが、「地域共生社会」を実現する仕組みとして、障害者や子どもの支援にも応用できると考えられています。  平成29年、厚生労働省の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において精神障害者が安心して自分らしく生活していけることを目的とした施策として「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が示されました。  こうした流れを受けて、横浜市では保土ケ谷区を含む4区において、平成30年度からモデル区としてシステムの構築に向けた取組をスタートし、様々な課題を協議する場として、区自立支援協議会の精神部会(区精神net)が発足しました。  これまでに、支援者向けの研修会や精神科病院の見学会の実施、市民向け普及啓発講座の開催、精神科に長期入院している人への退院支援などの取組を行ってきました。 【厚生労働省から示されている主な事業内容(抜粋)】 ● 保健・医療・福祉関係者による協議の場の設置 ● アウトリーチ支援に係る事業 ● 入院中の精神障害者の地域移行に係る事業   ● 普及啓発に係る事業    ほか  これからも、精神疾患・障害のある人も「保土ケ谷区に住んでいて良かった」と思えるまちづくりに取り組んでいきます。 [問合せ先]区高齢・障害支援課 電話 334-6349 FAX 331-6550 みんなの声 障害児・者支援の立場から(保土ケ谷区地域自立支援協議会) ● 障害のある人は、身近に自分のことを理解してくれている人がいると安心できるので、地域の人たちに障害への理解を進めてもらいたい。 ● 障害のある人の中には、自治会町内会やPTAの事務作業や防災訓練の準備、イベントの資材運びなどの力仕事ができる人がいるので、活動の力になりたい。 ● 日中の災害などの際は、施設にいる障害のある人たちが、地域の力になれる。 みんなの声 障害当事者の立場から(区社会福祉協議会当事者部会) ● 地域で暮らしていくために、障害のことを地域の人たちに正しく理解してもらいたい。 ● 情報が入りづらかったり、移動がしづらかったりすることがある。 様々な障害に配慮をしてもらいたい。 82ページ このような状況も…  高齢者を狙った悪徳商法や障害者に対する財産搾取、虐待など、重大な権利侵害の事例が増加しています。  また、少子化・高齢化、単身世帯の増加などにより、高齢者・障害者を地域で支える権利擁護のニーズが増加しています。 成年後見制度  成年後見制度は、認知症の人、知的障害のある人、精神障害のある人などが安心して生活できるように保護し、支援する制度です。  法的に権限を与えられた後見人などが、本人の意思を尊重しながら、財産管理や契約、生活上の手続きの支援などを行います。 たとえばこんな時に利用できる制度です 悪徳商法の被害に遭いそう・・ 言われるがままに契約をしてしまった、 キャンセルができない・・ 金銭の管理ができない・・ 必要な支払いをする、手続きをするなどが難しい・・ 身寄りがなく将来が心配 一人暮らしで子どももいない。親族との付き合いもない。親・きょうだいは既に他界。今後が心配・・ 親亡き後が心配 障害のある子どもの将来が心配・・  このような状況にいち早く気付くためには、身近にいる地域の方々の見守りが欠かせません。 地域の方、家族、専門職で協力して、安心して地域で生活ができることを目指しています。 [問合せ先]区高齢・障害支援課 電話 334-6328 FAX 331-6550 83ページ 3 子ども・若者 合計特殊出生率の推移  合計特殊出生率は、全国、横浜市に比べて低くなっています。  2016年まで上昇傾向でしたが、その後下降傾向にあります。 虐待対応件数の推移  市全体では、年々、児童虐待(疑いを含む)に係る通告・相談に対する対応件数が増加しています。 保土ケ谷区子育てアンケート 調査時期:平成29年4月〜7月   調査対象:生後4か月〜3歳児の子育て中の区民 調査方法:乳幼児健康診査(4か月児・1歳6か月児・3歳児)対象者への郵送によるアンケート形式 回 答 数:2,215(回答率79.4%) 孤立していると感じることはありますか どちらかというと感じる 335人 16.6% よく感じる 59人 2.9% 感じたことはない 807人 39.9% どちらかというとあまり感じない 821人 40.6% →どんな時に? ● 子どもとずっと家で過ごしているとき ● 子どもの入浴や寝かしつけをしているとき ● ママたちの集まりに入っていけないとき ● 地域に知っている人がいないとき ● パパが話を聴いてくれないとき ● 身近に相談する人がいないとき  約2割の人が孤立を感じています。長い時間家の中で子どもと過ごしていたり、周囲に話せる人がいないときに、その気持ちは生じやすいとの回答がありました。 84ページ 子育てについて身近な地域の方に何を期待しますか 温かく見守ってほしい 1,697人 79.9% 災害時に助けてほしい 992人 46.7% 安全に遊べる場を提供してほしい 678人 31.9% 会ったら声をかけてほしい 673人 31.7%  最も多かった「温かく見守ってほしい」は、子育て中の人の約8割が回答しています。また、「災害時に助けてほしい」との回答も4割以上ありました。 ほっとなまちづくり子どもアンケート 調査時期:令和元年11月   調査対象:おおむね12歳以下の子ども 調査方法:保土ケ谷区内の地域ケアプラザのイベント(3か所)に来場した対象者に、アンケートパネルに      シールを貼ってもらう。 回 答 数:合計174人 あなたは、自分の暮らすまちでどんなことをやりたいですか(最大2つ選択) お祭りなどのイベントに行くこと 6歳以下 31人 7〜9歳 25人 10歳以上 26人 みんなでスポーツをすること 6歳以下 12人 7〜9歳 27人 10歳以上 23人  お店のお手伝いをすること 6歳以下 5人 7〜9歳 11人 10歳以上 7人  障害のある人のお手伝いをすること 6歳以下 3人 7〜9歳 6人 10歳以上 7人  畑で野菜を育てること 6歳以下 5人 7〜9歳 10人 10歳以上 8人 お年寄りの人のお手伝いをすること 6歳以下 4人 7〜9歳 1人 10歳以上 4人 この中には一つもない 6歳以下 3人 7〜9歳 1人 10歳以上 2人 病気の人のお手伝いをすること 6歳以下 1人 7〜9歳 1人 10歳以上 1人 ・最も回答が多かったのは、「お祭りなどのイベントに行くこと」で、次いで「みんなでスポーツをすること」でした。 ・「障害のある人のお手伝いをすること」という回答は16人、「お年寄りの人のお手伝いをすること」という回答は9人でした。 85ページ 子育て支援連絡会  身近な場所で安心して子育てができる地域づくりを目指して、情報共有や課題の解決に向けた検討をしています。区役所、地域子育て支援拠点こっころ、区社会福祉協議会、育児支援センター園を事務局に子育ての関係団体・機関などが参加しています。 [問合せ先]区こども家庭支援課 電話 334-6323 FAX 333-6309 児童虐待防止連絡会  支援が必要な家庭を地域で支えていくために、関係機関が集まり、連携して子どもを見守るための情報交換などを行っています。区役所、民生委員・児童委員、主任児童委員、地域子育て支援拠点、学校、病院、医師会、警察、児童相談所などが参加しています。 [問合せ先]区こども家庭支援課 電話 334-6396 FAX 333-6309 みんなの声 青少年・若者支援の立場から(よこはま西部ユースプラザ※) ※若者の社会参加支援、総合相談窓口 ● 不登校やひきこもりに関する相談が非常に多くなっている。 ● 所属先だけでなく、地域社会とのつながりが適切にあることが大切。 ● 本当に困ったときに困ったと言える環境が地域にあることが、孤立を生まない。 ● 知っている誰かからの声かけも重要。 ● 地域とのつながりは簡単に持てないので、小さい頃から、 ● 地域の一員であり、地域の担い手としての「出番」があることが大切。 みんなの声 国大ワークショップ※に参加する横浜国立大学の学生から ※横浜国立大学建築計画研究室、常盤台地域ケアプラザ、地域住民が一緒に地域の高齢化に対応する課題を考える「常盤台地域ケアプラザを契機とした老後も住み続けられるまちづくりワークショップ」(通称「国大ワークショップ」)。 ● 地域の方と触れ合うことが増え、地域の方が挨拶をしてくれるようになったりすると、まちを見る目が変わる。 ● このワークショップの、地域を良くするという目的は、学生も地域の方々も同じ。 ● 地域の方とは異なる立場である学生として何ができるか、それに価値を感じ、それをどう分かってもらえるかが大事だと思う。 ● 地域の方々は身近に感じられる。頼りにしてくれていることが伝わってくるから、こちらも頼りにできる。 86ページ 4 外国にルーツのある人 外国人数の増加  外国人数は2011年の4,248人から2020年には5,862人と10年間で1,614人増加し、区内人口に占める割合は2.87%となっています。 国籍別外国人数  <国籍別の割合> 総計 5,862人 中国 2,320人 39.6% 韓国 631人 10.8% ベトナム 480人 8.2% フィリピン 468人 8.0% ネパール 406人 6.9% インド 294人 5.0% 台湾 144人 2.5% タイ 96人 1.6% 米国 96人 1.6% その他 927人 15.8% (出典:「住民基本台帳に記載された外国人の人口」令和2年3月末時点) みんなの声 外国にルーツのある人への支援者の立場から(ほどがや国際交流ラウンジ※) ※多言語による生活情報の提供、相談 ● 外国にルーツのある人は、日本語がわからない場合や、近所づきあいがない場合には、情報が入りにくい様子。地震や水害などの経験がない人も多い。 ● 非常時に備えて、地域と、外国にルーツのある人とがお互いに知り合っておくことが大事。 87ページ 他にも…  地域では人と人とのつながりが希薄化しており、地域から孤立して生活している人がいます。  また、そうした孤立を背景として、経済的な問題、健康問題、育児や介護など、同時に複数の困りごとを抱えたままの人もいます。  このような状況は、一部の人に起きることではなく、誰にでも起こりうる問題です。 生活困窮者自立支援制度  平成27年4月に施行された生活困窮者自立支援法に基づき、生活の困りごとや不安を抱えている人に、自立に向けた支援をしていきます。支援員が、相談を受けて、どのような支援が必要かを一緒に考え、寄り添いながら、支援計画をつくり、問題に対応します。 ● 就労自立促進事業 自立相談支援員による情報提供・助言、ハローワークとの連携 ● 家計相談支援事業 収支のバランスなど家計のやりくりの見直し、債務の状況の整理 ● 住居確保給付金 離職や廃業などで住居を失った人、失うおそれの高い人へ住宅費の支給(要件あり) ● 一時生活支援事業 住居を持たない人に、一定期間の宿泊場所の提供  その他、学習支援、就労訓練事業など、様々な制度・機関などを活用した支援を行います。 [問合せ先]区生活支援課 電話 334-6266 FAX 334-6030 ゲートキーパー  ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る人のことで、言わば、「命の門番」とも位置付けられる人のことです。悩んでいる人は、誰にも打ち明けられず、周囲から孤立し、追いつめられている場合があります。  まずは、周囲にいる人が、その人の発しているサインに気付き、声をかけることが大切です。それは、特別な役割ではなく、誰でも普段自然にしていることです。難しく考えず、少し意識をすることで、一人でも多くの方が専門性の有無に関わらず、それぞれの立場でできることから進んで行動を起こしていくことが、大切な人を支援することにつながります。  「ゲートキーパー」には資格は必要ありませんが、意識向上のために適宜研修を行っており、保土ケ谷区では、平成27年度から令和元年度の5年間で、612人が研修を受講しています。 [問合せ先]区高齢・障害支援課 電話 334-6349 FAX 331-6550 88ページ 5 健康 特定健診の受診率  特定健診※の受診率は近年約20%程度で、対象となる人の5人に4人は未受診です。 ※主に生活習慣病を予防改善するための健診  生活習慣を改善することで、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」などの予防につながる場合があります。日ごろから運動や食事などに気を付けることが重要です。定期的な健診では、身体の状態を確認でき、異常の早期発見につながります。 生活習慣改善の大切さ  悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が原因で亡くなる人の割合が多いです。 <平成30年死因別割合> 悪性新生物(がん) 28.9% 心疾患 13.8% 老衰 10.4% 脳血管疾患 7.7% その他 39.2% (出典:横浜市統計書) 乳幼児のむし歯  令和元年度、乳幼児健診で確認した3歳児のむし歯罹患率は、9.75%です。以前よりも、罹患率は減少していますが、横浜市の平均よりも高い状況が続いています。 89ページ 6 災害 災害時、隣近所など地域に期待すること  「消火・救出活動などの助け合い」は70%以上、「食事などの持ち寄り」「要援護者の支援」は半数近くが期待すると回答しています。  隣近所に災害時の助けあいを期待する割合は、総じて高い状況です。  <災害時に隣近所に期待すること> 消火、救助活動などの助け合い 74.9% 食事などの持ち寄り 51.5% 要援護者の支援 47.1% 特に期待していない 11.7% その他 2.1% 無回答 3.8% (出典:保土ケ谷区 防災・地域福祉保健アンケート(令和元年度)) 災害時要援護者支援のための取組  見守り活動や情報共有などを通して、自治会町内会による災害時要援護者支援の取組が進められています。 災害時要援護者支援事業  地域には、自力で避難することが困難な「災害時要援護者」の人も暮らしています。  その中でも、要介護状態の高齢者や障害のある人の情報について、あらかじめ自治会町内会が把握して、速やかな安否確認や避難支援ができるように、希望する自治会町内会と区役所が協定を締結し、対象者に名簿提供の同意確認を行った上で、名簿を提供する制度があります。  また、自治会町内会では、日ごろからの声かけなど関係づくりを行い、発災時に備える活動を行っています。  引き続き、災害時要援護者支援の取組が更に広がるように進めていきます。 [問合せ先]区福祉保健課 電話 334-6311 FAX 333-6309