調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会 横浜市政策局政策課 平成29年2月発行 ≪コラム≫「働き方改革などを通じた女性活躍推進の取組」~育児も仕事もやりたいこともかなえる「ハタ楽(働く)」方法 株式会社 AsMama 甲田 恵子  年間出生数がついに100万人を割ったことが昨今のニュースで報道されました。産み控えの最大の理由は経済的理由。しかし、これは日本のこれまでの慣習やトレンドを見ると、起こるべくして起こっている経過に過ぎないのではないでしょうか。  日本女性の教育レベルは、諸外国と比較しても決して引けを取らないほど高く、近年の新卒就職数は男性を上回ることもあります。ところが、結婚や第一子出産を機に5割強の女性が離職します。出産前離職の理由としては、「自分の手で子育てがしたい」が53.7%、「育児と仕事の両立に自信がない」が32.8%、次いで「就労・通勤時間の関係で子を持って動けない」が23.3%(独立行政法人労働政策研究・研究機構調べ)として挙げられており、まさに産む前から出産を迎える女性が一人で身構えている様子が表れています。一方で、離職した女性の8割が経済的理由と幸福感を求めて「働きたい」と答えていながら、「正社員」で復帰を希望する女性が12%しかいないのに対して、「パート・アルバイト」という雇用形態を希望する人は75%にも上るという統計データもあります(リクルートジョブズ調べ)。つまり、ここから読み解くべきは、国の期待や時間軸と各家庭が描く期待通りの社会的活躍に大きなギャップがあるということです。日本では今、女性の活躍推進を掲げ、女性管理職登用や正社員雇用を支援する動きが盛り上がっていますが、今の労働環境や生活環境では、夫婦どちらかが家事や育児を優先できる環境に備えざるを得ず、自分たちの出来る範囲での社会参画しか望めないということです。それに、何百年と続いてきた「家事や子育ては女性の仕事」とする日本の文化慣習は、未だ根強く職場にも家庭にも人にも潜んでいます。しかしこれは、まさに少子高齢化がすすむ日本最大の「もったいない」極みです。  実体験として、私は、地域の顔見知り同士が子供の送迎や託児を頼りあえる「子育てシェア」というネットの仕組みを普及させるための事業会社を経営して8年目になり、パート・アルバイトを含めると述べ1,000人以上の女性たちを雇用してきたわけですが、女性は「自分より家族」「自分より子ども」と考えるのが性なんだと心底思います。当社では、全国どこからでも事業参画ができるリモートワークを採用しているので、通勤等を理由に離職する人はいませんが、育児と仕事の両立に悩んで離職していく人の共通点として、仕事も家事も育児もとても丁寧で真面目で責任感が強い、ということです。だからこそ、例えば土日出勤が続いた時や子どもの成績が下がった時、ほんの少しおろそかになった家事を同居家族に指摘されたり、「そこまでして働かなければいけないの?」といった言葉を受けたりした時に、育児と仕事の両立に限界を感じてしまうのです。女性がもっともっと社会的に活躍するには、配偶者が「家事や育児を手伝う」というレベルではなく、家庭や子育てにも影響してくるだろう当然の変化を一緒に受け入れるということや、不慣れな社会参画を精神的にも物理的にも支えあっていくことが大切です。共働き、家事分担こそが、夫婦どちらかに何かがあった時のリスク分散にもなりますし、経済的にも精神的にもより豊かな生活を求めるキーファクターだと思います。  さて、夫婦共働きが当たり前になってくるわけですが、その時、子どもたちがさみしい思いをしたり、健全な環境にいられなくなったりするようだと本末転倒です。例えば、親の就労のために子供が安心して過ごせる日常保育の環境整備は必要ですが、親が就労するとなると急な託児ニーズも発生しないわけがありません。その時、普段は「顔も知らない人について行っちゃだめ」「知らない人からお菓子をもらっても食べちゃだめよ」と子どもたちに声をかけておきながら、行ったこともない場所や知らいない人に預けざるをえないのでは、親も子供も不安で、親は安心して仕事ややりたいことをやろうとは思えません。つまり、親が安心してイキイキ働くためには、子どもにとっても安心できる居場所を普段から作っておいてあげることが不可欠です。手前みそになりますが、自社開発している子育てシェアを利用している親からは「初めて預けても泣かなくて、だから本当に安心して外出できた」という声を聞きますし、子どもたちは「預けられてるという感覚よりは友達のおうちに遊びに行ってる感じ」と言います。こういう環境なら親も自分の好きなことが出来、子どもは親が社会で活躍している時間、地域性や多様性、社会性を学びながら育つことが出来るのだと思います。  一人ひとりが、自分たちが望むワークライフバランスを創りだすために、本当に必要なことは、プライベートなことを家庭内で支えあうことはもちろん、家庭内だけで何とかしようとせず、互いに頼り・頼られることを良しとする価値観の転換とその環境を日頃から備えておくことだと思います。いまいま持ちつ持たれつにならなくても、長い人生の中で助けてもらうことや時期があれば、助けてあげられることや時期もある、それぐらいの考えで地域共助や社会共生が出来れば誰もがより豊かに、より生きやすくなるのではないかと思います。