《14》座談会/「暮らしやすさ」を考える 張 珂(ちょうか) 林 錦園(りんきんえん) 毛 文静(もうぶんせい) 阿部 倫三 埋地地区連合町内会会長 進行 中村 暁晶 なか国際交流ラウンジ館長 小池 浩子 中区地域振興課 木村 香里 中区区政推進課 ■自己紹介〜なか国際交流ラウンジとの関わり 【中村】私は、本日の進行役で、なか国際交流ラウンジ(以下「なかラウンジ」という。)の館長を務めています、中村です。  全国的に、また横浜市でも、外国人の人口が増加しているところですが、今日は外国人市民・日本人市民の立場からお集まりいただいた皆さんと一緒に「暮らしやすさ」ということについて考えていきたいと思います。  では初めに、皆さんから自己紹介をお願いしたいと思います。 【張】はじめまして、張珂と申します。今、なかラウンジでアルバイトをしています。2001年に夫の仕事の関係で来日しました。現在は西区に住んでいますが、マンションの役員や自治会の役員を務めた経験があります。現在も環境委員を務めており、外国人住民の困りごとなどの対応もしています。 【阿部】阿部と申します。埋地地区の連合町内会長をしています。その地区内のマンションの自治会の責任者もしています。  なかラウンジとの関わりは、また後で話が出てくると思いますが、マンションで外国人向けのポスターを作るとなったときに、相談をさせていただきました。ポスターの中国語と英語の翻訳をしていただき、その後、地区のことや催しのことなどでいろいろとお世話になっています。 【毛】毛文静と言います。今、大学1年生です。両親が先に日本に来ており、一緒に暮らすため、中学1年生のときに日本に来ました。なかラウンジとはRainbowスペース(※1)の活動に参加するなどの関係があります。 【林】林錦園と申します。私も毛さんと同じように母が仕事のため先に日本に来ており、一緒に暮らすため、中学2年生のときに来日し、それ以来中区にずっと住んでいます。高校、大学、大学院まで進学し、現在は、なかラウンジで若者たちの居場所づくりなどの活動を行うRainbowスペースのコーディネーターをしています。 【小池】中区役所の地域振興課の小池と申します。なかラウンジを担当して5年になります。これまで区の国際交流や多文化共生に関する取組や施策なども、いろいろと変化がありましたが、それに合わせて、なかラウンジの事業を拡大することや新規事業を立ち上げることなどに携わってきました。よろしくお願いします。 【木村】中区役所区政推進課の木村と申します。昨年度から中区役所に配属になりました。多文化共生の関係では、区役所内の庁内プロジェクトの企画調整を行っています。庁内プロジェクトでは、日本語教室等に職員が出向いて行政情報を伝える出前講座の開催や、中区に初めて転入された区民の方向けのウェルカムキットという冊子を作成するなどの活動をしています。なかラウンジには、その関係でご助言をいただいたり、一緒に活動していただくなど、ご協力をいただいています。よろしくお願いします。 ■日本で暮らす〜日本語と文化 【中村】ありがとうございます。外国人市民の皆さんは、日本に住まわれて長いようですが、来日当初、日本語や日本の文化が分からないときと今とを比較して、何か感想などはありますか。 【張】来日当初は、やはり一人で何も知らない状態ですので、例えば子どもに友だちをつくってあげたいと思っても、どこに連れて行ったらよいのか分からない。また、私も友だちがなかなかできずにいました。挨拶をしても挨拶だけで話が続きませんでした。その後に自治会に入ったのは、優しいマンションの方にお誘いを受けるというきっかけがあったからです。それからふれあいの場面が少しずつ増えてきました。子どもの中学校の役員にもなりました。何年間かかけて少しずつ周りから信頼を得て、他の保護者の方とも仲良くできるような環境ができてきました。こういった経験から、家に籠っているのではなくて、外に出て、少し社会貢献のようなことをしてみると、思いがけないところで、みんながすごくよく見てくれていると感じました。ただ、一人で自分から始めるには不安感や怖さがあります。「これはこういうことですが、一緒にやりませんか」と声をかけてくれればと思います。 【中村】同じような経験を毛さんや林さんもしていると思いますが、いかがですか。 【林】そうですね、挨拶はしますが、話は深まらないということはありました。例えば友だちとカラオケの話題になって、カラオケは知っていても、新しい曲のことなどは分からなくて、うまく話が続かなかったりしました。 【毛】文化も違うし、興味も違うということもあると思います。 【中村】そうすると、話も盛り上がらないし、遠慮してしまうということですね。 【林】そうですね。 【中村】お話を聞いていると、一つの言葉の裏にある文化を知らないことで、相手との距離を感じてしまうということがあるような気がしました。林さんは、自分が日本語を話せるようになって変わったことはありますか。 【林】大学のときは、日本のことを知ろうとして、ドラマや新聞、特にニュースなどを好きでよく見ていました。日本語が上手になって、日本のことを知り始めると、少し自信が付いてきます。相手が話していることも、きっと自分は知っていると思って、少し勇気を出して会話に入っていったり、分からないことがあっても、自分から聞いて理解をして話を進められるようになりました。 【中村】張さんは、他の保護者の方との交流の中で、感じたことなどはありますか。 【張】私がびっくりしたのは、幼稚園で自分の子どもをはじめて紹介するときに、日本人の方は自分の子どもの悪いところを言うことでした。「私の子は落ち着きがない」とか、「やんちゃな子」とか、「みんなに迷惑をかけるかもしれない」などと言っていました。私からすれば、自分の子はかわいいですし、他のどの子もかわいいです。いろんな性格はありますが、悪いところは見つからない。だから、それは文化の違いなのかなと、そのときは思いました。 【中村】そういうことはなかなか教科書≠ノは書いていないし、教えてくれる人も多分いないと思います。 【張】そのときは、私も同じように「うちの子は実は…」と悪いところを取り上げて話をしました。 【中村】そういった文化を経験の中から学んでいくということですね。ただ日本語を教える・学ぶのではなく、どういう場面・文化の中でこの日本語を使っているのかというようなことを理解していくことがすごく重要だと思いました。  そのほか、日本での暮らしの中で、困ったことや驚いたことはありますか。 【張】これは私の父と母の話ですが、日本では、ごみを決められた曜日にしか出せません。ですが魚などの生ごみをその曜日までずっと家に置いておくことはできないということで、外の廊下に置いていて注意されたことがありました。 【中村】外に出してしまう気持ちは分からなくはないですが、ほかの住民からすると「文化が違う」というふうに思われるかもしれないですね。 【張】「文化が違う」と言うふうには、日本人の方は思わないのではないでしょうか。どちらかと言うと、「常識外れ」と思われてしまうかもしれません。 【阿部】地区の人から同じような話を聞きました。マンションのエントランスで魚をさばいている人がいたとか。それが普通なのかな。 【張】ごみ袋のまま、外に出すのが普通ですね。 【阿部】その辺りの違いがよく分からないところです。 【張】中国ではごみに関して分別や粗大ごみなどの区別や制限はなく、24時間毎日出せることから、ごみに対しての意識はあまりないのだと思います。 【中村】張さんは、冒頭でマンションの外国人住民の困りごとなどの対応をしているとお話しされていましたが、どのような内容が多いのですか。 【張】日本に来てからの役所などでのいろいろな手続のことや、自治会の仕組みのことが多いです。また、分からないことがあれば、是非なかラウンジも利用してくださいとお話しています。 【中村】ありがとうございます。お魚のごみのことも一つの例に過ぎないですが、国の違いや民族習慣の違いというふうに話をしてしまうと、何かすごく遠い話で、なかなか距離が縮まらないという感覚になるように感じます。ですが、「隣の張さんにちょっと教えてもらおう」とか、そういうことがあると、いろいろなことが改善されるような気がします。 【張】そうですね、コミュニケーションがとれるようになれば、きっと楽になると思います。 【中村】阿部会長は今のお話を聞いていかがですか。 【阿部】今日ご出席の方は皆さん来日して長いベテランですね。やはり日本語や日本の文化を理解することには時間がかかるのだと感じました。それから、先ほど張さんからお話をいただいた自分の子どもの紹介のことですが、日本人の「謙虚」という言葉に関連するように思いました。「謙虚」というのは少し一歩下がって、お先にどうぞ、みたいに控えることですが、本当はこう言いたいというのが日本人にもあるけれども、一段下がった言い方をする。行動も多分そうだと思います。そういうのも文化であり、大切にしなければいけないことだと思っています。最近は少なくなってきているかもしれませんが。 ■地域で共に暮らす 【中村】地域で暮らす外国人が増える中で、感じていることや考えていること、実践していることなどはありますか。 【阿部】私のマンションでは、外国の人は以前は一人もいなかったのですが、5、6年前くらいから増えてきました。最初は4、5軒でしたが、1、2年経つと倍になって、今は15軒くらいです。それで、マンションでちょうどその人たちと鉢合わせをしたときに、顔は見るけれども、お互いに挨拶するということがありませんでした。エレベーターで乗り合わせても、一応見はするけれども、という感じです。  マンションでは、自治会を作ったときから「住みよい」ということを目指して24年やってきました。「住みよい」というのは「暮らしやすい」と同じ、イコールだと思っています。暮らしの中では、例えば災害や防災のことなどで、高齢の人や障害のある人は特に困ることがあると想像できますが、その人たちを支えていくことについても検討が必要であり、また、外国人も増えている状況でした。そうした中で考えたのが「挨拶運動」です。何の関係もないと、何か困ったときに誰にも助けを求めることができないし、分からないことがあっても聞けませんよね。だから挨拶をして、挨拶をしているうちに、次の段階ではもう一言付け加えられるような関係になれたらよいのではないか。それでこの取組を始めました。そのときにマンションに掲示するポスターのことをなかラウンジに相談させてもらいました。取組を始めてから3年目くらいでマンションのほとんどの人は挨拶をするようになりました。  私は外国人か否かにかかわらず、「住みよい=暮らしやすい」ということは、一つ目は安心して暮らせる、二つ目は気持ちよく暮らせる、三つ目は楽しく暮らせる。大きくこの3つであると考えています。こういったことを実感してもらうためには、挨拶も必要ですよね。そこからお互いに見守るという関係ができればと思っています。 【中村】「安心して暮らせる・気持ちよく暮らせる・楽しく暮らせる」というスローガンは、外国人にも共通するテーマでもあるのではと、お話を伺っていて思いました。 【阿部】みんなが教え合える関係になればと思いますし、それが普通になってほしいと思います。  周りから聞く話では、外国の方向けにいろいろな貼り紙をしたとか、そういう話も聞きますが、結局は外国人は自分たちの文化や習慣、生活に合ったやり方で生活して、そのままになってしまっている人もいる、という訳ですよね。日本人にとっては、それが日本と違うというのが頭で分かっていても、「自分たちと同じようにやらない、ルール違反」ということが先に頭にあって、不満につながってしまっていると思います。少し冷静に考えると、自分たちが外国に行ったときには、やはり周りを見て合わせるだろうと日本人は思いますが、でも仕方ない。分かってもらうしかないと思います。 【中村】そうですね、歩み寄ることですよね。 【阿部】最低限のことは分かってもらうしかないけれども、どうやって理解してもらうのかというのが課題ですよね。 ■多文化共生の取組から 【中村】区役所の多文化共生に関する事業では、なかラウンジも関わっているものがあります。小池さん、ご紹介をいただけますか。 【小池】はい。先ほど阿部会長からお話のあった「挨拶運動」でなかラウンジにご相談いただいたことも一つのきっかけになった事例ですが、外国の方でも「地域の方の何か役に立ちたい」という気持ちを形にして、外国の方が地域のお手伝いをする仕組みをつくれたらということで、多文化共生ボランティアの派遣事業というものを平成30年度から始めました。元々なかラウンジには日本語教室や学習支援教室(※2)に関連してボランティアの登録制度があったのですが、実際にそういった方が地域に出てボランティア活動ができる仕組みをつくろうというものです。  具体的には、地域からのイベントの案内やチラシ、防災訓練や夏祭りに参加する外国の方への対応ということで、翻訳や通訳のお手伝いをさせていただいています。今年は山下町の夏祭りのイベントにボランティアがグループで参加をして、ブースを一ついただきました。そのブースでは、ごみの分別を覚えてもらおうと、ボールプールの中にいろいろなごみを入れた分別の釣り堀ゲームをしたのですが、お子さんたちや外国人の方、ご家族連れの方などがいらっしゃって、すごく盛り上がりました。  実際にこの活動に関わってくれているのは主になかラウンジの学習支援教室の卒業生など、支援を受けてきた若者たちが中心となっています。これからは外国の方が支援を受けるだけではなく、両方の言語ができることを生かして今度は地域の中で活躍する、というような広がりにもっとつなげていけたらと思っています。 【中村】ありがとうございます。なかラウンジが参加した地域のイベントとして、埋地地区の餅つき大会がありましたが、そこには毛さんや林さんも参加していたんですよ。いろいろな感想を持ったと聞いています。毛さんはいかがでしたか。 【毛】地域の活動に参加して、地域の方と関わりができて、お餅を作るという一つの目標に向かってみんなで一緒に頑張るというときには、自分は外国人であるとかないとかは思いませんでした。 【林】毛さんはお餅をついたりもしていたのですが、お餅を作る方にも参加していて、地域の方たちによく溶け込んでいました。どこにいるのと探すくらいに。とても楽しそうにしていました。 【阿部】餅は臼と杵でついて作るけれど、あのとき、ついていたら杵の先っぽが欠けてしまったんですよね。 【中村】阿部会長、今だから言えますけど、それを壊したのは彼女(毛さん)だったんですよ。 【毛】ちょっと力が・・・ 【一同】(笑) 【中村】毛さんからの言葉にあったように、多分、自分は学校でもどこにいても、常に外国人として生きている。でもあのとき、あの場ではそういう感じはしなかったとお話をされました。毛さんが一番最初に私に言ったのは、「全然外国にいる感じはしなかった」、「まるで自分のふるさとにいるようだった」、「参加してすごく良かった」ということでした。 【阿部】そういう気持ちだったということも、こちらは分かっていないんですよね。日本人へもこういうことを知らせていかないといけないと思います。 【中村】こちらもちゃんとお伝えしないといけないですね。 【阿部】また1月にやりますから、是非。 【中村】今度は壊さないでくださいね。 【一同】(笑) 【中村】その他の活動で感じたことはありますか。 【林】Rainbowスペースという活動が始まって1年目に、初めて地域の活動に参加したのが、確か埋地地区での防災訓練の活動でした。私も来日して長いですが、初めてそのときに「地域の一員でもある私」に気付くことができたかもしれないです。 【中村】それをもっと多くの外国人に感じてほしいですよね。そのために、なかラウンジでも広報などにもっと力を入れる必要があると思っています。より多くの人に来てもらえるようになるといいですね。 【林】実際に翻訳されたチラシを見て参加したという人も何人かいました。学習支援教室の卒業生たちも、活動に参加した後、ボランティアをやってみたいとなかラウンジに相談に来ることもあり、そういったサイクルができつつあると感じています。 【中村】先日、なかラウンジ主催の中区多文化フェスタ(※3)がありましたが、そこでは彼女たちが自分たちのライフストーリーを映画にしたものを上映しました。また、Rainbowスペースの事業では、自己表現や、地域活動を通して日本の文化や社会について学んでいます。そういったことを通して、感想などはありますか。 【林】阿部会長のおっしゃっていた「安心・気持ちよく・楽しく」の3段階のスローガンに関連して考えてみたのですが、日本に来た当初は、周りが安全であれば安心して暮らすことができると思います。そして中区に来たら、中国語に翻訳してくれるサービスがあったり、身の回りのことが難なくできるようになったら、気持ちよく暮らせると思います。日本語が話せなくても、私たちが地域の通訳ボランティアとしていれば、来てくれた外国人のお客さんは、そのイベントに気持ちよく参加できると思います。私たちはその活動の中ではイベントのチームの一員として動いている。私たちにとっては、それが楽しく暮らせているということだと思いました。 【中村】ありがとうございます。「暮らしやすさ」というのは、やはり国籍に関係なく、みんなが多分望んでいることで、きっとゴールは同じような気がします。 【阿部】やはり、外国の人たちはこういう人で、こういうことを考えているということを正確に理解する必要があると思います。日本人の意識をやっぱり変えないと。どうしていくのがよいのでしょうか。 【中村】例えば、この間の中区多文化フェスタの中で上映した、若者たちが作った映画を見ていただくとかはどうでしょう。 【阿部】あの映画は全て若者たちの自作と聞いて驚きました。林さんが中心になって作ったと聞いています。少し時間が長いけれど。 【一同】(笑) 【阿部】でもすごくよく考えられているし、俳優も上手だと思いました。この映画はその後どうしたのですか。 【中村】これから区役所などでも上映する予定です。 【小池】まず区役所の職員に観てもらいたいと思っています。それから、更に観ていただく機会を増やしていきたいと思っています。 【阿部】国の機関や芸術関係などの組織の賞などに応募してみるのもよいかもしれないですね。そうすれば全国の人に観てもらう機会ができるかもしれない。このままにしておいたらもったいないと思います。 【中村】やはり観てもらって、理解をしていただくということですよね。よいアドバイスをいただきました。 【林】ありがとうございます。 ■「暮らしやすさ」を考える 【中村】本日の座談会を受けて、「暮らしやすさ」について感じたこと、考えたことについて改めてお話を伺っていきたいと思います。 【張】私は「きっかけ」が大事だと思います。「一緒に○○しませんか」の声かけがなければ、自分から参加したり、地域に入っていくことはできないと思います。なかラウンジのRainbowスペースを通してでも、何でもよいのですが、何かそういうきっかけ、チャンスをつくってあげることが大事だと思います。最初に何も分からないまま新しい世界に入っていくのは怖いものです。 【阿部】その声かけのためにも、困っていることや悩んでいることを周りが聞いてあげられる環境づくりが必要だと思っています。だから、まず日本人にも挨拶から始めてもらう。そうしていけば、いずれ相手からも口を開いてくれるような状態になるでしょう。時間がかかることだとは思いますが、みんなでやっていかなければならないことだと思います。 【木村】お話を伺っていて、挨拶運動には、いろいろな意味が含まれていると思いました。なかなか声をかけられないでいる日本人の背中を押すということもできる、そういうものも必要だと思いました。 【阿部】自分がよそに引っ越しをしたときのことを考えると、初めて声をかけてくれた人とか、例えば小学校で転校したときや、大人だったら転勤したときなどに、初めて親切にしてくれた人というのは今でも思い出せますよね。だからやはり日本人の方から働きかけていかないといけないと思います。  あとは親よりも子どものほうが日本語を分かっていることも多いので、日本人と外国人の両方の若い人たちにももっと意識してもらう必要があると思います。 【毛】外国人にも若者から高齢者までいろいろな人がいます。先ほど話の出た餅つき大会では、中国人のおばあさんと会いました。チラシを見て参加したとのことでしたが、話を聞くと、毎日つまらない生活を送っているようでした。だから、みんなが集まれるような地域活動があったらよいなと思いました。いろいろな人に向けたきっかけづくりが必要だと思います。 【林】参加に当たって、自分は今、暮らしやすいのかを考えていたのですが、実際に関内駅の近くでは中国のお店が増えてきていて、中国語だけでも暮らせる環境が実は揃いつつあります。そして、関内の近くにもっとお店が増えて、衣食住が中国語で全てまかなえるような場所になったことを想像して、ではそれは私にとって暮らしやすいのかを考えてみましたが、答えは「そうではない」と思いました。生活面において中国語で全てアクセスできるというのは便利なことですが、では楽しく生きられるかと考えたときに、「それだけではない」と思いました。自分の経験からも、日本という場所で暮らして、地域活動であったり仕事であったり、日本社会とつながる場所があることで、楽しさや暮らしやすさを感じることができるのではないかと思います。 【小池】なかラウンジの役割として、暮らしやすさをどうしていくのかを考えたときに、今、林さんが仰ったように、自分が外国に行ったときに、日本人街があって、そこで全てをまかなえてしまったら、同じ気持ちになるのではないかと思いました。確かに暮らせはするけれども、その国に溶け込むということまでには至らないですよね。外国の方が日本に来たとき、まずは不安を感じると思いますが、例えば母国語でいろいろなことなどを相談できる場所があること。その役割を中区で言えばなかラウンジが担っていると思います。そして今度は、その人たちが気持ちよく、そして楽しく地域に溶け込むための仕組みをつくったり、情報を発信したりすることも、一つの役目だと思います。こういったきっかけづくりを増やしていければと思います。 【木村】感想になってしまいますが、今日参加された外国人市民の皆さんは、横浜に住んで長い方が多く、中区にはそういった方がたくさんいらっしゃって、それが中区の強みだと感じました。一方で、中区が行った調査では、新しく増えてきている国籍の方もいます。また、留学生で短期でいらっしゃるような方もいます。そういう方たちは、なかなか皆さんの思うような「暮らしやすさ」を感じるところまでには行き着かずに帰国されてしまう方も多いのではと思います。そういった方に対しても、何ができるのかを考えていく必要が出てくるのでは、と感じました。 【中村】暮らしやすさを感じてもらうために、なかラウンジでは、ベーシックな業務として、日本語が全くできないまま日本にやってきた方などに対して言葉のサポートを行い、正確な情報を伝え、遠回りしない解決の道筋をつけていくようなことはこれからも行っていく必要があると考えています。それに加えて、今考えているのは、外国人と日本人が交流を行い、お互いの気持ちを知ることのできる「きっかけ」の場をもっと創出していきたいということです。お互いが歩み寄り、いろいろなものを創り出せる、そういう街になれば、お互いに暮らしやすい街になるのかなと、そういう感想を持ちました。  今日はありがとうございました。 ※1 Rainbowスペース  外国につながる若者のための居場所。外国につながる若者自身が企画運営を行い、外国につながる若者たちが自分の可能性に気付き、表現できる居場所を目指して活動を行っている。平成29年12月から始まった取組で、令和元年度からはなか国際交流ラウンジの事業となる。 ※2 学習支援教室  なか国際交流ラウンジの事業で「中区・外国人中学生学習支援教室」を指す。放課後の時間帯に初期日本語や国語、数学、英語等の学習を支援する。サポーターとして学習支援教室の卒業生も参加している。 ※3 中区多文化フェスタ  令和元年9月29日に横浜市開港記念会館で開催された「中区および周辺地域に住む外国人と日本人が交流する場」、「多様な文化に触れる場」、「外国人がそれぞれのこころの『おもい』を表現する場」をコンセプトに様々なプログラムを行ったイベント。今回で9回目の開催となる。