調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会 横浜市政策局政策課 平成29年2月発行 日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市・横浜の実現に向けて 横浜市長 林文子  日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市の実現。私たちは「横浜市中期4か年計画2014―2017」の策定にあたりこの目標を掲げ、一層の女性活躍支援策に取り組んでいます。  2010年の国勢調査の結果に基づく将来人口推計によれば、横浜市の人口は2019年から減少に転じます。ごく近い将来、横浜も人口減少社会に移行するのです。この横浜に将来にわたる活力を生み出し次の世代に引き継いでいくには、性別による格差のない社会、男女を問わずあらゆる方々が力を発揮できる社会を実現する必要があります。 私が社会に出た1965年当時、男性と女性の仕事の間には明確な線が引かれていました。以来50年以上にわたり働き続けてきた中では︑男性中心の組織に女性が参画するうえでの様々な苦労も経験してきました。また一方で︑男女がともに強みを活かし合うことで組織が活性化し大きな成果を生み出すことも︑身を持って体験してきました。 女性ならではの感性、生活者としての視点がもっと生かされれば、経済社会は一層活性化します。また育児と仕事を両立できる環境は、女性のみならず男性にとっても働きやすいものであるはずです。  こうした思いから、私は、2009年の市長就任後、真っ先に保育所待機児童対策に取り組みました。職員の皆さんと一丸となり、職場の垣根を越えて解決策を考え出しました。ありとあらゆる対策を講じ、ついに2013年春、念願の「待機児童ゼロ」を実現しました。まさに「チーム横浜」で成し遂げた成果です。この実績は全国的に注目を集め、保育コンシェルジュをはじめとする取組は「横浜方式」として国に取り上げられ、他の自治体に瞬く間に波及していきました。 これこそが、横浜市が率先して女性活躍支援に取り組む意義です。横浜市は現在、373万人の人口を擁する日本最大の基礎自治体であり、様々な都市課題の先進都市でもあります。横浜市が成果を出せば、その取組は他の自治体に広がる。私たちの努力は、横浜のみならずあらゆる自治体の課題解決につながるのです。  そのほか、働く女性のネットワーキング、女性の就業・起業への支援にも取り組んできました。2011年にスタートさせた「横浜女性ネットワーク会議」は年々規模が拡大し、この2年間は起業家支援の「横浜ウーマンビジネスフェスタ」と合同開催、昨年は1500人もの方々が参加されました。また、女性専用のシェアオフィス「F―SUSよこはま」やトライアルスペース「Crea’sMarket」を開設、融資や相談事業などを通じて起業を後押しし、これまで市の支援を受けて起業した方は179人に上ります。この1月から2月には、市内3か所の大型商業施設の協力を得てプロモーションを展開し、女性の視点と感性から生まれた商品やサービスのPRを行いました。 横浜市における女性の活躍は、着実に前進しています。また、日本政府は「ウィメノミクス」、女性の活躍を日本の経済成長の原動力にしていくと掲げ、2016年春には「女性活躍推進法」が全面施行され、女性の活躍推進は、国・自治体・企業が一丸となって取り組む新たなステージに突入しています。  しかし、日本の女性の労働力率はいまだ諸外国に比べ深いM字カーブを描き、横浜ではこの傾向が更に顕著になっています。また、昨年発表されたジェンダーギャップ指数での日本の順位は前年を下回る結果になりました。  国の内外で女性リーダーが生まれているものの、国会議員に女性が占める割合は11・6%(2015年12月)、地方自治体の首長においてはわずか1・5%(2016年8月)、いまだ男性と同程度になるには程遠い状況です。 女性の更なる活躍に向けて、取組を緩めることはできません。なお一層加速させていく必要があるのです。  そのうえで横浜を「日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市」にしていくためには、今後、チャレンジすべき幾つかの重要な課題があります。これまで、女性の活躍に向けては、仕事と「子育て」との両立が注目されてきましたが、超高齢化の中で、今後は「介護」との両立も視野に入れ、働き方改革や環境整備を進めていく必要があります。  「介護」は男女、あるいは既婚・未婚を問わず、誰もが直面せざる得ない課題です。国も「一億総活躍」「介護離職ゼロ」などの施策を打ち出しており、横浜市としても企業やNPOの皆様と連携し、市民の皆様が「子育て」「介護」などのケアと両立できる、柔軟で多様な働き方を支援する取組を進めていきます。 とりわけ、日本独特の長時間労働の慣行は、改善が急務です。生産性を向上させ、真のワークライフバランスを実現していく必要があります。横浜市役所としても、昨年春、従来取り組んでいた「やります!『Do―プラン』」、「女性ポテンシャル発揮プログラム」を一本化した「横浜市職員の女性ポテンシャル発揮・ワークライフバランス推進プログラム(通称:Wプログラム)」を打出し、夏には副市長、区局統括本部長とともに「イクボス宣言」を行い、取組を加速させています。  また「女性活躍推進法」の全面施行を受け、「横浜市女性活躍推進協議会」を設置し、市内経済団体などと連携し、企業の皆様による女性の登用、働き方改革を後押ししています。  横浜の女性活躍支援の取組は、いまや国の内外から注目を集めており、国を越えたつながり、ネットワークが生まれています。私自身、APEC首脳会議が横浜で開催された2010年からAPECの女性と経済に関する議論に継続的に参画し、各エコノミーと課題や成功事例を共有しており、この場でも、待機児童対策をはじめ横浜の取組は、常に大きな関心を寄せられています。 また、マニラでのAPECを機につながりが生まれたフィリピンの女性起業家グループ、更に2008年、2013年と2度にわたるアフリカ開発会議の横浜開催を通じての、アフリカの女性起業家や若手リーダーとの交流も深まっています。「あらゆる女性の活躍を応援したい」という私たちの思いは、国を越え、様々な地域の女性をも後押ししています。  女性の社会参画は、単に労働人口の増加に寄与するものではありません。今後女性がもっと活躍することで、新たな発想が生まれ、新たなビジネスが興り、社会が活性化していきます。そして性別のみならず、年齢、国籍などの壁を越え、多様な主体が知恵を出し合い、新たな製品やサービスを共に創り上げていく。ダイバーシティこそが未来につながるイノベーションを生み出します。  今号の調査季報では、今後の横浜の女性活躍のあり方について、様々な世代や立場の皆様方から、座談会やインタビュー、寄稿という形でご意見やご提案を頂いています。それぞれに豊富なご経験やキャリアに根差したもので、今後の施策推進にあたって示唆に富む素晴らしいものばかりです。本当にありがとうございます。  皆様から頂いたご意見やご提案をこれからの市政運営の参考にさせて頂き、魅力と活力に満ちた横浜を、将来にわたり持続可能な都市として成長させていくために、一層の力を注いでいきます。