2ページ 第1章 保土ケ谷ほっとなまちづくりとは 1 保土ケ谷ほっとなまちづくりの概要 (1)はじめに  少子化・高齢化が進み、夫婦のみの世帯や単身世帯が増えており、自分や家族だけでは解決できない困りごとも見られます。また、核家族化が進むなど、地域を取り巻く状況も大きく変化し、「地域のつながりが少なくなった」「家族に相談できる人がいない」「異変に気付く人がいない」という声も聞かれます。  このような中、福祉・保健のほか、防災防犯、祭りなどの行事をはじめとする地域の活動に幅広く取り組んでいくことも含めて、みんなで「つながり支えあい 安心していきいきと暮らせるまち」にするための計画が「保土ケ谷区地域福祉保健計画」(愛称:保土ケ谷ほっとなまちづくり)です。  平成18年度(2006年度)に策定した「第1期保土ケ谷ほっとなまちづくり」以降、区民の皆さん、関係団体・機関、地域ケアプラザ・区社会福祉協議会・区役所などが共通の目標を持って取組を進め、支えあいの輪を広げてきました。  令和3年度からスタートする「第4期保土ケ谷ほっとなまちづくり」でも、引き続き、それぞれができることを生かしながら、協力して、みんなで暮らしやすいまちをつくっていきます。  “ほっと”には、人の温かさやまちの活力を表す「ホット(HOT)」で、安心して暮らせる「ほっとする」まちをつくろう、という意味が込められています。もちろん保土ケ谷の「ほど」にもかかっています。 3ページ (2)計画の構成  横浜市には「横浜市地域福祉保健計画」があります。区計画は、18区ごとの特性に応じた「区全域計画」と、地区ごとの状況に応じた「地区別計画」で構成されています。 (社会福祉法第107条に、地域福祉の推進に関する事項を定める「市町村地域福祉計画」が位置づけられています。) 市計画 基本理念と方向性を示し、区全域計画の推進を支援する計画(愛称:よこはま笑顔プラン)。 区計画(保土ケ谷ほっとなまちづくり) 区全域計画 区全体の方針や取組の方向性を示し、地区別の活動を支えるとともに、区全域を見据え、地区をまたぐ課題に取り組む計画。 地区別計画 地区社会福祉協議会のエリアを単位としている、最も生活に身近な計画。地区の状況に応じ、地域のつながり・支えあいを生かして住民主体で取り組む計画。  保土ケ谷区社会福祉協議会では、区内の福祉関係団体や地域住民と共に地域の課題を自分たちの課題として、その解決に向けた取組を計画的・効果的に進めるために「保土ケ谷区地域福祉活動計画」を策定してきました。保土ケ谷区では、平成23年度から地域福祉保健計画と地域福祉活動計画を一体化し、策定・推進を行っています。 第1期計画 平成18〜22年度 第2期計画 平成23〜27年度 第3期計画 平成28〜令和2年度 第4期計画 令和3〜7年度 第5期計画 令和8〜12年度 保土ケ谷ほっとなまちづくりは、5年ごとに見直しながら進めていきます。 地区社会福祉協議会(地区社協)   地域住民に最も身近な社会福祉協議会として、地域の方々が「自分の地域は自分たちで良くしていこう」という気持ちで組織する任意の団体です。 メンバー 自治会町内会、民生委員・児童委員、主任児童委員、保健活動推進員、 食生活等改善推進員(ヘルスメイト)、青少年指導員、スポーツ推進委員、 ボランティア、老人クラブ、区民会議、子ども会、学校、福祉施設など、様々な人々 活動内容 ・集まった団体などのメンバーと連携し、共通の目標を持ちながら地域内の福祉活動の支援・調整を図る ・地域の特性を生かした福祉活動を実施する 4ページ 2 第3期保土ケ谷ほっとなまちづくりの振り返り  第3期計画では「つながり支えあい 安心していきいきと暮らせるまち ほどがや」を基本理念とし、3つのテーマ「見守り・支えあい」「いきいき健康」「担い手づくり・情報」に沿って、取組を進めてきました。併せて「地域のみんなを対象に/地域のみんなで進めよう」という視点も大切にしてきました。 (1)取り組まれてきたこと ・地域住民が気軽に集えるサロン、みんなの食堂(地域食堂/子ども食堂)などの居場所づくりが多くの地区で進められました。 ・一人暮らしの高齢者などのちょっとした生活の困りごとを、地域住民のボランティアが支援する取組が広がり始めました。 ・障害理解のための福祉教育や施設見学、障害のある人や支援者からのメッセージ発信が行われました。 ・フードドライブや食材提供の協定などを通じて、多くの区民や企業が、生活に困っている人への食料支援に参加できる環境づくりが進みました。 ・健康をテーマにした居場所づくりやウォーキングなど、身近な場所での健康づくり・介護予防の場が増え、外出の機会や仲間づくりにもつながりました。 ・イベントの場の活用、関心を持ちやすいように工夫したリーフレットや動画による健康啓発を行いました。 ・住民アンケートをきっかけに、趣味や特技を生かした地域活動が始まった地区もありました。 ・ホームページやブログ、SNS※を活用した情報発信や、紙媒体に二次元コードを付けてインターネット上の情報にアクセスしやすくする工夫が行われました。 ※登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービスのこと(Social Networking Service) さらに第3期計画を振り返る中では地域の方々からこのような声も聞かれました ・ほっとなまちづくりは「誰かがやってくれる」ではなく「保土ケ谷区に関わるあなたにも参加してほしい」が大事。 ・障害のある方の声や意見を聞く機会、一緒に活動する機会を設ける視点をもっと持ってほしい。 ・ほっとなまちづくりは、限られた人々の計画ではないので、より多くの人々が関われるようにしたい。 5ページ (2)社会状況の変化 ・令和2年初めから日本でも広がり始めた新型コロナウイルス感染症により、多くの地域活動が休止となりました。コミュニケーションの機会が減ることで孤立や不安を感じ、外出の機会を失うことによる運動不足で身体機能が低下するなど、人々の生活や地域活動に大きな影響を与えました。 そのような中でも、地域で活動されてきた方々は、新しい生活様式に適応しながら、会う方法や離れていてもコミュニケーションを取る方法を工夫し、つながりが途絶えないようにしてきました。また、働き世代の中には、在宅勤務などにより、自分の住む地域で過ごす時間が増えた人もいます。 ・保土ケ谷区の総人口は2027年にピークを迎えますが、その後は減少に転じる見込みです。さらに、生産年齢人口(15歳〜64歳)はすでに減少が始まっており、将来にわたり減少し続けていくことが予想されます。 ・現在、保土ケ谷区の高齢化率は26.4%(2020年9月末時点)で、2040年は31.8%となる見込みです。また、2025年に団塊の世代が75歳を迎えることにより、75歳以上の割合が拡大することが予想されます。さらに、高齢者人口の増加に伴い、要介護認定者数、認知症高齢者数も増加する見込みです。加えて、高齢夫婦のみの世帯や高齢単身世帯が増加しており、地域での支援が必要な高齢者は増加すると考えられます。 ・支援が必要な高齢者の増加や、保険制度の改革などにより、支援が必要な人の生活は、施設入所や入院による対応から、地域での生活が中心となっていきます。それに伴い、病気や障害があっても、また、高齢になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けていくための施策が進められています。 →地域包括ケアシステム(79ページ)、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(81ページ) ・近隣との関係性が希薄化しており、地域からの孤立や、それを背景として深刻化・複雑化した課題を抱えた人は、今後増えていくと考えられます。こうした、地域にある課題は高齢者だけのことではありません。児童虐待、生活困窮、ひきこもり、いわゆる「8050問題」※など、多世代にわたる複合的な課題が増えてきています。 →成年後見制度(82ページ)、生活困窮者自立支援制度(87ページ) ※おおむね80代の親がひきこもり状態にある50代の子を支えることで、親の介護の問題なども含めて課題が多様化・複雑化してしまう、新たな社会問題 6ページ (3)第4期計画へ引き継ぐこと ・地域の支えあいの基盤となる人と人とのつながりは重要であることから、新しい生活様式を踏まえ、感染症予防をしながら様々なつながり方を検討し、まちづくりを継続していくことが必要です。様々な選択肢を持つことで、幅広い層の参加のきっかけとなることも期待できます。 また、不安を感じる時だからこそ、改めて「つながり・支えあい」の大切さを見つめ直し、様々な手法を取り入れ、孤立を生まないための取組を、より一層進めていく必要があります。 ・社会状況の変化を見ると、地域で支援を必要とする人は増え、その課題も複雑化する一方、人口減少や少子化・高齢化により、支える側の担い手不足が見込まれます。地域での生活を支えるための施策を進めるとともに、病気や障害があっても、高齢になっても、一人ひとりが自分や他の人のためにできることを見つけ、お互いさまで助けあうことが必要です。 ・第3期計画で取り組まれてきたことを更に進め、また、社会状況の変化に対応するためには、地域の課題を我が事として捉え、ほっとなまちづくりに関わる人を更に増やしていく必要があります。 ・第4期計画は、これまで以上に、様々な立場の人の意見を聞き、策定しました。計画の推進にあたっても、より多くの人がまちづくりに関わる機会をつくることが重要です。  第4期計画では、第3期計画から継承する基本理念に立ち返り、改めて「つながり・支えあい」の大切さを見つめ直し、みんなで取組の輪を広げていきます。  幅広い層の参加や様々な主体の連携を更に進めていくために、「地域のみんなを対象に/地域のみんなで進めよう」の視点をより一層大切にしていきます。 7ページ コラム 新しい生活様式の中での取組  地域では、住民同士のつながりづくりや見守り・支えあいの取組を積極的に進めてきましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、新しい生活様式に沿った対応を行うことにより、従来と同じ方法では実施できない状況となりました。  そのような中、これまでの取組の目的をもう一度見つめ直し、地域のつながりを途切れさせないために、様々な工夫をしながら、活動を再開した団体もあります。  新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、試行錯誤で編み出された様々な工夫は、これまで地域とのつながりを持ちにくかった人ともつながれる、新たな方法になる可能性も秘めています。 地域活動の展開事例 地域のつながりを途絶えさせないために… 見守りに関する取組での工夫 ・玄関先で距離を保った訪問 ・電話やメールでの安否確認 ・手紙などのポスティング など 集いの場に関する取組での工夫 ・人数制限や2部制にするなど、少人数での開催 ・時間短縮や飲食を伴わない形式での開催 ・換気ができる場所や屋外での開催 ・集いの場に参加できない人も、情報のやり取りや話ができる方法の確保 など 健康づくりに関する取組での工夫 ・自宅でできる体操の動画配信 ・少人数での体操やウォーキング ・心の健康づくり(誰かと定期的に連絡ができる環境、家庭や 身近な仲間の中で役割を持ち続けること)など 情報共有の取組での工夫 ・SNSを活用した情報の発信や相互の情報交換 ・オンラインでの会議 誰かとつながっていると感じられて安心! 地域ケアプラザ・区社会福祉協議会・区役所は、 ・わかりやすい工夫や先進的な取組を、地域や関係団体に情報提供します。 ・インターネットを使ったコミュニケーションなど、新たなつながり方の工夫を支援します。 8ページ 3 第4期保土ケ谷ほっとなまちづくりの考え方 (1)全体図 基本理念 つながり支えあい 安心していきいきと暮らせるまち ほどがや 〈3つのテーマ〉 見守り・支えあい 地域に住むすべての人が孤立せず自然な見守り・支えあいがあるまち いきいき健康 仲間とともに楽しみながら健康づくりを続けられるまち 担い手づくり・情報 いろいろな世代のより多くの人が できることを できる時に できる範囲で活動しているまち 必要な人に必要な情報が届いているまち 大切にする視点 地域のみんなを対象に / 地域のみんなで進めよう 区全域計画 区全体の方針や取組の方向性を示し、地区別の活動を支えるとともに、区全域を見据え、地区をまたぐ課題に取り組む計画。 地区別計画 地区社会福祉協議会のエリアを単位としている、最も生活に身近な計画。地区の状況に応じ、地域のつながり・支えあいを生かして住民主体で取り組む計画。 (2)基本理念と3つのテーマの継承  第3期計画の振り返りを踏まえ、第3期計画の基本理念は引き続き目指すまちの姿であることから、基本理念と3つのテーマを継承します。 基本理念 つながり支えあい 安心していきいきと暮らせるまち ほどがや 3つのテーマ 見守り・支えあい いきいき健康 担い手づくり・情報  3つのテーマに沿った取組を進めて、基本理念の実現を目指します。  身近な地域のつながりがあるからこそ、気付けることがあり、ほっとなまちづくりの様々な取組はどれも「つながり・支えあい」が出発点という想いが基本理念には込められています。 9ページ (3)3つのテーマの関連性  1つのテーマが充実することで、他のテーマの取組も進んでいきます。また、「担い手づくり・情報」は他の2つのテーマを支える共通の土台となります。  例えば、 ・見守りや支えあいを目的に立ち上がった集いの場でも、健康をテーマにした内容を取り入れている。 ・健康づくりを目的とした活動が参加者同士の見守りにつながっている。 ・担い手募集や情報発信を工夫することによって、「見守り・支えあい」「いきいき健康」の取組も充実する。 など  このことから、3つのテーマは連動することを意識して取組を進めます。 (4)大切にする視点  少子化・高齢化などによる影響、地域のつながりの希薄化が課題となっています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による孤立化の進行が懸念され、「つながり・支えあい」の必要性はさらに高まっています。つながり支えあい、安心していきいきと暮らしていくためには、地域のみんなを対象に、みんなで進めていくことが大切です。 大切にする視点 地域のみんなを対象に / 地域のみんなで進めよう 子どもや若い世代も、高齢の人も 子育てや介護、仕事に忙しい人も 病気や障害がある人もない人も 支援が届かないまま様々な生活課題を抱えている人も 外国にルーツのある人も 保土ケ谷区に住み始めて間もない人も長く住んでいる人も 保土ケ谷区で働いている人、学校などに通って来ている人も 施設・法人・企業・事業所なども みんなを対象に みんなで進めよう