《9》新たな外国人材の受入れについて 執筆 出入国在留管理庁 平成30年12月14日に、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が公布されたことにより、中小企業を始めとする深刻な人手不足に対応することを目的として、在留資格「特定技能」が創設されました。本稿ではその概要等について紹介します。 1 在留資格とは  出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)においては、外国人が我が国に入国・在留して特定の活動を行うことができる法的地位又は特定の身分若しくは地位を有する者としての活動を行うことができる法的地位を類型化した「在留資格」のリストを定め、外国人が本邦において行おうとする活動がいずれかに該当する場合に限り入国・在留を認めています。  在留資格は、一定の活動範囲で就労が認められるもの、就労が認められないもの及び活動制限がない身分・地位に基づくものに大別されます。また、就労が認められない在留資格についても、資格外活動許可を受けた場合は、一定の範囲で就労が認められます。  本稿の主題である特定技能は、特定産業分野の各業務従事者を対象として、一定の活動範囲で就労が認められる在留資格に含まれます。 2 特定技能制度について (1) 平成30年に入管法が改正された背景  アベノミクスの推進により、成長から分配への経済の好循環が着実となりつつある中、平成30年の法案提出の時点でも有効求人倍率が1.6倍を超える高さとなっていました。その一方で、少子・高齢化により生産年齢(15〜64歳)人口は毎年減少し、全人口の6割を切るまでになり、人手不足が深刻な問題となっていました。この喫緊の課題に対応するために、人材確保を図るべき産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを可能な限り早急に構築する必要がありました。そのため、入管法等改正法案が同年の第197回国会(臨時会)に提出され、同国会において成立しました。 (2) 制度の概要  我が国においては、入管法等に基づき、就労資格の外国人(高度専門職等)、留学生、技能実習生、観光客等の短期滞在者等の受入れを行ってきましたが、ここに今回創設された「特定技能」が新たに加わることとなりました。  「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格であり、「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。  ここで、特定産業分野というのは、「介護」、「ビルクリーニング」、「素形材産業」、「産業機械製造業」、「電気・電子情報関連産業」、「建設」、「造船・舶用工業」、「自動車整備」、「航空」、「宿泊」、「農業」、「漁業」、「飲食料品製造業」、「外食業」の14分野であり、「特定技能2号」は、「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみにおいて受入れが可能となっています。  そのうち「特定技能1号」のポイントは、 ・在留期間が通算で上限5年までであること ・技能水準は、試験等で確認 ・日本語能力水準は、生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認 ・家族の帯同は基本的に認められないこと ・受入れ機関又は登録支援機関による支援が必要 などが挙げられます。ただし、技能水準と日本語能力水準については、技能実習2号を良好に修了しており、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合には、試験等が免除されます。  これに対して「特定技能2号」のポイントは、 ・在留期間の更新の回数に上限はないこと ・技能水準は、試験等で確認 ・日本語能力水準は、試験等での確認は不要 ・家族の帯同は、要件を満たせば配偶者及び子の帯同が可能であること ・受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外であること などが挙げられます。 (3) 受入れ機関について  特定技能外国人の受入れ機関には、次の基準を満たすことが求められます。 @ 外国人と結ぶ雇用契約が適切なものであること  例えば、報酬額が同等の業務に従事する日本人と同等以上であることなどです。 A 受入れ機関が雇用契約を適正に履行する機関であること  例えば、5年以内に出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行っていないことなどです。 B 外国人を適正に支援する体制があること  例えば、外国人が十分に理解できる言語により相談対応ができることなどです。  なお、支援については、登録支援機関に委託することも可能であり、支援計画の全部の実施を委託すればこの基準を満たすことになります。 C 1号特定技能外国人支援計画が法令の基準に適合していること  1号特定技能外国人ごとに支援計画を作成する必要があり、内容としては、例えば、定期的な面談に関する支援を3か月に1回行うことなどが必要です。  その他、受入れ機関には、出入国在留管理庁長官に対して、受け入れている特定技能外国人の活動内容等の定期又は随時の各種届出を行うことが義務付けられています。届出義務を怠ると、罰則の適用があり注意が必要です。 (4) 登録支援機関  登録支援機関とは、受入れ機関との支援委託契約により、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を行う個人又は団体のことであり、出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要があります。登録の期間は、5年間であり、更新が必要です。また、登録支援機関は、出入国在留管理庁長官に対し、支援の実施状況などの定期又は随時の各種届出が義務付けられています。  登録支援機関の登録を受けるためには、例えば次の登録拒否事由に該当しないことが求められます。 @5年以内に出入国又は労働関係法令に関し不正行為を行ったこと A外国人が十分に理解できる言語により相談対応する体制を有していないこと  なお、登録を受けた後であっても、@やAに該当する場合、登録を取り消されることがあります。 (5) 協議会  特定技能制度における受入れ機関に求められる主な基準の一つとして、分野別の協議会に加入することが挙げられます。  特定技能制度においては、制度の適正な運用を図るため、各分野ごとに分野所管省庁が協議会を設置しています。協議会は、分野所管省庁のほか、受入れ機関、業界団体、関係省庁で構成され、分野によっては学識経験者や登録支援機関なども構成員となる場合があります。  協議会は、構成員の連携の緊密化を図り、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れることができるよう、制度の周知や情報共有、法令遵守の啓発のほか、地域ごとの人手不足の状況を把握し必要な対応を行うことが想定されています。  また協議会の重要な役割として、例えば、特定技能外国人が大都市圏その他、特定地域に過度に集中して就労していることが認められる場合において、協議会構成員に対する受入れ自粛等の要請を行うといった対応も含まれます。  特定技能外国人を受け入れようとする全ての受入れ機関は、その分野の協議会の構成員になることが必要です。  なお、協議会への加入方法等については、各分野所管省庁のホームページを参照してください。 3 共生社会の実現に向けて  当庁の新たな取組である外国人の受入れ環境整備について紹介します。  国民と外国人の双方が尊重し合える活力ある共生社会を実現するため、労働、医療、教育、住宅など生活の様々な場面について外国人の受入れ環境を整備することが重要です。  昨年12月、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を取りまとめました。これには、 ○ 相談体制の整備として地方公共団体による一元的相談窓口の設置支援 ○ 医療・保健・福祉サービスの提供環境の整備 ○ 災害発生時の情報発信・支援等の充実 ○ 住宅確保のための環境整備・支援 ○ 日本語教育機関の質の向上・適正な管理 ○ 日本語教育、外国人児童生徒の教育の充実 ○ 留学生の就職等支援 ○ 適正な労働環境の確保 など、外国人の受入れ環境整備に関する合計126の様々な施策が盛り込まれています。現在、各種施策を政府一丸となって実施しています。  また、本年6月には、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について」が取りまとめられました。これに基づいて、特定技能外国人の大都市圏等その他特定地域への集中防止策、外国人共生センター(仮称)の設置等、各種施策を実施していきます。  さらに、安全・安心な生活・就労のために必要な基礎的情報を提供する「生活・就労ガイドブック」(写真)を日本語、英語、ベトナム語、やさしい日本語で作成し、法務省の「外国人生活支援ポータルサイト」に掲載しています。今後、14か国語を目途に順次多言語化を進めていきます。 4 出入国在留管理庁の新設  特定技能制度の創設に伴う在留外国人の増加に的確に対応しつつ、外国人の受入れ環境整備に関する企画及び立案並びに総合調整といった業務に一体的かつ効率的に取り組んでいくため、法務省の外局に出入国在留管理庁が新設されました。 5 ホームページについて  本稿では、特定技能制度の概要等について説明させていただきましたが、詳細は法務省や分野所管省庁のホームページを参照してください。  http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_index.html