調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会 横浜市政策局政策課 平成29年2月発行 ≪コラム≫ 横浜発で女性活躍の実現のスピードを上げよう! 大阪大学男女協働推進センター招へい教授 村木 厚子  女性活躍の国際ランキングで、今年の日本の順位は144か国中111位、過去最悪だった。ずいぶん前のことになるが、日本の女性活躍の状況は年々よくなっているにもかかわらずランキングが下がることに疑問を感じ、その理由を事務局に問い合わせたことがある。その時に返ってきた答えは、「日本はよくなっています。でも、ほかの国はもっと速いスピードでよくなっています」というものだった。この言葉は本当にショックだった。  気持ちは焦れども、女性活躍推進に即効薬はない。国も女性活躍推進法の施行など努力を続けているが、自治体の役割も大きい。自治体に特に期待することは、①女性が社会で活躍できる環境を整備すること、とりわけ、保育、子育て関連の環境整備を急ぐこと、②男女が働きやすい環境を創るため、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、企業、働く人、消費者の意識を変え、具体的に行動を起こさせるよう働きかけること、③女性活躍の意味や効用を市民に広く実感してもらうことなどだろう。  女性活躍の実態を見ると横浜市は、女性の年齢階級別労働力率、いわゆる「M 字カーブ」の底が全国平均に比べさらに深く、その一方で、仕事をしていない女性の9割が就業意向を持っている。仕事をできない理由としては、仕事と家庭生活の両立が困難、短時間勤務などの希望に合った働き方が難しいなどが挙げられており、働くことと家庭生活を大切にすることが「二者択一」になっている様子がうかがわれる。日本では、女性が社会で活躍するようになるとより少子化が進むのではないかと懸念する人が多い。しかしOECD諸国を比較してみると、女性の労働力率も出生率も高い国とその両方ともが低い国に大別される。日本は残念ながら後者、両方が低いグループにいる。ほかには韓国、ギリシア、スペイン、イタリアがこのグループだ。一方このほか国はほとんどが前者、両方が高いグループだ。つまり多くの国は「仕事も家庭も」をすでに実現しているのだ。私は、日本もいつかきっとこれが実現できると信じている。その先頭に横浜市に立ってもらいたい。  横浜市は、いち早く「待機児童ゼロ」を打ち出してくれた。この動きは国内のほかの多くの自治体を動かす大きなきっかけになり、保育の充実に向けた大きな流れを作ってくれた。このほかの分野でも、横浜市は工夫を凝らして企業や市民に女性の活躍を呼び掛ける取り組みを実施している。ある日、ほかの自治体の職員からこんなことを聞かされた。どの自治体も企業や市民への働きかけには苦労しているが、横浜市は他の自治体の職員にも情報を広く提供し、横浜市主催のイベントなどにも参加させてくれるので、いろいろな知恵をそこからもらって助けられているというのだ。改めて横浜市に感謝をした。  多くの国が女性活躍という面では日本より進んでいる。そうした国も、まだまだ女性活躍は十分ではないと一層の努力を重ねている。日本を含むG 20 の各国は2年前、それぞれの国における男性と女性の労働力率の差を2025年までに 25%削減するという共通の数値目標を設定した。今度こそ「日本は頑張っています。でもほかの国はもっと頑張っています」と言われないよう、日本も変革のスピードを上げたいものだ。そのためにも、横浜市が、市民のため、そしてほかの多くの自治体のために先進的な取り組みを続けてくださることを心から期待する。