《1》市民意識調査にみる市民の意識と行動の変化 編集部  本市では、市民の生活の変本市では、市民の生活の変化を捉え、施策、事業に生かしていくため、昭和47年度より市民を対象とした意識調査を毎年実施している。  50年を超えるこの調査では、毎回質問している経年項目を設定しており、また、その回ごとに設定する特集項目についても不定期で何年かおきに設定している質問もあり、サンプルサイズや調査方法、質問の表現等に変化はあるものの、市民の関心や行動の変化、生活環境の変遷をみることができる。  本稿では、経年の推移が確認できる昭和53年度以降の項目を基に市民意識の変化を確認するとともに、令和3年、4年に調査したコロナ禍における変化について報告する。 1市民の生活意識の長期的な変遷 (1)心配ごと・生活満足度  まず、生活における「心配ごと」について、自分や家族の生活のことで心配ごとや困っていることを選択肢から3つ(平成12年までは2つ)まで選択する形式の質問結果から、その変化を見てみたい。  昭和53年当時は消費者物価指数が対前年比で大きく上昇し、生活費も高騰している時期であり、意識調査においても昭和53~56年の心配ごと1位は「インフレや物価高」(平成10年からは「景気や生活費のこと」)であった。その後、物価高が一段落した後昭和57年以降は、「自分の病気や老後のこと」(平成28年からは「自分の病気や健康、老後のこと」)が40年間1位を続けている。令和4年調査では54・2%と半数を超える人が心配ごととして挙げ、2位の「家族の病気や健康、生活上の問題」(38・5%)、3位の「景気や生活費のこと」(25・8%)と比べても重要視されていることが見て取れる。  また、「心配ごとや困っていることはない」という回答に注目すると(図1)、昭和53年から平成初期の頃には3~4割台、時には5割を超える人が生活上の心配ごとはないと回答していた。しかし、平成8年をピークに急激にその割合が下降傾向となる。昭和の終わりごろから始まったいわゆるバブル景気が終息し、就職氷河期や金融機関の破綻などの経済環境の変化が市民生活に実感として影響が表れてきた時期とも重なる。その後も平成14年には2割程度まで落ち込み、令和4年には12・1%と9割近い人が何かしらの心配ごとを抱えて生活しているという状況になっている。  次に、自分の生活に満足しているかという質問で「満足」、「やや満足」を合わせた「満足(計)」をみると、概ね60~80%の範囲内で上下しながら推移している。平成12年に過去最高の83・2%の生活満足度を示したのち一転して減少し、平成16年には64・6%となった。以降の約15年間は、緩やかにではあるが上昇傾向となり、令和4年は75・2%となっている。コロナ禍において、私たちの生活や行動は様々な影響を受けているが、心配ごとはないとする人は減少(心配ごとがある人が増加)している一方、生活満足度は下がることなくむしろ微増傾向にあるという結果となった。 (2)市政への満足度と要望  市政への満足度、要望についても経年で質問しており、設問や選択肢の表記が異なっている点には留意が必要ではあるが、行政サービスに対するニーズや関心事から市民生活の変化を見ることのできる項目である。  まず、市政への満足度では昭和53~63年までの間「ごみの収集」が1位であった。(図1)このほかこの期間に上位であったのは「バス・地下鉄の便」「道路・歩道の整備」、「最寄駅周辺の整備」、「下水道の整備」などである。  その後、平成に入ってからは「下水道の整備」、「ごみの収集」、「バス・地下鉄などの便」などが数年おきに入れ変わりながら1位となり、平成20年以降は「バス・地下鉄などの便」が令和4年まで15年連続で1位を続けている。過去45年間に1位となった項目はこの3項目のみで、2位以下の上位項目を見ても「良質な水の確保や安定供給」、「最寄駅周辺の整備」が占めており、ここ数年間における変動は見られない。  次に、市政への要望をみると、昭和50年代前半に1位となっていたのは「物価・消費者対策」であった。前述の心配ごとにおいても昭和56年まで「インフレや物価高」が1位であったことからも、当時、物価が一番の関心事だったことがうかがえる。このほかの主な上位項目は「病院や救急医療対策」、「下水道の整備」、「老人福祉対策」などである。  昭和60年代に入って「老人福祉対策」が1位に入れ替わり、平成の中頃まで18年間1位を続けていた。この間も「物価・消費者対策」、「病院や救急医療対策」は上位に位置していた。その後、平成12年に項目に追加された「防犯対策」が平成15~19年に1位となったのち、東日本大震災のあった平成23年に「地震などの災害対策」が1位となり、以降令和4年まで12年連続となっている。  この災害対策に加え、「病院や救急医療などの地域医療」「高齢者福祉」「防犯対策」がここ数年の要望の上位であり、その点はコロナ禍においても変動は見られない。  半面、「地球温暖化への対策」は、項目として新規追加した平成22年には15位(17・9%)であったが、令和2年に5位(25・7%)、翌3年にも5位(23・9%)となっており、近年になって市民の関心が高まっていることがうかがえる。  このようにして振り返ると、順位が入れ替わりながらも、満足度については生活やまちの基盤の整備に関する項目が、要望については生活上の安全・安心に係わる項目が多く上位を占めており、過去10数年の間に大きな変動は見られず、それはコロナ禍においても同様であったといえる。 2 生活価値観の変化 (1)住まいに関する意識 ア 定住意向  高度成長期以降、本市では市外から人が大量に流入し、市街化が急速に進んだ。交通網の整備やニュータウン開発などが進み、人口は増加し続け、基礎自治体の中で最も人口が多い都市となっているが、令和4年に入って人口に減少傾向がみられるように なった。この背景には平成28年から出生数より死亡数が多い自然減の状態が続いていることがあるが、市外からの転入数も長期的には縮小傾向にある。  令和2年国勢調査においても、市内居住者(不詳を除く)のうち、居住期間が20年以上の人が約31%、10~20年未満が約22%となっており、5年未満の人については約24%と、近隣の川崎市(約28%)、都区部(約30%)と比べて低く、居住期間が長い人の割合が高い。持ち家に住む一般世帯数は100万世帯を超え、約6割を占める。  横浜市民意識調査の結果では、市民のうち「横浜生まれ」はおよそ3割程度。現在の住まいでの定住意向は、概ね6割から7割半ば程度で推移し、平成元年に76・8%でピークとなった後は減少傾向となった。ここ数年は緩やかにではあるが定住意向が増加、 転居意向は減少して令和4年は過去最低となっている。(図2)  横浜に住み続ける理由は、令和4年調査では、1位が「自分や家族の持家だから」(54・2%)で5割を超え、次いで「長年住んでいて愛着があるから」(37・3%)、「買い物、医療などの生活環境が整っているから」(32・7%)となっている。「横浜が好きだから」(32・2%)、「親や子、親族、友人などがいるから」(31・9%)などを含め、利便性や生活環境よりも、自分とのつながりや心情などによるものが住み続ける理由として上位に挙げられている。 イ 居住地の選択  新たな住まいに転居するきっかけとなる進学や就職・転職、結婚などの事象が生じやすい20~30代は他の年齢層に比べて転出入数が多く、20代だけで転入者全体のおよそ4割を占めている。転入者の総数は減少傾向にあるものの、令和4年においても年間で市外からの転入者が約14万8千人、市内での移動者約6万7千人が、新たな住まいを選択していることになる。  市外から又は市内で居住地を移動した人が横浜市を選んだ理由(令和4年)で最も多いのが「通勤・通学に便利だから」で42・6%、最近5年間に移動した人に限れば50・2%と5割を超えている。仕事をしている市民(15歳以上)のうち、通勤先が自宅を除く市内の人が約53%、都区部が約24 %で、その他を含め9割以上が通勤していることを考えれば交通利便性が重視されることも頷けるだろう。  住まいを決める時に「横浜市」であることを意識したか、という質問(令和4年)では、「当初から「横浜市」に住むつもりだった」とする人が54・9%と最も多く、「いくつかの候補地の中で、最も「横浜市」に住みたいと思っていた」(10・5%)と合わせると「横浜市に住みたい」と思って選んだ人が6割半ばとなる。これは市内で転居した人では割合が高くなると予想されるとおり、区内移動の人では8割近く、市内移動でも約7割になる一方、前住地が川崎市では約42%、川崎市を除く県内で約46%、都区部は約50%など市外からの転入者では低く、また近隣地域であるほど割合が低くなっている。(図3)  また、「いくつかの候補地の中で、最も「横浜市」に住みたいと思っていた」人の横浜市を選んだ理由を見ると、「通勤・通学に便利だから」(52・5%)が全体(42・6%)同様に1位であるが、実に半数を超えている。また、2位には「買い物、医療などの生活環境が整っているから」(27・2%:全体19・4%)が位置しており、他の候補地と比べた上で、交通利便性と生活環境をより評価して横浜を選択したとも考えられる。  住む場所に関する価値感では、「多少生活が不便でも、静かな郊外に住む方がよい」との考えの方が優勢であり、昭和63年には半数近い49・1%が「そう思う」と回答していたが、調査の度に減少し平成29年は21・3%となった。しかし、令和3年は一転して25・3%に増加した。テレワーク等の普及により、通勤の利便性より住まいの周辺環境を重視する人が増えたとも言われているが、そのような面が反映した結果なのかもしれない。  また、「同じ場所にずっと住むよりも、生活の変化に応じて住み替える方がよい」と思う人の割合は、平成8年には43・4%、平成29年は24・4%、令和3年には22・8%であり、同じ場所に住みづつけるという考え方の人が増えている。 (2)しごとに対する意識・価値観  昭和60年当時、「専業主婦」、すなわち夫のみ就業している世帯は、夫婦のいる一般世帯数(不詳を除く)の56%と半数を超えており、いわゆるM字カーブに見るように結婚や出産をきっかけとした20代、30代の女性の離職も少なくなかった。その後、男女雇用機会均等法や育児休業など法律や制度の整備などもあり、就労を続ける女性が増え、夫のみ就業の世帯の割合(不詳を除く)は平成17年に約41%、令和2年には27%にまで減少、逆に共働き世帯は49%と半数近くに上る。令和2年の就業者の男女比は男性56・5%対女性43・5%で男性の方が多いが、平成27年と比べた就業者の増加数7万5千人のうち98%は女性であった。近年ではワークライフバランス等働き方に関する考え方、さらにコロナ禍においては、テレワークや自宅勤務などが急速に広まり男女問わず就労環境や意識が変化する一方、非正規雇用者の増加や企業側と求職者の希望のミスマッチ、ハラスメントなども課題となっている。  市民の職業観については、「いったん職業に就いたら、その仕事を一生続ける方がよい」といった考え方は、昭和62年の45・9%から平成29年に22・7%、令和3年には19・8%と減少している。また、「仕事は収入のためで、仕事以外の自分の生活を大切にする」と考える人は、平成3年の58・6%から平成29年に61・4%、令和3年は63・6%と少しづつ増加、男性に比べ女性の方が大きく変化している。  再雇用や定年延長などが進められている反面、「いくつになっても元気なうちは働くべきだ」と考える人は昭和63年の78・7%から令和3年には59・1%にまで低下する結果となっている。(図4)  「仕事・学業」の満足度をみると、平成28年の41・1%から徐々に上昇し、令和4年は51・3%と半数を超えた。収入についても同様に、32・3%から45・4%に増加しており、仕事や収入はコロナ禍の影響が少なからずあると思われるものの、満足度の増加傾向には変化がみられなかった。 (3)家族・社会との係わり  かつて本市の一般世帯の5割を占めていた夫婦と子供から成る世帯の数を抜き、平成22年以降の最も多い世帯類型は単独世帯となっている。その割合は、令和2年には4割を超えた。  世帯当たりの人員も減少し、家族の小規模化によって、家計や子育て、介護、身の回りの世話など家族内で分担し支えあってきた役割や機能が担いきれなくなったり、過重な負担がかかったり、心身に不調を覚えるような例も生じている。  「夫も家事や育児を分担すべきだ」にそう思うと回答した割合は、平成8年は69・8%、平成29年には72・8%と増えてはいるものの、その差は3ポイントであった。(図5)しかし、令和3年には81・1%となり、平成29年から8・3ポイントも上昇しているのは、昨今の働き方の変化、特にコロナ禍で自宅で過ごす時間が多くなったことなどによる影響も推察されよう。この変化は、平成29年と比べると男女ともに「そう思う」が増えている。  満足度については、「家族との関係」に「満足」と回答した割合は平成28年の74・6%から令和4年の80・1%へと増加傾向で推移しているが、コロナ禍前後での変化はみられない。また、「健康」への満足度も平成28年の52・6%から令和4年の60・7%と増加している。50%超の人が自分の健康を心配ごととして挙げているものの、現状の健康には満足している人が多いということになる。  人や地域との係わりの希薄化などが指摘されているとおり、意識調査の結果を見ても、隣近所とは「顔もよく知らない」、「道であえば挨拶ぐらいする」という程度の付き合い方が6割前後で、「困ったとき、相談したり助け合ったりする」といった比較的親密な付き合い方をしている人は1割前後にとどまる。一方で、そのような付き合い方を「互いに干渉しあわず、さばさばしていて暮らしやすい」と評価する人が過去に同じ質問をした14回の調査のうち最多となった。逆に「親密な人間関係があって、暮らしやすい」は平成12年の23・9%から令和4年の11・5%にまで減少している。ただ、さばさばにせよ親密にせよ、いずれにしてもその状態を「暮らしやすい」と感じている人が9割近くということになる。また、「いろいろな人と広く交流するより、気の合った人と深く付き合う方がよい」と思う人は、平成29年には39・2%、そう思わない人が14・0%だったが、令和3年はそう思う人が56・3%、思わない人が8・7%と大きな変化があり、年齢層を問わずその傾向が表れていた。「大切なのは社会全体のことより、自分の生活だ」にそう思うと回答した人も、昭和63年の41・8%から平成29年に34・6%、令和3年には30・4%と減少している。  また、デジタル技術を活用したサービスなどによる利便性の向上や可能性の広がりを感じる機会も増えているが、「自分の生活が便利になるのであれば、自分に関する情報を知らせたり登録したりしてもよい」という考え方については、「そう思わない」(34・8%)が、「そう思う」(27・8%)を上回っている。 3 近年の状況~コロナ禍における変化 (1)感染症拡大の影響による変化  令和3年と4年の調査において、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響」として、世帯の収入やインターネットの利用など生活上の12項目について、新型コロナウイルスの影響によって「増えた」「減った」「変わらない」のいずれかであるかを尋ねている。(図6)  各年とも「増えた」との回答が多かったのは、「インターネットの利用」、「インターネットショッピングや通販の利用」「家族と過ごす時間」などで、「減った」が多かったのは「友人・知人と過ごす時間」「外出する機会」「店舗に出向いて買い物する機会」などとなっている。人と接する時間や外出などが減り、非接触な場面が増えたのは、多くの人と実感とも合致するだろう。  3年と4年を比較すると、全体的な回答傾向は変わりないが、「減った」とする回答割合が「インターネットショッピングや通販の利用」以外のすべての項目で減少している。一方、「変わらない」は「世帯の支出」以外のすべての項目で増加した。特に、「外出する機会」では「減った」が15・3ポイント減少し、「変わらない」が13・3ポイント増加、「友人・知人と過ごす時間」では「減った」が11・2ポイント減少、「変わらない」が9・3ポイント増加するなど、行動を抑制することで減少していた外出や交流などの行動についても、この1年の間に少しずつでも以前と「変わらない」状態になっていることがうかがえる。  また、「しごと・労働時間(学業を含む)」を年齢別に比較すると、20代以下では「増えた」と「減った」がいずれも2割前後であまり変化がなかったが、30代以上では、「増えた」と「変わらない」が増加、「減った」が減少した。特に50代は顕著で、「減った」が28・9%から12・3%へと大きく減少した。  さらに、どのような変化があった人がどれ位いるのかをみるために、12項目を大きく4つのカテゴリー―収入、支出、仕事などに関する『家計』、通販やネットショッピングを含む『インターネット利用』、一人や家族と過ごす『自分・家族との時間』、友人や地域の人とのつながり、外出、買い物、運動などの『交流や外出等の活動』―に分類した。その上で、それぞれに属する項目のうち1つでも「増えた」あるいは「減った」と回答した場合は「変化あり」、そうでない場合は「変わらない」として分析を行った。(4年度調査で12項目全てに回答した2031名を対象)  その結果(図7左)、全項目において「変わらない」とした人は6・2%で、約94%の人が何かしらの変化があったと回答している。そのうち、影響を受けた範囲が最も広い、全4つのカテゴリーで変化があった人は全体の27・6%で最も多かった。この層の年齢構成を見ると50代が約25%で最多を占めているが、回答者全体の年齢割合と比較すると、20代、30代の割合が多く偏りがみられる。実際、年齢層ごとに全カテゴリーで変化があった人の割合を見ると(図7右)、20代以下、30代では4割近く、40代、50代で3割前半、70歳以上では1割台であり年齢層が低いほど割合が高くなっている。逆に、全項目において「変わらない」とした人では高齢層で割合が多い。  2番目に多かったのは、『家計』には変化がないがそれ以外のカテゴリーでは変化があった人たちで12・4%、次いで『自分・家族との時間』以外のカテゴリーで変化があった人たちが10・4%である。これらのグループも40代、50代が多いが、回答者全体の年齢の構成から見ると、特に『家計』以外に変化があったグループで20代以下が多く、総じて20代以下~40代でより多岐にわたって変化を感じている。 (2)以前より重要になったこと  「新型コロナウイルス感染症の影響により前より重要だと感じるようになったこと」をいくつでも選択する質問では、最も多かったのが「同居する家族・親族等」で48・1%、次いで「離れて暮らす家族や親族」が43・9%となっており、家族等の重要性をより感じるようになった人が多いことがわかる。ただし、年齢別にみると「同居する家族・親族等」が1位なのは50代(53・4%)、60代(47・1%)、70歳以上(46・9%)の層で、18~29歳では「友人・知人」(51・6%)、30代、40代では「収入や貯蓄」(それぞれ60・1%、49・9%)が最も多くなっており、世代によって差が表れている。特に30代では、1位の「収入や貯蓄」を選んだ人は6割を超えており、経済面での影響が他の年代より大きかったことが想像される。また、1人当たりの項目選択数は3・90個で、全体の3・16個や70歳以上の2・68個などに比べて多く選択しており、30代がコロナ禍の影響をより多く感じていると考えられる。  また、前より重要ではなくなったことを同じ項目から選択する質問をしたところ、およそ6割が「特にない」と回答した。最も多かった「通勤や通学のしやすさ」は全体で9・2%、実際に通勤・通学するであろう自営業以外の就労者と学生に限ると12・8%が前より重要ではなくなったとしている。働き方の変化、テレワークの広がりなどによるものと考えられるが、半面、「通勤や通学のしやすさ」が前より重要になったとした人の割合が全体で13・8%、自営業以外の就労者と学生では21・1%であり、重要ではなくなった人の割合を超えている。どのような点で「通勤・通学のしやすさ」の重要度が増したのかを調査から読み取ることができないのは残念であるが、通勤・通学者のおよそ3人に1人に起きたこのような変化が居住地選択や働き方などにどのように表れるのか興味が持たれるところである。 (3)行動範囲と頻度の変化  コロナ禍前の平成30年と令和4年を比較すると、「食料品・日用品を買いに行く」頻度は、「ほぼ毎日」が25・1%から19・6%に減少、「週に2~3回」が41・3%から46・1%に増加するなど、頻度が少なくなっている反面、行く場所(行動範囲)については住まいの周辺か市内かなどの割合に変化は見られなかった。  「散歩をしたり、公園へ出かける」については、「しない」が23・8%から19・1%に減少し、「ほぼ毎日」「週に2~3回」がそれぞれ4ポイント程度増加するなど頻度が増えている。特に男性50代では「しない」人が26・2%から16・0%に約10ポイント減少、その分「週に2~3回」が約10ポイント増加した。一方、女性30代では「しない」はあまり減少せず、「ほぼ毎日」が約10ポイント減少し、「週に2~3回」「週に1回」がそれぞれ約10ポイント増えており頻度が減っている。 ─────────────  見てきたように、コロナ禍においては生活行動に大きな変化が生じた。だが、これらの多くは状況に対応するための変化と考えられ、調査結果を見ても、以前と「変わらない」とする人も増えており、その変化が定着するかはまだわからない。  一方で、考え方や価値観については急激な変化はあまり見られず、これまでの傾向に強弱がついた程度の印象である。ただし、意識や価値観は長期的には変化を見せており、市民全般に広く影響したコロナ禍という体験が今後どのように市民の意識や生活に影響していくのか、あるいはしないのか。その変化と市民ニーズをとらえる基礎的な調査として、引き続き市民意識調査を実施・活用していきたい。