調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会 横浜市政策局政策課 平成29年2月発行 ≪コラム≫「こまちカフェ」の実践を通した働き方、創造的な場づくり NPO法人こまちぷらす 代表 森 祐美子  先日、第一子出産後も仕事を継続する女性の割合は53.1%と発表が新聞に掲載されていました。裏を返せば、 47.9%が出産後仕事を継続していない、もしくは、できていないということ。  この半数は「活躍できていない」と捉えるべきなのでしょうか。  横浜市のデータによると、市内で就労していない母親のうち、就労したいと思っている人の割合は74.5%。特に、週3日勤務を希望する方が48.5%とほぼ半数、また、一日の希望就労時間は4~5時間が63.4%と、週3日、4~5時間勤務を希望する方が多いことが見てとれます。しかし実際には、その勤務体系では保育園に入る要件(月16日かつ1日4時間以上)に満たず、最初から保育園に入ること(=働くこと)をあきらめている方も多いのが現状です。そもそもそのような体系で募集している職種も限られている中、『働きたいけど、働けない』方が非常に多くいるという状況が見えてきます。  「女性活躍」という視点に立った時、まずはこの、①『働きたいけど、働けない』障壁をどのように取り払っていくか(マイナスをゼロに)という視点を考えなければならないのはもちろんですが、私は更に②いかに「当事者」として社会に関われるか、という視点が重要だと考えます。それぞれが当事者として様々な角度から地域に関わることで、地域が豊かになり、より一層「活躍」する場を生み出す好循環が生まれる(ゼロからプラスへ)と考えるからです。 「こまちカフェ」  我々NPO法人こまちぷらすでは、孤立しない子育ての環境をつくるため、情報発信事業やウェルカムベビープロジェクトといった子育てを歓迎する文化を醸成するプロジェクトの運営に加え、「こまちカフェ」という居場所を運営しています。  ここでは、この「こまちカフェ」という居場所での取り組みの紹介を通して、①の視点のもと、いかに多様な働き方を受け入れていくかという点、②の視点のもと、どのような仕掛けが必要かをお伝えしたいと思います。 「働き続けられる」場づくり  こまちカフェは2012年3月に開始し、2014年5月に現店舗戸塚駅西口に移転しました。短時間で勤務するスタッフとたくさんのボランティアの皆さまでワークシェアリングをしながら働いており、週3、1日4時間勤務というのはまさに多くの人が望んでいる仕事のスタイルであることは実際に肌で感じられます。うまくまわれば理想ですが、そのためには、長時間入るスタッフの過度な負担の軽減、全員のシフトが重なる日がほぼないためコミュニケーションがおろそかになりがちであること等、課題が尽きることはありません。  そのため、月に1回は必ず、お店を閉めて全員で理念共有や情報共有・研修する時間を作ることにしています。またSNSを使って部門内や部門横断のプロジェクトの情報共有も密に行っています。今ではミスがあったときには、即日問題の洗い出しがされ翌日には再発防止策の報告がされるようになりました。「多様な働き方」という言葉は美しくきれいなのですが、多様であるが故の難しさも多々あります。ワークシェアリングにおいては小難しいノウハウ以上に、企業であってもNPOであっても話せる風土や土壌づくりが何より重要だと感じます。 「活躍できる」場づくりへ  こまちカフェは様々な「当事者」が多く集まっている場でもあります。当事者はその分野のみに囚われがちという指摘もありますが、制度やサービスが取りこぼしている細やかなニーズを捉えていてそれをそのまま事業にしていく原動力をもっています。我々の事業の中でも「聞こえないママ×まちプロジェクト」「えんがわ(認知症カフェ)」「でこぼこの会(障がいをもつ親の会)」「haco+ (てづくり小物の販売事業)」等の主なプロジェクトは、すべて当事者発案運営によるものです。公共的な制度やサービスが拡充されていくと、汎用性の高い形で一般化されていき、結果、多くの人にとってどの制度どのサービスも自分のニーズにぴったり合わないということが生じてきます。昔であれば互いに助け合って解決してきたことが制度化することでかえってその細やかなところに手が届かなくなります。当事者が「今必要だ」と思ったことを当事者自ら仲間に呼びかけかたちにしていくことで、助け合いの小さなクラスターが大きな力となることを日々実感しているところです。  そこで自分たちの住むまちを考える「当事者」として、企業の方、行政の方、支援者らと同じテーブルを囲み議論できるフューチャーセッションという場を最近設けています。  カフェのようにふらっと入り、思いを語ることができ、受け止められ、それを応援してくれる人が見つかる場、また、ちょっとつまずいたときにアドバイスやネットワークの紹介をしあえる場があれば、誰もが「当事者」として社会の課題解決をし続けられる可能性を感じています。 おわりに  我々は、あくまでも一当事者である方々が、その事業の芽を大事に育てることができるか、我々もどのように疲弊することなく伴走をしつづけられるかを現在課題として取り組んでいます。  このように当事者が地域のあちこちで身の回りのネットワークを豊かにしていくことができれば、地域の豊かな声かけや支え合いにつながると信じ、また、それが結果的に女性が活躍できている社会になっているのではないかと思っています。