《コラム》データから見える生活行動の変化① 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活行動の変化~内閣府、国土交通省の調査から 編集部  内閣府などが実施する調査において、コロナ禍における生活上の変化を捉えることができる結果がいくつか公表されている。ここでは、「満足度・生活の質に関する調査」(内閣府。以下「調査①」という。)、「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府。以下「調査②」という。)、「新型コロナ感染症の影響下における生活行動調査」(国土交通省。以下「調査③」という。)の3つの調査から、全国における変化を概観する。 ■生活満足度の変化  調査①では、満足度や生活の質に関する幅広い視点から経済社会状況について見える化するため、13項目の分野別満足度と総合的な生活満足度について、0~10点で評価する方法で調査している。  生活満足度の全体平均は、コロナ禍前となる2019年が5・78で、以降5・83、5・74、5・76と推移している。年齢層別で見ると、高齢層(65~89歳)で全体平均に比べて高く、若年層(15~39歳)とともに、概ね横ばいで推移している。(図1)一方、40~64歳は、2021年に大きく低下し、2022年に上昇したがコロナ禍前よりは低くなっている。  分野別満足度は、2022年調査では前年調査と比べ「政治・行政・裁判所への信頼性」、「自然環境」、「介護のしやすさ・されやすさ」で増加しているが、生活満足度に対して大きなインパクトをもたらさず、最も全体の満足度に影響していると考えられるのは「生活の楽しさ・面白さ」、次いで「家計と資産」「仕事と生活」であったと分析されている。 ■居住地の選択  調査②の第4回調査(2021年9月)で、高校生・大学生等の学生を対象に、将来の進路希望の感染症拡大前との変化を尋ねたところ、「東京圏での就職志向が強まった」とする回答が全国で12・3%、地方圏でも10・6%で、「変わらない」が55・2%(地方圏56・4%)であった。この世代は本市でも転入数が多く、就職を契機とした横浜市を含む東京圏への転入は今後も続くと考えられる。  一方、2022年6月の第5回調査では、東京圏在住者で地方移住に関心がある人は34・2%、20代に限ると45%を超えている。その理由は、「テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため」が24・5%で、「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため」(34・5%)に次ぐ2番目となっており、テレワークが居住地選択における通勤利便性の重要度に影響を与えていると考えられる。 ■働き方  コロナ禍前(2019年2月)と比較した仕事時間・通勤時間の変化を見ると(調査①)、仕事時間は「減少」が55・4%と半数を超えている。東京圏では、全体に比べ少し低いがそれでもほぼ半数を占める。また、男女別では、男性に比べ女性の「減少」した割合が高い。  通勤時間は、男女の差はあまりみられないが、東京圏は全体に比べて「増加」の割合は変わらないものの「減少」の割合が高くなっている。(図2)  また、仕事と生活(ワーク・ライフ・バランス)に対する満足度を見ると(調査①)、コロナ禍前と比べて上昇傾向にあり、男女ともに0・1ポイント程度上昇した。特に、中学生以下の子どもがいる就業者では、2019年調査と比べて、仕事 と生活(ワーク・ライフ・バランス)のほか、健康状態、子育てのしやすさ、全体の生活満足度も大きく上昇している。  コロナ禍に注目が高まったテレワークに関しては、調査②、調査③でそれぞれ調査している。調査対象や選択肢が異なるため単純な比較はできないが、テレワーク実施率は、緊急事態宣言下の2020年の4月、5月にそれ以前に比べ大きく増加し、宣言解除ののち同年中には減少している点は共通している。2021年、2022年調査での実施率は、2019年より高い水準で、ほぼ横ばいで推移している。(2022年実施率:調査②30・6%、調査③約45%)  感染症拡大前(2019年12月)に比べて、働く上で重視するようになったものでは(調査②)、「就業形態(正規、非正規)」(25・8%)、「給料の額(ボーナスを含む)」(25・2%)、「職場の人間関係・雰囲気」(21・1%)が上位であった。「テレワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方ができること」は、全体では17・6%であったが、テレワーク経験者に限ると40・9%となり、年代よりもテレワーク実施の有無による差が見られた。 ■消費行動  感染症拡大前と比べた消費行動の変化(調査②)で最も多いのは、「店舗でのキャッシュレス決済の利用割合を増やした」(37・0%)であるが、年齢別にみると、割合が最も多い20歳代で39・3%、60歳代以上でも36・2%と年齢による大きな差は見られない。  2位の「オンラインでの購入機会を増やした」(33・5%)は20歳代が40・3%、60歳代以上が27・8%、また、6位の「一人で外食、一人で外出などのおひとりさま消費を増やした」(9・2%)は20歳代が13・7%、60歳代以上が6・8%と、年齢が低いほどが割合が多くなっている。半面、「店舗でのまとめ買いを増やした」(18・6%)、「日持ちする食材や加工品等の購入を増やした」(9・8%)では、60歳代以上が最も多く、買い物の機会や接触が少なくなる消費行動への変化の仕方に、年齢による違いが表れている。 ■人とのつながり  感染症拡大を契機として、地域内でのボランティア活動や近所付き合いなどの地域社会への関心に変化があったかを聞いた設問(調査②)では、「変わらない」が84・2%、「高まった」(8・1%)と「低くなった」(7・7%)はほぼ同程度で、関心への影響はあまりみられない。   関心がある地域の活動は40歳代以上では「町内会活動」が1位で60歳代以上では3割近くにのぼる。一方、20歳代では「町内会活動」は約9%だが、「クラウドファンディング」(16・4%)、「こども関係(こども食堂など)」(15・%)、「寄付金・募金」(13・0%)などに対して、より高い関心を示している。 ■行動範囲  日常の活動を行った場所について尋ねた質問(調査③)では、「食料品・日用品の買い物」は感染症流行前後のいずれの時点も「自宅周辺」が7割程度でほどんと変化していない。(図3)  変化がみられた「外食」などの活動でも「勤務先・学校周辺」「自宅から離れた郊外」「その他」の割合は大きく変わらず、主に「自宅から離れた都心・中心市街地」から「自宅周辺」に活動場所が移行したと考えられる。  また、活動や外出を控えようとする意識は全体的に減少しているものの、2022年3月の調査においても「大人数が集まるイベント」で68%、「友人や知人との交際・会食」で67%が控えようと思っており、「診療」(30%)や「食料品・日用品の買い物」(33%)でも3割超が〝自粛意識〟を持って行動している様子がうかがえる。 調査①「満足度・生活の質に関する調査」(内閣府) 日本国内に住む15~89歳のパネル登録モニターと対象としたインターネット調査。 2019年2月に第1回調査を実施。 2022年2月の第4回調査では、回収数10,633、うち一部(6,336)は同一人が継続して回答。 URL: https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/index.html 調査②「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府) 日本国内に住む15~89歳のパネル登録モニターと対象としたインターネット調査。 2020年5月に第1回調査を実施。 2022年6月の第5回調査では回収数10,056、うち一部(6,481)は同一人が継続して回答。 URL: https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/index.html 調査③「新型コロナ感染症の影響下における生活行動調査」(国土交通省) 次の地域在住の18歳以上のアンケート調査会社に登録しているモニターを対象としたインターネット調査。 *札幌市、東京都市圏(茨城南部、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の市区町村)、金沢市、静岡市、岐阜市、名古屋市、大阪市、豊中市、盛岡市、仙台市、静岡市、四日市市、奈良市、広島市、松山市。 「新型コロナ生活行動調査」(2020年8月)に続く調査として実施。 URL: https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000056.html