《2》コロナ禍における横浜市の人口移動 執筆 入江佳久 政策局統計情報課長  人口移動には、転入・転出による居住地の移動と、通勤・通学による居住地(常住地)から従業地・通学地への一日の移動があります。前者は住民基本台帳による統計から、そして後者は国勢調査の従業地・通学地による人口・就業状態等集計結果から分析できます。  今回、コロナ禍にある2020年~2022年の人口移動を、コロナ禍直前の2019年の結果を比較することで、コロナ禍における転入・転出の移動の変化をみてみましょう。また、直近の令和2年国勢調査(2020年)の結果と前回の平成27年国勢調査(2015年)の結果と比較することで、コロナ禍における通勤・通学による日中の人の流れの変化についてもみてみることにします。 1 転入・転出による移動  市の統計で確認できる1947年以降では、横浜市から市外への転出が市外から市内への転入を上回る転出超過となった1993年から1996年及び2011年以外は転入超過となり、コロナ禍となった現在でも続いています。  2020年、長年転出超過となっていた東京都への転出が減り、東京都からの転入が増えたことで転入超過に転じました。また、国外、とりわけ外国人の国外からの転入が激減するなど、これまでの傾向とは異なる動きがみられました。コロナ禍2年目を迎えた2021年の人口移動も、同様の動きが続いていますが、今後も続くのか、あるいは一過性のものとして従来の傾向に戻る動きがあるのか、2022年の数値も出ましたので、流行直前の2019年の結果と比較してみていきます。 (1)年次の転入・転出者数  新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年は、最初の緊急事態宣言が発令されるなど、人流を抑制する措置がとられた影響などから、前年2019年と比べ、転入が9,879人減(15万1,930人→14万2,051人)、転出が8,091人減(13万5,653人→12万7,562人)と、それぞれ大きく数を減らす結果となり、転入から転出を差し引いた転入超過数は1万4,489人でした。  2021年は、転入が2020年に続いて減少して14万人を割り込み、13万9,021人となりました。転入が13万人台となるのは、東日本大震災のあった2011年及び消費税率引上げのあった2014年以来のことです。転出は13万1,362人、転入超過数は7,659人でした。  2022年は転入が前年より9,111人増え、14万8,132人、転出が13万5,172人でしたので、転入超過数は1万2,960人と前年より5,301人の拡大となりました。人口移動の総量(転入者数+転出者数)についても、2019年の水準に戻りつつあります。(図1) (2)月別の転入・転出者数  転入者数を月別にみると、2021年は、12か月のうち8か月で、2022年は7か月で新型コロナウイルス感染症流行前の2019年を下回りました。  特に2021年の4月期は最初のまん延防止等重点措置が発令され、最初の緊急事態宣言が発令された2020年の減少幅よりも大きく減少(△1,806人→△3,283人)しました。通常、就職や進学に伴う移動が多くなる時期ですが、コロナ禍2年目でテレワークが企業などで普及したことや授業をリモートで行う学校が増えたことも、転入の減少につながっている可能性が考えられます。2022年も△2,704人と減少幅は小さくなったものの、減少が続いています。  5月は2020年に転入者数7,424人となり、前年の2019年との比較で△3,998人と、この期間における月別の比較で最も大きく減少しました。2021年は増加に転じ、2022年には転入者数12,472人と増加し、2019年を上回っています。2022年6月以降は、2019年との比較で7月に△1,010人となったものの、大きな増減が見られません。  転出は、2020年5月に対前年比△3,156人と大きく減少しましたが、転入と比べると大きな増減はなく、4月期、7月期を除き、各月で2019年と比べ、あまり大きな減少又は増加は見られない状況となっています。(表1) (3)地域別の転入・転出者数  横浜市の2019年までの転入・転出者数を主な地域別にみると、東京都と神奈川県内へは転出超過、それ以外の地域からは転入超過という人の流れとなっていました。  神奈川県内との移動は、コロナ禍前の2019年と比べ、転入は2020年に441人、2021年に1,467人増加しています。転出は2020年に前年から1,008人減少しましたが、2021年には1,066人増加しました。転出超過数は、2019年に1,969人でしたが2020年に転出が減少したため520人に縮小したものの、2021年は1,568人、2022年には2019年よりも拡大し、2,597人となっています。  東京都との移動は、2020年に転入増、転出減により22年ぶりに転入超過に転じました。2021年もその流れは継続しており、転入超過の幅は拡大(198人→2,685人)しましたが、2022年は再び転出超過に転じ、243人の転出超過となっています。  他道府県との移動は、コロナ禍前の2019年と比べて2020年、2021年と転入の減少が続き(2020年△3,972人、2021年△5,670人)、転入超過数も1万人を割り込み、2021年には6,393人となりました。地方から東京への人口集中の傾向が弱まっていることもあり、東京圏に位置する横浜市への流入も縮小の動きが進んでいました。2022年には転入が若干増加し、転入超過数は8,393人となりました。  一方で、国外からは、感染拡大防止のため水際対策が強化されていた影響を受け、コロナ禍前の2019年より2年続けて転入が大きく減少しており、2019年に8,535人あった転入超過数は2021年では149人まで縮小しました。その後2022年には規制が緩和されたこともあり、転入が増え、転入超過数は7,407人まで回復しています。(表2)  神奈川県内と東京都をさらに細かな地域ごとにみると、神奈川県内は東京寄りの川崎市との移動では2019年に転出超過だったのに対し、2020年には1,733人の転入超過に転じ、2021年には2,147人の転入超過と2年連続増加し、2022年には1,126人の転入超過と減少したものの、転入超過は続いています。  県央地域(相模原市や大和市など)との移動では、転出超過数が2019年に1,815人、2020年に2,046人、2021年には2,772人と拡大し、2022年に若干減少したものの2,515人の転出超過が続いています。  湘南地域(藤沢市や茅ヶ崎市など)との移動でも、転出超過数が2019年の956人から2020年に1,139人、2021年に1,723人と拡大し、2022年に1,789人と、拡大幅は縮小したものの、拡大が続いています。  東京都との移動は、特別区部において2020年にそれまでの転出超過から転入超過に転じ、2021年は転入増・転出減の動きがより大きくなり、転入超過数が3,580人と拡大しました。しかし、2022年には転入超過は継続しているものの、転入減・転出増により、転入超過数は947人と縮小しています。2020年、2021年と、コロナ禍で都心部から郊外へ移住する流れが強まる傾向が見られましたが2022年にはその流れが弱まり、今後、再び転出超過に転じる可能性も出てきています。(表3) (4)外国人の動き  外国人は、水際対策強化のための新規入国制限の影響を受ける形で、国外からの転入が2年続けて減少し(2019年1万3,820人→2020年5,420人→2021年3,357人)、コロナ禍前の半数以下の水準にまで落ち込み、2021年は転出者数(3,735人)を下回る転出超過となっていました。2022年には規制緩和を受けて国外からの転入が12,439人と増加し、2019年に近い状況まで回復しています。(図2) 2 通勤・通学による移動  15歳以上の就業者・通学者の通勤・通学による人の移動を、令和2年と平成27年の国勢調査結果からみてみましょう。 (1)横浜市に常住する15歳以上就業者・通学者  令和2年国勢調査結果で、横浜市に常住する就業者は168万8,272人、通学者は15万9,682人となっています。平成27年国勢調査(以下、「前回」という。)結果と比べ就業者は1万4,359人(0・9%)増加、通学者は2万7,137人(14・5%)減少となっています。従業地・通学地別の割合をみると、「市内で従業・通学」が61・5%で前回(59・5%)から2・0ポイント上昇、「市外で従業・通学」が38・5%で前回(40・5%)から2・0ポイント低下しています。(図3) (2)横浜市に常住する15歳以上就業者  横浜市に常住する15歳以上就業者を男女別にみると、男性が94万2,361人、女性が74万5,911人で、前回(男性97万876人、女性70万3,037人)に比べ男性が減少し、女性が増加しました。このうち「市内で従業」は、男性が49万1,136人(54・2%)、女性が51万5,124人(71・5%)と、前回(男性47万5,439人(51・7%)、女性47万8,853人(71・2%))と比べ、男女とも人数及びそれぞれの割合が増加しています。  一方、「市外で従業」は男性が41万5,304人(45・8%)、女性が20万5,774人(28・5%)と前回(男性44万3, 5 5 3 人(48・3%)、女性19万3,921人(28・8%))と比べ、男性が人数、割合ともに少なくなり、女性は人数は増えたものの、割合は低下しています。  「市内で従業」のうち「自宅で従業」は14万195人で、前回(10万4,081人)と比べ、3 万6, 1 1 4 人、34・7%の増加となっています。令和2年調査では、テレワークをしている場合は自宅を従業地とすることになっていること、従業上の地位別15歳以上就業者数及び割合をみると「自営業主」及び「家族従業者」が減少している中で「自宅で従業」の割合が上昇していることから、コロナ禍以降のテレワークの普及が伺える結果となっています。 (3)横浜市からの流出人口と横浜市への流入人口  15歳以上就業者・通学者の横浜市からの流出人口(市外へ通勤・通学する者)は68万5,403人で、前回(71万7,782人)と比べ3万2,379人(4・5%)減少しています。一方、横浜市への流入人口(市外から通勤・通学する者)は40万5,840人で、前回(41万2,437人)から6,597人(1・6%)減少しています。流出人口が流入人口を27万9,563人上回り、流出超過となっているものの、流出超過数は前回(30万5,345人)と比べ2万5,782人(8・4%)減少しています。(図4) 3コロナ禍における横浜市の人口移動  転入・転出、そして通勤・通学による人口移動についてみてきましたが、統計の数値からはコロナ禍により社会状況が変化し、人口の移動も少なからず影響を受けていることが分かります。これが一時的なものなのかどうかは、今後の動向を注視する必要がありますが、コロナの終息が見通せない現状では、しばらくこの傾向が続くのではないかと予想されます。 参照 「横浜市の人口─令和4年中の人口動態と令和5年1月1日現在の年齢別人口─」 「横浜市の人口─令和3年中の人口動態と令和4年1月1日現在の年齢別人口─」 「令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計結果 横浜市の概要」 「令和2年国勢調査 就業状態等基本集計結果 横浜市の概要」