《7》教育分野の取組 A日本語支援拠点施設「ひまわり」における取組 執筆 梅原 依里 教育委員会事務局小中学校企画課 1 日本語支援拠点施設「ひまわり」開設  教育分野の取組@に記載のとおり、横浜市では外国籍・外国につながる児童生徒及び日本語指導が必要な児童生徒数が年々増加している。また、個々の外国籍等児童生徒を取り巻く課題は複雑化・多様化しており、増加に伴う支援の拡充及び児童生徒・保護者や学校のニーズに応じた支援を実施していく必要がある。さらに、当該児童生徒が集中する学校での教科指導時間の確保や子どもの学力向上といった課題への対応、これまで受入経験がない学校での受入れ・指導のための支援が求められている。また、こうした外国籍等児童生徒は、年度途中での編入(特に9月)が多いが、学校の人的配置は年度当初に決まってしまうことから、学校での受入れや指導の態勢が整わない状況もある。  そこで、当該児童生徒に対する学校生活への円滑な適応の支援や学校での受入れの負担軽減等を目的とし、2017年9月に横浜市初となる日本語支援拠点施設「ひまわり」を中区に開設した。なお、愛称である「ひまわり」は小・中・義務教育学校の児童生徒から募集して決まり、「笑顔が咲き誇り、ひまわりのように仲間と元気にすごせるように」という想いが込められている。 2 「ひまわり」の主な事業  日本語支援拠点施設「ひまわり」では、次の3つの事業が実施されている。 [プレクラス]  帰国・来日間もない児童生徒が学校に速やかに適応できるよう、集中的な日本語指導と学校生活の体験を行う。「お腹が痛い」などといったサバイバル日本語から初期日本語の指導、音楽や体育などの教科について予備知識を習得するための指導、チャイムによる時間管理などで学校での生活習慣を獲得するための指導等を実施する。 【対象】初期日本語指導が必要な児童生徒 【職員】日本語講師(日本語教育に関する資格保持)とプレクラス指導員(教員免許保有、学校での指導経験有) 【通級期間】4週間(週3日 水・木・金曜日)9時〜14時(小学生は保護者の送迎が必要) 【クラス】@はな組(小学校低学年)、Aみどり組(小学校高学年)、Bそら組(中学校) 【定員】60名(各クラス20 名×3クラス) 【指導内容】@初期日本語指導、A学校生活体験、B体育・音楽など教科につながる日本語(授業で使う日本語)指導 [学校ガイダンス]  児童生徒・保護者の不安軽減、学校の負担軽減を図るため、入学時に必要な書類記入の支援に加え、日本の学校生活に必要なことや保護者の役割を伝える。 【対象】来日・帰国直後の児童生徒及びその保護者 【実施日時】毎週火曜日 15時〜16時30分(8月下旬は毎日実施) 【実施言語】中・英・タガログ語とやさしい日本語 【実施内容】@入学手続、学用品、学校生活等の各種説明、A保護者会・PTA等での役割説明、B児童生徒の基本情報等の確認、保護者の連絡先の確認、C口座開設関係書類等の作成支援 [さくら教室]  新小学1年生が学校生活や学習の準備を体験することで、円滑に学校生活を始めることができるよう支援を行うとともに、当該児童の保護者に対し、日本の学校生活や学習の必要性を説明する。 【対象】外国籍等の新小学校1年生とその保護者 【実施時期】3月第1週・第2週の土曜日(2週連続) 【実施言語】参加保護者の母語(中・英・タガログ・スペイン・ポルトガル語等 2019年は11言語) 【実施内容】(新1年生向け)@あいさつ・返事の仕方、A鉛筆・道具の使い方、B学校生活の体験 (保護者向け)@学校ガイダンスの内容、A家庭学習の説明、B質問対応 等 3 「ひまわり」の成果と今後に向けて  プレクラスでは、開設から2019年3月まで、合計252名の児童生徒が利用している。国籍・つながる国別では、中国が195名で最も多く、次にフィリピンが22名と続き、合計19か国にのぼる。また、在籍校の区別では、南区92名、中区51名で、やはり近隣区からの利用が多い。学校ガイダンスは同期間に合計261組の児童生徒と保護者が参加、さくら教室では、184組の児童・保護者が参加している。また、プレクラスを利用した学校へのヒアリングでは、プレクラスに通った児童生徒は、日本語の習得が 早くできていることや、掃除など学校生活での習慣が身に付いていることなどが効果として挙げられた。また、学校ガイダンスやさくら教室については、母語話者が説明、相談を行うことで、児童生徒、保護者の不安の軽減につながっていると聞いている。  2019年4月、学校長や教育委員会事務局、関係区局職員によるプロジェクトを設置し、これまでの「ひまわり」について検証を実施した。6月に小・中・義務教育学校全校及び「ひまわり」を利用した児童生徒・保護者へのアンケートを実施し、その結果をプロジェクトの議論に活用して、7月には今後の日本語支援の在り方を報告書としてまとめた。各事業の実施内容について、学校からは「今のままでよい」 97.0%、「今後の日本語支援において『ひまわり』は必要」99.1%という一定の評価を得ている。一方で、「ひまわり」を利用しなかった理由として、「『ひまわり』を知らなかった」、「必要ないと思った」、「『ひまわり』までの通級、送迎が困難である」などが挙げられた。また、学校からの期待として「保護者・児童生徒への相談支援」、「日本語指導のためのプリント教材等の提供」、「指導員を派遣して行う出張指 導」などが多く挙げられた。  2019年9月、集中的な初期日本語指導のノウハウをまとめ、プレクラスでも使用している独自教材「ひまわり練習帳1」を発行し、冊子版を各学校に配付、ダウンロード版をホームページ上に掲載した。今後も、引き続き学校や児童生徒・保護者の意見を踏まえ、横浜市国際交流協会など関係機関と連携しながら、「ひまわり」での支援を着実に推進していくとともに、他の支援制度との関連を踏まえた上で、子どもたちが安心して学校生活を送ることができる体制の充実を目指していきたい。