調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会 横浜市政策局政策課 平成29年2月発行 ≪コラム≫女性が輝くカギは、お父さんの子育て文化 ~ワークライフ プランナーを目指すダッドウェイ 株式会社ダッドウェイ コーポレート・コミュニケーションズグループ 日丸 邦彦  昨年ミャンマーのアウンサン・スーチー氏が来日した折、こんなエピソードがニュースになった。ある日本の女性政治家が会談の場でスーチー氏に「女性が輝くには?」と問いかけ、彼女が即座にこう応えた。「男性が子育てすることです」。国のリーダーであり、母親であるスーチー氏の姿勢に、その政治家は記者団に「率直にまぶしいと思った」と語ったそうだ。 「輝いている女性たち」という点でいえば、ダッドウェ イには、生き生きと仕事をする女性たちが大勢いる。 DADWAYとは「お父さんの道、やり方」の意味、「お父さんの子育て」をコンセプトに創業者の白鳥公彦と妻の由紀子が2人ではじめた育児用品の会社だが、男性たちを鼓舞し、輝く女性の筆頭は、由紀子副社長だろう。事業を拡大させる夫をサポートするように、副社長として経理人事総務の管理部門を担い、時代に即した雇用制度や健康経営を先導している。 雇用制度で特筆されるのは、1時間単位で取れる有給休暇など、社員一人ひとりのライフステージに沿って家族をサポートする点だ。  また健康経営については、勉強会や社員参加型のエクササイズ企画など地道で具体的な施策を行う。社員に健康への気づきとなる基盤を整えている。これは高齢社会に向けて社員の健康管理を経営的視点で考え、社内の活力や生産性の向上を目指す。由紀子副社長も自らヨガを実践し、漢方茶のアドバイザーの資格をもつ。この将来を見すえた行動は、会社のDNAといっていい。 お父さんが子育てに目覚めた  1992年の創業前から、白鳥公彦は、子どもたちを赤ちゃんの頃からキャンプなどのアウトドア遊びに連れ出していた。深いふれあいを通して、子育ては忍耐が必要でもそれを越える喜びと充実感を体感。自分を成長させる最高のチャンスだと思い「こんな素晴らしい子育てを母親だけにさせておくのはもったいない!」と育児用品会社の創立を決意。まだ育児は母親の仕事だと決めつけられていた時代に「お父さんの子育てをもっとおもしろ楽しくしたい!」というコンセプトにたどりついた。 お父さんの子育ての効果 今や「イクメン」という言葉はずい分浸透した。ダッドウェイではパパ育児のアイコンでもある抱っこひも「エルゴベビー」を発売。瞬く間に人気が広がり、今やマーケットリーダーだ。  お父さんが子育てをシェアすることは、ママの負担を減らし、働く時間や活躍する場をつくる。ただここで注目すべきは「子育ての大変さ」の分かちあいが、夫婦のパートナーシップを築く上で効果的な手段であるという点だ。 ママの背中を押したダッドウェイの男性社員の一言  育児休暇の経験をもつ男性社員にこんな話がある。妻が出産後に職場復帰するのを悩んでいた。子どもに寂しい思いをさせるのではと思ったからだ。彼は育休で感じたことを率直に妻へ伝えた。「子どもと過ごす時間の長さだけが愛情じゃない。一緒にいる時間の質の方が大事だと思う。しっかり抱いてあげたり話を聴いてあげたり。働くことが必ずしも子育てにマイナスではないよ。これまでどおり一緒に育てよう」。  夫は妻と子育ての苦労を共にした分だけ、男女の役割に固定観念が少ない傾向があるかも知れない。ワークスタイルが多様化する現代、女性の活躍を後押しするのは充実した制度だけでは足りない。それが根付く文化があってこそだ。社内にそれを定着させるため白鳥社長は、日ごろから自分の考えをよく社員に語っていた。「授業参観や運動会など学校や保育園の大切な行事が平日に行われても、パパもママもどんどん参加して、子どものかけがえない時間に立ち会おう。周囲がそれを支えていこう、そして自分も仕事のスキルをあげてその日を休めるようにしよう」と。 東レ経営研究所(ダイバーシティ&ワークライフバランス 研究部長 渥美由喜氏調査)による「女性の愛情曲線」というユニークな研究がある。出産後、妻の愛情は子どもに注がれ、夫への愛が急降下。しかし子育てが大変な乳幼児期にお父さんがしっかり関わることで子どもの成長にしたがって妻の夫への愛情は徐々に回復していくという。(図1)。  「お父さんの子育てをもっとおもしろ楽しくしたい!笑顔のあふれる家族でいっぱいに。ダッドウェイはしあわせな家族づくりをお手伝いします。」これは私たちの企業理念だ。育児用品の企画・輸入・販売を通じて、父親の子育て文化を創造してきた自負がある。そして今、これからの「家族のしあわせ」に思いをはせた時、白鳥社長と由紀子副社長は、父親や母親たちがワークとライフのバランスを上手にマネジメントすることが重要だと考え始めた。自らの経験を踏まえ、そのマネジメントのために社会へどのような提案をしていけのるか。私たちは「ワークライフ プランナー」を目指している。