令和5年度 横浜市予算 あなたと創る横浜の財政 はじめに みなさんは「財政」と聞いて、どんなイメージを浮かべますか? きっと、難しい、数字ばっかり、自分には関係ない、ワクワクしない、親近感が湧かない、自分ごととして捉えられない、共感できないといった感じではないでしょうか。 こうしたイメージを払拭するために、この広報物を作りました。 令和5年度予算を題材に、本市の財政について、一緒に考えてみませんか。 あなたと創る横浜の財政のコンセプト 財政は、普段の生活にはあまり馴染みがないことから、「自分ごと」として捉えにくく、難しいイメージがあると思います。そんな財政について、市⺠のみなさまの視点に立った「わかりやすい」広報を展開していくという行政の心構えを示すとともに、本市財政の現状と将来像を共有し、やがて協働・共創につなげ、市⺠のみなさまと共に「より良い市政」を⽬指していくという思いを、「あなたと創る横浜の財政」というタイトルに込めました。本資料をご覧いただき、本市財政へのご理解を深めていただくだけでなく、身近な方へ市政への共感の輪を拡げていただけると幸いです。 財政って、なに? 財政は生活に身近なものです。 例えば、道路や公園などの整備、学校や病院の運営、保育・福祉サービスの提供、ゴミ処理、消防・救急サービスの提供、地区センターや図書館の運営など、税金を使って、わたしたち一人ひとりの生活をより豊かにしていく営みです。 横浜市の予算(令和5年度) 令和5年度予算の特徴 令和5年度は、「中期計画」、「財政ビジョン」、「行政運営の基本方針」という3つの方針に基づく市政運営の実質的なスタートの年です。次世代を育み、明日をひらく横浜に向けた好循環を生み出す最初の一歩を踏み出す予算です。 「横浜市中期計画2022~2025」に掲げた、基本戦略「子育てしたいまち 次世代を共に育むまち ヨコハマ」を軸に、魅力ある横浜に向けた力強い政策の推進と、創造と転換による持続可能な市政運営へのシフトの両輪で、未来への好循環をつくります。基本戦略を構成する5つのテーマに対して、2つの特徴で予算を編成しました。 令和5年度の主な取組 テーマ01 子育て世代への直接支援 小児医療費助成の拡充 中学校3年生までの医療費を無料化(令和5年8月開始予定) 111億5,600万円 出産費用に関する調査 出産費用の実態把握に向け、調査・研究を実施 1,500万円 はじめてのおあずかり券、子サポdeあずかりおためし券 気軽に子どもを預けられるように無料クーポンを配布 4億1,300万円 すべての生徒が満足できる中学校給食の実現 中学校給食の推進や魅力発信、令和8年度からの全員給食に向けた準備を実施 58億2,800万円 子育てのDX化 手続きのオンライン化等による利便性の向上 5億5,900万円 テーマ02 コミュニティ・生活環境づくり 新たな図書館像の策定 「横浜市立図書館の目指す姿」や未来の図書館に向けて、図書館ビジョン(仮称)を策定 4,500万円 通学路の交通安全対策 自動車の速度などのビッグデータ等を活用し、交通安全対策を実施 12億6,500万円 地域防犯活動への支援 地域防犯カメラ設置費用補助件数を大幅に増加(令和4年度:100台⇒令和5年度:150台) 4,300万円 テーマ03 生産年齢人口流入による経済活性化 子育て住まいサポート 子育て世代の省エネ住宅への住替えなどを支援 1億8,600万円 地域の総合的な移動サービスの検討調査 敬老パス制度も含め、持続可能な地域の総合的な移動サービスを検討 2億6,400万円 「都市づくり戦略」の策定 魅力あるまちづくりにつながる戦略を策定 2,800万円 テーマ04 まちの魅力・ブランド力向上 動物園の充実(野毛山動物園リニューアル)リニューアルプランを策定し、ふれあいの場や休憩施設などを先行整備 3億3,500万円 2027年国際園芸博覧会の開催に向けた取組 機運醸成元年として戦略的な広報PR等を展開 7億4,400万円 安全・安心で快適な公園整備 遊具等の改修・更新を拡充(令和4年度:50公園⇒令和5年度:80公園)154億4,800万円 テーマ05 都市の持続可能性 脱炭素ライフスタイルの浸透 学校で活用しやすいデジタルコンテンツを作成し、子どもたちの学びにつなげる 8,300万円 カーボンニュートラルポートの形成促進 本牧ふ頭に船舶のCO2排出を削減する陸上電力供給設備を整備 2億1,000万円 各会計の予算規模 予算とは、1年間の収入と支出の見積りです。横浜市の予算は、使いみちや収入源の違いから、3つのグループ(会計)に分かれています。 横浜市の予算 全会計 3兆8,008億円 対前年度0.2%減 ※全会計とは、一般会計・特別会計・公営企業会計を合わせた総称 純計 3兆1,050億円 対前年度1.8%減 ※純計とは、会計間でやり取りする重複部分を除いた全会計の予算額 一般会計 1兆9,022億円 対前年度3.7%減 一般会計とは、福祉、医療、教育や、道路・公園の整備など基礎的な行政サービスを行う会計です。市税は主に、この一般会計に使われています。 (注)一般会計の主な減要因は、過年度融資実績の減による中小企業融資の減(748億円減) 特別会計 1兆3,068億円 対前年度4.7%増 特別会計とは、特定の事業を特定の収入によって行い、その収支を明確にするために⼀般会計から独立させた会計です。横浜市には16の特別会計があります。 国民健康保険事業費 3,230億円 介護保険事業費 3,287億円 後期高齢者医療事業費 918億円 港湾整備事業費 296億円 中央卸売市場費 58億円 中央と畜場費 37億円 母子父子寡婦福祉資金 5億円 勤労者福祉共済事業費 6億円 公害被害者救済事業費 0.4億円 市街地開発事業費 178億円 自動車駐車場事業費 4億円 新墓園事業費 14億円 風力発電事業費 1億円 みどり保全創造事業費 126億円 公共事業用地費 63億円 市債金 4,846億円 公営企業会計 5,919億円 対前年度1.3%増 公営企業会計とは、地下鉄、バス、水道、病院など、民間企業と同じように、事業で収益を上げて、運営している会計です。横浜市には、7つの公営企業会計があります。 下水道事業 2,484億円 埋立事業 276億円 水道事業 1,361億円 工業用水道事業 63億円 自動車事業 245億円 高速鉄道事業 976億円 病院事業 513億円 予算はどうやって決めているの? 予算は、市長が予算案をつくり、議会で審議されて決まります。 予算編成方針等の決定 予算編成方針等の公表(9月頃) 予算案の作成・提出 予算案の公表(1~2月頃) 議会での審議・議決 第1回定例会(2~3月頃) 以上を経て、予算が成立します。 一般会計の収入 収入合計 1兆9,022億円 内訳 市税 8,619億円 45.3% 市内にお住まいの個人や市内に事業所がある法人が納める市民税や、土地や家屋などを持っている方に納めていただく固定資産税など、市民のみなさまにご負担いただくお金 地方交付税 330億円 1.7% 地域ごとの状況の違いによって生じる地方税収の差などを調整するため、国から財源が足りない地方公共団体に交付されるお金 県税交付金 1,268億円 6.7% いったん県税として徴収してから県内市町村に配分されるお金 国・県支出金 5,125億円 26.9% 特定の事業に対して、国・県から使いみちを指定して交付されるお金 繰入金 370億円 2.0% 基金の取り崩しなどにより繰り入れるお金 ※減債基金からの繰入金170億円を含む その他 2,162億円 11.4% 市債 1,148億円 6.0% 長い間利用される市の施設を作るためなどに借り入れるお金 ・うち建設地方債 1,028億円 道路や公園、市民利用施設などの整備のために借り入れるお金 ・うち臨時財政対策債 120億円 国が地方交付税として配るお金で足りない分を、市が代わりに借り入れるお金(返済のためのお金は、将来の地方交付税の計算に加算されて交付されることになっています) 横浜市のふところ(財政)は厳しいの? 横浜市は、これまで市債(借入金)残高を縮減し、将来世代の負担を減らしてきました。 一方で、高齢化の進展等により支出が増加するなかで、税収は伸び悩み、毎年度の収支差(支出に対する収入の不足額)は拡大していくことが見込まれています。 こうした中でも市民サービスを維持するため、近年では、将来の市債の償還に備えている減債基金から前借りしており、財政運営は、持続的ではなく、厳しい状況であると言えます。 今後、人口減少や高齢化の進展により、更に財政状況は厳しくなることが見込まれることから、横浜市では4年6月に、中長期の財政方針である「財政ビジョン」を策定し、市債残高を適切に管理するとともに、減債基金に頼らない持続的な財政運営に向けて取り組みを進めています。 5年度予算では、財政ビジョンに基づき、「減債基金の臨時的な活用」を段階的に縮減(R4:200億円⇒R5:170億円)するとともに、市民生活や市内経済への影響も考慮しながら「創造・転換」による財源創出に取り組むなど、着実に歩みを進めています。 ふるさと納税の取組を強化します! ふるさと納税制度の利用が全国的に広がるなか、「更なる寄附金の確保」と「市内事業者支援」、「市の魅力PR」を目的に掲げ、より多くの方々に制度を通じて横浜市を応援していただけるよう、取組を強化します。 5年度は、関連業務を委託して、市としてより注力できる体制とし、民間のノウハウやネットワークを活用することで、①返礼品の拡充(市内産品、体験型)②広報の強化③ポータルサイトの複数化などを行うとともに、返礼品を提供する市内事業者の利便性向上も図ります。 あわせて、ふるさと納税による本市税収影響額(5年度見込:269億円)は毎年全国最多であり規模が一層拡大していることから、本来の趣旨に沿った制度となるよう、国への税制改正要望等を粘り強く行います。 ・5年度受入額(目標):6億円 ・4年度予算額:4億円 【中期計画における目標値】 ・7年度受入額:20億円 一般会計の支出(性質別) 支出合計 1兆9,022億円 内訳 人件費 3,680億円 19.3% 職員の給料や、退職金などの費用 扶助費 5,745億円 30.2% 児童手当、生活保護、保育所・幼稚園などの運営、医療費の援助などの費用 公債費 1,777億円 9.3% 過去の借入金の返済のための費用 行政運営費 3,749億円 19.8% 市民利用施設の運営や市民サービス、中小企業への融資などのほか、庁舎の管理や事務に必要な費用 施設等整備費 1,985億円 10.4% 市民利用施設・道路・公園などの整備や維持修繕、耐震化などに必要な費用 繰出金 2,086億円 11.0% 一般会計から、一定のルールにより特別会計・公営企業会計に支出する費用 一般的に、人件費・扶助費・公債費の3つの合計を指す義務的経費は1兆1,202億円 58.8%です。 施策・事業の「創造・転換」に着手しています! 5年度予算では、 ・子ども達や将来市民に負担を先送りしない、持続可能な市政運営の実現に向けた行政サービスの最適化 ・「創造・転換」による歳出改革、「決算重視」からの事業費削減等、収支不足額の解消や、必要な施策・事業のための財源創出 に向けて、「令和5年度予算編成における歳出改革基本方針」に則りつつ、市民生活や市内経済への影響を考慮しながら、歳出・歳入の両面からしっかりと取り組みました。 5年度予算編成における財源創出は、1,235件、232億円(市債+一般財源ベース)です。 時代の変化や多様化・複雑化する市民ニーズに最もふさわしい行政サービスを提供していくため、意識改革、市役所内部の更なる業務改革等を推進します。 次の項目はその意識改革や市役所内部の更なる業務改革等を推進する具体的な取組です。 ・意識改革プロジェクト ・施策・事業評価制度の推進 ・公民連携強化による共創の推進 ・データを重視した政策形成の推進 人口1,000人あたりの職員数(令和3年度) 横浜市は1番少なく、10.18人となっています。すべての職場で施策・事業のあり方、仕事の進め方を見直すことにより、 効率的・効果的な執行体制の構築に努めています。 横浜市 10.18人 川崎市 10.42人 名古屋市 12.38人 大阪市 12.42人 神戸市 12.45人 京都市 12.60人 ※職員数は、普通会計職員数の数値。人口は、令和4年1月1日の住民基本台帳の人口 一般会計の支出(目的別) 支出はどのような分野の行政サービスに使われているのか、目的別からも見ることができます。 目的別でみると、子育て支援や福祉、道路や港湾の整備など、幅広い分野に使われています。 特に、「子育て・教育」「福祉・保健・医療」のための割合が大きくなっています。 子育て・教育に 子育て支援や市立学校などの設置・管理、保育所などの整備・運営支援、文化財の保護、学校教育、青少年育成、 障害児支援、生涯学習の推進 6,296億円(16万7,033円) 33.1% 福祉・保健・医療に 生活保護や保険年金などの生活福祉や医療機能の確保、障害者・高齢者の支援、救急・災害医療体制の充実・強化、 生活衛生、総合的ながん対策の推進 5,533億円(14万6,792円) 29.1% 道路・住宅・計画的な街づくりに 道路や河川の整備・維持管理や都市整備、再開発、住環境整備、市営住宅・公共建築物の整備・維持保全 1,631億円(4万3,270円) 8.6% 市役所の運営等に 市の計画策定や予算・決算の調製、危機管理、DX推進、選挙、人事、監査、議会 1,560億円(4万1,374円) 8.2% 横浜の魅力づくりや経済の発展に 多文化共生や中小企業の支援、観光MICEの推進、企業誘致・立地の促進、文化芸術創造都市による魅力創出、港湾整備・管理 1,322億円(3万5,058円) 6.9% 地球温暖化対策や水・緑の保全に 地球温暖化対策や緑地・公園・下水道施設の整備・維持管理 977億円(2万5,930円) 5.1% 救急・消防に 救急、救助、消防や、火災や災害の予防 552億円(1万4,636円) 2.9% 地域づくりやスポーツ活動・区の運営に 地域活動支援やスポーツ振興、防犯、区役所の運営 530億円(1万4,071円) 2.8% ごみの処理や減量・リサイクルに ごみの処理や減量・リサイクルを推進 435億円(1万1,535円) 2.3% 地下鉄・バス・水道事業に (一般会計から繰出金として支出する分) 186億円(4,926円) 1.0% ()内は令和5年1月1日現在の人口3,769,595人で算出した市民1人あたりの予算額 一般会計の予算を家計に例えてみると… 横浜市の1年間の収入と支出を家計簿にあてはめてみましょう。 令和5年度一般会計予算の市税などの自主財源を年収500万円(月収41万6,700円)として家計に例えてみました。 収入月額 ・給料など(月収) 41万6,700円(年収 500万円)  (市税など) ・奨学金、保険給付金、助成金など 16万9,760円  (国や県からの補助金) ・銀行からの借入など 3万8,029円  (市債) ・預貯金の取崩し 5,631円  (減債基金) 合計(月額) 63万0,120円 支出月額 ・食費、光熱・水道費 12万1,905円  (人件費) ・医療費、介護費、保育料など 22万9,691円  (社会保障経費※社会保障経費とは、扶助費と国民健康保険事業費会計・介護保険事業費会計・後期高齢者医療事業費会計の3つの特別会計への繰出金の合計額を指します)  医療費・保育料などが全体の3分の1以上を占めている状況です。 ・家のローン返済 5万8,875円  (市債の返済) ・交通や通信費、教育費など 12万4,180円  (行政運営費) ・自宅の改築や修繕、家具の買替、車の点検など 6万5,764円  (施設等整備費) ・別に住む家族などへの仕送り 2万9,705円  (他会計への支出金) 合計(月額) 63万0,120円 収入のうち、「給料など」は全体の66%となっており、「奨学金、保険給付金、助成金など」を加えても、なお不足する額を「銀行からの借入など」と「預貯金の 取崩し」で賄っている状況です。支出では「医療費、介護費、保育料など」に一番多くお金がかかっており、これに「食費、光熱・水道費」と「家のローン返済」 を加えた3つの支出は支出全体の65%を占めています。これらの割合が高いと、家計にあまり余裕がないことを意味します。 新たに「銀行からの借入など」を3万8,029円借り入れる一方、借入額を上回る5万8,875円を返済しており、計画的な市債発行により、債務残高を縮減しています。