《9》「Beyondコロナ」を目指す横浜の公民連携 執筆 関口 昌幸 政策局共創推進課担当係長 1 はじめに  本稿の目的は、既に3年余りの月日が過ぎながら、いまだに終息が見えない新型コロナウイルス感染症(COVID―19)によってもたらされた市民生活の様々な課題を横浜市が、公民連携によって、いかに解決しようとしてきたのかを論述することにある。  一般に「コロナ禍」と呼ばれる2020年1月に始まった日本での新型コロナウイルス感染拡大による災害は、現在(2023年3月)に至るまで、大きく8つの被災期(感染大流行期)にわけることができる。それぞれの被災期は、第1波、第2波など「波」と呼ばれ、このウイルスは、まさしく津波のように日本社会を襲い、市民の命を奪い、健康を損なわせ、暮らしを破壊したわけだが、それぞれの波(被災期)によって、ウイルスが変異しており、感染率や重症率、致死率などが異なる ため、市民生活における被災のありようも、それぞれの波ごとに異なる様相を呈している。  また、世界中で、このウイルスに対する研究が進み、ワクチンが開発され、一定程度、有効な治療方法や医療体制が見出され、整備されていくにつれ、COVID―19がもたらす災害に対する政府や自治体、そして民間企業や市民団体などによる対策・対応のあり方も、大きく変わってきている。  この事を踏まえ、本稿では、新型コロナウイルス感染拡大の8つの波を、前期(第1波から第5波―2020年1月~2021年10月)と後期(第6波~第8波―2021年11月~2023年3月)とに分け、主に感染拡大前期において、横浜市の共創推進室が、国や他の自治体の取組を意識しながら、COVID―19の感染拡大にどのように向き合い、またそれを乗り越えるためにいかなる公民連携の取組を展開したのかということを論じたい。    2 「ダイヤモンド・プリンセス号」の悲劇  この3年間、グローバル経済に多大な影響を与え続け、世界中の人たちの暮らしのあり方を根底から変えた新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の流行は、2019年12月31日、中国湖北省武漢市から原因不明の肺炎の集団感染事例として世界保健機関(WHO)へ報告があったことを端緒としている。  日本国内においては、2020年1月15日、武漢市の滞在歴がある肺炎の患者が、初の症例として神奈川県内にて探知されたのを始めとし、1月末から2月にかけて、武漢からのチャーター便での帰国者にも感染が確認された。  そんな中で、多くの横浜市民が新型コロナウイルスの脅威を初めて「我が事」として体感することになった出来事が、ダイヤモンド・プリンセス号での船内集団感染ではないだろうか。56か国3,700人余を乗せた大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が横浜港に寄港したのが2020年2月3日。この日、このクルーズ船の乗客で、香港で下船した男性が新型コロナウィルに感染していたことが判明。船内で発熱などの症状を訴える乗客を検査した結果、2月4日の夜には、10名の乗客が新型コロナウイルスに感染していることが分かった。  これに対して、当時、未知のウイルスであった、COVID―19に対して、有効な治療方法やワクチンがまだ開発されておらず、新型コロナ感染者を受け入れる医療体制も全く整っていなかった日本政府は、ダイヤモンド・プリンセス号を14日間、横浜港に停留させ、陽性者を船内で隔離することを決めた。  この2週間に及ぶ洋上隔離によって、この大型クルーズ船の船内では、新型コロナウイルスのクラスターが発生し、感染者が急増した。当時の乗客や船内での治療にあたった医師の証言によると、さながら船内は「地獄」のようだったという。鶴見の大黒ふ頭で乗客の下船が始まったのが2月16日。そしてすべての乗客の下船が終了する3月1日までの間、最終的にダイヤモンド・プリンセス号の感染者数は711名となり、そのうち13人が亡くなった。  ダイヤモンド・プリンセス号における集団感染の模様を、新聞やテレビが連日報道する中、2020年2月4日~11日に開催された「さっぽろ雪まつり」において、新型コロナウイルスのクラスターが発生した。さらに和歌山県内の医療機関で院内感染事例が確認されるなど、日常生活から遠い海外や洋上だけでなく、国内の市街地においても、新型コロナウイルスの集団感染が起こり始めたのだ。これにより私たちは、日々の暮らしの中で、COVID―19の感染拡大の脅威を強く意識し、国や自治体は、それへの対策・対処を喫緊に迫られることになったのである。   3 新型コロナウイルスに対する政府や他の自治体の対策・対応 (1)最初の感染対策  感染拡大前期(第1波から第5波)において、政府は、この未知のウイルスの感染拡大を食い止めるにあたって、医療や統計学(データサイエンス)等の専門家の意見を聞く機会を頻繁に設け、その政策決定にあたっては、かつてないほど彼らの見解を参考にした。  この事は、ともすれば官僚と政治家のみで政策が形成され、決定されることが多い私たちの国の意志決定の仕組を考えると、特筆すべきことであったのではないか。  例えば、国内での感染拡大の兆候が現れ始めた2020年2月16日に、政府は様々な分野の感染症対策の専門家を集めた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」(以下「専門家会議」)を開催。そして、2月24日に開催された専門家会議において発表された「これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」という見解に基づいて、故・安倍元首相は2月27日、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について3月2日から春休みまで臨時休業を行うよう要請している。  ちなみに、この2月27日の時点で、国内のCOVID―19感染者数は総計で210名であった。この「210」という数字は1日あたりの新規感染者の数ではない。1月15日に国内で最初の感染者が発見されてから、2月26日までに国によって確認された感染者の総計である。  この3年間で国内の1日あたりの新規感染者数が20万人を超える日も珍しくないという事態を経験している今の我々から見ると、政府は、なんでこんな微小な感染者数で、全国の学校を1か月近くも休校することを要請するなどといった大胆な決断をしたのだろうと不思議に思えたりもするが、「ダイヤモンド・プリンセス号」の悲劇を目のあたりにし、この得体の知れない未知のウイルスへの畏怖を植え付けられた当時の国民の感情と、対策の当初から人流の抑制と密の回避を強く訴え続けた感染症対策の専門家の意見を尊重するのならば、当然に導きだされる政策決定だったのかも知れない。   (2)緊急事態宣言と新しい生活様式  2020年3月11日、WHOは、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)について、パンデミック(世界的大流行)とみなすと正式に表明した。これに伴い、同年3月13日、新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正され、COVID―19対策は同法に基づいて行われることになり、3月14日から施行されることなった。  そして、丁度、この頃から関東首都圏・関西圏を中心に国内の感染者が増加し始めた(といっても1日あたりの新規感染者数は全国でみても100名に満たなかったが)。 このような事態に一早く反応したのが、大阪府と東京都であった。3月19日、大阪府の吉村知事が「急激な感染拡大を防ぐため、20日~22日の3連休について大阪と兵庫間の不要不急の往来は控えて欲しい」と呼びかけ、3月23日には、東京都の小池知事が記者会見で、ロックダウン(都市封鎖)の可能性に言及しながら、「換気の悪い密閉空間」、「多くの人の密集する場所」、「近距離での会話」といった、感染拡大防止のための「3密」の回避を強く訴えた。  こうした大阪府や東京都の動きに呼応するかのように4月7日、政府は7都府県を対象に5月6日までの「緊急事態宣言」を発令し、4月16日には、その対象を全都道府県に拡大した。  そもそも「緊急事態宣言」とは、特別措置法に基づく措置で、新型コロナウイルスの全国的かつ急速なまん延により、国民生活や経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合などに、総理大臣が宣言を行い、緊急的な措置を取る期間や区域を指定するというものだ。  指定された地域の都道府県知事は、それぞれの地域の状況に応じて、感染拡大防止のための緊急的措置を取る。  例えば、その期間、学校を含む施設の使用停止や音楽やスポーツイベントなどの開催中止や、飲食店やスポーツジム、ライブハウスなど感染クラスターの拠点となることが危惧される幅広い業種に時短や休業要請を出すことができる。同時に住民に対しては、生活の維持に必要な場合を除き、外出の自粛をはじめ、感染の防止に必要な協力を要請ができる。  そしてこの緊急事態宣言とセットで専門会議がまとめ、厚労省を中心に政府が発表したのが「新しい生活様式」だ。これは、感染防止の3つの基本として①身体的距離の確保、②マスクの着用、③手洗いを原則とし、日常生活のあらゆる場面で3密(密集、密接、密閉)を回避。買い物は通販。食事は持ち帰りや出前、デリバリー。公共交通機関や食事中での会話は控え、働き方はテレワーク、会議はオンラインを基本にしようというまるで「学級目標」のようなわかりやすい生活マニュアル。  そして政府や自治体は、マスメディアを含むあらゆる広報ツールを活用し、国民、市民に対して、コロナ禍における新しい生活様式の普及に努めたのである。  このように新型コロナウイルスの感染拡大の「第1波」へのわが国の対応を時系列で追ってみると、感染拡大防止を至上目的に、政府と都道府県の首長(特に大都市自治体)、専門家が(それぞれ思惑は異なるにせよ)三位一体となり、なるべく国民を「集まらせない、会話をさせない、外出させない」ことを主眼とする政策を推し進めていたことが理解できる。  当初は、まさかこのような形で3年もコロナ禍が続くとは、政府も自治体も専門家も、そして多くの国民も考えていなかった。  だからオーバーシュートを回避し、医療崩壊を防ぎ、自分や他者の命を守るためには2週間なり、せいぜい1か月、「集まらない、会話をしない、外出しない」不自由な生活を我慢すれば良いのだと考え、多くの人たちが「緊急事態宣言」に積極的に受け入れたはずだ。  確かにその後、緊急事態宣言の効果によって、新規感染者数は減少した。そして入院病床、宿泊療養施設等にも余裕が出てきたため、政府は5月14日に39県での緊急事態宣言の解除、5月25日には全面的に解除した。(5月25日の全国の新規感染者数は22人)  仮にこの時点で、コロナ過が完全に終息し、その後、1、2か月かけて市民の日常が、コロナ過以前に戻っていたとしたら、私たちの社会は今とは随分変わったものであったろう。例えば、2021年に延期され、無観客で行われた「東京オリンピック・パラリンピック」一つとっても、まるで異なる性格の国際イベントになっていたはずだ。  しかし、実際には、その後、第2波、第3波、第4波、第5波と日本列島は、絶えることのない感染拡大の波に襲われ続け、2021年9月までに緊急事態宣言も3回発令された。まさに感染拡大前期を通じて、ウイズコロナが常態化し「新しい生活様式」が、「当たり前の生活様式」になったのである。   4 横浜市の公民連携でのコロナ対策~#おたがいハマの構築・展開  私たちが、「新型コロナに向き合うたすけあいプラットフォーム〝#おたがいハマ〟」(以下「#おたがいハマ」)の立ち上げを検討し始めたのは、2020年4月7日、神奈川県に最初の緊急事態宣言が発令された頃だ。もともと横浜市と連携関係にあった「N P O 法人横浜コミュニティデザイン・ラボ」(以下「デザインラボ」)と一般社団法人「YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス」(以下「サポートオフィス」)から「コロナ過で苦しむ人たちを励まし、支援できるプラットフォーム」をつくりたいと共創推進室に提案があったことを契機にしている。  そして、プラットフォームのコンセプトやコンテンツ、運営体制等についてデザインラボとサポートオフィス、横浜市の3者で検討を進め、5月1日に3者による連携協定の締結と併せて、「#おたがいハマ」を始動させた。  「#おたがいハマ」の取組は、「伝える(行政情報の提供)」「つながる(対話の場や交流の機会の創出)」「変える(コロナの課題へのアクション)」の3つの領域で展開された。以下にそれぞれの領域での取組について概術してみよう。 (1)伝える  「伝える」では、ともすれば国や県、市と縦割りでバラバラに発信されがちな「新型コロナウイルス」に関する感染対策や感染者数などについての情報を取りまとめ、市民にわかりやすく編集したうえで、基本的に毎日発信し続けることを目指した。(そして2年近くの間、ほぼ毎日更新し続けた)  同時に市内の飲食店のテイクアウト・デリバリー情報をまとめて紹介する「#横濱おうち飯店」など「新しい生活様式」に対応し、コロナ禍を乗り越えるための民間の取組もオンライン上で積極的に取材し、発信することに務めた。 (2)つながる  「つながる」の部分では、医療従事者や介護・福祉等の分野で働く方々、保育士や学校教員など、市民の日々の生活を維持していくために新型コロナの感染リスクを感じながら現場で働き続けている、いわゆるエッセンシャルワーカーを中心に、市内各地の企業、団体、大学などが対話し、交流する場としてオンラインによるトークセッション(「#おたがいハマトーク」)やセミナー(「#おたがいハマセミナー」)を、第1波から第2波の時期は、ほぼ毎日配信し続けた。その結果現在まで、「#おたがいハマトーク」は150回を超え、「#おたがいハマセミナー」は80回を数えている。  リアルで集まることや会話することが制限されるのならば、オンラインでできる限り、多様な人々が現在の状況や思いを語り合う機会を増やして行こうという趣旨である。しかも動画のアーカイブとして、「#おたがいハマ」のプラットフォーム内に保存しているので、オンタイムで視聴できなかったとしても、その気になれば、いつでもどこでも、誰でもアクセスすることができる。それによって、コロナによる市民の孤立と分断を防ぐことに少しでも寄与することができるのではと考えた。  そんなトークセッションやセミナーを繰り返していく中で、2020年8月頃から私たちは、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻の大澤幸生教授と共に、コロナ禍における「新しい生活様式」を市民と共に創りだす取組を始めた。  もともと大澤教授は、独自に開発したデータ可視化技術である「KeyGraph」を利用して、膨大なデータの中から、社会課題の解決やビジネス創生のためのヒントを見つけ出す手法を開発した研究者。大澤教授はその手法をコロナ伝搬解析に応用し、AIを活用し、シミュレーションをした結果から感染防止と社会・経済活動の活性化を両立させるための日常生活の原則を導き出した。それが「Stay with Your Community」という考え方。  大澤教授は、そもそも政府や自治体、そしてコロナの専門家と自称する人たちが宣言し、市民に要請する「人との接触を8割減らせ」や「STAY HOME」、「夜の街に行くな」といった極端に単純化されたスローガンに強い違和感を覚えたという。  「人との接触を8割減らせ」と言うけれど、そんな大雑把な言い方ではなく、誰が、誰と、どのような場所での接触を8割減らせば、社会全体の感染リスクを低下させることができるのか? また「STAY HOME」(とにかく家にいろ、自宅に引きこもれ)というが、それでは、ただでさえ、他者とのつながりが持ちにくい単身高齢者の孤立が深まるだけではないか?一方で、家にこもり、学校や地域の居場所に行きづらくなることは、ネグレクトされている子どもたちやヤングケアラーを追い詰めることにつながらないか?  さらに「夜の街に行くな」という要請は、朝の通勤ラッシュでの接触はあまり問題視されないのに、なぜ夜の街だけが殊更やり玉に挙げられるのか?そしてそれは、夜の街で働く女性たちを差別し、彼女たちの仕事を奪うことにならないだろうか?  このように沢山の疑問を抱いた大澤教授が、国内外の感染爆発の事例を解析し、シュミレーションを重ねた結果、導き出した結論は、まず「感染拡大期は、見知らぬ人との接触を避けること、感染拡大以後に接触のなかった人と新たに対面する機会を作らないこと」という原則だ。例えばウイルスへの免疫を持った人が少ないコミュニティに、新しい感染者が1人でも加わってしまうと、そのコミュニティ全体で感染のクラスターが発生してしまう可能性がある。つまり、コミュニティ間での感染者・保菌者による「橋渡し」を起こさないためには、場所や朝昼夜に関わらず、見知らぬ人との接触は避けることが重要だからだ。一方で、日常的に頻繁に接している人達との接触は、感染リスクが低い。だから不特定多数との接触を避け、日常的な顔の見える範囲でのコミュニケーションや関係性を大切にする。  それが大澤教授が提唱する「Stay with Your Community」の行動原理で、この行動原理を基軸にして、政府や専門家の言う事を鵜呑みにせず、自分に相応しい新しい生活様式を自分の頭で考え、他者との対話によって導き出すためのオンラインワークショップを「共創ラボ」として私たちは繰り返し実施した。  この取組は、現在も「内閣官房COVID―19AI&Simulationプロジェクト」と連携しながら、大澤教授や三重大学の近藤早映准教授のファシリテーションのもとコミュニティカフェに集う女性起業家集団や高齢化が進む団地で活動するリビングラボのメンバー、小学校に通う子どもたちなど、生活のリアルな現場で、多種多様な市民と共に継続的に展開している。 (3)変える  「変える」では、コロナ禍によって、経済的に困窮したり、社会的に孤立しがちな障害者や非正規雇用の女性、高齢者などを公民連携で支援するプロジェクトを積極的に実施した。特に感染拡大の第1波の際には、障害者の作業所にオリジナルの防護服を発注し、それを「おたがいハマ」で集めた寄付で買い上げ、エッセンシャルワーカーに配布するプロジェクトや主婦や特例子会社で働く障がい者スタッフが「クルー」としてガーゼマスクを手作りで縫製・検品・ラッピングし、それらを地域の商店街や販売会会場で販売。クルーには御礼として横浜市内で採れた農作物など地域産品をお返しするというプロジェクトを展開した。  これは第1波の際にマスクや防護服など感染防止のための製品が品薄になったことへの対応と仕事が急減したり、解雇された障害者や非正規雇用の女性支援、そして地域での経済循環の一石三鳥を狙った取組で、現在本市が展開している「横浜版地域循環型経済」の先駆けになるようなプロジェクトであった。  また第3波以降は、市内各地のリビングラボと連携しながら、高齢者を対象にした「スマホ教室」を展開した。スマホ教室は、「ステイ・ホーム」を実践した高齢者が、周囲とのコミュニケーションが途絶えた結果、認知機能が低下して認知症が発症したり、運動不足のため身体機能が脆弱するなどのリスクを回避する目的で企画したもの。同時にコロナ過の中で急速に進むDXに乗り遅れがちな高齢者へのICT支援の目的も兼ねている。  なお、この間私たち以外でも、行政や通信キャリアなど様々な主体によって「スマホ教室」は開催されたが、その多くは、その場限りの単発的なものだった。それに対して、「#おたがいハマ」が「とつかリビングラボ」やサポートオフィスと連携して実施したスマホ教室は以下の特徴を持っている。  ①5回以上の連続講座だったり、スマホセンターなどの拠点での継続的な実施など利用者である高齢者がスマホをマスターできるようになるまで繰り返し学べる仕組みを持っていると共に参加者同士のコミュニティ形成にも尽力している。  ②教室での「スマホ体操」の実施など認知症やフレイル予防に有効な他のプログラムと組み合わせて実施している。  ③講師として医療福祉関連の専門学校生などの若者が中心となって務めることで、若者のキャリア形成支援の一環にもなっている。  このような「#おたがいハマ」を通じて私たちが独自に開発したスマホ教室のプログラムは、現在でも進化し、本市の団地再生や医療福祉のオープンイノベーションのための重要な手法や仕組みの一つとして定着しつつある。 5 最後に  この3年間に及ぶパンデミックによって、私たちが未来に向けて失ったものは、はかり知れない。例えば学校に行かない、行けない子どもたちや、仕事に行かずに自宅に引きこもる若者たちが急増すると共に、結婚しない、子どもを産まない大人たちがさらに増えた。そして、孤独のなかで命を落とす高齢者や誰にも助けを求められずに、自ら命を絶つ女性や若者、子どもたちがいる。  だからこそ、私たちは昨年12月に策定した「中期計画2022〜2025」で、「共に目指す都市像」として「明日をひらく都市」を掲げた。  「明日をひらく都市」とは、様々な困難を抱えていても、その人が望む道を選択し、みんなで応援する都市。また多種多様な人の才能、その人らしい可能性をひらく都市。  そして横浜に関わる、全ての人が前を向き、希望にみちあふれた毎日を送れる、世界のどこにもない都市を共に創る。そこには横浜市のそんな思いが込められている。  そして、その実現のためには、行政だけでなく、これを共に目指す仲間を市民や企業、学識研究者の皆様から募り、増やして行く必要がある。仲間とは、現在、市民として横浜を支えてくださっている方々は、もちろんのこと、横浜で学ぶ方、働く方、そして、今後横浜市民となっていただく方、横浜で生まれる方、すべてを指している。  このような多様で多彩な仲間たちを増やし、より多くの市民が参画するオープンな対話と仲間たちとの先駆的な共創・協働の取組によって「明日をひらく都市」を目指すため、私たちは、今年の2月1日から明日をひらく「YOKOHAMA会議2023」を開催している。  この会議の取組の中で、私が強く感じるのは共創の仲間を増やすために変わらなければならないのは、まず横浜市行政の「職員」や「組織」だということだ。市民の暮らしに感心を持たず、横浜市が直面している課題からも目を背け、市民との対話の輪の中にも参加しようとしない。仮に横浜市が、そんな態度の職員が、のさばる組織であったとしたら、そんな人たちの仲間に誰がなるモノかと、私だったら思う。  ちなみに横浜市職員が個人的な見解や思いと共に自らの業務を振り返ったり、忌憚なく新たな政策を提案することが許されるのが、この「調査季報」という政策情報誌だ。半世紀以上に亘って、職員が職域や職階に縛られず、横浜の都市のあり方や個々の政策や事業について、自由に意見を表明し、議論を闘わせるための場を保障し続ける自治体が持つ稀有なメディア。それが横浜の調査季報だ。  それゆえ、私もそんな調査季報に市職員として寄稿できることを感謝しつつ、本市の公民連携を担う担当者として、この3年間、COVID―19が横浜市民にもたらした災苦に、微力ながら対峙する取組の中で、育まれた自らの見解は、見解として率直に述べてきた。  そして、仮にその見解に対して、読者から批判が寄せられるのならば、執筆者として批判者に対して、真っすぐに向き合い、真摯な対話によって、お互いに理解し合い、改めるべきは改め、共に横浜を創る仲間になって頂くよう精一杯に務める、という覚悟を表明して筆を置きたいと思う。 新型コロナに向き合うたすけあいプラットフォーム #おたがいハマ https://otagaihama.localgood.yokohama/