調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会 横浜市政策局政策課 平成29年2月発行 ≪コラム≫女性活躍 私たちの場合・・・ 日之出産業株式会社 取締役 藤田 香 なぜ中小企業で女性活躍?その背景  中小企業といっても様々です。弊社の水処理業界というのは表立って女性の姿を見ることはない業界かもしれません。それでも男性社会を支える後方部隊としての女性達という図式は他業種同様にみられます。ただその役割分担を変えたい。それが始まりでした。  大企業では当たり前の職務配置も中小企業は思うように進みません。また、採用も大企業のように新卒定期採用などはありえない状態の中、研究そして営業で女性新卒社員の採用を行ってみました。優秀な女性達で決して性差によるハンデも感じられない活躍でしたが、残念ながら、数年で退職という事態が数件つづきました。表向きの理由は様々でしたが、女性社員が専門職としてのモチベーションを保てないということで 経営自体のあり方が問われていたのかもしれません。また、事務職の女性に目を向けても やはりフラストレーションがたまっていました。中小企業にありがちな、一人に業務が集中してしまう。そしてその業務が基幹業務から雑務まで多岐にわたる。まるで家庭における専業主婦化していたのです。これでは有給休暇どころか 振替休日だって難しい。また、一人に業務を抱え込ませることの損失も出始めていました。 まずやってみる!   ①なかなか増員が難しい中、まず事務職のダブルアサインメントを行ってみました。  前職は研究職で結婚を機に退職した女性でした。事務であっても化学の知識があることが業務にとってプラスになると判断してのことです。同時期に農学系の男性社員も中途採用しました。こちらは研究部門を充実させることと同期入社でお互い刺激しあうことが出来たと思います。  図らずも労働環境のチェックをして一人で行ってきた業務を誰でもできるように改善する取組にもつながりました。   ②ベテラン社員の余裕が出てきたところで、横浜型地域貢献企業への申請を持ちかけてみました。これにより今まで社員全員にしっかりと共有できていなかった企業理念、行動規範そして地域、社会に向けての貢献度、何より会社内でのオープン化と明文化したことで、女性社員が経営の根幹に係れる第一歩になりました。以来最上位認定をいただいていますが、公的な外部評価がモチベーションと自信につながることの大切さを知ることになりました。また、育児中の女性社員が自ら働き方を改革していくことを推奨した計画書が 横浜グッドバランス賞受賞につながったこともあります。  ③ダブルアサインメントとダブルタスクがもたらしたもの ダブルアサインメントで各自の負荷が少し解消されてから、男女平等の資格支援とダブルタスクを試みてみました。長期入院から復帰の男性社員を事務職に。そして事務職の女性職員を研究職に。ベテラン事務職員を CADなど専門性の高いタスクに。とそれぞれのルーティンから無理のないそしてやりがいのある職種へとリンクさせていく方式をとっていきました。部門横断型のボトムアップ研修や各自業務のプレゼン等オープンで男女分け隔てない社内研修も地道に行ってきました。  それにより早めに産休に入った社員 また、病欠が出たときにも業務が滞ることない体制が実感されたとき有給休暇の消化率アップにつながりました。 ④育児休業復帰後のフォローとしてテレワーク  女性が育休復帰後どのような働き方を望むのか? 賛否両論はあるでしょうが、弊社では時短勤務という形をとりませんでした。保育園の送迎を母親がすると決めつけての時短、キャリアアップを犠牲にしての時短に少し疑問があったからです。もちろん本人の意向が何よりなので、柔軟性を持ったワーキングスタイルを模索して、テレワーク導入を取り入れました。勤務時間を維持しながら場所に関係なく働ける環境を整えることは育児だけではなく使えると考えたからです。それに伴う就労規定改定、そして横浜市経済局の女性活躍推進事業の助成金を活用し、まず女性社員2名、その後全社員のICT活用5か年計画を始めました。 在宅勤務 育児・介護休業の就労規則の改定は誰のため?  本来、弊社が求めているものはダイバーシティーであり、誰もがそのライフステージにあった最善の働き方をフォローする働き方改革も、就労規則全般の改定も男性社員が他人事のように受け取られれば何も意味がないと感じ、改定後、社労士事務所にセミナーお願いいたしました。それにより、まず男性が働き方を見直していこう。女性活躍はそこから始まる、という認識が必要でした。これに関しては残念ながら全員に周知には至りません。ただこの先男性が無限に働き続けられる世の中はなくなる、だから意識改革していこうというのが狙いでした。 育児より早急の問題だった介護問題  どうしても育児中の女性の両立支援が女性支援のメインテーマのように報じられますが弊社のベテラン社員の中からも介護それも配偶者の介護という問題が出てきました。男女ともに働き方が問われる時代になってきたのだと思います。テレワークに関してできないと思っていた部署にも、本当に無理なのか?を模索している最中です。会社は それぞれの家庭の問題を解決することはできない。でもフォローはできる。 中小企業はさらに柔軟に対応できる。そう思っています。 それでも活躍し続ける女性をたくさん作りたい  結局は女性活躍も男性の働き方意識改革がなくてはだめなのか?は確かにあります。  2030 またクウォーター制など各国政府の制度も素晴らしい一歩だと思います。でも、彼女たちの中にあるのは女性だからではなく業務業績を認められたい、仕事も家庭も両方充実させたい、ということだと思います。  今年度から、アフリカからの研修員をインターンシップで受け入れました。9名中2名の女性が参加しましたが、その聡明さと勤勉さ、そしてしなやかさは日本がまさに見習いたい女性活躍の姿でした。様々なバックボーンを持つ女性は、水処理業界で新しい営業のあり方を気づかせてくれると思います。世界中にこのような女性が増えること、そして女性活躍をワークライフバランスや育児世代の社会進出というお題目で終わらせないで もう一歩進もう。それが私の願いです。